吉田豪 谷隼人を語る

吉田豪 谷隼人を語る アフター6ジャンクション

吉田豪さんが2020年10月5日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。著書『超・人間コク宝』の中から谷隼人さんのインタビューを紹介していました。

(宇多丸)そして、もうお一方、ご紹介をお願いします。

(吉田豪)こちらですね。

(宇多丸)『風雲!たけし城』などバラエティ番組にも多々出演された俳優・谷隼人さん。まあ谷隼人さんともなれば、それはいろいろあるでしょう。

(吉田豪)面白いに決まってるんですけど。ちょうど最近というか、ちょっと前に『伊集院光とらじおと』のゲストで出ていて、めちゃくちゃ面白かったんですね。ちょっと言っちゃいけないような話もしてたんですけど。久しぶりでしたね。ラジオでソープランドの話とかしている人は。

(宇多丸)やっぱり今とは基準がいろいろ違いますからね。

(吉田豪)違う人っていう。で、それが面白かったのでもっと掘り下げたら面白いだろうなっていう。そしたらまあ、とんでもなかったですよね。

(宇多丸)ねえ。ねこのくらいの世代の人たちっていうかさ、その時代のたとえば東映とかを知っている人たちもだんだん、人数が減ってきちゃっているから。聞いておくの、大事ですよね。

(吉田豪)そんな中、今むちゃくちゃ元気だし、記憶もはっきりしているし。

(宇多丸)というか、全然変わんなくないですか?

(吉田豪)変わらないですよ。バリバリ。で、話す話がやっぱりすごいんですよ。だから今では考えられないような時代の話を……だからね、「ちゃんと分かってくれる人が来た!」っていう感じで。

(宇多丸)受け止めてくれる、キャッチしてくれる人が。球を受けてくれる人が来たと。

(吉田豪)「当時の東映は仕方がないですよね」「そうなんだよ!」っていう感じで(笑)。「そういう会社だからさ!」っていう。

(宇多丸)引かずにちゃんとキャッチしてくれる人が来たいっていう。

(吉田豪)いかに洒落にならない会社だったかを当然、僕も何人も話を聞いて知っているんで。「これこれ、こうですよね?」「そうなんだよ!」っていうことで、ヤバい話をいろいろするんですけども。一番分かりやすいヤバいな話ってなんだろうな? 高倉健さんのね……。

(宇多丸)健さんにとにかく心酔されているんですよね。

高倉健の怖いエピソード

(吉田豪)そうなんですよ。健さんの舎弟というか、健さんにかわいがってもらったっていう話をしているんですけど。ただ、いろんな過去の記事とか読むと、怖い話が出てくるんですよね。当時の東映がいかに怖かったかっていうと……「怖い先輩がいた」っていう話をするんですよね。「雪山の中で裸で出されて。その人が刀とか拳銃とかを持ってる人で。後からバンバン撃ったりするんだよ」みたいな。

(宇多丸)もうヤバいとかじゃなくて、もう違法のレベルがちょっと……。

(吉田豪)「そういう話が気になるんですよ」って聞いたら「ああ、それね。それ、高倉健さん」って言われて(笑)。

(宇多丸)ええっ? ちょっとちょっとちょっと……いいんですか、これ? 一応、いまだに神格化されてますよ?

(吉田豪)文字になってますからね。『網走番外地』の撮影でのエピソードですね。

(宇多丸)いや、そうかもしれないけど……。

(吉田豪)「猟銃が好きな人がいて、雪の中で腕立て伏せさせられて、その人が後ろから発砲してたって話なんですけど」っていうのを普通にね。そういうことが文字になる奇跡な本だと思います(笑)。

