町山智浩『ドント・ルックアップ』を語る

町山智浩『ドント・ルックアップ』を語る たまむすび

町山智浩さんが2021年12月14日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ドント・ルックアップ』を紹介していました。

(町山智浩)僕のBS朝日でやっているテレビ番組の取材でえこの間、アカデミー映画博物館というところに行ったんですよ。それは9月30日にオープンした新しいハリウッドの博物館なんですけども。

(赤江珠緒)ロスにあるんですか?

(町山智浩)ロスにあるんです。で、ハリウッド映画のいろんな歴史の……たとえばブルース・リーが『燃えよドラゴン』の時に使った本物のヌンチャクとか。すごいものがいっぱい飾ってあって、すごかったんですけども。ちょっとね、ディカプリオのお腹が飾ってあったんですよ。

(赤江珠緒)どういうこと?

(町山智浩)レオナルド・ディカプリオがアカデミー主演男優賞を受賞した『レヴェナント 蘇えりし者』という映画で彼、熊に食われるんですね。で、クマにお腹をバリバリ食われるんで、お腹のところが偽物になってるんですね。あの映画の中で。で、彼の本物のお腹のところに偽のお腹を貼り付けて撮影してるんで、本人の型を取っているんですよ。お腹から。で、そのお腹が映画の撮影が終わったんで、そこに飾ってあるんですけど。ポテッとお腹が出ているんですよ。

(赤江珠緒)レオ様、そうか。

(町山智浩)レオ様、ねえ。リアルお腹なんでね、毛とかもちゃんと生えていてすごいリアルで。頬ずりしたくなるようなね、レオ様のお腹のコピーがそこにあったんですけども。で、今回紹介する映画はそのレオナルド・ディカプリオが本当にただのおっさんにしか見えない映画なんですよ(笑)。この写真を見ると、このおっさん……本当にリアルな近所のおっさん的な風貌がすごいんですけども。今日、紹介する映画は『ドント・ルック・アップ』という映画。既に日本では劇場公開中で24日からNetflixで配信もされる映画です。で、レオナルド・ディカプリオが演じるのは田舎の方の大学の先生で。あんまりうだつが上がらない天文学者なんですね。

で、それと彼の助手の大学院生のジェニファー・ローレンスちゃんが地球に接近してくる彗星を発見するというSFスペクタクルです。で、そのままのコースだと半年後に地球に激突して、地球人類が滅びてしまうということを田舎の大学の学生と大学教授が発見して。それを世間に知らせて人類を救おうととするという話なんですよ。

で、これはね、俳優がすごいんですよ。オールスターキャストです。アメリカ大統領を演じるのはメリル・ストリープです。で、この事件を報道していくテレビの司会者、アナウンサーはケイト・ブランシェットです。彼女も大女優ですね。で、メリル・ストリープの周りにジョナ・ヒルとか……ジョナ・ヒルはね、レオナルド・ディカプリオの私生活でも相棒みたいな人で。いつも一緒に映画に出てますね。あとティモシー・シャラメ。あの超イケメンの。『DUNE/デューン 砂の惑星』のあの彼も出てるし。あと、大ポップスターのアリアナ・グランデも出てますね。

(山里亮太)すごっ!

(町山智浩)とにかくね、出てくる人はアカデミー賞を受賞した人ばっかりなんですよ。たとえば『ブリッジ・オブ・スパイ』という映画で助演男優賞を受賞したマーク・ライアンスというおじさんはですね、この映画ではアップルのスティーブ・ジョブズのような、アマゾンのCEOのジェフ・ベゾスのような、テスラのCEOのイーロン・マスクのような、つまりそのIT系の超億万長者を全部足して割ったみたいな超億万長者の役でマーク・ライアンスさんは出ていますけども。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)あとね、メリル・ストリープさんはオールヌードです。

(赤江珠緒)なんで? 大統領役なのに?

