映画評論家の町山智浩さんが、日本であまり知られていない、超スゴい女性たちを紹介する本『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』を出版。TBSラジオ『たまむすび』でその中から3人の女性を紹介していました。
(町山智浩)大変ですよ。STAP細胞の話、いまアメリカでも報道されてますね。
(山里亮太)こっちでもいま、結構動いてますよ。
(赤江珠緒)理化学研究所、会見が行われて。
(町山智浩)そう。理研の。びっくりですよね。
(赤江珠緒)小保方さんも反論されたりしてね。
(町山智浩)そう。STAP細胞はどこ行ったかわかんなくなってね。インド洋沖で捜索中だって・・・
(山里亮太)混ざってる、混ざってる!それ、飛行機!
(町山智浩)それで見つけたと思ったら、わかめちゃんだったって。リケンのわかめちゃんだって。
(山里亮太)(笑)。わかめスープのリケンね。
(町山智浩)そう。でも理研ってわかめちゃん作った会社ですよ。
(山里亮太)えっ?わかめちゃんって、あのわかめちゃん?
(町山智浩)理研っていうのはもともと、理化学研究所っつって。日本で大正時代に設立された化学研究所なんですけども。そこから分裂した会社。そこから会社が興て、そこがわかめちゃんを作ったんですね。
(山里亮太)えっ?『リケンのわかめスープ♪』?
(町山智浩)そうですよ!なんで宣伝してるんですか、こんなところで(笑)。理研っていうのはものすごく日本では伝統のある、戦前から続いている化学研究所で。あの、ビタミンってあるじゃないですか。ビタミンを世界で最初に発見したっていわれてるんですよ。この研究所が。
(山里亮太)権威がある研究所なんですよ。
(町山智浩)もともと、要するに脚気とかになる原因っていうのはビタミンB1の不足なんですけど。それを結構命がけで人体実験したりして発見してるんですね。で、ビタミンAってあるじゃないですか。あれを最初に抽出して商品化したのが理研で。そのために会社を作ってるんですよ。理研って。そういうところなんですよ。あの、今回の事件とか、わかめちゃんでしか知らない人も多いと思いますけど。世界的な化学研究所なんですからね。理研っていうのは。
(赤江珠緒)そうですね。まあ、モメてますけどね。STAP細胞でね。
(町山智浩)大変なことになってますけどね。はい。で、あれは要するに化学者っていうのは、女性の化学者が少ないってことで話題にすごくなっちゃって。すごく歪んだ形でね、そこばっかり取り上げられちゃったんですけど。今回ね、実はそういう話をしようと思ってですね。本、出したんですよ。僕。
(赤江珠緒)ああ、そうそう。新刊本ね。出されました。『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』。
(町山智浩)はい。という本を出しまして。これ、ananっていう、僕にすごい似合わない雑誌で。僕が『アンアン』っていうと、イヤらしい感じになっちゃいますね。ちょっとね(笑)。
(赤江・山里)(笑)
(山里亮太)そういう声を出してるみたいな。
(町山智浩)『アン、アーン』みたいな(笑)、感じがしますけど。そうじゃない。
(赤江珠緒)やめなさい!出させてもらっている雑誌を(笑)。やめなさい!
(町山智浩)(笑)。で、それにずっと連載していたコラムをまとめたんですけど。赤江さんに帯、書いてもらいました。
(赤江珠緒)そうそうそう。私、帯書かせていただきました。
(町山智浩)ありがとうございます。本当に。
(赤江珠緒)とんでもない。もうね、これ、すっごい女の人ばっかり出てきますよ。アメリカの女の人、やっぱりすごい人が。日本にもすごい女性、いっぱいいますけど。やっぱりまた人数も多いし、もうね、スケールでっかいというか。
(山里亮太)この人がこれの元だったの?とか、いっぱいありますね。
(町山智浩)そうそう。だからね、これ連載している間、アメリカでその時その時話題になった人を取り上げてたんですね。だから、ものすごく有名なあの人がいないじゃないか!みたいなのはあるんですけど。いちばん有名なヒラリー・クリントンさんが入ってなかったりするんですけど。その時に、いちばんニュースで取り上げてる人をね、毎週取り上げてったんでそうなったんですけど。でね、さっきの化学者っていうことで言うとね、携帯電話とかデジタル通信ってありますよね?普通の。あれって、傍受したりしにくい理由っていうのがあってですね。警察無線とかもそうですけども。あれって周波数がコロコロ変わるんですよ。
(赤江・山里)へー。
(町山智浩)周波数が定期的に変わっていくから、キャッチできないようになっているらしいんですね。そのシステム、要するにデジタル通信とか、無線LANとかのシステムを発明した人っていうのは、セクシー女優なんですよ。
(赤江・山里)えっ!?