(宇多丸)まあ、でも当事者ですからね。これはねしょうがないね。当事者が言ってることですからね。我々が言わされてるわけじゃないですから。これは。

(吉田豪)「大変だったんですよ」って言ってましたね。

(宇多丸)フフフ、「大変」って言うか……(笑)。

(吉田豪)「北海道のロケで腕立て伏せさせられて。『この野郎! フルチンで走れ!』って走らされて。小林稔侍さんも走っていましたよ」っていうね。

(宇多丸)なんかその健さん像みたいなのがやっぱり、ねえ。パブリックイメージとはだいぶ違うっていうか。

(吉田豪)そうなんです。いかに作っているかっていう話も。だいぶ中にいた人なんで。

(宇多丸)実はすごいしゃべる人だったとか。

(吉田豪)そうなんですよ。しゃべるんだけど、キャラクターを作るためにも。あと、失言をしないためにも質問された時にわざとずっと待ってから意味ありげなことを言う。谷さんも「お前もこうしなきゃダメだよ」的なことをずっと言われ続けてきたっていう。

(宇多丸)ああ、「お前らはペラペラしゃべりすぎている」っていう。そういう指導があったりとか。でも、たしかにそれはね、こと健さんに関してはね。

(吉田豪)最後まで幻想を作りきりましたもんね。

(宇多丸)それはすごいよね。さすがだけどさ……(笑)。

(吉田豪)「真面目」とされる健さんですら、そうなんだから。そうじゃない人はどうなんだ?っていう話ですよ(笑)。

吉田豪が語る 高倉健の知られざる素顔
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(宇多丸)たしかに(笑)。まあ、それは当時の映画を見ててもね、『不良番長』とか見てれば分かりますけど。どんなにメチャクチャかっていうのはね。

(吉田豪)まあね、「『不良番長』がほぼ実話だった」みたいな話はね、谷隼人さんがさんざんしてますけどね。あれと同じような状態で撮影してたっていう。

(宇多丸)あと、それこそ真樹日佐夫さん関連でもあるんですね?

(吉田豪)梶原一騎先生の弟さんの真樹日佐夫先生原作の『ワル』という映画がありまして。実はそれきっかけで、それで主演を張って看板になって。一応、お客さんも入ったんだけど。1作目、2作目、3作目と3作を作っていて。3作目で結構内部まで入ってちゃんと映画を作ろうとしたら、その3作目でコケたからフリーになるっていう。「責任を取って……」みたいな話なんですけども。『ワル』っていうものすごい不良の主役をやった結果、全国の不良がケンカを売りに来たらしいんですよね。「お前、ワルらしいな? 俺のケンカを買え!」みたいな。そういう恐ろしい時代の中で体を張って生きてきて。

(宇多丸)大変ですよね。ジブさんだって「悪そうなやつはだいたい友達」って言ったら「じゃあ俺、友達じゃねえのかよ?」ってグイグイ来て。そのたびに対応しなくちゃいけなくて大変だったっていう……。

(吉田豪)「キャラクターですよ!」っていう。

(宇多丸)まあキャラクターっていうか、ちゃんとそこは話をすると……みたいなことがあったみたいですよ。

(熊崎風斗)大変(笑)。

(吉田豪)で、実はこれでも、ここではサラッと流している話があるんですよ。実はあの松岡きっこさんと夫婦関係も有名ですけど。その前に1回、結婚されていて。それがいろいろ調べてもサラッと書いてある程度なんですね。で、この取材の時に調べたら、結構大変な出来事が起きていて。本当に放送では言えないレベルの……当時の「報道被害」と言っていいと思うんですよ。その最初の奥さんと結婚して、ゴタゴタというか、それの克明な報道の仕方が明らかに異常というかアウトだったんですね。「奥さんが同性愛に目覚めた」的な記事が出て。

同性愛相手とされる人がインタビューに答えたりとか。で、その後にその奥さんがメンタルを病んで入院された。そしたらそこの病院にまで行って。「ここの病院です」みたいな感じで。ありえない記事を……それで結構なことになって離婚に至るんですけど。その時も谷さんは本当に余計なことを一切言わないで。「全部、私が悪いんです」っていう。今、取材してもそうとしか言わないんです。「全部自分が悪いんだからしょうがない」っていう。

