武田砂鉄 菅首相・年頭会見を語る

武田砂鉄 菅首相・年頭会見を語る 大竹まことゴールデンラジオ

武田砂鉄さんが2021年1月5日放送の文化放送『大竹まこと ゴールデンラジオ』の中で菅首相の2021年年頭会見についてトーク。再び発令が検討に入った緊急事態宣言などについて、実際に飲食店を営むはるな愛さんらと話していました。

(武田砂鉄)昨日、菅さんが年頭会見というの開きましてね。東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県で緊急事態宣言発令の検討に入るということを表明しまして。昨日の会見の時点では具体的にいつからっていうことは明言しなかったですけども。どうやら7日に決定をして、8日か9日に発出されるんじゃないかということらしいんですけど。

とにかくこのところ、菅さんの言葉を発する力っていうのがなかなか不安で……不安な声明とか答弁が続いていまして。首相は昨日の夜にもBSフジの番組に出たんですけれども。「特措法も緊急事態宣言も悩みに悩んだ中で、特に緊急事態宣言というのは発出させていただいた」という風に語っていたんですが。緊急事態宣言はまだ発出されてないんですよね? それなのに、こういうことを言ってしまう。こういう宣言を発出することにより、飲食業の中心に「これから本当にどうやって商売を続けていったらいいのか?」とか窮地に立たされる人も多く出てくる中で……。

(はるな愛)本当ですね……。

(武田砂鉄)そんな中で、まだ発出したものを「発出した」とテレビでポロッと言ってしまうというのは、あまりにも自身の言葉に無責任だなと思うんですけれども。この昨日の会見ではもうひとつ、大きな間違いがありまして。衆議院の解散時期について、「秋のどこかで衆議院選挙を行われなければいけない」という風に、「秋」に限定して菅さんは言ったんですけれども。その後で官房報道室が「『秋のどこか』ではなく『秋までのどこかで』に訂正します」というペーパーを配ったんですね。

(武田砂鉄)これ、つまりもう首相の頭の中ではもう衆議院選挙は秋で確定してるって漏らしたんじゃないかと思われてもしょうがないと思うんですけれども。任期は10月21日なんですけれども。これってやっぱり、前々から言われてますし、昨日も森永さんが仰ってましたけども。東京オリンピックの後に選挙をやろうとしてるんじゃないか。東京オリンピックの開催にこだわってるのは、「五輪をやり切った功績というのを自分のものにすることでしか、有利に選挙をする方法はない」っていうことが頭にあるんじゃないかなという風に思うんですけれども。

昨日の会見でも例の「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として東京オリンピックをやります。世界中に希望と勇気をお届けする大会を実現するという決意のもと、準備を進めていく」ということを言ってるんですけれども。昨日は朝の11時からの会見でわずか30分で終わっちゃったですね。それで最後に内閣広報官が「次の日程がございますので、これで会見を終了させていただきます」という風に言って終わっちゃった。追加質問も認めない。

それで首相動静っていうのが毎日、新聞に載ってますのでそれを見てみると、その後に11時35分から50分まで打ち合わせをした後、17時まで特に予定はなかったんですね。そう考えると、「次の日程」なんて特になかったんじゃないかな?っていう……『ゴールデンラジオ』でも聞いてたのかな?っていうぐらいの日程の空き方なんですよね。

30分で会見を打ち切った後の首相スケジュール

(武田砂鉄)まあ、聞いていてくれたらありがたいんですけども。でも、昨日の会見は大晦日に東京の新規感染者数が1300人を超えて。今日も1200人を超えたということですけども。本当にこういう風に動揺しながら暮らしている国民に向けて、あまりにも言葉が足りないという風に思ったんですね。その年頭会見で何が語られたか?っていうと、先ほど言ったように「緊急事態宣言の検討に入る」と。「限定的・集中的に行うことが効果的である」っていうことを言ったんですけれども。

小池百合子東京都知事ら一都三県の知事が集まって、「緊急事態宣言を出してくれ:ということを国側に申し出ていたんですけれども。今、その「小池さんに押された」とかですね、「菅さんは渋っていた」とか、そういう言い方をされてますけれども。どっちが正しいとかジャッジをしたくなるますけれども……でも、両方に共通するのは本当に「自分の評判を一番の最優先にしてるな」っていう風に感じるんですよね。

