澤田大樹 森喜朗辞任と政治家の過去のジェンダー発言を語る

澤田大樹 森喜朗辞任と政治家の過去のジェンダー発言を語る アシタノカレッジ

武田砂鉄さんと澤田大樹さんが2021年2月12日放送のTBSラジオ『アシタノカレッジ』YouTubeアフタートークの中で2月9日の衆議院予算委員会内での金子恵美議員の質疑を紹介。女性差別発言で辞任した森喜朗さんだけではなく、政府与党の政治家たちの過去のジェンダー発言について話していました。

(武田砂鉄)今日、本当は本編で話そうと思った話も漏れちゃいましたけども。まあ、別にね、森さんの会見だけじゃないですから。世の中で起こっていることは。

(澤田大樹)そうなんですよね。森さんの追求の中で、森さんの発言自体を問うているっていうところも結構あったんですけど。興味深い発言がひとつあって。「森さんの発言だけではなくて、もっと我々は差別発言を今まで見逃してきたんじゃないか?」みたいな質疑が国会であって。今、国会のオールスターこと予算委員会が開かれてますので、その質疑を取り上げたいんですけど。9日の火曜日の衆院予算委員会で立憲民主党の金子恵美議員の地獄みたいな質疑があったんですけども。

(武田砂鉄)地獄質疑があった?

(澤田大樹)30分の質疑。これ、WEBで見られるので見てほしいんですけど。

(武田砂鉄)「地獄の質疑」とはなんでしょう?

(澤田大樹)なんぞや?っていうことなんですけども。森さんの過去の発言をはじめとして、政府与党の政治家たちの過去のジェンダーに関する発言をどんどん列挙していくっていう。

(武田砂鉄)これは大事な質疑ですね。

地獄のような質疑

(澤田大樹)みんな、ちょっと吐き気を催すぐらいひどいことを言っているっていうことがこの30分でわかるんですけども。まず、2003年に森さんの「子供がいない女性を税金で面倒を見るのはおかしい」というむちゃくちゃひどい発言があって。その後に紹介したのが2019年の桜田義孝元五輪担当大臣の「お子さんやお孫さんにぜひ子供を3人ぐらいお願いしたい」という……これもすごい内容ですね。

(武田砂鉄)すごい……。

(澤田大樹)それから、その間、2007年には柳澤伯夫さんの「産む機械」発言というのもありましたね。

(武田砂鉄)そうでしたね。

(澤田大樹)ということもありました。で、金子恵美さんは言っているんですね。「『女は子供を産んでいればいい』という人が与党にいれば世の中は変わらない」という。本当にその通りですね。で、「この間、第5次男女共同参画基本計画から選択的夫婦別姓の文言がなくなった。それから『指導的地位』における女性の割合を2020年に3割まで引き上げるという目標が先送りになった。これは時代に逆行しているんじゃないのか? 世の中でどんどん『女性活躍』って言ってるのに、それに逆行しているのではないのか?」という風にまず麻生さんに聞いていくんですね。「なぜ、目標を達成できなかったのか?」と。

(武田砂鉄)知りたい。

(澤田大樹)そうすると、「いや金融庁は女性の採用人員が5割まで行ってますよ。知らなかったでしょう?」って言うわけです。

(武田砂鉄)例のあの言い方で。

(澤田大樹)それで「女性が増えてくる道筋ができてきているんだよ」みたいなこと言っていて。その圧がすごい強いわけですよ。「知らなかったでしょう?」っていう。

(武田砂鉄)そういうところだぞ?っていう。

(澤田大樹)「こういう圧で女性に当っていく人って、どこかで見たぞ?」っていうのが頭の片隅に浮かんできて。

(澤田大樹)で、この麻生さん。民間団体が発表した政治家の性差別発言で2年連続ワースト1位になっているんですよ。で、何を言っていたのか?っていうと、「子供を産まない方が問題」とか。あとは財務省の事務次官が女性記者に対してセクハラ問題を起こした際に「セクハラ罪という罪はない」とか。そういった発言があったりして。「そうした言葉はたとえ本人が撤回をしたとしても、女性に突き刺さって残ってくる」という風に金子さんは言っているわけですよね。

(武田砂鉄)それは当然ですね。

政治家の性差別発言ランキング

(澤田大樹)でも、こうした問題があるのは麻生さんや森さんだけではないということで、誰の名前が挙がったかというと、平沢勝栄復興大臣です。平沢さんはちなみに、先ほどの民間団体が発表した政治家の性差別発言ランキングの第3位だったそうです。「LGBTばかりになったら国は潰れる」という発言をした。で、これに対して平沢さん、なんと言ったかっていうと、「講演の一部のみを切り取られたんだ」っていう。「あれ? これもどこかで聞いたことがあるぞ?」っていう。「一部を切り取られたんだ」っていう。

(武田砂鉄)出た……。

(澤田大樹)「まともなマスコミは書かなかった」という風に言って悪びれることはなかったんですね。

(武田砂鉄)それを今、言っているんですか?

