武田砂鉄 自民党改憲広報漫画「もやウィン」のダーウィン進化論誤用を語る

武田砂鉄 自民党改憲広報漫画「もやウィン」のダーウィン進化論誤用を語る ACTION

武田砂鉄さんが2020年6月26日放送のTBSラジオ『ACTION』の中で自民党の改憲広報漫画「教えて!もやウィン」がダーウィンの進化論を誤用して引用していた件などについて話していました。

(武田砂鉄)今日もまたプレミアムフライデーということで。驚きましたね。昨日、「経済産業省がプレミアムフライデーを7月末にも再開する方針を固めた」というニュースが……これはもうプレミアムフライデー業界激震ですけども。なにが驚きって「再開」っていうことですから。これまでは「休止・停止」をしてたということになりますからね。こっちはもうこの数ヶ月間も欠かさず言及してきたんだから。

(幸坂理加)応援していましたからね。

(武田砂鉄)これはもう表敬訪問のひとつやふたつ、されてもいいぐらいですよ。まあ、断りますけどね。だから、まだ諦めてなかったってことなんですよ。で、時事通信社のニュースに経済産業省幹部の発言というのが載ってまして。「むしろプレ金が目指すテーマの重要性は増している」っていう風にあるんですけど。

(幸坂理加)はい。

(武田砂鉄)まず、そもそもこの「プレ金」っていう略し方、そんなに浸透してないですよね?

(幸坂理加)そうですね。あんまり馴染みはないですよね。

(武田砂鉄)まあ、この絶対に失敗を認めない人たちらしい行動だと思うんで。来月末にどう再開するか?っていうのを厳しくチェックしていきたいという風に思っております。

(幸坂理加)フフフ、わかりました(笑)。

(武田砂鉄)今週の月曜日に宮藤官九郎さんの回でフリーランスの愚痴を「T田砂鉄」さんということでお邪魔をしたんですけども。放送の中で僕が「宮藤さんとかみうらじゅんさんとか安齋肇さんとかってお会いするたびにすぐに『すいません、すいません』って言って腰がとても低いですよね」という話をしてたら、宮藤さんがね、「たしかに安齋肇さんとかみうらさんとかって本当にいつも『すいません』って言うね」って言っていて。それで番組のコーナーが終わった瞬間、「なんか、すいません。本当、すいませんでした」って言っていて(笑)。

(幸坂理加)フフフ(笑)。

(武田砂鉄)早速謝ってましたよね。

(幸坂理加)ねえ。いつもなんですよ。

(武田砂鉄)なんであんなに謝るのかな?って思いますけど。僕、以前安齋肇さんにインタビューした時に「安齋さんはよく『タモリ倶楽部』とかに遅れてくるっていうことで有名ですけれど。遅刻することの利点ってなんかあるんですか?」っていう風に聞いたら「毎回『おお!』とか『よお!』とかじゃなくて『すいません!』っていう感じで入るから、おごり高ぶった人間にならなかったことがいいことだ」っておっしゃっていたんですけども。

(幸坂理加)ええ。

(武田砂鉄)やっぱり私も十分に大人なんですけど、やっぱり謝れる大人になりたいなっていう風に思いましたよね。テレビ見てるとなかなか謝れない大人たちっていうのがずっと映ってますから。みんな「俺は関係ないよ」っていう顔をされてるじゃないですか。今朝、新聞を読んでたら「アベノマスク配布完了」っていう小さな記事が出てまして。毎日新聞にこういう風に書いてあるんですね。

「アベノマスク配布完了」記事

「菅官房長官は25日の記者会見で新型コロナウイルス感染拡大を受けた政府による世帯向け布マスクの配布について、日本郵便から厚生労働省に対し6月20日までに全ての配布を完了したという報告を受けたと明らかにした。4月14日の開始から2ヶ月。4月1日の配布表明から2ヶ月半かかった計算だ」ということで。で、その後に「実際の配布枚数は日本郵便が精査中だが、調達した1億3000万枚の一部が余っており、追加配布に充てる」という風に書いてあるんですね。すごくないですか? この「配布完了した」と発表したんだけど「配布枚数は精査中で一部が余っている」っていう。

(幸坂理加)どういうことでしょう?

