吉田豪が語る 高倉健の知られざる素顔

吉田豪が語る 高倉健の知られざる素顔 たまむすび

吉田豪さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。高倉健さんが登場する様々な本の記述から、あまり知られていない健さんの素顔を紹介していました。

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(赤江珠緒)さあ、今日は高倉健さんの特集ということで。

(吉田豪)そうですよ。『スペシャルウィークなんだから岡田斗司夫じゃないのか?』ってすごい言われたんですけど。

(赤江・大吉)(笑)

(吉田豪)どっちが数字持ってると思ってるんですか?(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(博多大吉)どこと並べてるんだ?っていう。まだ、引き続きですか?岡田さんのは。

(吉田豪)まだ続いてますね。大変なレベルで続いてます。

(博多大吉)ああ、本当ですか。僕、ちょっといろいろあっていま、Twitterをね、閉じてるんですよ。じゃあそれ、見るために開けてみましょうか。

(赤江・吉田)(笑)

(吉田豪)ぜひとも。まとめサイトになってますから。僕のところね。

(博多大吉)で、高倉健さん。

(吉田豪)そうなんですよ。今月9日に『永久保存版 高倉健』というね、文春のムックが出たんですけど。健さんの死後、たくさんの追悼本が出て。唯一、高倉プロモーション全面バックアップを受けたオフィシャルな追悼本なんですよ。

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(赤江珠緒)へー!

(吉田豪)まあ、中身もものすごいちゃんとしていて。養女の方がね、闘病について明かしたりとか、ご本人が書いた最後の手記とか。他にも出ている人が長嶋茂雄さんとかね。なんかもう、とにかくすごい人が大量に出ている本なんですよ。

(赤江珠緒)もう表紙も真っ黒に『高倉健』っていうね。

(吉田豪)そこになぜか、僕が紛れ込んで。で、オフィシャル本でどこまで限界に迫れるか?っていう、ちょっと無茶をしたんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(吉田豪)ところが、もう出て結構たったんですけど、反響がぜんぜんないんですよ。明らかにやっぱり読者層からズレてたみたいで(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(吉田豪)たぶん文藝春秋とか読んでいるような方が買っているっぽくって。僕のページ、たぶんまったく引っかからなかったっぽかったので、ちょっとここで紹介させていただきたいと。そういう感じなんですよ。

(赤江珠緒)ああ、ぜひぜひ。

(博多大吉)豪さんはどこにいるんですか?

痛快健さん名語録

(吉田豪)ええと、後ろの方に『痛快健さん名語録』っていうページがありまして。

(博多大吉)ああ、これですね。

(吉田豪)そうです。あの、健さんのいろんな著書ありますけど。著書以外で、僕タレント本コレクターなんで。健さん名義じゃない本に出てくる健さんのエピソードとか、健さんが出てくる対談集とか。からだけ発言とかを抜いてまとめた・・・そこから抜いて、健さんの歴史を語るっていうのだったんですよ。

(赤江珠緒)じゃあ他の方が語っている高倉健さんとかもあるわけですね。

(吉田豪)しかも、ほぼ故人なんですよ。だから、いまの健さんの追悼企画とかじゃあコメント出せないような人たちのコメントだけでまとめているんで。あまり語られない部分が出てるという感じなんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)たとえばですね、これが1965年に出た近藤啓太郎さんの『30秒で一回笑わす本 有名人ただ今喧嘩中』っていう本がありまして。これ、いろんな有名人の夫婦ゲンカのオムニバス本なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(博多大吉)これ、近藤さんっていう方は作家の方ですか。

(吉田豪)そうです。結構な大物。もちろん故人ですね。で、健さんが江利チエミさんと結婚している時に登場してるんですよ。1959年に結婚して、71年に離婚して。これ、65年の本で。いきなり、こういうことを言い出すんですよね。江利チエミさんの愛称『ノニ』って言ったんですけど。『ノニと俺とはこの4年間、本当にケンカしたことがない』って。あの、いきなり企画意図を否定するんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(吉田豪)夫婦ゲンカのことを両者に聞くっていうやつなんですよ。

(博多大吉)『ただ今喧嘩中』ですよね?

(吉田豪)してないんですよ。で、『子どもはいないけど、仲がいい。俺たち夫婦は兄妹のようだ』とのろけてから、『いまのノニに俺はなにもイチャモンをつけることは全くない。その俺に書かせるから、こんなことになるんだ。そうだろう?』って編集サイドに噛み付いたりとかして。

(赤江珠緒)ほー!

