渡辺志保とMC RYU Kendrick Lamar『DAMN.』を語る

渡辺志保とMC RYU Kendrick Lamar『DAMN.』を語る Inter FM

渡辺志保さんがInter FM『Tokyo Dance Park』にゲスト出演。DJ YANATAKEさんのケンドリック・ラマーDJ MIXに合わせてアルバム『DAMN.』についてMC RYUさんと話していました。

With legendary MC RYU?????????♀?

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(MC RYU)で、今日はケンドリック・ラマーMIXをやってくれるんだよね?

(DJ YANATAKE)そうなんですよ。

(MC RYU)で、あれによると志保ちゃんが相当聞き込んでいると?

(渡辺志保)いや、ちょっとかなりヤラれました。っていうのも、本当に先週、日本時間の金曜日。4月14日に発売されたばかりなんですけども。この日にアルバムが出ますよっていうのが告知されたのがその1週間前なんですよ。で、その間にファンはずっとヤキモキしていて。待ちに待ったケンドリックの新作っていうことで。世界中のヒップホップナードが飛びついて。もう速攻聞き込んで。

渡辺志保 Kendrick Lamarアルバム『DAMN.』を語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でケンドリック・ラマーの新作アルバム『DAMN.』について1時間、たっぷりと話していました。 ケンドリック・ラマーの新作。待ってました! みやーんZZさん(@miyearnzzlab

(MC RYU)でも今回はね、先週も言ったけどヒップホップナードもそうなんだけど、一般の人もこれは要注目アルバムになっているよ。

(渡辺志保)あ、ありがとうございます。うれしい。

(MC RYU)CNNのエンタメじゃなくてメインのページに出ている。トランプの下にケンドリック・ラマーのニューアルバムが出たから聞けって。

(渡辺志保)素晴らしい!

(MC RYU)アメリカ、いいよね。そこらへんはね。

(渡辺志保)そうね。で、これは追い追い時間があればお話ししたいんですけど、結構今回、ケンドリックが辛辣にトランプの新政権のことをディスしていたりとか。自分がFOXニュースにやり玉にあげられたことがあるんですけど、そういったことを細かく細かく、1曲だけじゃなくて数曲に渡ってそのことに言及していたりとか。聞けば聞くほど、深みにはまるアルバムになっていますね。

(MC RYU)いやー、ケンドリック・ラマーすげー男になったな。コンプトンの小僧だったのにな。

(渡辺志保)そう。もういまやキングですから。

(MC RYU)キングだよね。すげーな。そんな中、今日タケシはケンドリック・ラマーMIXをやってくれるんでしょ?

(DJ YANATAKE)やります、やります。

(MC RYU)それは楽しみだな。たぶん他のラジオではまず聞けないと思いますよ。行ってみたいと思います。『Tokyo Dance Park』生放送。DJ YANATAKE with 渡辺志保ちゃん。ケンドリック・ラマーMIXです。Check it out!

DJ YANATAKE Kendrick Lamar MIX

(渡辺志保)はい。さっそくここから私もヤナさんのMIXにかぶせていろいろとおしゃべりをしていきたいと思うんですけども。いま聞いていただいているのがこのアルバムのリードシングルになりました『HUMBLE.』という曲ですね。アルバムのリリースの数週間前に発売された曲なんですけども。結構この曲を聞くと、ケンドリックがどれだけ自分がすごいラッパーなのか? と。で、「Humble」って「謙虚」っていう意味なんですけども……謙虚でいるのは自分じゃない。「お前らが謙虚になれ。他のラッパーたち、お前ら、引っ込んでろ。俺より先にでるんじゃないよ」っていうことをひたすらラップしている曲で。かなりビートもアグレッシブでね、いま流行りのアトランタ出身のプロデューサーのトラックを使っているんですけども。

(MC RYU)うん。

(渡辺志保)で、この曲だけを最初に聞くと、「あ、次のアルバムってめちゃくちゃケンドリックがとにかく勢いよく攻撃的な、アグレッシブなケンドリック・ラマーになるのかな?」と思いきや、アルバムのフタを開けてみると、実は攻撃的な面だけではなくて、すごく自分の弱い部分なんかもさらけだしていて。そこに二面性っていうのがすごく面白いアルバムになっていますので。まずはこのヤナタケさんのMIXで『HUMBLE.』をお聞きください。

Kendrick Lamar『HUMBLE.』

(中略)

(渡辺志保)はい。ヤナタケさんによるケンドリック・ラマー ウルトラメガMIXを聞いていただいておりますけども。いまかけていただいた『DNA.』っていう曲がありまして。それも今回の最新アルバム『DAMN.』に入っている曲なんですけども。これもすっごい強気な曲なんですが。最初に「I got, I got, I got, I got」ってすごいリマーカブルなラインがあるんですけど。それはケンドリックが昔、アイス・キューブが「ラッパーたるもの、最初の1ラインでリスナーのハートを掴まないとダメだぞ」っていう言葉があるらしくて。それを意識して作った曲だという風にも言っていて。

Kendrick Lamar『DNA.』

(MC RYU)ふーん。

(渡辺志保)随所にそういうレジェンドへの気配りっていうのがこのアルバム、結構入っていて。いちばんびっくりするのは、なんとキッド・カプリが参加しているんですよ。

(MC RYU)キッド・カプリ!

