町山智浩 2022年アカデミー賞ノミネート作品と有力候補を語る

町山智浩 2022年アカデミー賞ノミネート作品と有力候補を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年2月15日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で2022年のアカデミー賞のノミネート作品についてトーク。各賞の有力候補について話していました。

(赤江珠緒)町山さん、帰国中ということで本当に久々にラジオご登場。生町山さんです。

(町山智浩)お久しぶりです。

(赤江珠緒)どうもどうもお久しぶりです。なんと、2019年の12月31日(火)以来のスタジオという。そうか……。

(町山智浩)もうね、ひさしぶりでね。大変でしたよ。

(赤江珠緒)なかなかね、行き来するのも大変でしょうね。

(町山智浩)隔離が大変で。最初、2週間になるのか1週間になるかわかんなくて。で、1週間隔離……強制隔離ですよ。空港に着いたら。で、いわゆるAPAホテルで。で、部屋から出れないんですね。ベッドしかない部屋で、窓も開けられない。廊下にも出ちゃいけない。各階に見張りがいるんですよ。

(山里亮太)徹底しているんですね!

(町山智浩)そうなんですよ。

(山里亮太)ご飯とかはどうされていたんですか?

(町山智浩)ご飯はお弁当が出ますね。APA弁当が。大変でしたよ。で、そこからも自主隔離を続けなきゃならなくて。そこに6日間いた後で。それでね、X JAPANのYOSHIKIさんが年末の番組に出てたでしょう? 有名人がおいしいものを……。

(赤江珠緒)ああ、格付けね。

(町山智浩)住んでいるのはロサンゼルスでしょう? だから出演のために日本に来てるんで。彼もAPAホテルに入ってたはずなんですよ。

(山里亮太)ああ、そうか。へー!

(町山智浩)でも、YOSHIKIさんがAPAホテルにいる状況って想像してくださいよ? 全然耽美的じゃないでしょう、それ?

(山里亮太)よく受け入れましたね。YOSHIKIさんも。

(町山智浩)でも、これしかないからでしょう? なんかイメージが違いすぎて……で、YOSHIKIさんもAPA弁当を食べてたのかな?っていう。格付けですごい、世界一うまいものを食べてる人がAPA弁当に耐えられたのか?っていう問題が……。

(山里亮太)あの「カレーが辛すぎる」っていうんで帰ったとか、そういう武勇伝のある方が。

(町山智浩)ねえ。そこだけすごいなと思ってますけどね。

(赤江珠緒)そうか。じゃあ、いろいろ検査とかも何回もされて?

(町山智浩)すごいしていましたよ。だから着いた時にまず1回、唾の検査をやって。唾がこの歳になると出なくて大変でしたけど。本当にね。で、その強制隔離の間も2回。で、その後も1回。明日、帰るんですけども。飛行機に乗る前にも……。

(山里亮太)明日、帰っちゃうんですか?

(町山智浩)明日、帰るんですけど。で、もう1回受けなきゃならないんですよ。すごいですよ。もう全部で6回ぐらい受けてるんですよ。

(山里亮太)今回、町山さんが日本に来られた理由っていうのは?

(町山智浩)まあ、ずっとこっちに来てなかったんで。妻の実家のお母さんが結構、お年だったりするのでそれもあるし。あと、アカデミー賞のシーズンなんでね、たくさんやることがあって来たんですけれども。ただ、その撮影までの間は都心にいるとせっかく、これだけ隔離されてるのにすごい感染が増えてるから。都心にいると伝染っちゃうじゃないですか。その可能性が高いから。そしたら何のために隔離をしていたのかわかんなくなっちゃうから。で、帰りの飛行機にも乗れなくなっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ああ、今度、またね。

(町山智浩)だからね、一番感染が少ないところがどこかな?って各都道府県で見てたら、宮城がすごく少なかったんですよ。で、宮城の温泉にいました。しばらく。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)それでこれがお土産で。三陸えびせんべいですけども。あとで皆さんでどうぞ(笑)。南三陸のホテルがすごいホテルだったんですけど。岸壁にあるんですよ。海の上にあるわけですよ。でも、震災の時の津波の被害を受けてないんですって。

(赤江珠緒)ああ、その岸壁の上だったから?