(山里亮太)それ、化学者の方とかじゃないんですか?
(町山智浩)化学者じゃないんですよ、実は。携帯電話とか、そういうデジタル通信とかに使われているシステム、周波数ホッピングっていう理論なんですけど。それを発明したのは、世界最初のセクシー女優なんですよ。実は。
(山里亮太)ええっ!?
ヘディ・ラマール
(町山智浩)あのね、ヘディ・ラマールっていう女優さんで。もともとこの人はオーストリアの出身なんですけども。1933年。すごい昔ですね。に、出演した『春の調べ』っていう映画がありまして。そこでヌードとエッチシーンを演じて、それが世界最初のヌードとエッチシーンだったらしいんですよ。
(赤江珠緒)まあ、キレイな方ですよね。
(山里亮太)写真、いま手元にありますけども。
(赤江珠緒)いろっぽい。
(町山智浩)そうなんですよ。あんまりキレイなんで、結婚した最初の旦那がですね、映画とか出さなかったらしいんですよね。その後。『うちの女房、他のやつに見せたくない』っつって。ただ、その後アメリカに脱出したんですね。っていうのは、ヨーロッパがナチス・ドイツによって支配されてしまったんで。で、彼女はユダヤ系だったんで、殺されちゃうんで。アメリカの方に脱出してきたんですけども。で、アメリカに来て、ハリウッドで女優とかやってたんですけども、この人、実は趣味が発明なんですよ。ヘディ・ラマールっていう人は。
(山里亮太)へー。
(町山智浩)で、発明してるうちにですね、要するにナチとアメリカは戦っているわけですね。それでナチがアメリカとか連合軍の無線を傍受しちゃうわけですよ。それで無線を傍受して、船とかの行き先を見つけて、潜水艦で撃沈されちゃうわけですね。連合軍の船が。それを防ぐために、無線を傍受されないシステムは作れないか?っていって、このヘディ・ラマールさんが周波数を定期的にコロコロ変えていくシステムを発明したらしいんですよ。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)すごいんですよ。で、それを特許を取った後、アメリカ軍に渡しちゃったんですよ。全権利を。
(山里亮太)売ったとかじゃなくてですか?
(町山智浩)売ったとかじゃなくて。要するに、戦ってほしいから。ナチと。彼女自身、ユダヤ人だから、ぜったいにアメリカに勝ってほしいってことでもって、アメリカ軍に渡しちゃっているわけですよ。その権利を。だからその後、その理論は無線電話とかありとあらゆるものに使われるようになったんですけど、彼女は一銭も得てないんです。それで。
(山里亮太)えーっ!?あ、そっか。取ってないんだ。
(町山智浩)取ってないですよ。もう、取っていたら億万長者だったんですけどね。実はこの人は、世界最初のセクシー女優だったんです。
(赤江珠緒)すごい!ちょっと分野がぜんぜん違って。多才な方ですね。
(町山智浩)ぜんぜん違うんですよ。こういうのもね、驚くんですけど。あとね、コンピューター。いまの巨大コンピューター、スーパーコンピューターとか、いまのコンピューターのシステムを作った人も女の人なんですよね。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)これね、僕ね、スーパーコンピューターっていうのを見に行ったことがあって。バークレー大学っていうすごい巨大な大学があるんですけど。そこがスーパーコンピューターを持っているんですね。で、そこを見に行ったら、スーパーコンピューターっていうのはまあ、電話ボックスぐらいのコンピューターがズラーッと何百個も並べてある感じなんですよ。で、ものすごく冷却してあるんですけども。そこに行ったらですね、おばあさんの顔がコンピューターの表面に書かれているんですよ。メガネかけた。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)それで、『誰これ?』って聞いたら、『この人はグレース・ホッパーと言って、コンピューターの母なんだ』と教えてくれたんですね。で、いまのコンピューターはこの人が基礎を作ったって言われてるんですよ。グレース・ホッパーっていう人が。で、結構みんな知らないんですよね。僕も知らなかったし。
(赤江珠緒)こんなに使っているのにね。
コンピューターの母 グレース・ホッパー
(町山智浩)そう。こんなに使っているのに。特にこの人が決定的だったのは、コンピューターにプログラミングする時に、いま英語でプログラミングするわけですけど。それまでは機械語しか、コンピューター読めなかったんですね。で、人間の言葉、英語をコンピューターでプログラムできるようにしたのがこの人なんですね。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)それとね、もうひとつはね、『バグ』って言うでしょ。要するにコンピューターのプログラムミスをバグっていうんですけど、それのこの人が初めて名づけたんですね。ホッパーさんっていう、このおばさんが。で、この人が世界で最初に見つけたバグっていうのが、アメリカの国立スミソニアン博物館に保存されてるんですよ。
(赤江・山里)えっ!?