この1ヶ月間、菅さんはずっと「緊急事態宣言は必要ない」っていう風に仰っていて。12月14日にも「検討していない」と言って。21日にも尾身会長はまだ『そこはない』ということを言っていたと思う」と。25日にも「今は緊急事態宣言を出すような状況ではない」という風に言ってたんですけれども。まあ、長らく「どうなったら緊急事態宣言を出すのか? 出す場合はどうするのか?」とか、これをずっと語ってこなかったんですよ。

それをこれまでに語っていれば、いろんな職業で準備をしたりとか、事前の対応をすることはできたと思うんですけれども。今回も別に基準が示されているわけでもなくて。なにか、世論に押されたのか、そういった知事の声に押されたのかわかりませんけれども。押し切られる形でやってしまうようだと。それで昨日のその会見の中で読売新聞の記者がですね、「総理はかねてから緊急事態宣言については『経済の打撃が大きい』と言って慎重な立場でしたけれども、今回検討するにあたってはその経済の打撃を和らげる政策としてどういったことを考えていらっしゃるんですか?」っていう風に聞いた。

すると総理は「まず最優先として行うべきはリスクの発生源がかなり多いと言われる飲食。そうしたことを中心に対応すべきかなと思っています」という風に答えたんですけど……まあ、これは質問に対する答えじゃないんですよね。「経済への打撃をどういう風に対応されますか?」って聞いたら「まず飲食です」っていう風な言い方をするっていうのはQ&Aとして成り立っていないと思うんですけども。まあとにかくね、オープニングでもはるなさんが仰ってましたけど。「飲食」というのをとにかく繰り返し仰るわけですね。

(はるな愛)うん……。

(武田砂鉄)で、今回、発令された場合はですね、「従わない場合の罰則はないが、知事は事業者名を公表することもできる」という。それで、「特措法を変えたら罰則も設けるかもしれない」っていうような言い方をしているわけですけれども。その新型コロナ特措法については「給付金と罰則をセットにしてより実効性のある対策を取る」という風に述べていて。通常国会は今月の半ばからなんで、すぐにはできませんけれども。「給付金と罰則」って言い方が出てきたんだけども、その「罰則」というものが一体どういうものなのか? それが具体的に出てきてるわけではないわけですよね。

(はるな愛)なんか、本当にその「罰則」っていう言葉もそうですけど。本当に町に行っていろんな商店、お店がやってるとか、取っている行動とか。そういうのをやっているところをちゃんと見てから、そんな言葉が出るのかな?っていうぐらい、みんな本当にいろいろと対策をしていて。なおかつ、「いい店・悪い店を決める」って……ねえ。できない店もあったりする中で、そういういろんなところを見てくれているのかな?って思いますね。

本当に上の方の大きな企業……お金がたんまりあるところは出ていくところも大きいかもしれないけども。そこばかりと話をしていて。本当にちゃんと、いろんなところに実際に出向いて、それで考えてくれているのかな?ってちょっと思いますね。

(武田砂鉄)そうですね。今、一都三県は時短営業。これまでは10時までということだったのを、8時までにしてくれっていうようにこれから切り替わるわけですけど。はるなさんのお店なんていうのは「8時に終わる」ってなるとなかなか厳しいですよね?

(はるな愛)厳しいですね。

(武田砂鉄)何時からやっているんですか?

(はるな愛)6時からですね。

(武田砂鉄)「6時から8時」っていう風に仮になった場合っていうのは本当に、ねえ。オープンしてすぐに入ってきたお客さんしか入れられないぐらいの?

8時までの時短営業でお店は成り立つのか?