(町山智浩)そう。ところがそれよりも内陸地の方の、4キロとか先の学校とかがやられたりしてるんですよね。だから津波ってすごく不思議で。海辺にせり出しているところはその岩自体が頑丈なのと、その波を2つに分けちゃうらしいんですよ。とんがっていて。で、そのホテルは全然大丈夫で、家を失った人たちの避難場所にもなっているんですね。南三陸ホテル観洋っていう。

(赤江珠緒)ああ、本当だ。これ、写真を見たら本当に海沿いのね。

(町山智浩)そう。これがダメージがなくて。ところが、この絵にもあるようにその周りがもうほとんど壊滅的な被害を受けていて。これね、この写真にある鉄筋コンクリート建ての3階建てのビルって防災センターなんですよ。

(赤江珠緒)そうだ。ずっと最後まで放送を続けられたという。

(町山智浩)そう。避難放送をずっと続けるから中に居続けるしかなくて。で、鉄筋コンクリートのビルの外壁が全部吹っ飛ぶぐらいのすごい津波を受けてるんですよね。だから運命は本当に恐ろしいなと思って。このホテルの方は本当に今もすごくきれいで運営してるんですけどもね。まあ、ちょっとね、そのホテル、いろいろとおいしかったんですけど。すごい話をししていると、エチオピアコーヒーっていうのが結構売りになっていて。エチオピアから豆を直輸入しているらしいんですよ。で、「おいしいコーヒーですよ」って言っていて。そしたら、うちの家族が彼らの会議をたまたま盗み聞きして。「エチオピア豆、手に入んないんだよ……」とか言っていて。「どうしたの?」「エチオピアが今、なんか内戦に入るみたいで、豆が手に入らないんじゃないかな?」とか言っていて。すごい話をしているなっていう(笑)。

(赤江珠緒)本当ですね。へー!

(町山智浩)すごいなって思ったんですけど。まあ、いろいろあってですね。で、何のために来たのか?っていう話ですけど(笑)。アカデミー賞ですね。僕、ずっと授賞式の中継をやってますので。今回はとにかくね、日本映画が……。

(山里亮太)そうですよね。

(町山智浩)『ドライブ・マイ・カー』がねなんと作品賞、脚色賞、監督賞、国際長編映画賞と4部門にノミネートっていう。で、作品賞に入ったのは史上初めてです。ノミネートではね。で、そのへんの解説とかいろいろあるんで来てやってるんですけども。これね、たぶん国際長編映画賞と脚色賞は恐らく、取りますね。

(赤江珠緒)ふーん!

『ドライブ・マイ・カー』

(町山智浩)恐らく取ると思うんですね。脚色賞って元々、原作があるものを脚本にして。その技術が問われるんですけども……これ、ノミネートされている他の作品が、そんなに脚色をしてないんですよ(笑)。

(山里亮太)なるほど!

(町山智浩)これね、原作とすごく変わってるのは『コーダ あいのうた』。これがね、原作が『エール!』っていうフランス映画を元にしていて。まあ聴覚障害のある家族の話なんですけども。元々はね、チーズ作りをしている職人たちの話で、それをボストンの漁師に変えていて。だから話も全然違うんで、これは脚色すごいしてて。で、『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹さんの短編小説3つを混ぜ合わせてひとつの物語にするっていうので、脚色をすごいしてるんですよ。でも、それ以外の脚色賞ノミネート作品ってそんなに原作と違わないので。

脚色賞はまあこの『コーダ』か『ドライブ・マイ・カー』の2つにひとつだと思うんですよね。『DUNE/デューン 砂の惑星』なんて原作を普通に映画化しようとしたら、2時間で話が終わらないから途中で終わっちゃって。で、ヒロインが「本当の物語はこれから始まるよ!」って言っても映画が終わるんですけど。そんなものがアカデミー賞を取れねえだろう?っていう(笑)。ふざけんなよ、少年ジャンプの打ち切られた漫画じゃねえんだから……っていう(笑)。

(山里亮太)「まだまだ始まったばかりだ!」って(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。それで脚色賞を取れたら、世の中どうなってるかわかんないっていうね。だからまあ、『ドライブ・マイ・カー』が取るだろうなって。テクニカルにすごく、いろんなことをしてるので。3つの話を混ぜ合わせるってすごいことですからね。まあ、取ると思いますね。あと、国際長編映画賞も取るでしょう。ということでね、すごく今回の新しかったのは作品賞にこれが入るっていうことなんですね。で、実は2年前に韓国映画の『パラサイト』が作品賞取ってますね。