「でも大変だったと思うんですよ。今ならありえないレベルの報道がさんざん行われていたから、相当消耗しただろうなと思ったんですけど」って言ったら、「消耗しました。実はそこから19年ぐらい調子が悪くて。簡単に言うと自律神経失調症みたいになっちゃって。乗り越えられなくて。それを乗り越えたの45歳ぐらいの時で……っていう。

(宇多丸)要はバラエティとかにまた出るようになった時代っていうことですよね。

(吉田豪)全然今まで触れられていなかった大変な過去も実は背負いながら、全然感じさせずにサラッと生きているっていう。

(宇多丸)そうか。しかしね、その80年代いっぱいぐらいまでのワイドショーは……90年代に入ってからもか。もう昔のワイドショーとか芸能レポートって本当に人でなしそのものだよ。

かつてのワイドショー、芸能レポーターのひどさ

(吉田豪)それで今、実はだから忘れられてるエピソードって山ほどありますからね。最近、ある写真週刊誌を批判する当時の本とかを読んでいて。たけしさんのフライデー事件のきっかけの話。あれも忘れられてる部分があるんですけど。当時の恋人、お付き合いされてた相手の通っている専門学校とかまで行って。ちょっと暴力的な状態で……手を押さえたりとかしてケガをさせて。それがきっかけで、みたいに言われているんですが、それだけじゃないんですよね。

その後で、取材を断られたから専門学校でまず呼び出しの放送をかけて。まあ、学校も協力してた時代なんですよ。それでも出てこなかったから、家に乗り込んで。家で「この売春婦!」的なことを大声で叫び、警察を呼ばれて……みたいな。いや、それはトラブルになって当然ですっていう。

(宇多丸)怒って当然っていうね。

(熊崎風斗)ありえない話ですよ。

(宇多丸)いやー、だから本当はそのへんも……だから東映の昔の人たちがひどかったっていうのもあるけど。そっちってもっとね……だって公に通っちゃってる部分だからもっとエグいし。しかもそれを世の中が一応容認しちゃっていたという現実もあったりするから。そのあたりもたぶんこれから、実はその谷さんのそういうのがあったっていうんで。吉田さん的には「実はこういうところもあるな」っていう感じですか? 今後は。たとえばその当時の報道被害っていうか。

(吉田豪)でも相当あると思いますよ。そして、意外とそこが忘れられてるっていう。全く証拠としても残ってない状態というか。当時の記事を掘らないとわからないっていう。

(宇多丸)報道の仕方そのものもね。

(吉田豪)当時はだからそれがそれほどの問題だと思われてないから、語られてないんですよね。

(宇多丸)でもね、よく我々もその話をしてる時に、やっぱりその当時のワイドショーのあれとかさ。コンバットRECのコレクションとかを見ると。いやー、もう本当に最悪だっていう。

(熊崎風斗)「時代だ」っていうことで片付けちゃいけないですね。

(吉田豪)今も「マスコミが……」って批判されているけど、本当にどれだけまともになったんだっていう。

(宇多丸)いや、本当に。本当に。もう全然。少なくとも「あり得ない」ってみんな感覚的に思えるっていうところはね、進歩ですよね。といったあたりで、吉田さんしか引き出せない話の数々がいろいろ出ておりますので。高野政所さんの項にはちょいちょい私もね、出てきますので(笑)。ぜひぜひこれ、読んでみてください。ということで、改めて本の情報を熊崎くんからお願いします。

(熊崎風斗)はい。改めてになりますがコアマガジンから出版されております『超・人間コク宝』。お値段1700円です。今日、紹介してくださったシルクさんとか谷隼人さんをはじめ、レジェンド有名人への濃厚インタビュー集となっております。あまり世間では知られていない強烈な過去のエピソードも掲載しています。

吉田豪 非常階段シルクを語る
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(宇多丸)といったあたりで『超・人間コク宝』、ぜひ読んでみてください。

<書き起こしおわり>

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