(渡辺志保)で、「World Premiere!」っていうのを……。

(MC RYU)えっ、声で? スクラッチとかじゃなくて、声で?

(渡辺志保)声で。しかも、昔のキッド・カプリの声をサンプリングしてるんじゃなくて、ちゃんとケンドリックがすごいヒップホップの昔の生々しい感じを出したいからって、わざわざキッド・カプリをLAに呼んで。で、何千回もシャウトを録ってもらったっていう。なので、キッド・カプリがアルバムの中に4回ぐらいですかね? 登場して。で、アルバムのMC役っていうか案内役みたいな形でキッド・カプリ先生が参加しているっていう。

(MC RYU)いわゆる、「キーッド、カプリ、カプリ……」じゃなくて。喋っているんだ。

(渡辺志保)しゃべっているっていうか、シャウト。本当に彼の昔のミックステープに入っているようなシャウトで。で、今回、ケンドリックのオルターエゴ(別人格)でカンフー・ケニーっていうキャラクターが。

(MC RYU)あ、そうそう。格好がカンフーなんだよね。

(渡辺志保)チャイニーズのシャツを着てるんですけど。それも「NEWケンドリック、カンフー・ケニー!」みたいな感じでキッド・カプリがカンフー・ケニーをイントロデュースしているっていう。すっごい面白い作りのアルバムになっています。で、あとはちょっと上の世代の方にとってうれしいのは、今回U2とかもね、参加しているっていうね。

(MC RYU)そうなんだよ。あの曲、ヤバいよね。

(渡辺志保)ねえ。なかなか結構、これもすごいリアルにアメリカの現状を……。

(MC RYU)トランプの名前、出てくるね。

(渡辺志保)言ってね。そういう曲になっているんですけども。なので、最新のエッセンスももちろんあるんですけども、それとはまた対照的にそういうオールドとは言わないですけど、すごいレジェンダリーなエッセンスも注入しているヒップホップアルバムというのが今回の『DAMN.』になるかなと思います。

(MC RYU)なるほど。みんな志保ちゃんの話、聞いとけ!

(中略)

(渡辺志保)このあたりはですね、2作前のアルバム『Good Kid, M.A.A.D City』からの曲たちになりますね。このアルバムでもケンドリックが「凶悪な街(マッド・シティ)コンプトンに育った。けれども、僕はあくまでもグッドキッド(優等生)だった」と。でも、優等生には優等生の悩みがありますし、葛藤もありますし。MCになりたい葛藤っていう、そういった自分の人生を脈々とつづったアルバムがこの2作前の『Good Kid, M.A.A.D City』という感じですかね。

(中略)

(渡辺志保)これがさっき、RYUさんとのカンバセーションにもありましたけれども『XXX. feat. U2』。で、最初はすごくこういう攻撃的なケンドリックのラップからスタートするんですけども。この曲が一転、ちょっとジャジーな感じになって。そこからボノのあの印象的なボーカルが入ると。

Kendrick Lamar feat. U2『XXX.』

(MC RYU)ドープなね。

(渡辺志保)ちなみにこの曲、ボノだけが参加しているんじゃなくて、曲のクレジットを見るとU2、4人のメンバーがちゃんとクレジットに表記されているんですね。だからU2と一緒にケンドリックは曲を作ったという。すっごいこれもね、ヒストリカルな出来事だと思います。

(MC RYU)ボノじゃないんだもんね。すごいね!