(町山智浩)大統領なんですけど、ヌードシーンがあるんですよ。すごく、それで見に行く人もいると思いますけど。で、この超オールスターキャスト。ジェニファー・ローレンスもアカデミー賞を取ってるし。レオナルド・ディカプリオも取っているわけですよね。アカデミー賞スター、ハリウッドの超トップスター全員が集まって作った超大作バカ映画なんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? バカ映画?

オールスターキャストのバカ映画

(町山智浩)これ、超下らないバカ映画なんですよ。これ、どうしようもない感じなんですけど。で、レオナルド・ディカプリオは「とにかく地球が滅んでしまうから何とかしてください!」と大統領に会いに行くんですね。ホワイトハウスに。そうするとメリル・ストリープは「えー、まあ、そんな感じでちょっと大変ね」とか言ってて、全然真面目に相手にしてくれないんですよ。「地球に彗星とかがぶつかると、それを使って次の選挙でもしかしたら勝てるかもね?」とか言ってるんですよ。で、全然真剣に地球人類を救おうとしないんですね。

で、「これはしょうがない。じゃあ、マスコミにこれをリークしよう」と思って行くと、誰も信じてくれないんですね。『ニューヨーク・タイムズ』とか行くんですけど、信じてくれない。で、いろんなテレビ局にオファーするんですけど、やっとひとつだけ「テレビに出て話していい」って言ってくれたところが、朝のモーニングショーなんですよ。で、世界に地球の危機を訴えようとするんですけども、そのモーニングショーはいわゆるモーニングショーなんですよ。「皆さん、お元気えすかー?」みたいな感じで。「はい。今日は芸能スキャンダルからでーす」っていう感じなんですよ。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)軽いんですよ。で、そのアリアナ・グランデ扮するアイドルが恋人と別れたとか、そういうのがトップニュースに来ちゃって。地球が滅びるっていうのは大したニュースじゃないんですね。ワイドショーにとって。で、やっと時間が回ってくるんですけども、いわゆるワイドショーのノリで。「あー、天文学者ってどんな仕事なんですかー?」とか、そういう軽いノリで聞いてくるんですよ。またね、その司会者がケイト・ブランシェットなんですけれども。ケイト・ブランシェットに全然見えないぐらいのものすごいメイクと、あとどういうわけか超巨乳になってるんですよ。彼女は。で、パンツが見えそうなエロエロな服で、なぜかそのディカプリオに迫ってくるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)そのテーブルの下でお股のあたりをこの人、触ってくるんですね。「なんなんだ、これ? 地球が滅びるのに……」っていうそんな状況なんですけど。で、またこのディカプリオは田舎から出てきた普通の学校の先生なんで、いきなりテレビで生放送なんで上がっちゃって。オタオタして、「地球が滅びる」っていうことはなかなか言えなくて、なんかドギマギしてるだけなんですね。そうするとまたその司会者のケイト・ブランシェットが「あなた、かわいいー」ってやるんですよ。で、その隣にいた助手のジェニファー・ローレンスちゃんがとうとうブチ切れて、マイクをつかんで。「みんな、聞いてよ!」ってやるんですよ。「もうみんな、真面目に聞いてくれないけども、彗星が落ちてくるのよ! それで地球の人類、死んじゃうのよ。みんな、死ぬのよ!」って叫ぶんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)そうすると、それを聞いた司会者のケイト・ブランシェットは「まあ、ギャーギャー叫んでみっともないわね」ってやるんですよ。

(赤江珠緒)あらー、全然深刻さが伝わらないの?

(町山智浩)そう。で、ネットでも「バカ女がギャーギャー叫んで、しょうがねえな」ってことで、その彼女が叫んでるところがいろんなネットのミームとかになって。YouTubeとかでいじられまくるんですよ。で、そうしてる間に地球滅亡がどんどん近づいていくっていう話ですね。

(山里亮太)うわっ、面白そう!