で、これは監督の濱口竜介さんも言ってるんですけど、「自分の映画がどうこうっていう問題じゃなくて、アカデミー賞の選出者たちが変わったんだ」って言ってるんですよ。それで実は2016年からアカデミー賞って投票者数をどんどん増やしていって。その当時は6000人しかいなかったんですね。で、その6000人のほとんどがハリウッドで働く業界人……映画のカメラマンとかメイクアップの人とか俳優さんとか、その6000人で投票してアカデミー賞って決めてたんですね。でも現在はね、そこから3000人増やして9000人以上いるんですよ。

(赤江珠緒)おお、大幅に増やしましたね。

(町山智浩)すごい増やしたんですよ。で、その増えた3000人のうちの多くがあんまりアメリカ映画と関係ない人なんですよ。それはその2016年にウィル・スミスっていう黒人の俳優さんがいるじゃないですか。彼が一生懸命、アカデミー賞を取ろうと思って頑張った『コンカッション』っていう映画があって。これはNFL、アメリカンフットボールリーグに出てる選手の多くが脳震盪で後遺症がすごくひどいということをNFLが隠していたっていうことを暴いた弁護士の役を彼、ウィル・スミスがやってまして。それで彼はアカデミー主演男優賞にノミネートされると思っていたら、ノミネートされなかったんですよ。

それでぶち切れまして。夫婦でぶち切れまして。で、「アカデミー賞は白人ばっかりだな!」って「#OscarsSoWhite」っていうキャンペーンをやって。それで「黒人とか有色人種がないがしろにされている。アカデミー賞を先行する人たちは平均年齢60歳以上で白人の男性ばかりじゃないか。こんなもん、ボイコットだ!」ってボイコットをして。それから、アカデミー委員会は「これはヤバい」っていうことになって。もっと女性を増やしたり、若い人を増やしたり、外国人の人を増やそうっていうことで、3000人増やしたんですよ。これは、すごいですよ。で、現在だから3人に1人の投票者が日本人だったり中国人だったりフランス人だったり……ハリウッド以外の人たちに変わっていったという。

(赤江珠緒)やっぱり結果、選ばれる作品も変わってきたんですか?

アカデミー賞の投票者数の増加

(町山智浩)その通りなんですよ。アカデミー賞っていうのはアメリカ映画に対する賞だったんですよ。当たり前なんですけど。ハリウッドの組合の賞として始まったから。でもこれで2016年以降、変えたので韓国映画が取ったりね、これからは日本映画が取るとか、それこそアフリカ映画が取るとかっていう可能性があるような事態になったんで。浜口監督が言う通り、選ぶ人たちが変わったから『ドライブ・マイ・カー』がノミネートされたんだっていうことですね。ただ、作品賞を取れるかどうかはわからないです。

(赤江珠緒)作品賞っていうのはポイントとしては、その作品の面白さ、娯楽度とか……どういう点が?

(町山智浩)これね、作品賞の投票の仕方ってすごい特殊で。10本、候補があるじゃないですか。それに投票者は全員、順位を付けるんですよ。で、それを計算して一番得点が高かったものを……だから、たとえば1位のものは10点とするじゃないですか。で、10位のものは1点とか。それで計算するんですよ。そうすると、どういう映画を取るか?

(山里亮太)ちょっと無難なやつですか?

(町山智浩)その通り。みんなから好かれるもの。誰も1位に入れてなくても、全員が2位に入れていれば取るんですよ。

(赤江珠緒)そういうことか!

(町山智浩)だからすごく不思議な投票方式になってるんで。それでやった場合に、果たして『ドライブ・マイ・カー』みたいなちょっと難しい映画……いまだにね、投票者の60パーセントはアメリカ人なので。その人たちが選ぶかどうかはちょっと難しいところがあるのと、あと『パラサイト』が取った時って、たぶん日本ではほとんど報道されてないんですけど、ものすごいキャンペーンをやってたんですよ。

(山里亮太)キャンペーン?

(町山智浩)キャンペーン。とにかくハリウッド中のビルに宣伝が……アカデミー賞のシーズンになると、アカデミー賞候補になっている映画の宣伝だらけになるんですよ。街中、ビルボード、ビルの看板とかが。で、テレビ・ラジオでの宣伝もあるんですけど、業界紙がありまして。『バラエティ』とか『ハリウッドレポーター』っていう業界の人しか読まない雑誌。そこにガンガンお金をぶち込んで、広告とかインタビューとかを載せるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういうロビー活動的なものも反映されるんですか?