(吉田豪)ただ、チエミさんに対してちょっとした不満もあったみたいで。こんなことを言い出すんですよ。『この間はちょっとばかりシャクだった。俺は催眠術には相当自信があった』と。どういうことか?っていうと、忙しそうにしていたチエミさんを自慢の催眠術で寝かせてあげたはずが、すぐに目を覚ましてしまったと。

(赤江珠緒)(笑)

(吉田豪)で、『あれ以来、催眠術の自信を全く失ってしまった』って健さんがヘコみ。で、チエミさんは、『ホホホホ、ごめんあそばして。だってダーリンがあんまり真剣な顔をして。私に催眠術をかけてくださいって言って。術中におちいってあげなければ妻として申し訳ないと思っていたのよ。つい催眠術にかかっているのを忘れちゃったの。ごめんね』って笑い飛ばしていて。

(赤江珠緒)へー!

(吉田豪)で、さらにチエミさんはベビーのことを、『私、本当はほしいんです。だけど、ダーリンが心配してくださるのですから、ダーリンにおまかせいたしますわ』と。で、これを読む限りだと夫婦仲問題なさそうに見えるんですけど。

(赤江珠緒)ものすごく仲良さそうに見えますね。

(吉田豪)『ダーリンは本当に口数が少なすぎるんだもん』っていう発言が危険信号だっていう気もしてくるんですよね。

(博多大吉)いまとなっては。

(吉田豪)そうです。で、健さんと催眠術については、催眠術本も出している丹波哲郎さんが『丹波哲郎の好きなヤツ嫌いなヤツ』っていう99年のキネマ旬報社から出ている本で、次のように書いてるんですよ。これ赤江さんからお願いします。

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(赤江珠緒)はい。『高倉健は、あれで結構ダジャレの名手なんだ。本当に不器用な男であるにもかかわらず、催眠術はよく覚えた。「男の血潮がこだまする」で木曽の山のロケーションの時だった。毎日毎日彼に「催眠術を教えてくれ」とせがまれて、気乗りがしないから「明日な」とかどんどん延ばしていた。だけどとうとう麻雀台まで隠され、高倉健の部屋に5、6人を集めてやむなく教える羽目になった。とりあえず、宿屋の女中をモデルにして催眠術をかけたんだが、面白いようにかかり、女中は勝手に着物を脱いでしまった。

それで、真っ裸になったのはいいのだが、後で着せるのが大変だった。催眠状態の時には体がグニャグニャしてるから、脱ぐのが楽でも着せるのは難しい。それでも、なんとか元のような形にした後で、また催眠術で裸になったことも、この部屋にお茶を持ってきたことも忘れさせて、正気に戻して帰した。ところが、後で番頭が来た。それで、「女中になにかしましたか?」と言うと、部屋の中にいた連中がみな、俺の方を向く。番頭は「ああ、丹波さんですね」と言うのだが、全くバカバカしいと言ったらありゃしない。この旅館には三田佳子もいたのだが、彼女は警戒して絶対に俺の周辺には近寄らなかった』ということで。

(博多大吉)これはなんですか?この文章は。

催眠術を習いたくてしょうがない健さん

(吉田豪)高倉健さんがとにかく催眠術を習いたくてしょうがなかくて。そして、いろんなイタズラをしたくてしょうがなかったと。で、女中さんを脱がしちゃったりとか。そんな悪さばっかりしてて。

(博多大吉)丹波哲郎さんは催眠術の名手だったんですか?

(吉田豪)そうなんですよ。実は、催眠術本を出しているぐらいの、かなりの人なんですよ。で、それが有名だったんで、高倉さんに教えたことを後悔してるんですよ。丹波さん。『なにしろ、高倉健はイタズラばかりして。習ったばかりの催眠術を悪用する。俺はいい加減にしろと言うのだが、全く聞かない。高倉健のやったイタズラにはこういうのがあった。彼の付き人で沢田という俳優がいるのだが、「彼は沢田に、佐久間良子の抱きつかない限りは今夜は眠れない」という催眠術をかけた。それで沢田は佐久間良子の周りをウロウロしてたのだが、佐久間良子にしても気味が悪いから当然のごとく警戒する。だから隙がない。結局どうしたのかと言えば、沢田は仕方がないから、佐久間良子のポスターに向かって突進し、ぶつかって失神してしまった。かわいそうに、彼は大変な出っ歯だった。さぞ痛かったに違いない』とかね。なにやってるんだろう?高倉健っていう話ばっかり出てくるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(吉田豪)漫画みたいなエピソード。タイミングよく宿に佐久間良子のポスター貼ってあったりとか。作り話じゃないか?と思うじゃないですか(笑)。