(町山智浩)でん、監督はこれ、アダム・マッケイという人で、この人は元々はアメリカのお笑い番組の『サタデー・ナイト・ライブ』のコメディ作家なんですよ。ギャグ作家なんですね。で、映画監督になってからも、政治的な実際に起こっていることをお笑いにしてきたんですね。で、『マネー・ショート』という映画ではサブプライムローン危機がありましたけど。不動産の住宅ローンをとても払えない人たちに片っ端から売っちゃったんで、2008年に金融が崩壊したんですけど。アメリカでは。で、日本では「リーマンショック」と言われてますけどね。それが実際にどうして起こったのか?っていうのを完全なお笑いで描いたのが『マネー・ショート』っていう映画だったんですね。

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(町山智浩)で、アダム・マッケイはその後、『バイス』っていう映画では、ブッシュ政権の時。つまり2003年のアメリカ大統領の副大統領、ディック・チェイニーがアメリカをイラク戦争に引きずり込んだ時の状況を完全にお笑いにして、コメディとして映画にしたんですよ。

(赤江珠緒)ええ。紹介してもらいましたね。町山さんにね。

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(町山智浩)はい。非常に厳しい政治状況をお笑いにしていくという作家性の人がこのアダム・マッケイなんですよ。だからこの話、『ドント・ルック・アップ』というのも、お笑いではあるし、SFではあるんですけども。彗星が落ちてくるとかね。でも、これは実際に今、アメリカとか世界中で起こっている現実を描いているんですよ。というのは、「地球が滅んじゃうのよ!」って叫ぶと「バカじゃね?」とか「うぜえ」とか言われるっていうのは本当に起こってることですよね? 特にあのスウェーデンの女子高生のグレタ・トゥーンベリさんが国連で「温暖化によって地球が滅びかけているというのに、よくあなたたちは経済的発展とかについて議論できますね!」って叫んだ時の、そのちょっと怒ったすごい顔がですね、ネットでいじられまくって。「しょうがねえな、この小娘は」みたいなことをめちゃくちゃ書かれたんですよね。アメリカでも日本でも。

でも、それって地球温暖化自体は実際に起こっていることで。もう今現在もアメリカではこの間、すごい竜巻が起きて。今まで、かつてないほどの竜巻起こってものすごく人が死んで。去年はものすごい山火事が起こって。うちの近所ですけども。熱波のせいでね。で、そうかと思うとその後に大寒波が来て、暖かいはずのテキサスで凍死者が続出するというね。

(赤江珠緒)異常気象の被害が出てますもんね。

(町山智浩)完全な異常気象で。日本でもものすごい豪雨とかで人がいっぱい亡くなっている。そんな現状があるにもかかわらず……スウェーデンでも、ものすごい異常気象で山火事が起こったりしてるんですけども。でも誰も、本当に真剣にならないじゃないですか。もう、実際に起こっているのに。で、どんどん悪くなるのにね。誰も真剣にならない。ワイドショーでは相変わらず「誰と誰が別れた」とか、そういう話をやるわけですよ。同じ状況なんですよ。だからこれ、笑ってるけど全然今、起こってることなんですよ。

現実に今、起きていること

(町山智浩)で、彗星がどんどん近づいてくるんですけど。そうするとその彗星を何とかしようっていう大金持ちに出てるんですね。さっき言ったイーロン・マスクとかジェフ・ベゾスみたいなね。で、彼らは今、ロケットを作ってるじゃないですか。で、ロケットに乗って宇宙に行ったりしているじゃないですか。ベゾスとかね、金持ちは。日本の前澤さんとかもそうですけど。大金持ちが宇宙に行くっていうのは流行ってますけど。で、宇宙に行ってその彗星を何とかしようみたいなことをその大金持ちは言うんですけども……「どうもあの彗星にはレアアースがあるらしい。それはどうも30兆ドルぐらいになるらしい」っていうことで、彗星を爆破したりするよりも、それで金儲けをしようって考えるんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)で、アメリカ政府も中国にレアアースとか取られていて悔しい思いをしているから「ここでアメリカは逆転できる!」とか言って、それに乗っちゃって。全然、彗星を撃破しようとしないんですよ。だからそれも今、言ったみたいにイーロン・マスクとか本当に宇宙ロケットを飛ばそうとしてたりするんで、半分本当ですよね? で、どんどんどんどん彗星が近づいてくるんですけど、それがとうとう、目に入る距離に近づいてきちゃうんですね。空を見上げると。それでもね、全然状況は変わらなくて。それでせっかく世間に対して危機を訴えようとしたディカプリオがですね、なぜかワイドショーに出てオドオドしていたせいで「かわいい!」ってことでキャラとして人気者になっちゃうんですよ。

(山里亮太)なるほどな!

