渡辺志保とAKI IKEJIRI アトランタの人種差別抗議デモの状況を語る

渡辺志保とAKI IKEJIRI アトランタの人種差別抗議デモの状況を語る INSIDE OUT

(AKI)一昨日、私がそのデモに行っていた時に、そんな話をしていたのに……パスター・トロイが来ていたっていうのを言うのを忘れた(笑)。

(渡辺志保)ああ、パスター・トロイ。アトランタの地元の。

(AKI)地元のラッパーで。チャンピオンベルトもちゃんと持っていたので。そこも報告しておこうかなと(笑)。

(渡辺志保)あとね、私も他に今、アトランタで活躍している女性のDJのユキちゃんっていう子がいて。本当に元々ね、渋谷とか六本木でDJしていたユキちゃんからDMをいただきまして。ひとつ、私も皆さんにお知らせしておきたいのが、アトランタ全体が今、燃えているってわけではなくて。ユキちゃんが言うには「実際に今、現地でレストラン業務も兼ねているクラブなんかはもうアトランタで開き始めている。そういったところでDJの営業もしている。で、お客さんもめっちゃ入ってて、皆さん自粛期間が長かったから、そこの間のストレスを発散するかのようにみんな、めっちゃ踊って、めっちゃ歌って。ハッピーにポジティブに過ごしてる。なので暴れているのはごく一部で、基本的にみんな安全に過ごしてます」という風にDMをいただきました。

で、まさにたとえると、渋谷のハロウィンとかの時に謎に渋谷のスクランブル交差点で暴れていたりとか。そういった感じに近いのかなっていう感じらしいんですよね。なので、ちょっと冷静にこの暴動を見て落ち着いていらっしゃる方もいる。かつ、「アトランタはポリス、警官の方たちもみんな黒人で、そのポリスが黒人を無意味に殺したりしてるわけでもないのに、なんでここまで?っていう風に思っていらっしゃる方もいる」という風にDMをいただきました。

(DJ YANATAKE)あと僕、ちょっとすごい聞きたいのがあって。たとえば僕がもう30年前ぐらいに『ドゥ・ザ・ライト・シング』っていう映画を見てから、まあこういったこととかを勉強したり……まあ、そんなにたくさんじゃないですけど。志保とかなんかもっといっぱい、いろんな文献とか映画を見ているだろうからあれなんですけども。今回、前からあるのかもしれないけど。報道のされ方も「人種関係なく」というか。白人のアーティストの人とかもすごい声を上げていて。そういうのを今までよりも強く感じた気がしたんですけども。アメリカの空気はどうなんだろう?

(AKI)もちろん、そんな感じで。私も感動したが最近、すごい知名度をメキメキ上げてきたジェネレーションナウな白人のアーティストがいるねんけど。リル・ウージー・ヴァートとかと同じレーベルで。そのアーティストがInstagramを上げていて。「特にヒップホップを聞いている白人。それからヴィンテージの服とかが好きな白人。そういう人に伝えたいことがある。黒人の音楽、黒人の文化が好きなら、なんで黒人の人間も愛せないんだ?」みたいな。ジャック・ハーロウっていうアーティストなんですけど。

(DJ YANATAKE)ああ、ジャック・ハーロウ。めっちゃ流行ってますよ!

(渡辺志保)ねえ。『WHATS POPPIN』がね。めっちゃ流行ってますよね。

(AKI)そうそう。

(渡辺志保)本当にその通りだと思うし。本当に日本にで活動してるDJやラッパーやその他、関係者の方々もやっぱり彼ら、そのアメリカで戦ってきたアフリカン・アメリカンの方たちのカルチャーにとことんハマって私なんかもこういう仕事をしてるわけだから。やっぱりそこはより……もちろん、彼らと同じ経験はできないにしろ、学ぶこととか、何かを知ることにはもちろんできると思うので。そういった姿勢がちょっとでも広まれば、ちょっとずつだけど事態は改善するのかな、なんてちょっと思ってしまいますね。

(AKI)あと、昨日もちょっとインスタライブで言ったけど。やっぱりキング牧師みたいな平和なやり方をしていても事態は変わらない。変わらなかったっていうところがやっぱりすごい大きいと思っていて。

(DJ YANATAKE)なるほど……。

「平和的なやり方ではなにも変わらなかった」という思い

(渡辺志保)今回、そうだよね。キング牧師とマルコムXって結構並べられますけども。キング牧師が常に平和的解決、非暴力的な解決を望む方で、マルコムXがどちらかというと、本当にいかなる手段をもってしても……必要であれば暴力も辞さないっていう、ちょっと急進的な考え方で。非常に対照的な考え方を持っていたんだけど。もはや、その平和的解決だけでは何も変わらないんじゃないか?っていう、そういうのがトーンとしてある感じかな、やっぱり?