(博多大吉)そうですね。これ、私芸人としては、これちょっと1回審議ですね。

(吉田豪)(笑)。膨らましている可能性があるっていう。

(博多大吉)これ、だいぶ盛っているんじゃないか?っていうのね、ありますけどね。

(吉田豪)ただでも、相当なイタズラっ子だったのは間違いなくて。由利徹さんの『由利ちゃんの誰にもいうんじゃないぞ』っていう85年の広済堂の本にも、由利さんにエクレアを渡しながら、由利さんを毎晩飲みに誘う俳優がいたから、『これを食わしちゃってください』って言って。睡眠薬入りのエクレアを食わしてつぶした話とか出てて。

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(博多大吉)ほー!

(吉田豪)結構ムチャをする人なんですよ。ただの寡黙で不器用な人じゃないっぽいぞっていうのが伝わってきて。イタズラが大好きな催眠術マスターだったっぽいんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(博多大吉)これはなかなかイメージないですね。イタズラまではまだ許せるかもしれないですけど、この催眠術で・・・

(吉田豪)催眠術でね、人を脱がすっていう(笑)。

(赤江珠緒)ねえ。でも、そこまでかけれたんですね。

(吉田豪)かけれたんですよ。江利チエミさんはかかんなかった(笑)。ただ、やっぱ当時から健さんと言えば地味で生真面目なイメージもあったから、竹中労さんが『スター36人斬り』っていう本で、やっぱこう書いているんですよ。『さて、人斬り専門店の大スター高倉健。「兄さんに恨みはございませんが、渡世の義理でバッサリ死んでもらいましょう」と啖呵を切ったものの、どこから斬りかかればいいやら。非の打ち所がない健兄いである。誠に礼儀正しく、健全な家庭人であり、飲む打つ買うにはとんと縁がなく、勤倹の精神に長けておる。要するに、つまらない人である』っていうね。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)スターをぶった斬るのが仕事のアナーキスト、ケンカ竹中でさえ、どうケンカを売っていいのかわからなくなるぐらいの健全さで。実際に会ったこともあるらしいんですけど。当時健さんと江利チエミの家が火事で焼けて、3ヶ月のホテル住まいで。いまだに新居が完成してない時期にホテルで会ったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)で、竹中さんが『長いですね』と話しかけたところ、健さんから返ってきたんのが一言。『ええ』っていうね。それだけだったっていう(笑)。

(赤江珠緒)話が終わってしまうという。

(吉田豪)そう。竹中さん曰く、『全く嫌になっちまいますな。「ホテル暮らしはもうウンザリですよ。ところで竹中さん、あなたの書くものはいつも面白いですね」なんてことは金輪際言わないのである』と。

(赤江珠緒)うーん。

(吉田豪)ただ、当時の健さん夫婦の微妙な距離感について気づいていたみたいで。『ホテルニューオータニの食堂で会った高倉健は、心なしか肩を落として寂しげだった。数日前、雪村いづみをインタビューした際に、エレベーターを待っているチエミに会った。彼女もまた鬱屈した表情であった』っていうね。夫婦間に溝ができつつあったことを見抜く眼力がさすが竹中労っていう感じで。

(赤江珠緒)ふーん。

(吉田豪)で、なぜこの2人の間に溝ができていったのか?っていうのを、これが書いてある本があるんですよ。江利チエミさんは本を出してないんですよね。で、当時の夫婦関係についていちばん詳しく書いてるのが、サザエさん。ドラマの方ですかね?映画か。で、江利チエミの母親を演じて、結婚式で江利チエミの母親代わりをつとめた清川虹子さん。彼女の著書で『清川虹子の愛と涙の交遊録』っていう本によると・・・88年の。『新婚当時は庶民的なユーモアにあふれた生活で、江利チエミさんの方が圧倒的にスターだったけれども、健ちゃんが変わり始めたのは極道ものをやるようになったからだ』と。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)『極道は背中で演技しなければならないものだし、女ともあまり接触してはならない。行き先をいちいち告げるものでもない。そう思い込んでいたようです』っていう。役柄に徹しようと・・・

(赤江珠緒)ほー!役が結構生活に入ってきて。

(吉田豪)反映しきっちゃって。で、健さんが1ヶ月近く行方不明になったことがあるらしいんですよ。江利さんは健さんが車好きだからってことで、警察の交通事故の係に毎日連絡したりとか、アメリカにまで捜索願いを出したりとかして。で、結局1ヶ月後にヒゲぼうぼうの健さんが帰ってきて。健さん曰く、『山にこもって業をしていた』っていうね。

(赤江珠緒)ええっ!?

