朝井リョウ『仮面ライダーセイバー』第1話・第2話の感想を語る

朝井リョウ『仮面ライダーセイバー』第1話・第2話の感想を語る 高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと

(朝井リョウ)子供の頃って、日本の童話とかももちろん読むんですけど、やっぱり海外の童話とかをすごい読むことが多くて。子供の頃に読んだ本とかに出てくる食べ物で忘れられないものってすごいたくさんあるの。そういうものってめちゃめちゃたくさんあって。で、「本で読んだことがあるけど、食べたことがない。エクレル・オ・ショコラだ!」っていうのはもう、すごいリアリティーなのよ。

(高橋みなみ)そうなんだ!

「本で読んだことがあるけど、食べたことがない!」

(朝井リョウ)このセリフに関しては。私は子供の頃に、今はもうあれだけどさ。トレーニング界隈の人で結構人気だけど。オートミールっていうのが海外文学にすごい出てくるんだけど。でも、そのオートミールが何の味がするのかがいくら読んでも分からなかったのよ。形状もよくわからないし、味も全然伝わってこないから。「これは何なんだろう?」ってずっと思っていて。

それで初めて14歳の時にカナダに行った時に、そこで食べた朝ごはんがオートミールだったの。ホームステイだったんだけどね。全然それまでしゃべれなかったんだけどさ。オートミールが出てきた時だけすごいテンションが上がって。「ああ、本で読んだことがあるオートミールだ!」って。もう本当に倫太郎と全く同じですよ。「オートミールだ! 嬉しい!」って。で、牛乳みたいなのを入れてもらって食べたんですけど、本っ当にまずいよね。オートミールってね。

(高橋みなみ)アハハハハハハハハッ! やめなさいよ!

(朝井リョウ)私、びっくりしました。「えっ、オートミールってこんなにまずいんだ!」って。

(高橋みなみ)美味しいものではないよね。

(朝井リョウ)でも「こうするとモア・デリシャス」みたいなことを言われて、なんか温めたりとかされて。そしたらなんかもっとまずくなって。すごいびっくりしちゃって。でも覚えてるし。あと江國香織さんの小説に「カフェオレボウル」っていうのがすごい出てくるんですよ。

(高橋みなみ)カフェオレボウル?

(朝井リョウ)それも10代後半の時にすごい江國さんを読んでいて。「カフェオレボウルってなに?」って思っていたの。しかもまず、岐阜にそんなものはないわけ。で、東京に行ったらまずカフェオレボウルを味わってみようと思って。本当に上京してすぐ検索したら、自由が丘にあったのよ。カフェオレボウルを提供しているところが。で、カフェオレボウルっていうのは、ボウルで飲むカフェオレだったのよ。

(高橋みなみ)ああ、普通に飲み物なのね。カフェオレ。

(朝井リョウ)そう。飲み物なんだけど、コップに入ってるんじゃなくて。ボウル型のものにカフェオレが入ってるものが出てきて。「こういうものだったんだ。これを江國香織さんは書いてたんだ!」と思ってさ。それで楽しみに飲むじゃない? で、皆さん。やっぱりその時にね、その取っ手の大切さに気付きますね。熱々!

(高橋みなみ)ああ、ホット?

(朝井リョウ)そう。ホット。もちろん。ホットのカフェオレボウルを頼んでたんですけど。取っ手がないと……だから全部熱いの。だから取ってって熱を逃していたんだなって。そういうのもすごい、本の中に出てくる食べ物で学んで。食べてみてすごいびっくりっていうのが……。

(高橋みなみ)じゃあすごいリアリティのある言葉じゃない?

(朝井リョウ)その一言はすごいよかったです。

(高橋みなみ)今の話を聞くとさ、私たちが想像で話してたセイバーとさ……。

(朝井リョウ)まだわからないよ?

(高橋みなみ)だいぶ違くない?

(朝井リョウ)まだ集英社でグアバジュースを思い切って頼んだりとかする描写がないとも……それでここで今、もし私が間違ったことを言ってたら小説新潮の方で訂正しますので。

(高橋みなみ)全部そっちで訂正かい!

(朝井リョウ)もう今すぐ、担当のフクシマさんに言うっていう。

(高橋みなみ)フクシマさーん!(笑)。

(朝井リョウ)担当のフクシマさん、よろしくお願いします。

(CM明け)

(朝井リョウ)(水を飲む)

(高橋みなみ)いやいや、違うのよ! タイミングが……なんで今、水飲んでた? 「ここで明けたらメールを読もう」って言ってたじゃん?

(朝井リョウ)ごめんなさい。ちょっとラジオってやるの、初めてで。少し緊張しちゃって。

(高橋みなみ)ちょうど変なところで。「ヨブンのこと」でペットボトルを開けて飲んだじゃない?

(朝井リョウ)口がすごいねちょねちょしちゃって。緊張しちゃって。ラジオ、あんなりやることがなくて。「ああ、スタジオってこんな感じなんだ」って……。

(高橋みなみ)絶対に緊張してなかったよ。ボーッとしてたやん! もう、早く読んで!

(朝井リョウ)メールをいただいていまして。これを起点にセイバーの話をしようという予定でした。

(高橋みなみ)アハハハハハハハハッ! 読み忘れた(笑)。

(朝井リョウ)「『仮面ライダーセイバー』初回放送を見ました。『物語の結末は俺が決める!』で変身」。で、この時にしかも本を開くの。

(高橋みなみ)「物語の結末は俺が決める」で本を開くの?

「物語の結末は俺が決める」

(朝井リョウ)本がバッて開かれて変身する。私、絶対にこのグッズを買います。で、やります。出版社に。打ち合わせのたびにやります。「どうします? 次の連載?」「(カシャン……)物語の結末は俺が決める!」って。「まあ、それはそうですよね。あなたが決めてくださいよね」って言われると思いますけどね。

(高橋みなみ)アハハハハハハハハッ!

(朝井リョウ)(メールを読む)「……変身するシーン、かっこよかったですね。小説はまさかの原稿用紙に手書き、編集者に手渡しスタイルで驚きました」っていうのがこの重箱の隅をつつくようなメールですけども(笑)。いや、でも多いよね。やっぱりドラマで結局小説家が出てくる時ってさ、やっぱりさ、その編集者が現れる……「家に来る」っていうので物語が進むじゃん? だいたい。だから、編集者が直接家に来るっていう描写をしてくださったんだと思うんですが。たしかにもう、そういうのもない。

(高橋みなみ)ああ、ないんだ。

(朝井リョウ)でも実際、手書きの方はいらっしゃいます。まだ手書きの方がいて。すごいかっこいいのが林真理子さん。まだ手書きなんですけど。何かのインタビューで「どうしてパソコンじゃないんですか?」って。手書きって大変そうじゃん? なんか始めの方を直したりとかするのもさ。でも、ああいう人ってね、一発で書けるんだって。その本原稿みたいなのを。まあ、直す方もいるけど、すごいきれいな手書き原稿の方も多いらしいです。

(高橋みなみ)それ、すごいね!

(朝井リョウ)すごいよね。直さないんだって。私なんか書いてると矛盾が出てきてさ。「前半のあそこ、ちょっと直しておこう」とかあるんですけど。ないだって。レジェンドなんですね。

(高橋みなみ)それはしびれますね。

(朝井リョウ)林真理子さんもそういうレジェンドのうちのお一人なんですが。何かのインタビューで「なんでパソコンじゃなくて。今、こんなに便利ないろいろなものがあるのに手書きなんですか?」って聞かれた時の林真理子さんの返事。クイズ、林真理子! チッチッチッチッ……。

(高橋みなみ)ええーっ?

(朝井リョウ)ひとつだけ、じゃあいただいていい? たぶん当てられないと思う。なぜ、まだ手書きなのか? はい、高橋さん!

(高橋みなみ)「私は……うーん、その時代に……」。

(朝井リョウ)ブーッ! ブブーッ! 正解は「パソコンを覚えられるほど暇な時が1回もなかったから」です。

(高橋みなみ)かっこいい!

(朝井リョウ)かっこいいよね! しかも、説得力があるんですよ。「ああ、嘘じゃないだろうな」って。それぐらい、ずっとコンスタントにいろんなところで書かれているという。

(高橋みなみ)かっこいい!

(朝井リョウ)かっこいいのよ。そう。かっこいい人、いてさ。桐野夏生さんっていうね、たくさん素晴らしい作品を書かれているレジェンドですけども。その桐野夏生さんにある方が「どうして自分以外の立場の人のことをこんなにたくさん書けるんですか?」みたいなことを聞いて……クイズ、桐野夏生!

(高橋みなみ)わかんないんだよな!

(朝井リョウ)ブーッ!

(高橋みなみ)フフフ、早え!

(朝井リョウ)正解は「どうして桐野さんは自分と立場が違う人のことをたくさん書けるんですか?」「プロだからです」って答えていらっしゃいました(笑)。これ、言ってみたいんだよね。人生のどこかで1回、言ってみたい。やっぱり聞かれるんですよ。「女性の小説をどうやって書いてるんですか?」とかいろいろ聞いていただけるんですけど。で、やっぱりいろいろ答えるの。「女性っていうよりも、人間の考えてることを書こうとしています」とか。どうにかして答えを生み出すんですけど。いつか、「ああ、プロだからです」って。

(高橋みなみ)うわーっ! かっこいい!

(朝井リョウ)かっこいいよね! しかもそれで言って変じゃないっていう。「ああ、この人が言うんだったらそうだな」っていう風になる人がね。長く活躍をされているという世界ですからね。

<書き起こしおわり>

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