(山里亮太)これのバグ?データのミスとか?
(町山智浩)これね、いちばん最初のバグは本当に虫だったんですね。
(赤江珠緒)えっ?虫が入り込んじゃったってことですか?
(町山智浩)そう。コンピューターが動かなくなったんで調べてみたら、蛾がはさまってたんですって。回路の中に。で、それを取って、セロハンテープで紙に貼ったのがいまも保存されてて。それが世界最初のバグなんですよ。虫なんですよ。
(山里亮太)由来は、それが最初に本当に虫だったから『バグ』になったんですか?
(町山智浩)本当に虫だったかららしいんですよ(笑)。
(赤江珠緒)データプログラムのミスをバグと。
(町山智浩)そう。バグが入ってる。どこかに入ってるっていうのは、最初に虫が入ってたっていうことからついたらしいんですね。
(赤江・山里)へー!
(赤江珠緒)グレース・ホッパーさん、なんか軍服みたいなのをお召しの写真が載っかってますね。
(町山智浩)本当にね、こんなおばちゃんですけど。写真を見ると。この人がすごいのは、コンピューターをアメリカ政府が国家の威信をかけて開発してるっていう時に、彼女はすごく優秀だったのに、チームのリーダーにしてもらえなかったんですよ。ハーバード大学なのに。『女だから』っていう理由で。で、彼女はいちばん能力があったのに、リーダーシップを取らせてもらえなかったんで。大学側が。で、彼女はもう酒に溺れてですね、警察とモメてですね、自殺未遂までしてるんですよ。
(赤江・山里)ええっ!?
(町山智浩)だからそれぐらい女性差別っていうのは、特に科学の世界ではキツかったみたいですね。当時は。で、そういうのを乗り越えて、コンピューターをね、現在使えるようなものにしていった人なんで、偉大な人なんですよね。
(赤江珠緒)いや、本当。この『やりたいことがあるなら、くよくよ迷わず実行しなさい。やっていいかどうか、許しを得るよりは、やっちゃってから許してもらった方が簡単なんだから』って。名言ですね。
(町山智浩)これ、そうそう。ホッパーさんの残した言葉、これがすごいですよね。とりあえず、やってしまえと。許されてないからできないとか言ってる。やってしまったら、あとは怒られるだけだけど。やらないでくよくよしてたら、なにも始まらないから。とりあえず、やれと。
(赤江珠緒)それだけ虐げられていたホッパーさんが言うと、重みありますね。
(町山智浩)そう。だからやらせてもらえなかったんですね。好きなコンピューターの研究を。だからとりあえず、先にやっちまえ!と。いうことをね、ホッパーさんが言ってるんですけど。まあ、こういう人をたくさん集めてってるんですよ。
(赤江珠緒)もうね、町山さんがすごい!とかかっこいい!と感動したアメリカの女性たち55人について書いたエッセイ集なんです。
(町山智浩)はい。このホッパーさんのことを書いたのもね、たまたまスーパーコンピューターを見に行ったら顔が書いてあったからっていうね(笑)。
(山里亮太)そこからなんだ。そこから調べて。
(町山智浩)そうなんですよ。だからたまたま行ったから知ったとかね、たまたまその時に事件があったから書いたとか、そういう人が結構多いんですけど。あとね、ゼロックスっていう会社、わかります?
(山里亮太)コピー機でしたっけ?
(町山智浩)そう。コピー機。昔、『コピーして』って言う時、『ゼロックスして』って言っていたこともありましたよね。知らない?
(赤江珠緒)ゼロックスして。でも、ゼロックスっていう言葉は。
(町山智浩)昔はね、『ゼロックスする』っていう言葉があったんです。ゼロックスはコピーの代名詞だったんですよ。だからそれぐらいゼロックスっていう会社はコピーと一緒になってたんですけども。あの、コピーっていま、ほとんど誰も使わないんですよね。
(山里亮太)あ、データでっていうことですか?
