武田砂鉄 持続化給付金問題・サービスデザイン推進協議会を語る

武田砂鉄 持続化給付金問題・サービスデザイン推進協議会を語る ACTION

武田砂鉄さんが2020年6月12日放送のTBSラジオ『ACTION』の中で持続化給付金事業の委託を経産省から受けたサービスデザイン推進協議会について話していました。

(武田砂鉄)国会を今週、見てますと毎週のようにいろんな疑惑が追求されてまして。もう「今週の疑惑」みたいなコーナーと化してますけど。あの例のサービスデザイン推進協議会っていうのがね、持続化給付金事業を経産省から769億円で委託されたっていう例の案件ですけども。それを749億円。20億円引いて電通に再委託してた件というのがね、今週いろいろなところで話題になってましたけれど。協議会の実態がやたらと不透明だってことで話題になってますけど。どんな組織か、なかなか見えないで。それで代表にインタビューをしたら「私は飾りなんで」って言ってもう辞めてしまったというところで。

それでメディアがこのオフィスを訪ねると、誰もいなかった。人気がないんだと。それで、その疑いを晴らすべく9日(火)にこのサービスデザイン推進協議会の事務所の模様というのが公開されまして。広報の担当者は「これまでコロナでリモートワークしてたんだけども、今日から5人、出社してます。本当は9人、いるんですけども、5人いますよ」っていうことで。それで翌日にまた野党議員が訪問すると、また誰もいなくなっていたという。内線電話もなくなっていたし、呼び鈴もなくなってたということで。僕、テレビに映ってた芸能人の本棚を見るっていうのが好きなんですけど。オフィスの映像を凝視するっていう、こういう悪趣味がもうひとつありまして。

(幸坂理加)ああ、そうですか!

(武田砂鉄)そもそも僕、「オフィスに行く」っていうのが割と好きで。出版社に打ち合わせに行く時にも「こっちから武田さんのそばへ行きますよ」って言われても割と出版社に行くんですよ。そうすると、何かその会社の雰囲気っていうのがわかって。その出版社に活力があるのかとか、大人しそうだけどみんなすごい熱気があるなとか、ちょっとここはあんまりテンション落ちてるなとか、なんとなく伝わるところがある。そういうのを自分なりに見るのが割と好きだったりするんですけれども。

この長年の経験から言うとですね、このサービスデザイン推進協議会の事務所は極めて怪しいと思わざるを得ないんですね。で、そんなことを僕がツイートしたら、同じような趣味を持つ方からいろいろな指摘が来まして、非常に勉強になりました。どういうのがあったかというと「ホワイトボードに並べて貼ってある4色の付箋が不自然だ」。なかなか気付きませんよね? 「通路部分のカーペットタイルが全くすり減っていない。変色していない」。それから「ホワイトボードに消し跡や汚れがない」「椅子に使用感がない」「普通に整頓された職場に私はいますが、この写真が嘘くさいことがわかります」という。

(幸坂理加)あら、写真まで?

(武田砂鉄)写真まで。で、この記者が「物が少ないですね」っていう風に広報担当に聞いたら「いや、ペーパーレス化を推進しているので、ほとんど紙を使っていないんですよ」という風に答えてたんですけど。まあ官公庁といえばペーパーレス化がなかなか進んでないのでおなじみなので。そういったところから委託されたら普通、ペーパーっていうのはそれなりにあるんじゃないか?っていう風に邪推したりするんですけど。まあ僕のチェックポイントとしてはですね、デスクトップパソコンの使用してない感っていうのがすごく気になりまして。

協議会オフィスの気になる点

やっぱり使ってると新しい商品でもメモを貼ったりとか、使ってる感というものがどこかに出るものなんですけど。でも、やっぱりそれは映像だけ見てもよくないと思うので。まあ同じような会社を舞台にしてる『東京ラブストーリー』のリメイク版というのを見ましたけれども。まあこれを比べてみるとやっぱりこの協議会の昭和感というのはなかなかすごいものがありまして。


「サービスデザイン」ということですごい先進的な企業なのにものすごい昭和的で。『釣りバカ日誌』の鈴木建設みたいな昭和感で。もう西田敏行さんが遅刻して入ってくるんじゃないか?っていうぐらいの、そういうような昭和感で。だからあれ、コントとか。あるいは『タモリ倶楽部』の空耳アワーに出てくるオフィスとか、ああいう感じのオフィスだったんですね。だからたとえば映画監督にセットの担当が「今日のオフィスの撮影場所、これです!」って言ってあれを出してきたら「お前、映画ナメるなよ!」って言われるようなオフィスだという感じがしたんですけど。

(幸坂理加)フフフ、急ごしらえな感じで。

(武田砂鉄)たとえ、新しいオフィスでもやっぱり汚れてる部分とか使っている感というのがあるはずなので。そのあたりの再現がちょっと弱かったなっていう風に思うんですけど。まあこのサービスデザイン推進協議会っていうのは2016年にできた会社でして。ホームページを見るとこの事業内容についてこうあるんですね。「経済のサービス化、デジタル化が急速に進む経済社会において様々なサービス産業のデザインの付加価値を高め、より効率的なものとするデジタル化を推進し、地域の新たな成長と発展を創造してまいります」と。まあ、なんのことがよく分かりませんけど。

