宇多丸推薦 ナチス ホロコースト責任者アイヒマン関連映画・書籍

宇多丸推薦 ナチス ホロコースト責任者アイヒマン関連映画・書籍 5時に夢中!

宇多丸さん、玉袋筋太郎さんがMXTV『5時に夢中!サタデー』のコーナー、たまうたゼミナールで、ナチス・ドイツ ホロコーストの責任者アドルフ・アイヒマンに関連する映画・書籍を推薦していました。

宇多丸推薦 ナチス ホロコースト責任者アイヒマン関連映画・書籍

(町亞聖)はい、ここからは歴史解釈のポイントを解説していただきます。まずは宇多丸講師です。よろしくお願いします。

(宇多丸)今日は、私は比較的マジ寄りなネタで行きたいと思います。本日6月1日は、『アイヒマンの日』。まあ、アイヒマンという人が処刑された日。アイヒマン、聞いたことある人、いますかね?アイヒマン、こんな人です。要はナチス・ドイツでいわゆるホロコースト、ユダヤ人を計画的に大量に殺した。あれを計画的にやったのの責任者と呼ばれています。で、先日ちょろっとその話、出ましたよね。1960年5月11日。土曜日だったんですけど、イスラエルの諜報機関モサドに、アルゼンチンにずっと彼は潜伏してたの。で、要するに拉致されてイスラエルに連れてかれて、そして裁判の日に1962年6月1日に絞首刑に処されたんですね。

(玉袋筋太郎)へぇー!

(宇多丸)で、このアイヒマンさん、裁判についてもいろいろなアレがございまして。まず、モサド。モサドに拉致された件。この間紹介しましたね。ロバート・デュヴァル主演で『審判』、これまさにモサドに拉致されるくだりを描いた映画なんでございますけど。

『審判』

審判(字幕) [VHS]
タキ・コーポレーション

(玉袋筋太郎)自前ですね。これは。

(宇多丸)自前がございます。そして、『イェルサレムのアイヒマン』。この本、要するにアイヒマンの裁判の様子をハンナ・アーレントというユダヤ人の政治学者がやってるんですけど、これ大変な議論を巻き起こした。どういうことかというと、ホロコーストの責任者ですよ。要するに悪魔のようなとんでもない悪いやつ、だからそうなんだ!って誰もが思いたかったし、そう思っていた。だけどハンナ・アーレントさんは裁判を通じて何が分かったか?アイヒマンは悪魔なんかじゃない。ただの小役人だと。役人として、命令にむしろ忠実に従ってた人だからこそ・・・つまり、悪というのは悪魔のような存在じゃなくて、非常に陳腐で凡庸な存在、我々と同じ存在なんだと。これを言って非常に物議を醸しだした。

『イェルサレムのアイヒマン』

(玉袋筋太郎)へぇー!

(宇多丸)そして実は、今日はアイヒマンの話そのものよりも、こちらの本をオススメしたいからなんですね。これ、『服従の心理』という本で、最近文庫になったりしてますけどね。いわゆるこれ、アイヒマン実験といわれる実験なんですね。ミルグラムというアメリカの学者がやった実験。これを是非、オススメしたかった。

(玉袋筋太郎)おお、どんな実験?

(宇多丸)どういう実験かといいますと、こういうね・・・アイヒマン実験、通称ミルグラムの心理実験。エール大学の心理学者ミルグラムさんがやったと。要はですね、被験者を集めて、嘘の理由なんです。要するに『罰を与えると学習能力が上がる』という実験をしたいので集める。で、集められた何も知らない人に、問題を出させるわけです。『間違えたら電撃を加えて下さい』と。ビリビリビリ、ビリビリビリ。という風にテストをさせるんですね。で、受ける側は本当は電撃は受けてないんだけど、間違えるたびに電撃(の強さ)が上がっていって、「ああ痛い!やめてくれ!」みたいなことを言うようになっている。それで普通の人がどこまで電撃(の強さ)を上げちゃうかっていう実験なわけですよ。

『服従の心理』

(一同)ええー!?

(宇多丸)これね、最初の予想では、ごく一部の異常な性格の人だけが最高のところまで(電撃の強さを)上げるだろうと思われていた・・・3分の2ぐらいの人が、要するにほとんどみんながやっちゃったんです。最大の電撃で。とか、いろいろ条件を変えても・・・たとえば、目の前に痛がっている人がいて、しかも「もう俺はこんな実験、嫌だ!」って言って(電撃を加える)手を押さえてやらせるみたいなのも、3分の1の人まではやっちゃった。30%。

(一同)ええー!?

(宇多丸)で、終わった後いろいろインタビューをすると、「あなた、こんなひどいことやって、どう思うんですか?」「いやいや、実験をやらせた人が悪いでしょ?僕はこの実験、どうかと思いましたよ。かわいそうだと思ったし、抗議もしました。でも、実験を命じた人に責任があるでしょ?」あるいはもっとひどいのになると、「電撃を受けた人がちゃんと従わないからだ!」・・・とにかく自分のせいじゃないという風に。つまり、権威というか、一旦自分の責任を担保できるようなところができちゃうと、人はいくらでも残虐に成りうる。ナチスのホロコーストであるとか、ヴェトナム(戦争)の・・・何でもいい。いろんなところで起きている残虐行為っていうのは、特別な残虐性がなすんじゃなくて、その場の権威に命令されるとやっちゃうという、人間の本性ゆえなのだというね。しかも自分は、「一応良心の痛みは感じてました」って言って、そんなの何の言い訳にもならないのに。

(玉袋筋太郎)はー!

(宇多丸)という人間、僕らもそうなんです。今、『そんなひどい話』って思うけど、僕らも同じ状況になればそうなるんだっていうことを証明したって意味で、是非これ全ての人に読んでいただきたい。『服従の心理』。それで、気をつけなきゃいけないねっていうですね。ということで、アイヒマンの処刑の日に『服従の心理』をオススメさせていただきました。

(町亞聖)大変勉強になりました!怖いです。気をつけたいと思います。

(玉袋筋太郎)これ、アイヒマン実験、すごいよね。やっていることは『ガンバルマン』なんだけどね。

(宇多丸)(笑)ガンバルマンじゃないんですよ。本当に痛いわけじゃないんでね。これね。

<書き起こしおわり>

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