町山智浩『ウエスト・サイド・ストーリー』を語る

町山智浩『ウエスト・サイド・ストーリー』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年2月1日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でスティーブン・スピルバーグ版『ウエスト・サイド・ストーリー』を紹介していました。

(町山智浩)で、今日は映画を紹介しますが。『ウエスト・サイド・ストーリー』という映画を紹介します。『ウエスト・サイド物語』というね映画が1961年にありまして、アカデミー賞を取りまくった名画の中の名画なんですけれども。それをですね、60年ぐらい経って巨匠スティーブン・スピルバーグ監督が今回、リメイクしたんですよ。それが『ウエスト・サイド・ストーリー』なんですけども。これ、『ウエスト・サイド物語』っていう元の方はご覧になってますか?

(赤江珠緒)見た覚え、ないんですよね。デニムでパーッと足を上げているとかね、ギャング同士がぶつかりあって、抗争しているとか、そういうパーツ、パーツでしか見てないんじゃないかな?

(町山智浩)そうそうそう。あのね、もう本当に知らない人でも何となく知っているっていうのが名作ですよね。で、この映画は元々、ブロードウェイで1957年に作られたミュージカルなんですけど。それを61年に映画化して。これ、アメリカの映画史とそのミュージカル史にとってものすごく重要な作品なんですね。これ以前とこれ以後は全く違う世界になっちゃったんですよ。どっちも。革命的だったんですけども。それをなぜ、スピルバーグ今、もう1回映画化しなきゃならなかったのかというお話をしますが。ざっと説明しますと、『ウエスト・サイド物語』っていうのは元々、原作はシェイクスピアなんです。『ロミオとジュリエット』なんですよ。

それを1960年ぐらい……50年代終わりのニューヨークに置き換えた話なんですけども。これ、ウエスト・サイドっていうのはね、ニューヨークにマンハッタンっていう島があるじゃないですか。それの西の端っこの方なんですけど、そのはね、ヘルズ・キッチンと呼ばれている、青物市場とか、魚とか肉とか、そういった食料品の卸がたくさん集まってるところなんですよ。ずっと上の方から。だからヘルズ・キッチン(地獄の台所)って言われてるんですけど。まあ、はっきり言うと、労働者の人たちの街なんですね。お金持ちじゃなくて。で、そこに2つの不良グループがあって。ひとつはジェッツというグループで、それは基本的に白人ばっかりで。

もうひとつはプエルトリコ系のシャークスっていうグループがあって。それが縄張り争いをしてるんですが……そのジェッツの元リーダーみたいな格のトニーという白人の男の子と、そのシャークスのリーダーの妹のマリアちゃんが初めて会って一目惚れして、恋に落ちて。ところが、その2つのグループは対立しあうんで、大変な悲劇になっていくという話が『ウエスト・サイド物語』で。まあ『ロミオとジュリエット』の現代アメリカ版なんですね。

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(町山智浩)で、この映画がどのぐらい、いろんなものに影響を与えてるかっていうと、皆さんは知ってるかと思うんですけど。マイケル・ジャクソンの歌で『今夜はビート・イット』っていう歌がありますよね? 「Just beat it」っていう歌ですけども。あれは『ウエスト・サイド物語』に捧げられた歌なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)「Beat it」っていうのは『ウエスト・サイド物語』の一番最初に出てくる、最初のセリフなんですよ。でね、それはそのシャークスとジェッツが縄張り争いをしていて、「ここから出ていけ。俺たちの縄張りから出ていけ」って言う時に「Beat it」って言うんですね。「Beat it」っていうのは「出ていけ」っていう意味なんですよ。だからそれを使って、そのマイケル・ジャクソンの歌は不良グループ2つが争ってると「争いをやめろ」っていうような歌になってるんですけど。

(赤江珠緒)ああ、そうか!


(町山智浩)ただ『今夜はビート・イット』っていう日本語タイトルがおかしいんですよ。

(赤江珠緒)なるほど。『今夜はビート・イット』……そうですね(笑)。

(町山智浩)「今夜、帰ってよ! 私、そんな都合のいい女じゃないわよ!」みたいに違う話になっちゃうんでね。「今夜は」ってつくとね(笑)。なにが「今夜」なんだ?っていう、よくわからないんですけども。あとね、石ノ森章太郎さんの漫画でアニメにも何度もなっている『サイボーグ009』っていうのはご存知ですか?