(吉田豪)で、女に対して不器用で無口な健さん像っていうのはこの時期になって確立されたっぽいんですよ。結婚してヤクザ映画をやるようになってからっていうか。それを家庭に持ち込んで、それプラス、江利チエミさんのお姉さんが登場するんですよ。それまで会ったこともなかったお姉さんっていうのが突然現れて。で、一緒に住み始めたことで、ちょっと江利さんのバランスが狂って。その人が『健さんには女がいる』って吹き込んだりとか。

(博多大吉)ほう。

(吉田豪)で、家が火事になったことがあるんですけど。お姉さんが倍額の火災保険に入っていたことが判明とか。なんか、高額な家具を持ち出したことが判明とか。

(博多大吉)これは穏やかじゃないですね。

(吉田豪)あれっ?っていう事件になって。で、いろいろあって71年に2人は離婚になるという。そのお姉さんがチエミさんに離婚届の判を押させて。それを持って弁護士たちを引き連れて撮影所の健さんのもとへ行って・・・みたいな流れだったんですけどね。

(赤江・大吉)へー!

(博多大吉)ちょっとじゃあ、いろいろあったんですね。単純な離婚ではないんですね。

(吉田豪)ずっとややこしいことがあって。で、お姉さんのことがどうしても健さんは許せないとかあってっていう話なんですが。でも、これについていちばん詳しく書いてあるのがこの清川虹子さんの本なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(吉田豪)で、その後のインタビューの中で、何度か自分の過去を振り返ってるんですけど。石原信一さんっていう、これも作家の方ですね。が、健さんに密着して書いた『人間高倉健』という本がありまして。79年のレオ企画。

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(博多大吉)はい。

(吉田豪)ここで健さん、こう言ってるんですよ。『よくわかんないけど、男と女の愛の形みたいなものってあるでしょ?とても好みの人なんだけど、きっと傷つけそうだから接近していかない方が優しさなんだっていう考え方と、どんなに血だらけになるほどお互いが傷ついても、後でとってもいい思い出になるというのと。そしたら僕は、やっぱり後の方が生きたんだという気がするんですね。つい最近まで、そうは思わなかった。この1年ぐらいで変わりだしたんですね。僕の生き方は違っているなって』ってね。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)つまり健さん的に『やせ我慢の美学だと結婚生活もままならないし。もっと傷を負う覚悟で江利チエミと向き合うべきだったってことじゃないか?』っていうね。

(博多大吉)なるほど。

(吉田豪)みたいなことを思いながらこの本を読んでいたら、なんかすごいエピソードが出てきて。『網走番外地』の北海道ロケ中に健さんがストイックに夜遊びもしないでいたら、『みんなが夜になると町に遊びに出かけて、僕1人、山のホテルに残されて。ヤケを起こして鉄砲を窓からバンバン撃ったこともあったな』っていうね。

(赤江珠緒)えっ、またすごい。このエピソードもまたすごいんですけど・・・

(吉田豪)そう。またすごいんですよ。すごい物騒すぎる思い出を言い出して(笑)。この生き方はたしかに間違っていた気がするっていう(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。ええーっ!?

(博多大吉)空砲かな?

(吉田豪)うん。山ですからね。

(博多大吉)口で『バンバン!』って言ってたのかもしれないですね。

(吉田豪)で、個人的に最も衝撃的だった健さんの記事といえば、『檀ふみのほろ酔い対談』っていう87年の潮出版社の本がありまして。これ、ほろ酔い対談っていう企画のため、みんな酒飲まして取材するんですよ。

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(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)その結果、下戸なのに酒飲まされた健さんが、余計なことを言いまくるんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(博多大吉)珍しい。