(町山智浩)そう。それでポン・ジュノ監督にインタビューで会った時に言っていたのは「疲れた」っていう(笑)。ものすごい数のインタビューとテレビ出演、ラジオ出演をやって。「とにかくアカデミー賞を取るためにはキャンペーンなんだ!」ってことで、死ぬほどやらされたみたいな話をしていたんですけども。それを『ドライブ・マイ・カー』でアメリカの映画会社が配給してるんですけど。そこはJanus Filmsっていうインディペンデントの会社なんですよ。で、今まで黒澤とか溝口健二の映画とか、非常に昔の名画をレストアして。修復してそれを公開したり、ブルーレイで出したりするっていう会社だったんですけど。

今回、『ドライブ・マイ・カー』っていう新作のために大々的なキャンペーンを行えるような経験も資力もないんじゃないかなっていう。だから、それをどのくらいやるかにもよるんですけどね。だからたぶん日本ではそういうキャンペーンのこととかほとんど報道されていないと思いますんで。「いい映画だから取れる」というのとはちょっと違うということは言っといた方がいいかなと思いました。はい。

だから今回、結構アカデミー賞としてはもう崖っぷちなところがあって。とにかくNetflix作品が相変わらず多いんですね。で、今年ハリウッドで公開された映画で、ちゃんとしっかり劇場で公開したもので黒字になってる映画って、ほとんどないんですよ。『スパイダーマン』ぐらいかな? ほとんどは配信でやっと黒字になるとか、そういう世界で。

(赤江珠緒)でも、その『スパイダーマン』は入ってない?

(町山智浩)『スパイダーマン』は入ってないんですよ。『スパイダーマン』はものすごい黒字になったんで、本当は入れるべきなんですけど、入ってないんでね。今回アカデミー賞、しょうがねえなと思いましたよ。本当にね。で、Netflix作品がすごく多くなったので、Netflixに作品賞を与えると、アメリカに日本で言うところの全興連にあたる、劇場経営者組合っていうのがあって。そこがNetflixとずっと戦ってるわけですよ。配信が主力になったら、劇場は全部滅んじゃうじゃないですか。で、ハリウッドのプロデューサーの人たちは毎年毎年、劇場の人たちに「絶対に劇場を見捨てません!」って言い続けてるんですけど、コロナになっちゃったから……。

(赤江珠緒)そうね。追い打ちでしたね。これはね。

(町山智浩)で、劇場にもう来ないんですよ。特にお年寄りの人はやっぱり危険だから来ないんでね。で、もう今年はとうとうNetflixが作品賞を取っちゃったりするのかな?って言われてるんですね。

(山里亮太)ここでご紹介いただいた『ドント・ルック・アップ』も面白かったですよ!

町山智浩『ドント・ルックアップ』を語る
町山智浩さんが2021年12月14日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ドント・ルックアップ』を紹介していました。

(町山智浩)面白かったでしょう? あれもオールスターキャストでね、本当にハリウッドの王道みたいな映画なのに、配信なんですよ。ねえ。で、今回ね、アカデミー賞作品賞の有力候補の最右翼って言われているのが『パワー・オブ・ザ・ドッグ』っていう映画なんですけど。これが作品、監督、主演男優、助演男優、助演女優、脚色とか、すごい12部門でノミネートっていう。これが取るんじゃないかなって言われてて。これが取ったら、とうとうNetflixの作品賞っていうことで、ハリウッドの映画史が変わるという事態になってますね。

(赤江珠緒)そうなんだ。

Netflix作品が取るとハリウッドの映画史が変わる

(町山智浩)でもね、『スパイダーマン』を入れてない段階でね、もう本当に劇場公開を捨ててるんじゃないかということになっちゃってるんですけどね。それで何で『DUNE』は入ってるんだ?っていうね。よくわかんない。『DUNE』みたいに話が途中で終わっている映画が入っていて……それで、『スパイダーマン』の今回のやつ、見ました?