(中略)

(渡辺志保)こちらはケンドリックの曲ではなくて、いまかかっているのはビッグ・ショーンというラッパーの曲にケンドリックが参加したものをヤナタケさんがかけてくださっているんですけども。この『Control』という曲なんですけど、すごい当時話題になって。なぜか? というとそのグッドキッドなケンドリックが名指しで他の弱腰ラッパーたちをディスって。で、本当のキングは俺なんだっていうことを歌っていて。今回のアルバムの、さっき聞いていただいた『HUMBLE.』とか『DNA.』とかそういうところに通じるアティテュードがある曲なんですけども。今回も本当にケンドリックはさらにバーを……「Raise The Bar」っていう表現がありますけども。

Big Sean feat. Kendrick Lamar『Control』

(MC RYU)基準を自分で上げっちゃってるね。

(渡辺志保)そう。自分でどんどんどんどん上げていく。で、普通にラップをするのではなくて、曲ごとに自分が主張したいエッセンスを何レイヤーにも重ねてアルバムを構築していくっていうね。そこは本当にもう、ずば抜けた才能だと思いますね。

(MC RYU)いや、ただの大口じゃないってことですよ。

(渡辺志保)本当にそう。本当、そうなんです。で、前作『To Pimp A Butterfly』にもたくさんジャズミュージシャンなんかも参加していて。ロバート・グラスパーとかサンダーキャットとかも。

(MC RYU)そうだね。有名な人がね。

(渡辺志保)そう。参加していたんですが、今作にもカナダの新鋭のジャズバンドBADBADNOTGOODとか、前作に続きカマシ・ワシントン、サンダーキャットとかですね。本当にそういう、ヒップホップじゃなくてブラックミュージック全体をまるっとカバーしてケンドリック色に染め上げているみたいな。そういうスキルも本当に素晴らしいので。ぜひぜひ音にこだわって聞いてほしいなという風にも思います。

(中略)

(MC RYU)(MIXのキッド・カプリのシャウトを聞いて)あ、キッド・カプリだ! 知らなかった!

(渡辺志保)ヘッズは血が騒ぐいまのシャウトですよね。

(MC RYU)いや、もうキッド・カプリはいちばん最初のゴールデンエイジ・ヒップホップのイケイケDJだもん。

(渡辺志保)もちろん!

(MC RYU)ニューヨーク・レペゼン!

(中略)

(渡辺志保)いまバックでかかっているのは去年、久しぶりにアルバムをリリースしたア・トライブ・コールド・クエストのアルバムに収録されているケンドリックが参加した『Conrad Tokyo』っていう曲があるんですけども。ア・トライブ・コールド・クエストもたとえば今年のグラミー賞なんかでもすごく、「もっと自分たちのことを主張しないといけない」ということで、アンチ・トランプというか、そういうちょっと政治的な色の入ったパフォーマンスをしましたけども。ケンドリックもやっぱり、冒頭にも申し上げました通り、やっぱりいまのアメリカ社会が抱えている問題。そしてそれに対して自分たちがどうしないといけないか?っていうのをひとつテーマに置いていて。で、最新のインタビューが日本時間の今朝、新しく発表されましたけれども。Beats 1 Radioのインタビューでも「今作のアルバムは自分たちが変わらないとチェンジすら起こらないんだということを伝えたい」みたいなことも言っていまして。そのインタビューを聞いて、またこの『DAMN.』を聞く楽しみが増えたなという風にも思っているんですけども。というわけで、引き続きヤナタケさんのケンドリックMIX、お楽しみください。

A Tribe Called Quest『Conrad Tokyo (ft. Kendrick Lamar)』

(中略)

(渡辺志保)現代のアメリカの社会運動のアンセムとも言われておりますケンドリック・ラマー『Alright』! これは前作『To Pimp A Butterfly』からのシングルになりますね。

(MC RYU)「Be Alright♪」。名曲だね!

Kendrick Lamar『Alright』

(MC RYU)さあ、ヤナタケがケンドリック・ラマーMIX、かけてくれましたが。まあ一言でいっちゃうと、この人すぐわかるね。トラックもちょっと違うし。ちょっとこの人はすごいな。

(渡辺志保)うんうん。

(MC RYU)本当にヒップホップの中でも新しい道に引っ張っていってくれるアーティストであることは間違いないね。やること、言っていること……いままでのヒップホップの道に外れることなく(笑)。

(渡辺志保)そうそう。彼がすごいのはオーセンティシティも大事にしながら、どんどんどんどんそれを発展させていく。しかも、それにちゃんとスキルの向上みたいなところもあわせてっていう。

(MC RYU)そのドレイクもチャンスもいいんだけど、さっき志保ちゃんが言ったみたいにアイス・キューブにプロップスを払ったり、U2と組んでみたり。おじさんも喜んじゃう。

(渡辺志保)そう。わざわざニューヨークからキッド・カプリを呼ぶっていうね。

(MC RYU)そうなんだよ。いま、もうね、そう。キッド・カプリを呼ぶとか。つっこみどころがないよね。いまんところケンドリック・ラマーは本当にね、いま最強じゃねえかな

(渡辺志保)はい。ぜひぜひいろんな方に聞いてほしいなって思います。

(MC RYU)タケシ、ありがとう!

(DJ YANATAKE)イエーッ! ありがとうございました~。よいしょ~!

<書き起こしおわり>

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