(澤田大樹)これ、今週国会で言いましたから。

(澤田大樹)「あれ? これもどこかで見たな?」っていう。さっき、10数分前にも話したような気がすること。同じようなことを言っている人がいるっていうことですね。で、麻生さんに「自身の『子供を産まない方が問題』という発言についてどう思うか?」と聞いたら「いつしゃべったか、もう忘れた」という。

(武田砂鉄)本当にひどいね……。

(澤田大樹)もう、あれこれ言い訳が続くという。だから、日頃思ってることがもう講演とかの場でポンと出るんですね。これ、全部森さんと同じだということがすごくわかるんです。

(武田砂鉄)そうですね。あと、やっぱり「そうやってやっておけば終わるだろう。報じられても、1日で終わるだろう」みたいな。

(澤田大樹)やっぱり気づかされるのは、我々がこういう一発アウトみたいなことをこれまで、全部見逃してきているんだっていうことですね。それはメディアも含めて。

(武田砂鉄)森さんが今回、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞めたっていう結論から考えると、今名前を挙げた人たちも今の役職にいてはいけない人たちということになりますもんね。

(澤田大樹)麻生さんに至っては1回ではないですからね。森さんと一緒で。それで、同じ閣内で女性大臣が2人、います。その2人も聞いていく。たとえば「なぜ、女性の指導的立場の割合を3割にするという目標は達成できなかったのか?」と。それに対しては「性別役割分業があったから。これは社会にもう根付いている。社会的なバイアスもある。スポーツの分野も一緒だ」という。そして「今回の発言のインパクトは大きい」という、これ、大臣から出ているんですね。「これで社会が止まってしまっては問題だ。前進をさせるように社会を動かしていかなければいけない」という風に、上川陽子法務大臣と橋本聖子大臣から出ているんですね。

(澤田大樹)で、与党にもジェンダーの壁とかを取り払おうとして努力をしている人ってこれ、女性議員だけじゃなくて男性議員でもたくさんいるんですね。私の取材しているあるベテラン議員、元閣僚の人ですけど。その人も「たとえば選択的夫婦別姓の考え方でも若い人の話を聞いて、それまでずっと反対だったんでも、やっぱり困っている人たちもいるし。男女同姓でなければいけないという考え方はもう古いじゃないか。これは変わろう」っていう風に動いている人もいるんですね。やっぱりこれ、「変わろう」と思えば人は変われるんです。その方、結構ベテランの方ですけど。それでも変わろうとしている。

社会をアップデートするいい機会に

で、今回の森さんの1件を社会をどんどんアップデートしていくためのいい機会にしていかなきゃいけないと思うんですよ。だから森さんを叩いて「ワーッ!」ってなる人もたくさんいると思うんですけど、私はその立場には与しないんです。「森さんが辞めればいい」っていう話じゃなくて、これを機にもっと社会も変わらなくてはいけない。森さんの周辺で、森さんの発言に笑ってた人だったりとか、さっき話したように森さんにアプローチして。「森さんじゃなきゃダメだ」って言った人たち……あの森さんの発言を問題にしなかった人たちも共に変わらなければならないと思うので。そういうことに気づく、すごくいい質疑だったです。地獄みたいな質疑ですけど。

(武田砂鉄)だから本当に今、森さんがああいう風に「辞める」という結果になって。「あれ? これ、マジ? これで辞めなくちゃいけなくなるんだ」っていう風にビビっている人たちがたくさんいるわけですよね。そういう人に「いや、そうですよ。そんな発言を平然としているようでは、もうここにはいられないですよ」ってことを本当に体感してもらう。「森さん、森さん!」ということになってしまうと「まあ俺は別に大丈夫っしょ?」っていうことになっちゃうから。それが今、これからの社会でどっちに行くか?っていうのが問われているわけですね。

(澤田大樹)今回、森さんがいなくなっても森さん的なものが今後、どんどん出てくるという可能性は全然あるわけで。それだとしたら、その枠組み自体を変えなきゃいけない。それに気づくための30分。2月9日の衆議院予算委員会の金子恵美さんの質疑です。WEBで見られるのでぜひ見てほしいです。何が問題かな?って自分の中で気づく……「ああ、ここは引っかからなかったけど、これは問題だった」っていうことにあとで気づいたりとかします。できれば複数人で見てほしいなって思いますね。まあ、ゲロを飲み込むような地獄の質疑なんですけども。非常に……。

(武田砂鉄)まあ、でも本当にね、森さんが辞めると言って翌日に川淵さんの名前が出てきたってことは「掘れば掘るほど、こういう人がいっぱいいるんだぞ」っていうことを僕たちは受け止めなくちゃいけないんでね。

<書き起こしおわり>

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