みうらじゅん 外出自粛期間中の取り組みを語る

みうらじゅん 外出自粛期間中の取り組みを語る 安住紳一郎の日曜天国

(みうらじゅん)そうですね。エロ以外の。それを全部貼ったんですけども。貼ったら貼ったでなんか資料的な価値が出てくることに気が付いて、嫌になってきて。やっぱりちょっとなんか目的がある感じが嫌じゃないですか。

(安住紳一郎)たしかにちょっと週刊誌から読みとるサブカルチャー的な年表みたいな。

(みうらじゅん)なんか時代を斬ってるみたいな。

(安住紳一郎)大宅文庫みたいな感じの……。

(みうらじゅん)ちょっと嫌でしょう? 嫌っていうかなんか、「価値があること」にとても反発があるもので。

(安住紳一郎)文化的な香り、しますよね。

(みうらじゅん)貼った上に、貼ったんですよ。

(安住紳一郎)フハハハハハハハハッ!

(みうらじゅん)貼りon貼りをしたら、当然下は見えないですよね? で、また上がちょっとね、意味を持つ場合があるじゃないですか。それも気に食わないんで、またその上から貼ったんですよ。貼りon貼りon貼りなんですよ。そうすると、もう何だかわかんない、いいものが出来上がっていって。それを今回、8冊作ったんですけど。今回。もう雲母みたいな状態で、ものすごく分厚くて。

(安住紳一郎)ミルフィーユみたいな?(笑)。

ミルフィーユ状の雑誌記事スクラップ

(みうらじゅん)そう。ミルフィーユみたいな。サクサクした感じがスクラップに出て。自分で見ても、もう何の意味が分からなくなっているんですけども。でもそれがひょっととして、僕が将来的に見る走馬灯じゃないかという風に僕、判定したわけですよ。「ああ、俺は今、ついに走馬灯の編集に入った!」と。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(みうらじゅん)ええ。これはね、編集しとかないとランダムに誰かがあれをやりますから。だから、うん。都合よくは来ないですから。だからそれを今からやっておいて。「この写真はやっぱりまずい」「これ……かつて付き合ってた子だ」とか。やっぱりその上に貼っておいて染み込ませておくというか。そういう作業ですよね。

(安住紳一郎)走馬灯にもやっぱりちょっとね、「これは出しちゃいけない映像だ」みたいな。

(みうらじゅん)うん。NGがあるんじゃないかなって。

(安住紳一郎)それを上にね。上で潰しておかなきゃダメだったという。

(みうらじゅん)でも名画とかでもよく、そういうのが後に発見されて。レントゲンみたいなのをかけるでしょう? その時に「下にこんなものが書かれていた」とか「貼ってあった」とかっていうのが出ると、また大騒動になると思うんです。ええ。まあ、見やしないんですけどね。誰も。

(安住紳一郎)いえいえ(笑)。たぶん自粛の間、そういうことに思いを馳せながらスクラップの上に記事を貼りに貼り……。

(みうらじゅん)「これはマズい!」とか1人で。「これはやっぱり上に貼っておかないと……」みたいな。

(安住紳一郎)「これが下でこれが上だな」みたいな?(笑)。

(みうらじゅん)それはありましたね。ええ。1人でずっと。

(安住紳一郎)でも40年間分のスクラップの記事を見てると面白いし、当時のことを思い出したりで。

(みうらじゅん)いや、もう本当に思い出してると、作業が進まないので。思い出さないように封をするというか。上に重ねていく作業ですね。

(安住紳一郎)それでも8冊、できたんですね(笑)。

(みうらじゅん)8冊。今日、お持ちしたかったんですけども。ほら、こんな状態で。渡せないでしょう?

(安住紳一郎)アクリルがありますからね。

(みうらじゅん)アクリルがありますから。もう渡して横でニヤニヤしたいもんで、俺。ちょっと今日は状態悪いなと思って、やめました。

(安住紳一郎)本当にごくごくね、物置で30年くらい前の週刊誌を見つけただけでももう1時間ぐらい読みふけってしまいますよね。

(みうらじゅん)あります、あります。

(安住紳一郎)ああ、こんなことをこの人が……みたいな。いやー! 面白いですよね。あと、みうらじゅん賞も。私、第19回にいただいたんですが、もう22回なんですね。

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(みうらじゅん)そんなになりますかね。なんか当人、回数はちょっとピンと来てなくて。4年間、あの戦争でなくなってるから。

(安住紳一郎)そうでしたっけ?

(みうらじゅん)そういうことにしてあるんですよ。発表してる雑誌が潰れたもんで、4年間やってなかったんですけど。「それは戦争だったため」ということにしてあるんです。僕の中では。

みうらじゅん賞、4年間の空白期間(戦争で)

(安住紳一郎)そうですか(笑)。最近、なんか悩みで、みうらじゅん賞がちょっとなんかもう「ほしい」っていう人が普通に出てきちゃって。そもそもの賞の理由がおかしくなってきてるっていう?

(みうらじゅん)本来はいやげものっていうか、もらっても嬉しくないものであったのが面白かったのに「ほしい」まで言う……まあ世の中がちょっとおかしくなっているというのがありますよね。うん。

(安住紳一郎)ちょっとなんかね、本来は「ええっ?」っていう得体の知れない面白さだったのに……。

(みうらじゅん)そうですね。この間、わさおさんがお亡くなりになりましてね。

(安住紳一郎)ワンちゃんの。

(みうらじゅん)お花を送ったんですけども。やっぱりみうらじゅん賞の受賞者ですから。

(安住紳一郎)ああ、わさおが?

(みうらじゅん)だから僕、「そうか。今後、受賞者がお亡くなりになった場合、俺は花を出すべきだな」っていうのは今回、思いました。はい。

(安住紳一郎)そうですか。だからもう22回ですからね。そこそこのそのへんの文科賞と変わらないですよね。

(みうらじゅん)もう変わらないですよ。だから安住さんのところにも花が行きますんで。僕の方が長生きだった場合ね。

(安住紳一郎)いやいやいや……(笑)。ちょっとだからね、みうらさんの言葉で言うところの「権威濃すぎ(ケンイコスギ)」で。

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(みうらじゅん)ああ、権威濃すぎがね、ちょっと自分にもやっぱりあるっていう。それでさらに今、ヒゲが伸びて、板垣退助みたいになってきましたんで。

(安住紳一郎)本当に。ちょっと普通に芸大の先生っていう感じの。

(みうらじゅん)なってしまいましたのであれなんですけども。まあ努めてやっぱりバカなことを言って、浄化していかなきゃなんないなとは思っています。

(安住紳一郎)ちょっとでもヒゲをたくわえたら安齋肇さんにも似ていますね。

(みうらじゅん)そうですね。大概、歳を取るとだいたい似てますよね。懐かしい顔になるだけで。歳を取ると個性が没個性ですよね。

(安住紳一郎)そうですか(笑)。

<書き起こしおわり>

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