武田砂鉄と澤田大樹 佐々木宏氏・東京五輪開会式責任者辞任を語る

武田砂鉄と澤田大樹 佐々木宏氏・東京五輪開会式責任者辞任を語る アシタノカレッジ

武田砂鉄さんと澤田大樹さんが2021年3月19日放送のTBSラジオ『アシタノカレッジ』YouTubeアフタートークで東京五輪開会式・閉会式の責任者だった佐々木宏氏が容姿侮蔑発言で辞任をした件について話していました。

(武田砂鉄)さて、本題に行きましょう。

(澤田大樹)また広告の話をしたいんですけども。さっきの東北新社の中島社長は有名な広告のクリエイターさんなんですけども。また別の広告のクリエイターさんが問題になったということでも。これもまた文春なんですけど。オリンピックの組織委員会という、私がよく行く建物があるんですが。

(武田砂鉄)最近はもうTBSよりも組織委員会にばっかり行ってるんじゃないかという噂のね。

(澤田大樹)永田町で先ほど、武田大臣にぶっ放された文春砲なんですけど、今度は晴海にも炸裂して。この晴海というのは組織委員会がある場所なんですけどもね。東京オリンピックの開会式の演出の統括を務めてますクリエイティブディレクターの佐々木宏さんという人がいるんですけども。その人が開会式の演出チームのメンバーに送ったLINEの中で、ある女性タレントをブタにたとえた演出を提案していたことが明らかになったということで。この佐々木さんって何者かということなんですけども、もうテレビをご覧になってる方は結構ご存知だと思うんですが。

今、66歳のクリエイティブディレクター。横文字ですね。1977年に大手広告代理店の電通に入った後にJR東海の「そうだ 京都、行こう。」という有名なキャンペーンで注目されて。あのーコピー自体を書いたのはこの人じゃないんですけども、その統括をしていたっていうことですね。あとはサントリーの缶コーヒーのボスとかで、トミー・リー・ジョーンズが宇宙人になるやつとか。あとはソフトバンクの犬がお父さんになる白戸家のシリーズなども手がけているヒットメーカー。広告界のレジェンドの人です。で、オリンピックについてもリオオリンピックの時の閉会セレモニー時に安倍元総理が土管からマリオの姿で出てきたという。あの演出を考えたメンバーの1人という。

(武田砂鉄)あれはでも、森喜朗さんの本を読むと「実はあれを仕掛けたのは俺なんだ」みたいなことが書いてあって。でも、それはみんなで連帯して考えたっていうことで。

(澤田大樹)調べてみると他の人もいて。だからチームだなのかなという解釈が一応……。で、私もこの人の授業を受けたことがあって。学生時代、広告批評という雑誌の広告学校に通っていたんですけど。この人が何回かの講座のうちの1回、講師として来て、お話をしてましたけど。「こんな仕事したよ」とか。

(武田砂鉄)その授業で記憶に残ってること、あります?

(澤田大樹)「こんなことをした」っていうことぐらいでしたね。

(武田砂鉄)そんな授業じゃないでしょう?(笑)。まあ、いろんな人の授業を受けたうちの1人だったという。

(澤田大樹)で、この女性タレントをブタにたとえた提案に対して、そのクリエイティブチームのメンバーからは、ある女性メンバーは「容姿のことをそのようにたとえるのが気分良くないです」という。当たり前ですね。女性だけではなく、男性メンバーからも「目眩がするほどヤバい」と批判され、その当時は謝ったということですね。で、この文春の記事が出ると、組織委員会は早速調査に乗り出してまして。佐々木さんと電話会談した橋本聖子さんは「佐々木さんから辞意を表明された」ということで。この佐々木さん、深夜に謝罪文を発表しまして。

