渡辺志保とAKI IKEJIRI アトランタの人種差別抗議デモの状況を語る

渡辺志保とAKI IKEJIRI アトランタの人種差別抗議デモの状況を語る INSIDE OUT

(渡辺志保)はい。私からかいつまんでお伝えしますと……今回も非常に警察、警官の人に向けてのヘイトっていうのが全米で広がってしまった。当たり前だけど、アトランタでも広まってしまったけども、そもそもキラー・マイクが一番最初に口にしたのは、「ここに来ることが非常につらかった。ここに来たくなかったです」っていう風に最初、仰っていて。「なぜなら僕の父親は警官なんです」という話をしてたんですね。

で、キラー・マイクのお父さんといとことか姪っ子さんもっていう風に仰っていたかな? とにかく親戚の中に警官がめちゃめちゃいる。ポリスがめっちゃ多いので、「その警官の息子としてここに立つのは非常に辛い」というような話をしていた。それで、さっきも申し上げたように、人口の半数がマイノリティー。もしくは黒人、アフリカン・アメリカンの方が人口の多くを占めている都市だからこそ、さっきアキさんも言ってたみたいに「自分たちの街を破壊するってことは、その自分たちに危害を加えているのと一緒だ」という。

言い方を変えると「共食い状態」じゃないですけれども。「そういう状態に今、なっているから、もしあなたがアトランタを愛してるのであれば、家で今後より良い街にしていくためにちゃんと計画を立てて、戦略を練って。そういったことに時間を使ってほしい」っていう風にスピーチをしたんですよね。で、「このままだとみんな家だとかお店、レストランを燃やし続けてしまう。僕たちがアトランタを失ってしまったら、僕たちには何が残るんだ?」ということをスピーチで話していて。

キラー・マイクのスピーチ

(渡辺志保)結構私は……まあ、もちろん部外者中の部外者ですけども。そのラインが結構響いたなっていう感じです。で、こちらはアキさんの方が詳しいと思うけど。キラー・マイクって単純にラッパーだけじゃないんですよね。その街から評価されている点が。

(AKI)もうね、アトランタ市からねすごい重要な活動家として3年前に表彰されましたからね。

(渡辺志保)それでご自身もね、床屋さんを経営していて。The SWAG Shopっていう。で、それも今、多店舗経営というか。

(AKI)そう。今は(NBAアトランタ・ホークスの)アリーナにも入ったしね。

(渡辺志保)なので、それぐらい街にとっては重要なアクティビティスト(活動家)なんですけど。そのキラー・マイクが涙ながらにスピーチをして。で、市長もすごいピースフルに力強い言葉でスピーチをして。でも、それで多少は収まった感じはあるのかな?

(AKI)いや……もうやっぱりね、暴走化する人はもうとことんまでやってるのかなっていう感じはする。

(渡辺志保)そうか。さっきヤナタケさんも言っていたけど、この暴動に乗っかって。結局、元々はもちろんジョージ・フロイドさんの死で。かつ、この警官への怒りっていうその国のシステムへの怒りみたいなところでみんながデモを始めたわけだけど。結局今、なんかただストレス発散のために物を破壊してるだけみたいに映ってしまうところもちょっとあって。そういうのは、どうなんだろう?

(AKI)あと私が思うのは、やっぱり日本のメディアはそういう暴動の部分だけを大きく取り上げていて、何がホンマに起こっているのか。何を現地の人たちが思っているか、考えているかとか、そういうところが欠如しているような気がして。

(渡辺志保)たしかに。そうだよね。私も日本のテレビ番組を見ていて、今日も夜のニュースで「全米でデモ」みたいな。それでやっぱり当たり前だけど、そのテレビ的にちょっとおいしい部分っていうか。まあ道路が燃えてるシーンとか、みんながお店からバーッて出てきて物をとっているシーンとかを映すんだけど。そこだけ切り取って見るとさ、「ああ、黒人が悪いことをしてる。黒人が暴動をしている」っていう情報しか入ってこない気がして。

アキさんおっしゃる通り、その背景であるとか、歴史……本当に夜のニュースの1コーナーなんて2、3分とか5分ぐらいの時間しかないから。なかなかね、「キング牧師が……」とか、そういったことまで触れるのは絶対に難しいとは思うんだけど。でも、こうした事件が起こるたびに、本当に「黒人が暴動をしています」みたいな、そこしか報じられなくて。私もそれが非常に歯がゆいなって思ってますね。

(DJ YANATAKE)なんか僕もいろいろニュース調べていて。たとえばデモをするにも、こういうデモだけじゃないんだよね。暴徒化してしまうようなものでは……すごいピースに鎮静化させようとしてるような、そういうデモも見かけたし。本当にね、取り上げられるのは一部なのかもしれないけど。うん。

(AKI)結局ね、私たちというか、今、拡散されているのがやっぱりどっちにしろ、黒人はやっぱり非難されるように仕組まれているみたいな。そういうのがすごい今、回っていて。それでやっぱり「それはそうだな」みたいなところがあって。結局、デモ行進とか抗議を黙って見ていたとしても非難されるし。その「人種間戦争をやりたい」って言ってる人ももちろん、それは絶対に非難されるし。なんか……結局、何をしても黒人がそういう風に非難されるっていう仕組みが作られているみたいな。