(武田砂鉄)それで我が家、アベノマスクはまだ来てないんですよ。僕、自宅の近くに小さな事務所というか、仕事部屋も借りてるんですけども。こちらも来ないんですね。だから僕、なんかの陰謀かな?って思ったんですけどで。それでSNSで「アベノマスク 届かない」っていう風に検索したら、まあ全国津々浦々、「届かない」という声が出ているので。つまり「配布完了」はしてないんですよ、これ。

で、厚生労働省のウェブサイトに「布製マスクの都道府県別全戸配布状況」というページがありまして。そこには「全国で概ね配布を完了」っていう風に書いてあって。これ、赤字で記されてるんですよ。

(幸坂理加)ええ。

(武田砂鉄)普通、一般的に赤字で入れるっていうのは強調するとか断言する時だと思うんですけど。「概ね」なのに赤字で記すっていうのがなんかいかにもこの数ヶ月を物語ってるなという風に思うんですけど。僕はアベノマスクの効果って2つあると感じてまして。ひとつは「失敗してもそれを認めない現在の政府の姿勢を明らかにする」っていう効果。それともうひとつは、このしんどいコロナ禍にあってアベノマスクの話するとみんなちょっと明るくなってニコニコして。「フフッ、アベノマスクね」っていう感じで。ちょっとみんな笑顔になるっていう、こういう効果があったのかなとは思うんですけど。

まあとにかくこの遅延とかミスを認めないということでね。こんなことばかりが続くんですけども。まあ今週、話題になったのは自民党が公開したダーウィンの進化論に結び付けて改憲を訴えるという4コマ漫画でして。「この漫画の中でダーウィンの言葉として引用された内容が間違っている」という指摘が相次いだんですけども。自民党は漫画を撤回しないという。

これ、どういう漫画かというとダーウィンをもじった「もやウィン」というキャラクターが憲法改正の必要性を説明して。「ダーウィンの進化論でこういう風に言われてる」という前置きをした上で「最も強い者が生き残るのではなく、もっと賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化ができる者である」という主張して。最後に「これからの日本より発展させるために今、憲法改正が必要だと考える」という風に結論付けていたんですけど。

まあ、いろんなとこで言われてますけども、ダーウィン自身はそんなことを言ってない。進化論というのは生物のそれぞれの種が環境に適応しながら、自然淘汰を経て進化してきたという、そういう考え方なんで。そもそもこの生き残った個体の話はしていないんだけれども、なぜかこの「唯一生き残ることが出来るのは変化ができる者である」っていうのが広まっていて。で、この説はどうやら1963年にアメリカの経営学者が誤って引用したのが始まりらしくて。もう50年、60年物の誤用っていうことになりますけども。しかも生物学者じゃなくて、経営学者が使ったというもので。

で、「これは間違いですよ」っていう風に指摘を受けてるんだけども、自民党の広報部は「幅広い方にお考えいただく機会になれば」とか「わかりやすく理解してもらうため」とかっていう言い訳をして。極めつけは二階幹事長が記者会見で「ダーウィンも喜んでるでしょう」って言ったという。すごいですね。

だからよく取調室とかで「田舎の親が泣いてるぞ」とかね。自分が何か挫折を味わった時に「こんなことで中学生時代の自分が何て言うか……」みたいなことを言うってことはありますけど。ダーウィンを喜ばせるっていうのはなかなか、前代未聞ですよね?