(町山智浩)で、彼自身も「本当に危険だ」っていうことを言えなくなっちゃうんですよ。これ、よくあることで。日本でもよくあるんですけども。テレビに滅多に出ない専門家の人が、たとえばコロナがあったり、何かがあったりしてテレビに出る時があるじゃないですか。そうするとその人たちってタレントじゃないですから。テレビ慣れしてないから、それを周りのタレントがいじるし、ネットがいじるでしょう? で、キャラ化していくんですよ。

(赤江珠緒)ああ、ありますね。そういうことね。本当だ。

(町山智浩)よくあることなんですよ。だからこれはだいぶ前ですけど。戦場カメラマンで渡部陽一さんといいう方がいらっしゃいましたね。独特のベストを着て、帽子かぶっているあの人は戦場カメラマンとして世界の戦場の悲惨さを訴えていたんですよ。最初は。ところがテレビを見ている人たちは彼が訴える戦場の悲惨さは関係なくて、彼のしゃべり方が面白いってことでキャラ化していっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)そうだ……。

(町山智浩)で、みんな彼が撮った写真とか、彼がルポしている戦争のことなんか完全に忘れたんですね。あれと同じことがディカプリオに起こっちゃうんですよ。で、ディカプリオがコマーシャルに出たりするんですよ。

(赤江珠緒)そっち? そんな風にまで?

(町山智浩)そっちに行っちゃうんですよ。ちょっとイケてない天文学者がかわいいみたいな感じで人気者になっちゃうんですけど。で、逆にそのグレタ・トゥーンベリさんみたいに危機をちょっとヒステリックに訴えちゃったジェニファー・ローレンスは世間から嫌われて、もう何を言っても誰も彼女の言うことを聞いてくれなくなっちゃうんですよ。これはね、なんか僕もね、ワイドショーに出たことが何回かあるんですよ。芸人さんがいっぱい集まっているね。そこで「ハリウッドにおけるポリティカリー・コレクトの問題か何かを論じてくれ」って言われて出たんですけど。

そこに行くともう完全なアウェーですよね? で、周りはみんなさんですよ。で、僕をいじることしか考えてないんですよ。で、何か真剣に「こういう状況で、こうなんです」って言おうとしても、すぐにそこに突っ込みを入れて面白くしようとしたり、僕の表情であるとか、服装とかしゃべり方とかでなんか、笑いを取ろうとするんですよ。で、結局言おうとしていたことが言えなくなっちゃうんですよ。それはね、本当に日本でもアメリカでも同じなんですよね。

(山里亮太)なるほどな……。

(町山智浩)で、地球にどんどん彗星が近づいていくわけですけれども。これ、タイトルが『ドント・ルック・アップ』っていうタイトルですけど。「空を見上げるな」っていうタイトルなんですね。で、彗星が近づいてきて空を見上げると、彗星が見えるようになるんですよね。こっちに突っ込んでくるのが。そしたら、「それを見上げてもしょうがないから、見上げるな」っていう運動が起こってくるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(山里亮太)「現実から目を背けよう」って?(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。現実から目を背けようって。だからまさに今、本当にそうじゃないですか。もうどれだけ地球の環境がおかしくなっても、みんな何もしないですよね。で、今度はそれに対してジェニファー・ローレンスとかが「いや、ちゃんと見上げようよ」っていう、「ルックアップ(見上げよう)」っていう運動を起こそうとするですね。そうすると、今度は意識の高い若者たちはそれに乗っていくんですよ。あとアーティストとかミュージシャンとかがね。「我々のところに彗星が向かっている! これは危険だ! ちゃんと見上げよう、現実を見よう!」っていう意識の高い人たちがそれをイベント化していって。大コンサートをやって。そこでアリアナ・グランデさんが『Look Up』っていう歌を歌って、みんなが盛り上がって感動して……それで終わっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)あれ? それもなんかおかしな方向に行っちゃってる。ええっ?

