宇内梨沙『ファイナルファンタジー16』を語る

宇内梨沙『ファイナルファンタジー16』を語る アフター6ジャンクション

宇内梨沙さんが2023年6月22日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で発売されたばかりの『ファイナルファンタジー16』を最速レビュー。6時間プレイした上で感じたことを話していました。

(宇多丸)(宇内梨沙さんのファーストプレイ時の音声を聞いて)いいですねー! これぞファーストインプレッションそのものじゃない? 0時を超えた瞬間から……ですもんね?

(宇内梨沙)深夜2時ごろ、もうグッチャグチャでした。私の心は。すごいですよ! もう、すごい!

(宇多丸)ごめん。ちょっと一応、大筋で聞いとくけれども。それは、ポジティブな?

(宇内梨沙)ポジティブ! 最近のカルチャー作品って全部、最初のつかみが大事って言われていて。たとえば配信サービスでも最初の10分が大事だから、最初につかみが来るようなシナリオ作りしたりとか。アニメもそうだし。きっと全部……音楽も、いきなりサビが来たりとか、いきなり音楽が始まったりとか、あるじゃないですか。もう、ゲームでもそうですよ! 16は冒頭2時間で……これ、2時間やって続きをやらない人、いないでしょ?っていうぐらい。とんでもない吸引力! ダイソン超え!

(宇多丸)「ダイソン超え」(笑)。ああ、そう? ダイソンは吸引力が落ちないって言うけども。だからこれ、ダイソンのように最初から強い吸引力がさらにこの後、プレイし続けてもそれは変わらず?

(宇内梨沙)そうなんですよ!

(宇多丸)普通、吸引力は落ちますが……ダイソンとファイナルファンタジーは(笑)。

(宇内梨沙)私、本当にこのスタジオに来た時、まだ16の世界から片足抜け出せてなくて。頭の中で自分も世界で戦いたいなとか思いながらこのスタジオに来てましたから。

(宇多丸)なるほど……帰っていただいていいですか?(笑)。

(宇内梨沙)アハハハハハハハハッ! 女戦士、なりてえ! ナイトになりたい!

(宇多丸)もうその世界に気分的には没入しちゃってると?

(宇内梨沙)しちゃっていて。ちょっと中2気質が今、ずっと続いてる感じです。

(宇多丸)だってね、さっきから要所要所で会話になんないんだよ。「召喚獣が!」とかって言っているけども。いや、俺はその召喚獣、わかんないから……みたいなことをいろいろ言ってますけど。でもテンション、伝わってまいりました。ということで改めて本日、6月20日。日付が変わったところから発売になりました。『ファイナルファンタジーXVI』の最速インプレッション、ファーストインプレッションプレビューをしたいと思います。

(宇内梨沙)ちょっと冷静にならなきゃいけないので。ちょっと文章にある程度、まとめているんですけども。まず私がFFに出会ったきっかけ。

(宇多丸)ああ、その前にファイナルファンタジーとはどんなシリーズなのか? やっぱりビギナーの方にもわかっていただきたいですからね。

(宇内梨沙)はいファイナルファンタジーシリーズはSQUAREが1987年にファミリーコンピュータ向けソフトとして発売したファンタジーロールプレイングゲームの金字塔。名前は皆さん、聞いたことあると思います。そしてエニックスのドラゴンクエストシリーズと並び、35年以上にわたって日本を代表するRPGのタイトルとして君臨してきました。世界中に翻訳され、シリーズ累計売上本数は1億6000万本。味方と敵が交互に行動を選択し相手を倒す、いわゆるターン制のバトルを初期は採用しており、RPGが日本に普及する上で大きな役割を果たしました。詳しくは渡辺範明さんの本『国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?』をご覧いただきたいです。

(宇多丸)『Open The Window』と同日発売でございまして。Amazonだと、こちらも同時購入されてる方が大変多いという表示が出ております。ありがとうございます。

(宇内梨沙)そんな人気シリーズの派生作品を除いて、16作目となるのが本日、発売された『ファイナルファンタジーXVI』ということですね。で、シリーズごとにシステムやビジュアルを一新させてきたファイナルファンタジーシリーズだけに今回、どんな作品なのか?っていうのはもちろん、注目されてきたんですけれども。

(宇多丸)ファイナルファンタジーはそこが……だから「次はどう来る? 次はどう来る?」っていうところも見どころですからね。さあ、ということで……。

(宇内梨沙)ズバリ今回、どんな感じだったか?っていうと、もうクラシックファイナルファンタジーと、クラシックファンタジーの融合! 原点回帰。

(宇多丸)クラシック……つまり、そのファイナルファンタジーのらしさっていう?