二階氏「ダーウィンも喜んでいる」

(幸坂理加)そうですね(笑)。

(武田砂鉄)とにかく、この誤用を認めない。歴史を修正しちゃう。そもそも憲法の話と進化の話って全く関係ないんですけど、何か繋がってるように考えている。この憲法改正に絡めると、もうひとつあって。先週末、フジテレビと産経新聞が両者の合同世論調査で調査の委託先の業者が実際には電話をしてないにもかかわらず、架空の回答を計上するするという不正があったと発表して。2019年から2020年5月までの14回で計2500件あった。これは総調査件数の17パーセントが不正だったという。で、この調査結果に基づく放送と記事を全部取り消したっていうことなんですが。

この取り消した記事の中にはどういったものがあったのか? たとえばこの2019年11月19日の記事では、この調査に基づいて「憲法改正に賛成が過半数を占め、反対を20ポイント近く上回った。自民党は地方政調会や県連などでの勉強会を開催して国民に改憲の理解を求めているが、着実に理解が広がっていることがうかがえる」ということで。そしてこの調査の数値を踏まえて安倍さんが「国民的意識の高まり」っていう風に仰ってたんですね。

と、なるとこれらの調査の不正を取り除いた正確な結果を出すべきだと思うんですけども、これをしないわけなんですね。どうしてなのかな?って思っちゃいますけど。まあフジとか産経ってのは皆さんご存知のように割と政権と距離が近いっていうことを言われますけども。その調査が嘘だった。これはこのままにしちゃいけないと思うんですよね。

あるいは、さっき言ったように改憲を促す4コマ漫画がダーウィンの進化論の誤用だったとか。これじゃあ、その世論調査もそうだし漫画もそうだし、改憲に向けての積極的な議論なんてなかなかできやしないっていう風に思うんですけど。この件に限らずね、今は河井克行・案里夫妻の件であるとか、菅原一秀元経産相の件だとか、持続か給付金の件だとかね。まあ森友問題、桜を見る会とかいろいろと問題が放置されたままになってますけど。共通点はとにかく開き直る。ミス、隠蔽を認めない。とにかく謝らない。

なんか謝らない人って本当はもっとはぐらかし方が上手い人が多いと思うんですけど。はぐらかし方もすごい下手でね。なんか自分たちの権威に酔いしれていて、ミスをもみ消しちゃう。みうらじゅんさんがよくケイン・コスギさんじゃなくて「権威濃すぎ(けんいこすぎ)」っていうことで権威が濃すぎることを問題視していて。「権威濃すぎになってはいけない」という風に言っているんだけども。

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(幸坂理加)はい(笑)。

(武田砂鉄)今、権威を持ってる人たちがもう権威の濃さにめちゃくちゃ酔いしれてるっていうところがありまして。これ、アベノマスクとプレミアムフライデーの共通点というのは一度始めたプロジェクトだからもうやめられなくなって。謝ったり修正したりしない。それっぽい言い訳を重ねていくっていう共通点がありますけども。でも政治家がたしかにね、あまりにもクドカンさんばりに「すいません、すいません」って言ってるとたぶん国が成り立たなくなっちゃうんだけど。

かと言って、何があっても謝らないっていう姿勢でこの権威が濃すぎる状態にあるっていうのはどうなのかなと。それによって僕たち、国民が今、窮屈になってしまっているんで。そういったことをもうちょっと知っていただきたいと思うプレミアムフライデーなんでございますよ。

(幸坂理加)本当ですね。何を信じていいのかわからなくなっちゃいますからね。

(武田砂鉄)僕らが信じてるのはもうプレミアムフライデーだけでしたからね。なぜ信じてたか?っていうと、やっぱりもうなくなってたっていうことを逆張りで信じてたんですけども。やっぱり昨日、この経産省の幹部に「プレ金が目指すテーマの重要性は増してます」っていう風に言われるとね、使われてないからこそ「プレ金」って略すのが面白かったのに、あっち側から「プレ金ね」っていう風に言われると「何がプレ金だよ!」って思いますよね。

ただこの来月、またプレ金が始まるということでですね、こちらの対応も……プレ金にどう向き合っていくかっていうのはまた、彼らの対応次第ということでございます。

(幸坂理加)フフフ、はい(笑)。

<書き起こしおわり>

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