(吉田豪)まず、檀ふみさんが『私、デビューしていちばん最初にお会いしたのが健さんで。その時の着流しの後ろ姿を拝見して。世の中にあんなに素敵な人がいるのかと思って。もう一度、お目にかかりたい。そう思って女優になったんですから。それまでは泣いてたんですよ。女優が嫌で』って言われるなり健さんが『そういうことはその時に言ってくださいよって。言ってくれれば、僕も飯ぐらい誘うじゃないですか。何年もたってからじゃ、ああ昔の話だったのかって感じでね』って。なぜか口説く気まんまんなんですよ。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(吉田豪)で、その後のやり取りをちょっと赤江さんと大吉さんでお願いします。

(博多大吉)ああ、私が健さん。はい。

(赤江珠緒)『健さんの好きになる人ってどんな方?パターンとかってあるんですか?』。

(博多大吉)『ありませんよ、そんなもの。節操がないのかな?俺は』。

(赤江珠緒)『私はだいたいお相撲さんタイプ。なんとなく、まあるい感じの人が好きだったりしますね。もちろん健さんだけは特別なんですけど。他に、健さんみたいな人っていないでしょ?』。

(博多大吉)『僕、空いてますけど?こっちから、ねだっちゃいけないですね。いまのはちょっと見苦しかったな。ごめんなさい』。

(赤江珠緒)はー!

(吉田豪)完全に酔っ払ってるんですよね(笑)。

(博多大吉)ねえ。この健さんの『僕、空いてますけど』はこれ、オードリーの春日くん?

(吉田豪)(笑)

(博多大吉)『春日のここ、空いてますよ』につながる・・・

(吉田豪)『健の横、空いてますよ』って(笑)。感じですよね。

(博多大吉)そういうことですよね。『健の横、空いてますよ』。

(赤江珠緒)いい感じに流れていってますね。ここはね。

(吉田豪)そうなんですよ。そのせいか、『アメリカもよくいらっしゃるんですか?』っていう、本当檀ふみさんのなんてことない質問に対して、健さんが余計な話を始めるんですよ。『アメリカはいちばん多いです。だからロスに僕の子どもがいるって話になっているらしいですよ。で、その子が僕にそっくりで、20何才とかって年まで言ってましたね。しかも、イタリーレストランやっているって。まあね、子どもがいるとかホモだとかっていう程度の話なら笑っていれば済みますけどね。つい最近、本当にびっくりしたのがありますよ。僕はこの1年ちょっと映画に出てないでしょ?そしたら、「健さんはいまエイズにかかってロック・ハドソンのいたパリの病院にいる」って(爆笑)』っていうね。

(赤江珠緒)(笑)

(吉田豪)ぜんぜん笑えないですよ!(笑)。

(赤江珠緒)たしかに。『(爆笑)』が・・・(笑)。

(吉田豪)『(爆笑)』って!って言う。

(博多大吉)ちょっと笑いずらいですね。

(吉田豪)そうなんですよ。でも、檀ふみさんがすごいのは、そういうのにちゃんと乗っかっていくんですよ。全部無邪気に乗っかって、さらなる話を引き出して、健さんがさらに余計なことを言うっていう展開になって。

(赤江珠緒)これは檀さんもほろ酔いなんですか?

(吉田豪)完全に酔ってますね。2人とも。これは面白くなりますよ。

(赤江珠緒)へー!

(吉田豪)だからその流れで、健さんの口から『昔、一度だけソープランドに行ってひどい目にあった』っていう告白まで出てきたりとか。

(赤江珠緒)えっ?

(吉田豪)ちょっと、じゃあここも2人読んでもらえますか?

(博多大吉)私、また健さんいきますね。『東映の深夜興行が全盛の頃、スタッフがよく利用していた有名な店がありましてね。朝の3時頃かな?監督の機嫌が悪いんで、みんなで女のいるところに行こうって』。

(赤江珠緒)『うふっ、人のせいにして』。

(博多大吉)『いや、かっこつけるわけじゃないけど、僕は外の車の中で待っていたんですよ。そしたら、お使いが来て。「もう明け方で誰もいないから上がって来い」って言うんですよ』。

(赤江珠緒)『で、上がったんですか?』。

(博多大吉)『そりゃあ僕も嫌いじゃないですから(笑)。ところが、その女の子が僕の郷里の出身で、お母さんをよく知っていますって。それでこっちはその気が全くなくなっちゃってね』。

(赤江珠緒)『なにも、なさらなかったの?』。

(博多大吉)『監督のお付き合いで来ただけで、体の調子も悪いからって、やっと勘弁してもらいました(笑)』。

(赤江珠緒)はー!