(山里亮太)いや、そこに行くまでにずっと『スパイダーマン』を振り返っていて。やっと、もうそろそろ見れそうなところまで……。

(町山智浩)それが必要なんですよね。そうしないとね、楽しめないんですけど。

(山里亮太)『アメイジング・スパイダーマン』も見なきゃいけないということで。今、『アメイジング』が始まったところです。

(町山智浩)『アメイジング』はね、途中で打ち切りになっちゃうんですよ。3本作るはずが2本で……あんまりお客さんが入んなかったから打ち切りになっちゃって。アンドリュー・ガーフィールドくんがスパイダーマンの役なんですけども、彼は途中で打ち切られた男なわけですよ。番組打ち切りとかって、悲しいじゃないですか。でも、ちゃんと今回の『ノー・ウェイ・ホーム』では彼に花道を与えているんですよ。素晴らしいんですよ。もう、めちゃくちゃ泣きましたけど。

町山智浩『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を語る
町山智浩さんが2021年12月28日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を紹介していました。

(町山智浩)それで今回、彼は主演男優賞にも入ってますね。『tick, tick… BOOM! : チック、チック…ブーン!』っていう映画でね。

(赤江珠緒)ここでもご紹介いただいた。

町山智浩『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を語る
町山智浩さんが2021年11月23日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でNetflixで配信中のミュージカル映画『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を紹介していました。

(町山智浩)でね、その『パワー・オブ・ザ・ドッグ』って映画はちょっとあんまり報道されてないんで言っておくと、その助演男優賞候補に挙がっている子がコディ・スミット=マクフィーという俳優さんなんですね。で、これはベネディクト・カンバーバッチ扮する非常にその暴力的な……西部劇なんですけども。その暴力的な西部のカウボーイが、このコディ・スミット=マクフィーくんを「なよなよしている」っていじめるんですよ。ところが実は彼はなよなよした外見の奥にすごいものを秘めていて……という。まあ、結構言っちゃってますけども。という話が『パワー・オブ・ザ・ドッグ』という映画なんですが。この彼、見てるとすごい美形でしょう?

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、まあその外見に騙されてはいけないよっていう話ですが。彼は実はすごい難病を抱えてまして。それがね、強直性脊椎炎っていう病気なんですね。これね、背骨のリウマチなんですよ。背骨が固まっちゃうんですよ。で、もう痛くて、普通にベッドに寝ることもできない。そのものすごい痛みを抱えながら演技をしてるんですが。そのせいで病弱に見えるわけですよ。病気のせいで。だからそれ自体を非常に彼は武器として使っているというのがなかなかすごくて。

彼と、『コーダ』で聴覚障害のお父さんを演じて泣かせるトロイ・コッツァーっていう人が助演男優賞で対決することになって。これも、どっちも勝たせたいというね、なかなかすごい対決になっていますが。はい。ということで、アカデミー賞は日本時間の3月28日ですね。ぜひ注目をしていただきたいですね。『ドライブ・マイ・カー』が取るかどうかというところもありますので。脚色賞は取ると思いますね。

(赤江珠緒)そうですか。あと、『ウエスト・サイド・ストーリー』も紹介いただきました。作品賞に入っているか。

(町山智浩)『ウエスト・サイド・ストーリー』、でもリメイクは取ったことがないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

町山智浩『ウエスト・サイド・ストーリー』を語る
町山智浩さんが2022年2月1日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でスティーブン・スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』を紹介していました。

(町山智浩)アカデミー賞ってあんまり取ったことなくて。あと、コメディも取らないんでね。アカデミー賞ってコメディ差別があってね、本当によろしくないと思います。

(赤江珠緒)ああ、そうですか?

リメイク作品とコメディ作品はアカデミー賞で不利

(町山智浩)だからね、『ドント・ルック・アップ』はめちゃくちゃ面白いんですけど、なんかね、コメディは取れないんですよ。そういう差別があって、本当によくないと思いますね。僕は笑える映画の方が絶対難しいと思うんだけどな。そういうところですね。

(赤江珠緒)はい、わかりました。ということで、アカデミー賞かなり裏側までいろいろお話いただきました。町山さん。じゃあもう明日、戻られる?

(町山智浩)そうですよ(笑)。

(山里亮太)よかった。でも帰る前に会えて。

(町山智浩)明日ね、戻ってアメリカに着いたらその日のアメリカ時間の午前2時から『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をウォッチパーティーで中継するっていう仕事ですよ(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。忙しい(笑)。

(町山智浩)もう仕事自体が『怒りのデスロード』になっちゃって(笑)。大変なんですが。

(赤江珠緒)はい。ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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