(はるな愛)たぶんどこのお店もそうだと思いますけども。早い時間のお客さんってなかなか来れないんですよ。会社の都合とかもあるから。だから本当に一番人数の少ないところでぱっと切り上げてくださいっていうのは、本当に「お店を閉めてください」みたいなことと同じなので。そこはやっぱりちゃんと……どれだけね、これから決まる補償とかのこともあると思うんですけど。やっぱり、みんな考えてもらいたいですね。そのへんもひっくるめて。

(武田砂鉄)あと、「GoToトラベルキャンペーンのは再開は難しい」って話、これはもう当然だと思うんですけれども。これ、少し振り返ってみればずっと医療現場であるとか専門家から「GoToキャンペーンはやめてくれ」っていうことを言われていたわけですよね。そう考えると、「自分たちの判断がどうだったのか?」っていう検証を全くしないまま、「いや、専門家が言ってますから」とか「知事の方に言われたんで」というような、そういうことをどんどん小出しにしていって。こういう大きな判断をするときに検証がないっていうのはすごく心配になりますよね。

今回はコンサートとかスポーツのイベントは観客数減らすということで。開催要件を厳しくするっていう方向らしいんですが。あとは学校の休校要請もしないし、大学共通テストもやるということで。それから2月下旬までにはワクチン接種を開始するという。それで、オリンピックはやるんだという話になってるわけですけれども。なんか、彼らの頭の中でやりたいことは絶対にずらさないで、そのためにどうやったら強引な腕力で持っていけるか? そのためにお店を休んでもらおうとか。そういうことが優先されてしまうてる感じがすごくあるので。

それでこういう緊急事態宣言のあれこれでいろいろと年末に例の安倍さんの桜を見る会の件なんてのもずっと取り上げられていたものも何となく薄れてしまっているし。元農林水産大臣の賄賂の件なんていうのも吹っ飛んでしまっているっていう。これもやっぱり忘れちゃいけないと思うんですよね。

それで昨日、菅さんが会見の最後で「国や自治体、そして国民の皆さんが感染拡大を減少に転じさせるために同じ方向に向かって行動することが大事だ」ということを仰ったんですけど。まあ、「同じ方向を向く」ためには、やっぱり問いかけに真摯に答えてもらって、透明性を高めてもらうことが必要だと思うんですけれども。そのためには30分で帰るのではなくて、繰り返し説明してもらうしかないわけですよね。

コロナって選挙日程に合わせて収まってくれるわけではないので。今のこの対応を見てると、そういうことしか考えてないのかな?って。1月1日にも年頭所感というのも出しまして。そこで菅さんは「国民の皆さんにとって何が当たり前のことなのか、しっかり見極めて国民のために働く内閣として全力を尽くしてまいります」ということも仰っていたんですけども。

まさにはるなさんがさっき、「実際にお店が連なっている現場を歩いてもらえれば、そんなことはなかなか出てこないと思いますよ」っていうことを仰っていましたけども。まさに今、国民とって何が当たり前なのか?っていうのを全く見てくれてないなという、そういう苛立ちが個々につのっていると思いますけどね。。

(はるな愛)ランチをやっているお店はランチ時に逆にお客さんが密になっていたり。だから本当にこの、時間が短縮して密になったりするところもあるし。もう全然密にならずに静かに食べている、ちゃんとやってるお店もあったりとかするから。本当になんか、「また飲食店か」っていうのもさっき仰ってたように……本当に1回目のことをちゃんと検証されていて。なにかデータとかがあるのかな?って思うんですよ。ちゃんとそれを教えてもらわないと、同じ方向に向きたくても向けないところが本当に多いと思います。

同じ方向を向きたくても向けない

(武田砂鉄)今まで、いろんなエビデンスを積み重ねて。もう「ピンポイントで抑えられます」っていうようなことを何度か繰り返し言ってきたわけですけれども。でも今回、こうやってかなり大きな袋で「ここを全部やめてくれ」っていう風に言ってるわけですよ。そうすると、やっぱり個々の事業者がまた再び痛む。そこに対する痛みがどれぐらいの痛みなのか?っていうことを本当に想像できてるのかな、という風に思ってしまうんですけどね。

(はるな愛)いろんなところ……劇場はOKとか、こうやって、なんか学校もOKにしていて。それで学校でも親御さんは「やっぱり怖いから行かせたくない」っていう人もいらっしゃったりして。なんかこう、分かれていくようなことを仰っているような感じがしてね。はい……。

<書き起こしおわり>

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