で、このサービスデザイン推進協議会の定款。いわゆる会社の活動を示したものですね。これがホームページにアップされてるんですけど、この設立時ではあった48条から50条っていうのがなぜか消えてるらしくて。この指摘を受けた業務執行理事を務める平川健司さんという方が「2年以上前の定款変更なので詳細な経緯は覚えていません」っていう風に言ってるんですけど。会社の一番大事な規則を2年前に変えたのを「覚えてません」っていうのはなかなか……その言い訳、なかなか通じないと思うんですけど。

あるいは「この定款のPDFファイルのプロパティーが経産省のものだ」という指摘を受けると、「ご疑念の報道が出ている経産省さまが関与したということはありません」ということを書いているんですけど。これでまた僕がホームページをいろいろ調べて、「事業一覧」というのをクリックするとこの持続化給付金事務事業の他にですね、先端的教育用ソフトウェア導入実証事業、女性起業家等支援ネットワーク構築補助金事業、サービス等生産性向上IT導入支援事業。これ全部、経産省関連のお仕事ばかりなんですね。

(幸坂理加)ほう。

(武田砂鉄)で、この持続化給付金っていうのはもう申請開始から1ヶ月半になるんですけど。いまだに給付金が届いていないケースというのは1万件を超えてまして。問い合わせしようにもコールセンターがずっとつながらないっていうのが続いていて。つまりこの業務を受託してるサービスデザイン推進協議会の運営能力がないということでもあると思うんですけれど。しかもこの信用の根拠にもなりうる決算公告すらを出していない。それなのに経産省は確認しないで契約をしていた。

結果的にこの給付金事業、再再再再委託まで行ってるんですよね。まあRADWIMPSのね、『前前前世』っていうのがありましたけども。「再再再再委託」ですからね。なかなかRADWIMPSも曲にしづらいと思うんですけど。つまり「契約が怪しい」っていうだけじゃなくて、実力がある種、不足してるっていうことなんだから、いずれにせよ精査されなきゃいけないと思うんですよね。

それで今週の文春で、この経産省の中小企業庁の前田長官という方がですね、アメリカのテキサスにある「前田ハウス」と命名した部屋でパーティーをやってたと。それでここにサービスデザイン推進協議会の役員も参加してたという。で、この文春に前田ハウスのチラシっていうのが出てるんですけど。「雑魚寝宿泊、女子部屋あり。飲み放題、軽食フリー。会場まで徒歩(奇跡のロケーション)」って書いてあって。これ、大学のサークルの夏合宿ですかね?

それで毎晩パーティーをしてたけども、「関係者の意見交換をそこでやっていました」って言うんだけど……どんなものかな?って思いますよね。で、これを野党議員がその給付金に関する書類を入手するとですね、全部真っ黒で出てきた。給付金決定通知の体制がわかる書類だとか、給付金の振込までの流れを示したものが真っ黒で出てきた。それで経産大臣は「努力をしてます」って言うんですけど。ねえ。全く全貌がを見えませんよねって話で。

それなのに来週の17日で国会が終わる。会期を延長しない。このコロナの間に本当に大変な思いをしている人がたくさんいるんだけども。というか、もう漏れなく大変な思いをみんなしているんですけども。その中で異例のお金を投じていて、それについての説明が足りないというのはいかがなものかと思うんですけどね。それで前もここで話しましたけど、安倍さんがその記者会見を開くたびに「皆さん、歯を食いしばって」っていう風に連呼するわけですよね。

「皆さん、歯を食いしばって」と連呼

本当にその歯を食いしばりすぎて、みんな奥歯から血が出ていて。それを押さえるためのアベノマスクじゃないか?って言われているぐらい僕たち、歯を食いしばってるわけですけど。やっぱりそこらへんの詳細をきっちりと語ってくれないと、僕たちは前に進めない感じがあるんですけれども。

(幸坂理加)そうですね。

(武田砂鉄)こういう疑惑が積み重なって、少し前の疑惑っていうのを有耶無耶にして。そのまま時間切れにしようっていう作戦がちょっとあまりにも目立つような気がするんですよね。あらゆるメディアでいろんなね、必死に生活を守るとしている様子って映るじゃないですか。ラジオでもね、何回もいろんな飲食店の方に話を聞いたりしましたけれども。そういうのをたくさん僕たちは目にして、耳にしてきている中で……そうやって席を減らしてオープンしているお店とかもたくさんある。そういうお店と、あのスカスカのオフィスっていうのはね、同じソーシャルディスタンスでも非常に対照的だなっていう思いましたね。

まあ、このまま素通りしちゃいけない案件だと思うんですけど。来週、そのまま国会を閉じるっていうんで。でも引き続き追い続けていかなきゃいけないなという風に思いましたね。全く……。

(幸坂理加)全くです。疑いがいっぱいある。

(武田砂鉄)疑いがどんどん積もって積もって……っていう感じなんで。まあこれを覚えていくっていうことが大事なんでね。

(幸坂理加)そうですね。忘れないようにしていきたいですね。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました