R-指定 高橋ヒロシ『クローズ』『WORST』を語る

R-指定 高橋ヒロシ『クローズ』『WORST』を語る ACTION

R-指定さんが2020年8月5日放送のTBSラジオ『ACTION』の中でヤンキー漫画について特集。『クローズ』『WORST』など高橋ヒロシ作品について、ヤンキー漫画に詳しい批評家・ライターの森田真功さんと話していました。

(幸坂理加)さあ、続いてまいりましょう。こちらです。90年代以降、大きな影響を与えたのは高橋ヒロシ。

(R-指定)(拍手)

(幸坂理加)拍手が出ました(笑)。

(R-指定)高橋ヒロシ先生、お世話になっております! ホンマに! 『クローズ』『WORST』……僕、ライブとかで。今はまあ、全然ライブに行けてないですけど。地方営業とか行くじゃないですか。で、行って、そのホテルの近くのコンビニとかに行くんですけど。そこでやっぱりね、デカい版の『クローズ』『WORST』があったら、知ってるのに買っちゃう。見たことあるのに。たとえば「ああ、このパルコ・アンド・デンジャラーズね」とか。もう知っているのに買う。そして見るっていう(笑)。

(森田真功)わかります(笑)。コンビニに行ってついつい買っちゃうんですよね(笑)。

(R-指定)もう儀式みたいなもんですね。では、『クローズ』『WORST』をちょっと……。

(森田真功)高橋ヒロシの『クローズ』『WORST』っていうのはもう今のヤンキーマンガシーンにおいては巨大な帝国なんですよ。これは本当に発明みたいなところがあって、消費のされ方としてはたぶん『スター・ウォーズ』とか『ガンダム』に近いんじゃないかなっていうところがありますね。要するに結局、2作品なんですけれども20年以上の歴史があって。それでスピンオフなんかが作られたりとかして。

(R-指定)そう! 今、『WORST外伝 グリコ』が超おもろいんですから! 知ってますか?

(幸坂理加)グリコ? お菓子じゃないんですか?

(R-指定)ヤバいですよ。やられますよ? 花木九里虎、最強なんですから。

(森田真功)ゼットンは教師になったんですよ?

(R-指定)ゼットン、先生になったんすから!

(幸坂理加)誰ですか? ゼットンって?

(R-指定)あのゼットンが教師に……ちなみに、そのゼットンを倒したのが九里虎なんですよ。

(幸坂理加)へー。九里虎って強いんですね。なにそれー?(笑)。

(R-指定)フフフ(笑)。

(森田真功)で、要するにスピンオフ……その登場人物の1人を主題にしたスピンオフなんかが作られて。で、そこで新しいファン層なんかがそこで入ってきたりとかして。あと、フィギュアとか関連グッズとかも売れたりして。

(R-指定)ああ、そう考えるとたしかに『スター・ウォーズ』っすね(笑)。

『スター・ウォーズ』的な世界の拡張

(森田真功)で、これは本当に今年始まったことなので言及をしておきたいんですけども。「高橋ヒロシまんが大賞」というのが今年、始まったんですよ。

(R-指定)ええーっ!?

(森田真功)これ、いわゆる新人賞って、オリジナル作品を雑誌なり出版社に投稿して。それで大賞を取るとか、手塚賞を取るとかっていう形なんですけど。この高橋ヒロシまんが大賞というのが『クローズ』『WORST』のキャラクターを使ったスピンオフを書いて……。

(R-指定)うわっ、おもろそう!

(森田真功)そう。だから2次創作を作って、それを公式で漫画賞にしたっていうのが始まっていて。

(R-指定)じゃあ結構、その賞で送られてきた作品を見たら「こいつ、やるやん!」みたいなの、あるんですか?

(森田真功)まだわからないです。始まったばっかりで。今、募集をしているんですよ。

(R-指定)俺、ちょっとヤスのを見たいな! 弱いやつの……ヤスっていうやつがいるんですよ。

(幸坂理加)ヤス? 弱いの?

(森田真功)そういうのをRさんが書いて……。

(R-指定)いやいや、書けないっすよ!(笑)。ヤスとか阿久津とか卑怯なやつのとかが見たいんですよね(笑)。

(森田真功)いやいや、そういうのを……だからここらへんも新しい試みなんで。ここらへんがどうなってくるのかな?っていうのが、もしかしたら漫画賞自体……他の漫画でもそういうことが始まるのかもしれないですし。

(R-指定)面白いなー。

(幸坂理加)他の漫画にも影響を与えたりとかしてたんですか?

(森田真功)ああ、『クローズ』『WORST』ですか? もちろん、全然してますね。

(幸坂理加)たとえば、どういったものがありますか?

(森田真功)これは要する『クローズ』『WORST』っていうのは『クローズ』の終盤に陣内公平という人の話が出てきて。で、この陣内公平っていうのが、要するに「不良としての上がりはヤクザになることしかない」みたいな話になってきて。で、「そのヤクザになることは正しいことじゃない」っていうので敗北していくという話なんですけれど。で、要するにスポーツ漫画だと全国大会に行って、その後にプロになるっていう筋道が立つんですけれども、ヤンキー漫画だと喧嘩で勝ったとしても、その後プロ(ヤクザ)になるのが正しいのか?っていうのがわからないんですよね。

(R-指定)そうなんですよね。プロっていうのはまさしく、言うたら殺し……喧嘩の先にも行ってしまうわけですから。

(森田真功)そういうテーマを『クローズ』で出したのが、その後の『クローズ』の影響下にある作品でも描かれるようになったというところがありますよね。

(R-指定)そのヤンキーの先ってことですか?

『クローズ』『WORST』の影響下にある作品たち

(森田真功)その先の先で。そういうもので大きいものだと、近年だと『ギャングキング』とか『サムライソルジャー』とか。

(R-指定)『サムライソルジャー』は最高ですね!

(幸坂理加)へー!

(R-指定)だからやっぱり、どれもヤンキーはさっき言ったようにモラトリアム、終わりがある期限付きなものとして描いているんですけども。その先を描いたことにより、よりドロッとしていくというか……。

(森田真功)要するにシリアスな……さっき、『湘南爆走族』とか『ビー・バップ・ハイスクール』は明るいものだと言ってたんですけど、この『クローズ』の終盤以降から結構シリアスなモードにヤンキー漫画自体が入っていったようなところがありますね。

(R-指定)ちなみに森田さんが2010年代以降から現在まで注目してるヤンキー漫画とかってありますか?

(森田真功)これはですね、いっぱいあるんですよ。実は今もたくさんあるんですけど……やっぱり一番注目したいのは『東京卍リベンジャーズ』ですね。

(R-指定)これな! これ、俺はホンマにすぐ読まなアカンねんけど……。

(森田真功)えっ、読んでないんですか? まさか……?

(R-指定)今、俺はちょっと『OUT』で手一杯というか。『OUT』を追いかけていて。

(森田真功)ああ、丹沢ですか?

(R-指定)丹沢ね。あっちゃんが今、大変なことになって……今、ヤードで大変なことが。西千葉のヤードで……(笑)。

(森田真功)『東京卍リベンジャーズ』ってたぶん、正確に言うと本当に平成の話なんですよ。で、平成元年生まれの子が主人公の話なんで。たぶん世代的に近いんで。なので、読まれた方がいいかなって。

(R-指定)これ、すぐ読む! これ、まあまあ、でも内容はあれかな?

(森田真功)ちょっと話してもいいですか? 『東京卍リベンジャーズ』っていうのは要するに、タイムリープ物になってるんですよ。

(R-指定)ヤンキーでタイムリープ?

(森田真功)ヤンキー漫画でタイムリープ物になっていて。で、これは本当に偶然というか、この作品の奇跡とも言えるんですけども。平成元年に生まれた子たちが20代後半になった時に、何者にもなれなかった。あるいは、半グレになってしまったみたいな話で。で、それをタイムリープしてやり直す。中学時代に戻ってヤンキーの抗争なんかを止めたりして、不幸な今現在を変えようという話なんですよ。

で、これが面白いのは、普通タイムリープ物って「未来を知っている」っていうことがアドバンテージになってたり。同じ体験を何回も繰り返すことで攻略法を見つけていくっていう感じなんですけども。この『東京卍リベンジャーズ』はタイムリープを繰り返していくことで根性を養っていくんですよ。

(R-指定)おおおーっ! なるほど!

(幸坂理加)根性論?

(森田真功)根性を養っていく。結局、強くはならないんですよ。タイムリープしても主人公は。

(R-指定)なるほど。でも何回もその修羅場を経験することによってハートが。

(森田真功)ハートが。そこらへんがザ・ヤンキー漫画だなっていう。

(R-指定)いいですねー!

(幸坂理加)ねえ。名言とかもいっぱいありそうですね。

(森田真功)あるんです。だからそのタイムリープという新機軸を入れながらも、ザ・ヤンキー漫画みたいな。

(R-指定)いいなー!

<書き起こしおわり>

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