(町山智浩)それもよくあることじゃないですか。「アフリカで飢えている子どもたちを救え」ってことでチャリティーコンサートをやったり、いろんなことをするじゃないですか。みんなね。「地球環境問題を考えよう」みたいなことをね。で、「ワーッ!」ってイベントをやって、コンサートをやって、それで終わりっていう。よくあるパターンなんですよ。

(赤江珠緒)本当だな。

(町山智浩)これね、本当にバカバカしいんだけども、これは実際に起こってることなんですよね。

(赤江珠緒)そうですね。バカバカしいけど、ある意味ものすごいリアリティーがあるというかね。

(山里亮太)「今、実際にこんなバカバカしいことが起きているんだ」っていう。

バカバカしいけど、実際に起きていること

(町山智浩)そう。だからこれを見た人は「こんなの、バカじゃねえの?」と思うけど「いや、それは今、起こっていることだから」っていう映画なんですよ。で、この中でまたディカプリオがもう本当に絶妙で。昔、『タイタニック』の大スターですよ? それが、本当にイケてない田舎のおっさんなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)野暮ったい感じの?

(町山智浩)野暮ったい感じで。超リアルでね、これはすごいなと思って。で、やっぱり浮かれちゃうんですよ。本人もスターになって。で、エッチな人が寄ってきたもんだから、ちょっと奥さんも子供もいるんですけど、誘惑に負けちゃってね……そんなこともあったりするんですけども。誰一人、彗星のことを考えていないうちにどんどん近づいてくるっていうね。

(赤江珠緒)これ、じゃあどういう結末になるのかね? 今の話を聞くと。

(山里亮太)ねえ。『アルマゲドン』みたいな感じじゃないだろうね。たぶん。

(町山智浩)『アルマゲドン』パロディなんすけど。これはね、ぜひね、『日本沈没』と比べてもらいたいなと思いますね。

(赤江珠緒)ああ、先週最終回で終わりましたけども。状況としてはそうか。

(町山智浩)そうなんですよ。あれもね、コメディにすればよかったと思いますよ。僕は。「日本が一向に沈没しない」とかね、そこで突っ込みを入れるやつがいたりとか。「結局、沈没なんかしねえじゃねえか。田所、お前、間違ってるじゃねえか!」とかね、いろいろ突っ込みを入れるべきだと思いますよ。あれ、コメディだとしたら、傑作になったんじゃないかと思うんですけどね。インチキくさい外人のモーリー・ロバートソンとかね。

(山里亮太)フハハハハハハハハッ!

(町山智浩)それで「田所教授っていうのはどうも信用できないですね」「どうして信用できないんですか?」「あいつ、貸した金を返さないんですよ」「そのレベルかよ!」みたいなね。そのレベルなのかっていうね。あれ、全部コメディにしたら大傑作になったなって。

(赤江珠緒)逆に町山さんみたいにコメディに見えるぐらいの方がリアリティーがあるっていうことですよね? 現実世界はそういうことなんですよね。コメディじゃないと、だんだんリアリティーが……「あれ? こんなにうまく行くかな? こんなあっさり、落ち着いていられるかな?」みたいなのとかね。

(山里亮太)うまくいかないことがリアルなんだね。

(町山智浩)ねえ。「日本が沈没し始めたけど、途中で止まりました」とかね、それは笑うだろうと思いますけどね(笑)。

(山里亮太)全部、壮大な振りになるからね。

(町山智浩)そう。というね、いろいろととんでもないことがあるので。「これは笑うしかないんじゃない?」っていうね気がしますよ。いろんな、給付金の件とかもそうですけどね。もうこの世はコメディなんで。笑っちゃおう!っていうのが『ドント・ルックアップ』なのでね。

(赤江珠緒)はい。現在公開中で12月24日からはもう早くもNetflixで配信されるということでございます。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした!

『ドント・ルックアップ』予告編

<書き起こしおわり>

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