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)あの中でサイボーグ002という戦闘サイボーグがいるんですけど。彼は元々、ニューヨークのウエスト・サイドで不良だったんですよ。

(赤江珠緒)そういう設定? へー!

(町山智浩)そういう設定なんですよ。で、名前もジェットっていうんですよ。ジェッツだから。なのでそのぐらい、いろんな細かいものに影響を与えているのが『ウエスト・サイド物語』なんですね。で、まずねこの『ウエスト・サイド物語』がなぜ、革命的だったかっていう話をしないとならないんですけど。まず、世界最初に近い……世界最初かな? 不良少年ミュージカルだったんですよ。

(赤江珠緒)ああ、それまではあんまりなかったんですか? 不良少年の。

世界最初の不良少年ミュージカル

(町山智浩)あのね、これはたぶんね、もう知らない人が多いと思うんですけど。「不良少年」って1955年以前はほとんど存在しないんですよ。世界で。昔は、子供はすぐに大人になってしまって。その間がないんです。若者っていうもの自体が存在しないんですよ、昔は。

(赤江珠緒)うんうん。「働く前」「働く後」みたいな?

(町山智浩)そうそうそう。学校を出たり……まあ、中学を出たら基本的には働くのが普通だったので。その間がなかったんで、青春とか若者っていう概念自体がほとんどないんですよ。昔は。あるのは金持ちの家だけだったんですよ。普通は働くんですよ。そのまま。それで、そのまま10代で子供を作っちゃうんで。昔はね。それが戦後、第2次大戦後、若者という層が出てきたんで。その人たちは子供でも大人でもないんで、世の中に対してうまく参加できないから、不良化していくんですよ。それが全世界で起こって、大人に対する彼らの反乱というのが起こったんですね。それまでは子供と大人しかなかったから、反乱っていうのはあり得なかったんですよ。それが全世界で同時発生するんですね。若者たちの反乱が。で、日本でその反乱を最初に書いたのが、1955年の石原慎太郎さんの『太陽の季節』なんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)石原慎太郎さん、亡くなりましたけど。あれが、世の中のそれまでのいろんなルールとか……年功序列であったり、礼儀とか、そういったものを全部無視する若者、何もかもをめちゃくちゃにぶち壊していく若者を描いたんですね。

(赤江珠緒)だから日本でもあんなに刺さる人たちが多い作品だったんですね。

(町山智浩)それが『太陽の季節』で、「太陽族」って言われたんですけど。その1955年というのはものすごく、全世界の大きな革命のポイントで。アメリカではそこでロックンロールが生まれるんですよ。ロックンロールっていうのはそれまでのジャズという大人の音楽か、子供の童謡みたいなのしかなかったところに、若者の音楽っていうのをぶち込んだんですね。車でぶっ飛ばして「バカ野郎!」とか「あの子がほしいぜ」っていう歌がそこで初めて生まれて。ロックンロールが。

で、ジェームズ・ディーンが出てきたんですよ。1955年に。で、『理由なき反抗』で、なんかムカムカして、もうイラつくぞ!っていう。「俺は大人でもないし、子供でもないし、なんなんだ!」っていうね。それがまさに『理由なき反抗』という映画になって。で、リーゼントヘアーで出てきたんですね。これ、同時なんです。

(赤江珠緒)そうか! じゃあ、ちょっと余裕が出てきて、そういうのが生まれたと?

(町山智浩)そうそう。間が生まれちゃったんですよ。ある程度のお金はあるんだけれども、社会には参加できない若者という概念が出てきたんですよ。これで全世帯で不良たちが暴れたりして。あと、やっぱりそういった人たちのファッションを『ウエスト・サイド物語』は一種、商品化したんですね。要するにジーパンを履いて、リーゼントで、Tシャツを着てっていうね。ちなみにTシャツっていうのもこの頃、はじめて下着ではなく、ファッションとして着るようになったんですよ。

(山里亮太)ええーっ!