(武田砂鉄)結構急展開でしたよね。

(澤田大樹)この謝罪文というのが結構な代物なんですよね

(武田砂鉄)私も通読いたしましたがね。

(澤田大樹)誤字が残っていたりとか。

佐々木宏氏の謝罪文

(武田砂鉄)そうですね。やっぱり、こういった文章を発表したら、たくさんの人が読むわけだから。もちろんご自分で書いて、その後にやはりきちっと文章をチェックしていく必要があったんでしょうけども。

(澤田大樹)そうですね。推敲をする必要はたぶんあると思うんですけど。書きっぱなしっぽいところがあって。文章として成り立っていない……私も日本語、得意じゃないんですけど。「これはどうなんだ? それ、チェックしないで出しちゃって大丈夫なんですか?」っていうのを思わざるを得ない感じがしましたね。で、どういうことを言っていたかっていうと、「私のアイデアおよび発言内容に非常に不適切な表現がありました。LINE上でスタッフから非常に怒られ、私もその場で大変恥ずかしながら、スタッフからの率直な直言で目が覚めました。メンバー全員にLINE上で謝り、撤回しました。気づかせてくれたことについても礼を言ったつもりです。この女性タレントに対して心からお詫びします」と述べていました。

(武田砂鉄)この文章がだから、いろんなサイトにも載ってると思うので。ぜひ、読んでいただきたいなと思うんですけれども。文章を書き終わった後に「追記」っていうのがあって。「実はあの件なんだけど、こうなんですよ」っていう。「文春、全部読みましたけどちょっと一部、違っているようなところもあるんですよね。でもまあこれから、女性のメンバーも増やしていきたいと思ってるんで……」みたいな。なんか、一応最初にご自身は「反省した」という文章を書いてるんだけども。徐々に読み進めていくと、「なんだか大変なことになっちゃってさ……」っていうような。「えっ? あなたのことだよ?」って思うような文章になっていて。

(澤田大樹)本文よりも追記の方が長いんですよ。

(武田砂鉄)そうそう。でも、そのなぐり書きの感じから「ああ、この人は本当にあんまりいろんな方と建設的に意見を積み上げてきたタイプというよりも、かなり『これ! これ!』っていう風に決めてこられた方なんだろうな」っていうのが伝わってくる文章でしたね。

(澤田大樹)たしかに。

(澤田大樹)で、橋本会長は昨日、木曜日に緊急会見を行いまして。「容姿に対して侮辱するような発言というものは絶対にあってはならない。後任人事を早急に進め、大会実施に影響のないよう、会長としても責任をもって取り組んでまいりたい」と。

(武田砂鉄)これはもう、さすがにね、これに関しては橋本さんには同情というか。ご自身が会長になる前の話で。

(澤田大樹)しかも、この佐々木さんという人を決めた時にも別にいなかったわけだし。

(武田砂鉄)そして、まあ7月にやるっていうことであれば、そこに限られた時間でね。ただでさえ、森さんの2月の1ヶ月でいろんなものが遅れている。そしてまたこの3月の後半にこういったものが出てきたってなると……ねえ。まあ、橋本さんにはちょっと酷だね。さすがにね。

(澤田大樹)ちょっとかわいそうですけどね。で、「意識改革について取り組んでいく」とした上で、「演出チームは男性が大半を占めている。だから今後、女性のバランスも考えていきたい」という風に述べています。で、佐々木さんのさっきの発言でちょっと気になったのは、これはインターネット上に出ているので見てほしいんですけど。「大失言が出て、その女性タレントに伝わる時が来たら、責任をとって辞表を出すべきと考えて来ました」という……。

(武田砂鉄)気になりますね。

(澤田大樹)気になりますね。これ、会見でも質問が出ていて。「今回、報じられなかったらこれ、辞める気なかったじゃないの?」っていう。そう思いますよね。こういう書き方をされると。で、記者からも「辞任じゃなくて、これは組織委員会としては解任にすべきなんじゃなか?」という質問が出たんだけれども、橋本さんは「仮定の質問については控える」と。