(宇内梨沙)そうですね。いわゆる初期作品……まだドット絵だった時代に特に使われていた設定とかをかなり大切に、忠実に、現代のプレイステーション5で再現したなっていう。

(宇多丸)あれを今のスペックで本当に映像化するとこうなるのか! みたいな?

クラシックなFFの要素をPS5で再現

(宇内梨沙)もうたまらなかったですね。ファイナルファンタジーってクリスタルと召喚獣っていうのが、いわゆる『ロード・オブ・ザ・リング』とか、ああいうファンタジーものの中にない、ファイナルファンタジーらしさなんですよ。クリスタルと召喚獣。その二つが今回、とにかく重要な存在になっていて。召喚獣っていうのは、基本的にこれまでのシリーズでは主人公が呼び寄せて、一緒に戦ってくれる大型の獣ですね。いろいろ、バハムートとか、イフリートとか、シヴァとか、いろんな召喚獣が歴代作品でもいるんですけれども。

(宇多丸)あの、ウィンダムとかミクラスみたいな? あ、すいません。カプセル怪獣です。すいません……。

(宇内梨沙)ピンと来なくてすいません(笑)。そんな感じで、シリーズになじみのある人からすると、もうずっと出てきた召喚獣、大きな獣がいるんですけど。もうその召喚獣バトルが見たことないぐらい、もうスペクタクルで! 宇多丸さん、怪獣好きじゃないですか。怪獣バトル。もうとんでもない映像の仕上がりになってます。とんでもねえ! それだけでも引き込まれる。だから大型怪獣が戦うシーンが好きだったら……。

(宇多丸)絵柄は結構、リアルめなんですもんね?

(宇内梨沙)リアルめと言ってもやっぱり、そのJRPGらしさは失ってないんですよ。FFらしさを失ってないので。ファンタジーっぽいCGデザインのタッチもちゃんと残っている。その上で、怪物同士の戦いも見どころなんですけど。まあ、ちょっと脱線しましたが改めてプレイしてみて感じたのは、『ファイナルファンタジーX』に出会って感銘を受けて。そこからFFをずっとプレイしてきましたけど。以降、FF10を超えたものがなかったんですよ。最初に手を出したのがFF10だけど。そこから遡ったり、続く作品をやったけど、10を超えたものがなかった。でも今、この気持ちの高ぶりは10、超えそうです。

(宇多丸)ええーっ! 宇内さんにとっての10超え、どれだけ大きいものかっていうので、すごいなというのはわかりますけども。

(宇内梨沙)まあFF10はシナリオ上、後半にいろいろ話が進んだりするので。という状況もあると思うんですね。一方で16はもう冒頭から、もうとんでもない展開になるので。その主人公に背負わされた使命みたいなものがとんでもない展開を見せてくれるので、その差はある。前半と後半、どっちに重きを置くかでも差があると思うんですが。6時間、プレイした時点では、ちょっと10超えちゃうかもっていう感じです。

(宇多丸)そりゃすごい!

(宇内梨沙)で、どんな世界なのか?って言いますと舞台はヴァリスゼアという大陸なんですね。本当に中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーものを想像していただくとわかりやすいんですけれども。国と国とが戦ってるわけですよ。魔法だったり、もちろん兵を使って剣で戦ったり。そういう中世ヨーロッパ的な世界を舞台にしています。ただ、明らかに失われた超文明の気配もあったりとか。そこは、なんかFFの「これはなんなんだろう?」と思わせる要素でもあるんですけれども。で、主人公はすごく影のある……まあ「ダークファンタジー」と最初から言われていましたので、何か過去に背負っているのではないかという、イケメンです。ただ、今回はこれまでのFFとは違って、すごく渋さもあって。そこは宇多丸さんも、いわゆるFFの美男美女ばっかり出てくる感じからは……。

(宇多丸)美男美女というか、はっきり申しますれば、ホスト感。

(宇内梨沙)そこからは一線を画してます。確実に。めちゃくちゃ泥臭い。で、こんな血が出るFFははじめて見ました。

(宇多丸)ああ、そうらしいね。私はハードな方が好きなので。そこはちょっと好みかもしれないですね。

(宇内梨沙)めちゃくちゃハード。『ロード・オブ・ザ・リング』とか『ゲーム・オブ・スローンズ』とかを見て楽しいって思える人は、絶対に好き! で、世界は先ほどもお伝えした通り、マザークリスタルっていうものがエネルギーの源であって。そこで国が起こるんですよ。もうそのマザークリスタルがないと、魔法が使えなかったりとか。一部、荒廃してしまっているエリアもあるので。そのマザークリスタルを争って、国同士が戦うんですね。もう奪い合い。で、そこにキーになるのが召喚獣なんですよ。やっぱり人間同士、小さな人間が戦っても、そんなにね、戦況を変えられるわけじゃないですじゃないですか。そこで各国が持つ召喚獣たちが戦うっていう。