(町山智浩)それまでは、下着だったんですよ。Tシャツは。で、そういう大変な若者革命で、若者文化、若者ファッションっていうのが生まれたのがこの時で。で、それをはじめて大々的に商品化したのが『ウエスト・サイド物語』だったんですね。石原慎太郎さんとジェームズ・ディーンもそうなんですが。ロックンロールもそうですが。全部同時で。で、もうひとつ、すごく大きかったのはラテン系の文化をこのハリウッド映画、アメリカのメインの文化ではじめてドンと出したのが『ウエスト・サイド物語』なんですよ。

で、アメリカは白人と黒人しかほとんどドラマとかには出てこなかったんですね。ところが実際はプエルトリコ系とか、メキシコ系とか、キューバ系の人はアメリカにいっぱい住んでるのに、そういう人は基本的に全然こないんですよ。映画とかに。それまでは。ここで、この『ウエスト・サイド物語』はプエルトリコ系の若者たちの生活を初めてちゃんと描いて。で、彼らの音楽を取り込んだんですよ。

プエルトリコ系の若者たちの生活を描く

(町山智浩)それまでのアメリカ映画の音楽と違う、ラテンミュージックをそのミュージカルの中で取り込んだんですね。だからこの中でサルサとかマンボとか、そういったリズムが出てくるんですよ。で、もうひとつはプエルトリコ系の人たちというのはアメリカのそれまでの映画にはほとんど……黒人、白人、せいぜい出てきて先住民。そんな感じだったわけですけども、ラテン系の人たちも実はいるのでねで。で、プエルトリコっていうのは元々、スペイン領だったんですよ。カリブ海にある島で。

で、それを米西戦争というのでアメリカが無理やりふんだくったんですけど……ふんだくった後、何もしなかったんですよ。プエルトリコに対して。経済的に発展させることもなかったし、彼らをアメリカの国の中に政治的に参加させることもなかったんですよ。だからまあ、ひどい扱いを受けたんですね。経済的にも政治的にも完全にうち置かれて。で、仕事がないからアメリカに来て、出稼ぎをしたり、アメリカで暮らすようになった人たちがいっぱいいて。それがどんどん増えてきて。で、その人たちの文化を描いたのがこの映画『ウエスト・サイド・ストーリー』で。特に、そのウエスト・サイドというところにはいっぱい、そういう人たちが住んでたんですよ。今も住んでますけど。で、その人たちはこの歌……『America』という歌が今、後ろでかかってますけど。

(町山智浩)「アメリカに侵略されて、それでアメリカで暮らしているんだけれども、ものすごい差別の中で大変だ」ったことを歌ってるんですね。

(赤江珠緒)すごい朗らかに歌っているイメージですけど、そういうことを?

(町山智浩)これは男の人たちと女の人たちが掛け合いをしてるんですけど。男の人たちは「こんな差別ばっかりで。一生懸命働いてなにもいいことがないから、プエルトリコに帰ろうぜ」って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、イメージが全然違っちゃった。そうですか!

(町山智浩)そう。全然違うんです。それでこれ、女性の方は「でも、アメリカにはチャンスがあるんだ。私はアメリカにいて、一生懸命頑張ってチャンスを掴みたい」って歌ってるんですよ。で、男と女のバトルの歌なんですね、これは。で、この『America』という歌で「私、アメリカで頑張るわ」って歌ってる女優さんがリタ・モレノさんっていう人なんですけども。この人は初めてハリウッド映画で主役級の役をやったプエルトリコ系の女性なんですよ。で、これでアカデミー助演女優賞を取りまして、プエルトリコ系女性で初めての受賞となりましたね。これもハリウッドでは画期的だったんですよ。アカデミー賞っていうのは取るのは基本的に白人だったから。それでもすごく画期的で。プエルトリコ系の人を実際に主役級で出すってこと自体がもう、画期的だったので。

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)もう本当、あらゆる意味で画期的な映画がこの『ウエスト・サイド物語』なんですね。