(武田砂鉄)だからこれ、あの記事が出たのが昨日の文春で。それを読むと、3月の上旬からかなり直接的にこの当事者だけに取材をしていたと。つまり、組織委員会の中では「ああ、これは佐々木さんの案件で動いてるぞ」というのがわかっていた。周知の事実だったわけですよね? その時に「なんとかバレなきゃいいな。このまま行ければな……」っていう風に思っていたっていうことがバレてしまいましたね。

(澤田大樹)で、私もこの会見に実は参加しようと思ってたんですが、参加ができなくて。というのは、深夜2時ぐらいにメールが来たんですよ。「こんな会見をやりますよ」と。それで僕、10分以内……遅くとも30分以内にはメールを返していて。そうしたら、会見の1時間前にメールが届きまして。「会場がいっぱいなんで入れません」っていうのが来て。

(武田砂鉄)それはやっぱり、澤田大樹だし。

(澤田大樹)わかんないですよ。「先着順です」とか書いてなくて。だから「締め切りが10時までなので、10時までエントリーしてね。それでいっぱいだったら、リモートになるかもしれない」としか書いてないので。抽選かもしれないですね。

(武田砂鉄)でも、よくそういった、いわゆる官邸での会見の時には「○○社から○人」とかっていうのはありますけども。

(澤田大樹)ああ、今回も1社1人だったと思いますけども。ただ、「先着順」とかそういうことは書いてなかったんで。先着順だったら入れていたかなっていう気もするんですが。

(武田砂鉄)深夜2時に10分以内にエントリーするって……それ、昔のチケットの取り方みたいですよね。

(澤田大樹)でも、私もリモートながら聞けたんですよ。前回はリモートで質問して、社名を読まれないという、なかなかなことがありましたけど。今回は社名も名前を読んでもらえたんですけども。なにを聞いたか?っていうと、「これを組織委員会はいつ、知っていたの?」っていう。

(武田砂鉄)これは重要な問題ですよね。

組織委員会はこの件をいつ知ったのか?

(澤田大樹)これ、元々は去年の3月なんですよね。そのやり取りがあったのは。で、佐々木さんが五輪開会式・閉会式の総合統括に決まったのが去年の12月。で、その12月の段階ですでに組織委員会がこのことを知ってたとしたら、そういう問題発言した人を統括にしてしまっていたっていうことで、組織委員会もかなり問題があるという風に思ったので、それを聞いたんですけども。武藤事務総長によると「取材を受けてるということを知ったのは、ちょっと前。具体的なそのやり取りについての中身を知ったのは記事が出てから」という。つまり、前日に文春のオンラインで出てますから、今週の水曜日に知ったということで。「我々も知らなかったよ」ということを組織委員会の側は言っているという。

(武田砂鉄)まあ、もちろん真実は分かりませんけれど。無理のある感じがしますよね。この開会式をどういう風に成功させるか?っていうのはオリンピックをやる上では本当に一大プロジェクトなわけで。そのプロジェクトチームがうまく行ってないっていうことは、その前に野村萬斎さんがお辞めになられたりとか。これはもう、僕らレベルでも「あれ? なんかうまく行ってないんだな」ってことが分かっていたわけだから。これは組織委員会の事務総長であれば「今、何が起きてるのか?」っていうのはリサーチするのは当然の話なわけだから。これはなかなか通じない言い分じゃないかなと思いますよね。

(澤田大樹)ちょっと気になったのは武藤さんは「具体的には」っていう言い方をしてたので。何かがあったことは知っていたのかもしれないなっていうのは思いましたが。まあ、更問いができなかったので。なにせ、リモートだったので。ということで、そういうことだと。ただ、この1年で何か変わったのかな?っていう……要するに、去年の3月にこういう発言がされていて。その直後には出てこなかったものが今になって出てきてるっていうので。やっぱりこれ、森さんの一件もそうなんですけど。なかなかこのオリンピックがらみで組織委員会周辺でいろんな不満とか。それこそ、「この人は力を持ってて、本当は意見を通さなきゃいけない人の意見が実は通ってない」とか。たとえばですけどね。