(町山智浩)そう。コピーマシーンがあって、みんなコピーするなんて、みんなしなくなってるんですよ。だから、ゼロックスっていう会社自体、やっていけるのかな?って思うじゃないですか。
(山里亮太)あ、そうか。コピー機の最大手だし。
(町山智浩)そう。だからたとえばコダックっていう会社があるんですけども。それ、フィルムを作っていた会社なんですけども。フィルムからデジタル時代にうまく移行できなくて、会社、もうめちゃくちゃになっちゃったんですね。コダックっていうのは。だからゼロックスっていうのはどうなのか?っていうと、ゼロックスは調子いいんですよ。
(山里亮太)えっ?
(町山智浩)ゼロックス、問題ないんです。
(山里亮太)なにかじゃあ、やってるんですか?まだ。
(町山智浩)そうなんですよ。それを、ゼロックスの生き残りっていうのを成功させた人がですね、アーシュラ・バーンズっていうね、アフリカ系の、だから黒人の女性社長なんですよ。
(赤江・山里)へー!
アーシュラ・バーンズ
(町山智浩)この人もすっごい貧しい所から育って。周りみんな、貧乏人で犯罪者ばっかりだったスラム街から一生懸命勉強して、ゼロックスに入ったひとなんですけども。この人はですね、『ゼロックスはコピーマシーンを作らなきゃっていうことにこだわっていたら、絶対に会社は生き残れないわ!』って言って。いろんな企業や役所が持っている書類が大量にあるじゃないですか?昔、全部書類だったじゃないですか。役所や会社にある記録って。それ、大変でしょ?それを全部デジタルに変換する業務っていうのを始めたんですよ!
(赤江・山里)はー。
(赤江珠緒)それは置き場も取らずにコンパクトになりますね。
(町山智浩)そう。それを要するに請け負ってやるから。それと、またテクノロジーを開発したから、そのテクノロジー自体を提供したりして。これ、いま転換期ですから。紙の書類からデジタルデータに全部直すって。それこそ、何十年もかかる作業ですよね。企業とか役所とか。だからこの間、ばっちりなんですよ。ゼロックスは。
(赤江・山里)はー!
(赤江珠緒)すごいですね!
(町山智浩)そう。だからこれ、すごいアイデアですよね。しかも、そういうデータ関係の管理に関してやってるんで、大量のデータからいろんなものを、情報とかをほじくり出すですね、探偵的な作業の請け負いもゼロックスはやってるんですよ。これ、だから法律関係ですよね。扱うのは。訴訟とか。アメリカ、訴訟社会ですから、訴訟とかあった時に裁判所とか弁護士から引き受けて、必要なデータを全部デジタルで引き出すという仕事をやっているんですよ。
(赤江珠緒)『アフリカ系島耕作』っていうね。
(町山智浩)そうなんですよ。
(赤江珠緒)わかりやすいですよね。
(町山智浩)この人、子どもの頃ですね、近くにいる大人でネクタイを締めている人は誰もいなかったって言ってるんですよ。全員犯罪者だったから。
(赤江・山里)えーっ!?
(町山智浩)犯罪者、ネクタイあんまり絞めないですよね(笑)。ヤク中とギャングしかいなくて、それで父親は知らないしって言って。これ、すごいんですよ。これも。子どもの頃から、近所の病院でちっちゃい頃から白衣とか器具を洗ったりして小銭を稼いで一生懸命大学に行ったんですね。
(赤江珠緒)『生まれ育った場所で人は決まらないわ』って。
(山里亮太)言ってるんだ。
(町山智浩)そう。すごいんですよ。この人がまさかゼロックスを救っているとは、みんな知らないと思いますけど。こういう人たちがね、ぞろぞろいるんで。面白いんだけど日本の人たち、あんまり知らないと思って。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)そう。たくさん紹介する本を作りました。
(赤江珠緒)豪快な女性がたくさん出てくる。もう、豪傑ですよ。
(山里亮太)決して、ぜんぜん関わっていない話じゃないものばっかりだし。
(町山智浩)これ、意外とね、読むとあの人がやってたの?みたいな人がどんどん出てくるんでね。面白いと思いますんで、ぜひ読んでいただきたいということで、この『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』。これ、リスナーのみなさんにプレゼント。やってください。
(赤江珠緒)はい。ありがとうございます。今日は町山さんの新刊本、『アメリカのめっちゃスゴい女性たち』を、いまたまむすびをお聞きの10名様にプレゼントです。
(中略)
(赤江珠緒)ぜひぜひね、お手にとって目を通していただけるとうれしいですね。
(町山智浩)はい。かわいい表紙なんで。自分にしては珍しく。
(赤江珠緒)ananですから。町山さん。
(町山智浩)本当に、自分の本とは思えないですね。はい。
(赤江・山里)(笑)
(赤江珠緒)今日もありがとうございました。
(町山智浩)はい、どうもでした。
(山里亮太)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>