(赤江珠緒)そうなると「なぜ今?」っていうね。

(町山智浩)そう。そこにポイントがあって。これね、ジェッツというのはプレトルコ系の人たちをいじめている不良集団の白人たちなんですよ。ところがその彼らもただの白人ではないんですよ。お坊ちゃんじゃないんですよ。貧乏なんです。で、今かかってる曲が『Officer Krupke』っていう曲なんですけども。

(町山智浩)これね、白人の男の子たちが警察に捕まって。警察官に「お前ら、なんでこんな悪いことばっかりして、グレて暴力ばっかりふるっているんだ?」って言われて、言い訳をする歌なんですね。これは「貧乏だし、一生懸命働いても何もいいことないし。家はむちゃうちゃだし……」っていうことを愚痴っている歌なんですけども。彼らは白人だけれども、ポーランド系なんですよ。ポーランド系っていうのは、白人の中で差別されてるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、白人の中でもマイノリティーなんだ。

白人の中で差別される側のポーランド系

(町山智浩)マイノリティーだし、労働者階級の人が多かったんですね。で、その1950年代にはアメリカは経済的にものすごい発展するんですけれども。その中で、やっぱり教育のない人たちは置いてきぼりにされちゃってるんですよ。白人労働者で、その経済的な発展から置いてきぼりにされた白人たちが、そのプエルトリコ系に対して暴力をふるうっていう話なんですよ。『ウエスト・サイド・ストーリー』は。だから今、作ることにしたんですよ。スピルバーグは。「今も変わってないじゃないか」ってことなんです。特にそのトランプ政権になってから、白人労働者の人たちがネオナチみたいなことをしてね。黒人に対する暴力をふったりしている状況があるので、スピルバーグは「60年前にこの映画で描かれた分断というのが現在、どこまで解消されているのか? だから、この映画を作ろうとしたんだ」ということをインタビューで答えてますね。

(赤江珠緒)ああ、そういうことですか。

(町山智浩)これね、警察さんのクラプキっていうのもポーランド系なんですけれども。このハリウッド映画で画期的だったのは「ポーランド系という白人たちがいて、労働者として苦労しているんだ」ってことを言ったのも初めてなんですよ。ハリウッド映画では。この頃ね、『欲望という名の電車』っていう映画の中でコワルスキーというキャラクターが出てきて。彼もポーランド系なんですけども。ポーランド系という人がいて。

白人っていうのは全部白人で、アメリカ白人はひとつというわけではなくて、アイルランド系がいて、イタリア系がいて、ポーランド系がいて、チェコ系がいて、ロシア系がいて……っていう。それは、なかったことにされていたんですよ。ハリウッド映画では。でも、そうじゃなくて。それぞれにあって、それぞれに差別があって、ということを初めて描くようになったんですね。ハリウッドは。これは、画期的だったんですよ。そういう点で。

で、そこまで徹底的にリアルにやるってことで、それまでのハリウッドミュージカルっていうのは全部、ハリウッドのスタジオで撮っていたんですよ。撮影するのをね。たとえば、『パリのアメリカ人』っていう映画はパリが舞台のように思えるんですけど、ハリウッドのスタジオで撮っていて、パリには行ってないんですよ。ミュージカル映画で。で、『踊るニューヨーク』っていう映画は『踊るニューヨーク』というタイトルにもかかわらず、ニューヨークでロケしてないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなの? ニューヨークに行きそうな感じだけど……そうですか。

(町山智浩)ユニバーサルスタジオにニューヨークのすごいセットがあるので、大抵そこで撮っているんですよ。でも、それじゃダメなんだ。それはきれいきれいな作り物でしかないんだということで、『ウエスト・サイド物語』のロバート・ワイズ監督は本当にニューヨークの下町のウエスト・サイドで撮影するというリアリズムを実現したんですね。本当にもう、荒廃したところ。荒れ果てたニューヨークというものを出したんですけども。それはハリウッド映画はきれいきれいだったんで、非常にこの殺伐とした街の現実というものを見せるっていうのも、すごい画期的だったんですよ。そういう意味で、ものすごく画期的なんですが……「『ウエスト・サイド物語』は完璧な映画じゃないか」って思うんですけど。それに対してスピルバーグは「それでもリメイクする」と思ったのは、まだ完璧じゃない部分があったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それは、プエルトリコ系の人たちを……そのプエルトリコ系のリーダーをジョージ・チャキリスっていうギリシャ系の人が演じてるんですね。『ウエスト・サイド物語』。で、リーダーの妹のヒロインのマリアはナタリー・ウッドというロシア系の人が演じてるんですよ。で、ロシア系で色白いから、プエルトリコ系に見えるように顔を黒く塗っているんですよ。だから、これはダメだと。