(渡辺志保)うんうん。負の連鎖というか。

(AKI)そうそう。それがやっぱり、ちょっと被害妄想のきっかけになるみたいなのもあって。ミネアポリスで主要な暴動を扇動した人が、実は白人の警察官やったっていう、そういう都市伝説みたいなものも出ているし。その人が結局、ミネアポリスの警察署が燃えたでしょう? それを全部セットアップしたんじゃないか?っていうような噂もあるし。

(渡辺志保)なるほどね。かつ、この暴動騒ぎの最中に一国の大統領であるドナルド・トランプさんの発言が……もうTwitter社から「その発言はよろしくないですよ」ってオフィシャルに言われてしまうみたいなことがあって。それはまあ、皆さんもここまで騒ぎますわっていう感じもしますね。

(DJ YANATAKE)ちょっと簡単に。知らない人のためにも言っておくと……ちょっと暴力を賛美するような内容をドナルド・トランプ大統領がしてしまって。その表現に問題があったよね。

(渡辺志保)そうですね。抗議してるプロテスターの人たちを「THUG」っていう風に呼んでいて。これ、「THUG」っていうのは、ヒップホップとかを聞いていると、よくないことなんですがそういった言葉にも慣れてしまっていて。だってヤング・サグとかね、スリム・サグとか、名前に「THUG」ってついている方もいるから。でも、やっぱり普通にアメリカで暮らしていると、それって非常に差別的というか、侮蔑的な言葉ですから。

(DJ YANATAKE)ちょっとね、一国の大統領が使うの言葉じゃないなとというのもあったし。まあ片仮名で「トランプ ツイッター」で検索すればいろいろ出てきますで。まあちょっとここでは端折りますけども。そういうこともあったってことね。

トランプ大統領のツイートが火に油を注ぐ

(渡辺志保)ではちょっとこのへんで1曲、皆さんに聞いていただこうかなって思うんですけども。これはアキさんに「何の曲をかけます?」って聞いた時に即答で帰ってきたんですけど。さっき話題に出たキラー・マイクが・・彼は元々はアウトキャストのビッグボーイとかと一緒にラップをしていた人なんですけども。いまはラン・ザ・ジュエルズといって、たぶんヤナタケさん世代だと思うけど、カンパニー・フロウのエル・Pといういい感じのおじちゃんとラップデュオを組んで活動しているんですが。

そのラン・ザ・ジュエルズの『Run The Jewels 3』 というアルバムがありまして。そこからの1曲で『Kill Your Masters』っていう曲が入っているんですね。これは「お前のご主人さまを殺せ」っていう意味なんだけども。非常に強い表現。で、キラー・マイクは本当にこの人、すげえなと私は思ったんですけど。さっき申し上げましたアトランタ市長との会見の時にこの「Kill Your Masters」って書いてあるTシャツ……自分のマーチャンですよね。それを着て涙ながらにスピーチしていて。本当にもうね、彼の主張の強さたるや……っていう感じがしましたので。まあ実際、どんな感じの曲なのかをここで聞いていただきたいと思います。ラン・ザ・ジュエルズで『Kill Your Masters』。

Run The Jewels『Kill Your Masters』

(渡辺志保)はい。今、お届けしましたのがラン・ザ・ジュエルズで『Kill Your Masters』という曲です。ラン・ザ・ジュエルズは今週の金曜日に最新アルバム『Run The Jewels 4』がリリースされるんだけど。これもエル・Pがですね、今回のデモなんかの騒ぎを受けて、「フリーで発表します。リリースします。無料で皆さん、聞いてください」っていう風にこの間、ステートメントを出していて「おおっ!」って思いましたので。『Run The Jewels 4』、私もめっちゃ楽しみにしてるのでまたね、リリースされた暁にはここで紹介したいと思います。

というわけで今日の『INSIDE OUT』は引き続き、アトランタからフォトグラファー兼ジャーナリストのアキさんをお招きしてお話を伺っております。というわけでまあ、5月25日の事件から1週間たって。本当にもう大騒ぎの週末が終わったっていう感じなんですけど。アキさん的に今後、どうなっていくかっていう、そういう話は周りの方としたりします?

(AKI)うーん。そうね。なんか、今後……まあね、ちょっと不透明は不透明で。夜の外出禁止令が……まあアトランタだけじゃなくてLAとかも出ているみたいだけど。でも、ちょっと長引くかな?っていう感じがする。

(DJ YANATAKE)すいません。正直、この事件の前までも、コロナウイルスのあれでみんなずっと自宅待機みたいな。自宅で自粛みたいなの、あったじゃないですか。今、もうその話すら吹っ飛んじゃっているような感じですか?

(AKI)いや、出た。昨日かなんかのニュースで「みんなで集まってデモ行進とかするのはいいけど、かなり危険だ。クラスターが発生するから」っていうニュースは出てましたね。

(渡辺志保)そうか。J・コールがデモに参加した時、J・コールはちゃんとマスクつけてて。さすがだな!って思いましたね。

(DJ YANATAKE)ああ、つけてたね。

(渡辺志保)今、リル・ヨッティもデモに参加していたし。ニューヨークに住んでいるMIYACHIくんもデモに参加していて。そういった姿を見るとちょっと勇気がもらえるっていう感じがしますよね。

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