(AKI)もちろん、もちろん。だからみんな、それにもう疲れてる。やっぱり平和的に解決しようとしたNFLの49ersのコリン・キャパニック選手も結局、平和的に抗議して、国歌斉唱の時にひざまずいたことによって職を失ってしまった。(優秀な選手だったにも関わらず、NFLのどの球団も契約をしなかったため)選手生命を絶たれてしまったわけだから。そう。何も解決しない。解決していたのならば、こんな短期間にこういうことが何回も起きるわけないし。

(渡辺志保)本当、そうだね。たしかにね。で、私も今日もいろんなニュースとかを見ましたけれども。2014年。6年前にエリック・ガーナーの事件というのがあって。その時もニューヨークのスタテン島でエリック・ガーナーという黒人男性が警察に首を絞められて窒息死させられてしまった。その時にも「I can’t breath.」っていう言葉、そのフレーズが標語のようにブワーッと全米で広がってデモとかがあったけど。やっぱりそれとほとんど同じような事件が6年前に起きたにも関わらず、この6年で何も変わってないんだっていうことを……なんかそれをすごい突きつけられた感じがして、非常に虚しさというか寂しさみたいなものを覚えましたね。

(AKI)まあ、そこでしょうね。ホンマに何も変わってないっていう。

(DJ YANATAKE)何も変わってないんだよな。そうか……うーん。

(渡辺志保)そうね。しかも当事者の方においてはね、「こんなのもう奴隷制がスタートした時から何も変わってない」って思ってる方も多いだろうから。もうその虚しささるや……っていう感じがします。

(AKI)あと、私がストリートの人たちからよく聞くのは、やっぱりこの暴動がここまで加速したのはその時代の流れもあるし。やっぱりストリートにね、OGがいないんですよ。Original Gang。

(渡辺志保)ああ、元締めみたいな?

(AKI)そうそう。元締め。昔はやっぱりその人らがストリートにおって。若い衆らが「行くぞ!」ってなった時に「お前ら、やめとけ」って言っていたんですよ。でも、そういうリーダーシップが欠けているっていうのもすごい聞く。

(渡辺志保)そうか。じゃあ、そういうコミュニティーのあり方そのものが今……。

(AKI)そうそう。問われているっていう感じ。

(渡辺志保)なるほど。そうかそうか。

(DJ YANATAKE)で、SNSでね、全米どころが全世界にね、こういうことが起きているというのが広がるのは早いし。

(渡辺志保)なるほどね……。いや、ちょっとまた経過をアキさんに機会があればちょっと伺っていきたいなと思います。

(AKI)こちらこそ。

(DJ YANATAKE)本当に貴重な意見、たくさんありがとうございましたね。

(AKI)いえいえ、こちらこそ。こういう場を設けていただいて。ありがたいことです。少しでもね、日本の皆様に本当に何が起こってるのか? そういう悪い部分だけじゃなくてね、全体的なことを見てほしいなと思ったし。

(DJ YANATAKE)ありがとうございます。アキさん的には現在、アトランタにお住まいですが。メインはフォトグラファーのお仕事で。あとはYouTubeの方でも、僕もさっき拝見させていただいたんですが。ジャーナリスト的な動きもされてるということで。

(AKI)そうですね。私はミュージックマガジンとかに不定期ではあるんですけど、記事を書かせてもらったりとか。

(DJ YANATAKE)じゃあリスナーの方でアキさんのお話、興味を持った方はぜひ、アキさんのSNSをフォローしていただいて。ミュージックマガジンの記事とか出る時はぜひ、またチェックしていただきたいと思います。

(AKI)よろしくお願いします。

(DJ YANATAKE)アキさん、ありがとうございました。

(AKI)いえいえ、こちらこそ。ありがとうございました。

(渡辺志保)また、連絡します!

(中略)

(DJ YANATAKE)この番組的に一言、ちょっと言っておこうかなと思ったんですけども。大変にお世話になっています星野源さんが先ほど、Instagramの方でビリー・アイリッシュの今回の一連の発言を引用されていまして。影響力のある方がそういう動きをしていただけたのは非常に良かったなという感じでして。なんか今日の放送の投稿にも「いいね」とかつけてくれたりしたので。ひょっとしたら聞いていただいているかもしれませんが。

星野源さんのInstagramストーリーズ

(DJ YANATAKE)なかなかね、日本だと問題の報道が本当に難しいし。今、アキさんも志保もいっぱいしゃべってくれたけども。たぶんまだまだしゃべり足りないこと、伝えきれないこともあるだろうけど。やっぱりみんな、それぞれが調べるきっかけになってくれたら嬉しいなと思いますね。

(渡辺志保)そうですね。

<書き起こしおわり>

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