要するに、プエルトリコ系の人たちを完全な主役にすることができなかったので、1歩引いちゃったんですね。1961年なんで。だからスピルバーグは今回、本物のラテン系の人たちを配役するということで。マリアちゃん役はレイチェル・ゼグラーさんというコロンビア系の女性、中南米系の女性で。で、ベルナルドというシャークスのリーダーもデビッド・アルバレスっていうラテン系の人を本当にキャスティングしてるんですよ。

で、ま面白いのはアンセル・エルゴート扮するトミーっていう白人の方の、そのロミオの役の人はね、プエルトリコ系の人たちから「あのポーランド野郎がよ」とか言われてるんですけど。このマリアちゃんを演じるレイチェル・ゼグラーちゃんはお父さんがポーランド人なんですけどね(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そうなんだ(笑)。

(町山智浩)そこもまた、おかしいんですけど。で、まだもうひとつ、完璧じゃないっていうところがあって。前の映画では、そのナタリー・ウッドとリチャード・ベイマーっていうロミオとジュリエットの役をやるそのトニーとマリアの役の人たちが、歌が歌えなかったんですよ。で、今回はこの主役のアンセル・エルゴートくんとレイチェル・ゼグラーちゃんは本当に歌えて。今、『Tonight』がかかっているかな?

(町山智浩)これ、本当の彼らの声なんですね。

(赤江珠緒)へー! 声がまた素敵ですね。

本人たちが撮影中に実際に歌う

(町山智浩)これ、また撮影がすごくて。昔のミュージカルっていうのは本人たちが歌ってたとしても、それを先に録音しておいて、それに合わせて口パクをしてるんですね。昔のミュージカルは。でも、これは現場で撮影中に本当に歌ってるのを同録しているんですよ。『レ・ミゼラブル』がその技術を開発したんで、その方式で録ってますね。で、もうひとつすごいのは、前作、1961年版でアカデミー助演女優賞を取ったリタ・モレノさんが今回も出ています。90歳ですよ。

(赤江珠緒)90歳!?

(町山智浩)90歳で『Somewhere』っていう歌を歌うんですよ。で、彼女はプエルトリコ系で初めてアカデミー賞を取っただけじゃなくて、この中ではプエルトリコ系なんだけれども、白人と結婚したという……要するにこのマリアとトニーの元になるような人の役を演じてますね。ここで、歌う『Somewhere』っていう歌はですね、「なんでみんな争いをするのか? いつか、どこかに誰もが争わないような世界が実現するのかしら?」っていう歌なんですよ。

(町山智浩)それを60年前に『ウエスト・サイド物語』でアカデミー賞を取ったリタ・モレノさんに90歳で歌わされてるというね。

(赤江珠緒)これもちょっと配役がいいですね。

(町山智浩)これ、90歳の歌声ですよ。で、彼女がこの歌で願うのは、「いつか、どこかに民族や人種やそういうのを超えた人たちの平和な世界が来るのかしら?」っていう歌なんですね。というね、まあぜひ2本、『ウエスト・サイド物語』オリジナルの1961年版と、今回の『ウエスト・サイド・ストーリー』スピルバーグ版はぜひ両方を見て、比べていただきたいなと思いますね。

(赤江珠緒)町山さんは改めてこのリメイク版、ご覧になってどうだったんですか?

(町山智浩)これはね、難しいですね。どっちがいいかね。曲の順番とか入れ違ってるんでね。どっちが効果的かっていうのもね、本当に何度も見て比べるといいと思いますね。

(赤江珠緒)なるほど。わかりました。『ウエスト・サイド・ストーリー』は日本では2月11日からの公開です。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

『ウエスト・サイド・ストーリー』予告編

<書き起こしおわり>

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