(宇多丸)ある意味、兵器としての……。

(宇内梨沙)そうなんです。まさに兵器として使われるんですけれども。じゃあ召喚獣って、どこから来ているの? みたいな。過去、これまでのFF作品でいろいろ異なってきたんですけど。今回は「ああ、なるほどな。召喚獣ってこういう仕組みなんだ」っていう。それもぜひぜひプレイして味わっていただきたいので。そのへんは伏せたいんですけれども。でも、元々初期の発表の時からダークファンタジーで原点回帰って聞いてたんで、期待値が高かったんですけど。今回、その制作チームが『ァイナルファンタジーXIV』というMMO RPGを手がけていた吉田直樹プロデューサーが率いるチームなんですね。

でも私、14はやってないから正直、全然ピンと来てはいなくて。ファンタジーの原点回帰っていうところでは、すごい期待値が高かったんですよ。ただ、発売直前イベントでの吉田さんの発言とかを見てると、実は体験版が出てるんですけど。その体験版の後から、プレイヤーの反応をめちゃくちゃちゃんと確認していて。で、実際にプレイヤーの要望に対して「ここを今度、こうやってアップデートしていきます」とか、かなりすぐ、柔軟に対応する姿勢を見せてるんですね。

これはやっぱり、普段からオンラインゲームをアプデしている吉田さんだからこそできる……その、作家性を貫くことも大事だと思うんですけど。やっぱりプレイするのはFFファン、プレイヤーですから。なんかそういうところがすごく柔軟に対応されていて、いいなって思いました。だからこそ今回の16も「FFファンはこれをやりたかったんだ!」っていうのをちゃんとリサーチした上で、シナリオだったり、ゲームシステムを構築してるなっていうのをすごく感じました。

で、実際に吉田さんも発売直前に「スクエニは最近、期待に応えられていない」っていう発言をしているんですよ。だからやっぱり期待に応えたいっていうのはすごく強くあって。プレイヤーのリアクション……だからSNSとかもすごくちゃんとチェックしたりして。YouTubeでね、ゲーム実況をされてる方のリアクションとかもすごくチェックして、客観的に作品を作ってるんじゃないかなっていうのは私、感じました。

(宇多丸)それは面白いですね。なるほどね。

(宇内梨沙)あと、そうですね。実際にもうプレイしてみて冒頭の音声を聞いてわかる通り、めちゃくちゃ、2時間で涙が出ちゃうような展開なんです。

(宇多丸)それは、ストーリー的に?

開始2時間で涙が出るような展開に

(宇内梨沙)ストーリー的に。いやー、いきなりこれ見せるかと。で、そこで、もうあのぐちゃぐちゃになった後で、ロゴが出るんですよ。やっと。『FINAL FANTASY XVI』って。

(宇多丸)ああー。最近のゲームさ、タイトルが出るところ、もう結構みんなさ、気合入れてない? ゼルダとか、やばかったじゃん? やっぱりね、そういうところだよね。

(宇内梨沙)それこそ、『スパイダーバース』とかもそうじゃないですか。だから、そこで鳥肌が立つじゃないですか。

(宇多丸)『アクロス・ザ・スパイダーバース』のタイトルが出る瞬間もやばいもんね。

(宇内梨沙)やばい! で、それでもう鳥肌じゃないですか。ギュイーン!って世界に引き込まれるというか。もうだからロゴが出る瞬間がもうやばい。で、そこまで気持ちが高ぶっちゃうとそれ以降、大丈夫?って感じじゃないですか。

(宇多丸)ねえ。これ、ダイソンとしては吸引力ね、普通だったら下がりますよ?

(宇内梨沙)でも、変わらない。ダイソンを超えているから。6時間プレイして、その最初の2時間から「ああ、ちょっと落ちたな」とか、一切感じないです! もう、怒涛の展開というか。映像で見せるその迫力とか演出がめちゃくちゃこだわっていて。ただ、映像がすごい分、プレイでちょっと興ざめしちゃうとか、あるじゃないですか。

(宇多丸)ねえ。「これ、映像を見せられてるだけじゃん」みたいなのも、あるじゃない?

(宇内梨沙)でも、そこの映像から自分のプレイに切り替わっても、気持ちが冷めない作りがとてもうまい!

(宇多丸)へー! ちゃんとシームレスに感じられる?

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