(吉田豪)つまり、風俗経験は付き合いで1度だけ。それも未遂に終わったっていう
話をしてたんですけどね。

(赤江珠緒)(笑)。そうですね。

(吉田豪)あれっ?と思ったんですよ。僕も相当いろんな資料を漁って。高平哲郎さんの『星にスイングすれば』っていう80年の晶文社から出てる本があって。これはインタビュー集なんですけどね。

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(赤江珠緒)はい。

(吉田豪)健さんは学生時代のことをこう振り返ってたんですよ。『あまり真面目じゃなかったですけど。普通ですね。硬派っていうわけでもね・・・でも、まああんまり女の子と縁はなかったですから、大学時代は悪かったですね。めちゃくちゃでしたよ。どういう風に?って、遊郭ばっかりでしたね。カタギの女の人とどうかなるというのは男らしくない。僕の中にはそういう意識がすごくあったんです。だから遊郭通いばっかりでした。金がまとまれば、走って行った方ですね』っていうね。風俗行きまくって、しかも走っていってたんですよ(笑)。

(赤江・大吉)(笑)

(赤江珠緒)へー!

(吉田豪)あれっ?っていう。ある時期から話が変わってるじゃん!っていう(笑)。

(赤江珠緒)ほほう。

ある時期から話が変わった疑惑

(吉田豪)みたいな感じで立体的にいくと、いろんなことが見えてくるんですが。ただ、健さんの人間らしさが見えてきて、どんどん好きになってくるのは間違いないなと。

(赤江珠緒)そうですね。わっ、豪さんみたいにその年その年のいろんな書物の中から出てくると・・・

(吉田豪)健さん名義の本だと、もうちょっと固い感じじゃないですか。やっぱストイックな健さんなんで。他の人が語る健さんは結構間抜けな部分もあって、いいんですよ。

(赤江珠緒)なるほどー。そうですか。

(吉田豪)ただ、こういう話をね、お固い本に載せますと、浮きますという話でした(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。そのへんも、ちゃんと入ってるんですよね?

(吉田豪)全部入ってますよ。こういう公式の本にね、『ホモ』っていう二文字が載っているだけでも奇跡だと思うんで(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(博多大吉)なんとかねじ込みましたね。

(吉田豪)ねじ込みましたね。

(赤江珠緒)いやー、健さんってそういう、やっぱり役も自分で、高倉健っていうのを生きなきゃっていうのもあったんですかね?

(吉田豪)やり過ぎちゃったんでしょうけどね。

(博多大吉)で、なんかね、江利チエミさんのお姉さんがどうのとか。

(吉田豪)これは本当ね、調べるとすごい興味深いというか。

(博多大吉)なんか昭和っていう感じしますね。

(吉田豪)昭和ですね。お姉さんが嫉妬して・・・みたいな話が書いてましたね。その、姉妹なのに私はこんな苦労してきてっていう。

(赤江珠緒)ねえ。でも、亡くなられてからずっと愛されていてっていうようなね、お話もエピソードで出ましたもんね。

(吉田豪)江利さんがお酒でね、ちょっと、ねえ。悪い方に行っちゃったみたいな話があってからいろんな本を読むと・・・たとえば、金田正一さんの『失礼!金田です』っていう本がありまして。これはカネやんがいろんな、それこそ石原慎太郎さんとか、大物と対談するんですけど。ノーギャラで。その代わり、お土産でお酒を持っていくんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(吉田豪)で、高倉健さん取材して。『これはね、ウチのチエミにあげます』みたいなことを言っていて。ねえ。後から読むと、チエミさんにお酒あげちゃダメだよ!みたいな気がしてハラハラするっていう。

(赤江珠緒)はー!そうか。お酒で・・・っていう対談、結構あったんですね。

(吉田豪)当時はでも、そうですね。ガンガン飲んでますね。

(赤江珠緒)やっぱり、ねえ。饒舌になるんですね。

(吉田豪)時代が違うんですよ。それでだから、僕がこういう仕事をするようになって謎がとけたんですよ。昔の人のインタビューが面白いのって、それなんですよ。酒飲まして、マネージャーもついて来ないようにして、原稿チェックもしてないんですよ。面白いに決まってるんですよ。そんなもん(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。なるほどね。

(博多大吉)いまはね、そんなことしたらもう、大問題になりますもんね。

(赤江珠緒)えー、今日ご紹介いただいた健さん名言録は『永久保存版 高倉健 1956~2014』。文春MOOKに収録してますね。1300円で発売されております。

<書き起こしおわり>

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