だからそういうようなことが実は澱のようにどんどん溜まっていたのが、森さんの一件があって更に一気に噴出してきたんじゃないかと。で、それに関してもう組織委員会というものがある種、機能をしてないというか。すでにいろんなものがコントロールできなくなっているんじゃないかなっていう風に思わざるをえない状況かなという思いましたね。だから、たとえばそのさっきの佐々木さんの謝罪文の文章がそのまま出ちゃうとか。

(武田砂鉄)そうですね。普通だったら「ちょっとチェックをしないと。文章によってはマズいことにもなるから……」って当然、考えますよね。それはどんなメディアでも、どんな組織でもそうですからね。

(澤田大樹)で、統括として、辞意を表明していたとはいえ、それが一方的に出てしまう。しかも、組織委員会からリリースとしてこの文章は出ているので。そうなると、そこをチェックできていない。で、森さんの時もそうなんですけど。森さんが「何が悪いのか?」っていうことを理解しないまま、彼を会見に臨ませて。それで結局、ああなってしまったわけですよね。ということを考えると、もう「組織委員会は機能をしていない」ということがこの2つの案件でわかってしまった感じはしますよね。

(武田砂鉄)そしてやっぱり、僕もさっきオープニングで話したんだけれど。いろんなテレビのワイドショーなんかのコメンテーターの皆さんの発言を聞いてると、「なんで1年前のことがいまさら、出てくるの?」とか「1年前のことをこんな今頃出して。オリンピック潰したいだけじゃない?」のみたいな意見が出てくるんだけれども。いろんな、何か告発するとか、「実はこういうことがあったんです」っていうことを表に出すまでには、すごい時間がかかるものだし。その本人にとってはすごくいろんな葛藤があるわけで。もうこれ、話は全然違うけれども。たとえば、性暴力被害にあった人なんかが「実はいついつにこういったことされて……」っていう風に言った時、「何でその日にすぐ、言わなかったの?」っていうようなバッシングがいまだに起きることがあるんだけども。なんか、とりわけ今回のような大きな組織に対して「実はこんなことがあって」という風に告発するっていうのは、すごくいろんなプロセスがあってようやく吐き出せて。たぶん中には、まだ言えないことがあるという風に悩んでる人たちだってたくさんいるわけだから。「なんで今頃?」っていうような意見がああやってバンバン出てくるというのは、本当にいかがなものかなという風に思いましたね。

(澤田大樹)ということがありました。ただ、来週にはもう聖火リレーがスタートするんですよね。で、TBSの世論調査と、だいたい6割の国民が「延期」または「中止すべきである」と言っている。組織委員会もなかなかガバナンスができていないということも見えつつある中で、果たして……という。

(武田砂鉄)これ、どうやらその聖火リレーの初日に菅さんは行かないと言ってるらしいんですね。前任の首相だったら120%、行きますよね。

(澤田大樹)それで菅さん、「コロナに打ち勝った証」っていうことを昨日の会見では言わなかったんですよね。「応援していく」っていう言い方で。

「コロナに打ち勝った証」と言わなくなった

(武田砂鉄)結構なトーンダウンで。

(澤田大樹)だからかなり引きましたよね。

(武田砂鉄)だからそこにどういう意味が込められているのか?っていうのはこの後に明かされるのかもしれないですけども。ちょっとその、このタイミングも非常に悪いから。で、来週から聖火リレーしますっていうのが……どうかな? どんなもんかね……。

<書き起こしおわり>

能町みね子 文春・佐々木宏氏報道とMIKIKOさんの五輪開会式演出チーム辞任を語る
能町みね子さんが2021年3月20日放送のTBSラジオ『ナイツのちゃきちゃき大放送』の中で渡辺直美さんへの容姿侮蔑発言などで東京五輪開幕式・閉幕式のクリエイティブ・ディレクターを辞任した佐々木宏氏についてトーク。週刊文春で報じられた振付師・MIKIKOさんの演出チーム辞任にも関与していた疑惑についても話していました。

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