朝井リョウと高橋みなみ『テラスハウス』問題を語る

朝井リョウと高橋みなみ『テラスハウス』問題を語る 高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと

(CM明け)

(高橋みなみ)でも、なんか朝井さんが「何かと何かに挟まれながら、少なからず影響を受けて私たちは生きている」っていうのがね、「うん、そうだな」って思った。

(朝井リョウ)でも、本当にそれは思いますよ。「人間」とはよく言ったものよ。「人の間」と書いて「人間」とは。

(高橋みなみ)本当ね!

(朝井リョウ)本当、そうで。だから仕事とかしてても、そうじゃないですか。もう一番上ぐらいしかその両側に人がいないっていう人はいなくて。誰もが誰かの間でさ、左の人も右の人も機嫌よくいられるようにみんなバランスを取りながら、でも確実に影響を与えながら生きていて。でも、それで言うとラジオもこのニッポン放送の岡村隆史さんの件とか、あったじゃないですか。あれもね、もちろん発されてしまった言葉は本当にダメなものであって。

そう思いつつもさ、実際にラジオをこうやって何年かやっていると、「ブース」という特殊な空間の中で、目の前の人であったりとか……特に生放送だったら聞いている人とかももっと頭によぎるだろうし。その人たちを盛り上げなきゃ、笑わせなきゃという気持ちから「ああ、言わなければよかった!」っていう言葉が自分から削り出てしまうみたいなこともまあ、立場的にはわかるじゃないですか。

(高橋みなみ)日々、生きていてそんなたくさんトピックスが生まれるかっていうと、そうじゃなくて。

(朝井リョウ)全然、そうじゃないですよ。

他人事ではない岡村隆史問題

(高橋みなみ)そうなんですよ。特に、まさにこのコロナ禍の中だとおうち時間が増えて。私たちも収録でさ、お互いにオンラインでやってたりとかしたけどさ。やっぱり、「家にいるからあんまり特殊なことが起きてないよね」とか、打ち合わせの時にね、話したりとかしてたけど。

(朝井リョウ)そうなると、なんか手っ取り早いのが、たぶん誰かを悪く言うことか、下ネタみたいなことになるっていう、その図式はわかるんですよ。そうそうそう。その中でも、言ってはいけない言葉がもちろんあるし。「言ってはいけない」どころか、そういう考えを……でも、それも難しい話なんですけど。っていうことを最近……だからたしかKing Gnuの井口さんがラジオをやめる時に仰ったのが……これ、ちょっと全部合っているかはわかんないですけど。「1年間、深夜ラジオをやって。笑わせるために思ってもないことを言っていることがすごく怖くなったりとか。今後ももっと言ってしまうんじゃないかと思った」みたいなことを井口さんはやめられる時に仰っていて。それはあんまり聞いたことがない理由だったんだけど、でもすごいわかる!っていう。

(高橋みなみ)うん。すごくわかるね。

(朝井リョウ)でもそれをちゃんと理由で言った人って今までいなかったんじゃないかなと思って。結構、「ああ、新世代だな」と思って。でも、なんかそれを正直に言った方が分かってくれる人は多いのではないかということも私は思ったんですよね。その反響を見た時に。そうそうそう。だからちょっと、そのあたりはラジオにもすごい繋がるところがあるなと思って。いろんな今回の出来事が。

(高橋みなみ)そうね。会話ってやっぱり相手あってのことだからさ。相手が返しやすい言葉をさ、面白おかしく言っちゃったりとかするじゃん?

(朝井リョウ)はいはいはいはい。

(高橋みなみ)で、ラジオも私は今、TOKYO FMだと『これ何?』で……。

(朝井リョウ)『これ何?』……?

(高橋みなみ)いやいや、 なんでそこを知らんくなっちゃってるの?(笑)。嘘でしょう? 結構いじってくれていたじゃん!(笑)。『これ何?』は今、パートナーができていて。パートナー制になってるから、なんか自分がずっと「2時間、言葉で埋めなきゃ」って思ってたところにちょっと余裕ができると、変な話、「ああ、今まで1人でやってた時に思ってもみなかったこと言ってたな」とかっていう気づきもあったりするの。

(朝井リョウ)いや、そうだよね。だってしゃべり続けないといけないもんね。ラジオって。マジだ。

(高橋みなみ)そう。マジでね。やっぱりさすがにずっと無音なわけにはいかないし。「何秒か無音になっちゃうと放送事故になっちゃうよ」とか教えてもらったりするとさ、余計に「なにか言わなきゃ! なにか言わなきゃ!」って。で、その延長にきっと、「誰かが楽しんでくれるなら、パフォーマンスでもこれ言っておかなきゃ!」みたいなのがあるけど。でも、その言葉が本当に全員が楽しめてるのか?っていうとさ、その瞬間の判断ができないじゃん。

(朝井リョウ)できないしね。本当、全員が楽しめる言葉なんてたぶんそもそもないけど。やっぱり、でもできる限り目指したいという気持ちもあるし……っていうところですよね。本当に。ちょっとね、そう。

(高橋みなみ)でも、全員が楽しめる、ほんわかと幸せにっていうコンテンツとか、その場所って、あるのかな?っていうのもね。

(朝井リョウ)そう。それだけだとさ、なんか自分の心の栄養が足りなかったりもするのもわかるじゃん。

(高橋みなみ)刺激が少ないっていう?

「誰もが楽しめるもの」さえあればいいのか?

(朝井リョウ)なんか、そうじゃない引き出しでから出てくる言葉で元気をもらう時も当然あるし。だから、海外とかで割と「自殺のシーンをなくしましょう。そこからネガティブな感情をもらってしまうから、フィクションの中で自殺のシーンをなくしましょう」っていうこともありますけど。でも、やっぱり私はなんか全部、全員がハッピーエンドになる作品を見て死ぬほど落ち込んだりもするし。逆にね、そのたくさんの人が亡くなってしまう作品を見て、明日への活力をもらったりもすることもあるので。そう。なんかそこがね、そのイコールじゃないところが……っていうことなんですよね。心は本当にイコールじゃないですから。受け取るものと感情っていうのは。

(高橋みなみ)幸せなものを見たら幸せになれるとは……。

(朝井リョウ)そう。限らないからさ。そうなのよ。そこが、すごく……。

(高橋みなみ)しかも1回ね、当たり前に生活の中にそのコンテンツがあって、楽しませてもらったらたしかに、なくなった時に、1個抜けちゃうじゃん?

(朝井リョウ)そうですね。なんか友達から教えてもらったんですけど。その「思考は人生税」っていう言葉を教えてもらって。私はすごいいい言葉だなと思ったの。

(高橋みなみ)なにそれ?

(朝井リョウ)つまり、「人生の中で絶対に納めなければならないものだから、考えることを先延ばしにすればするほど重くなってくよ」っていう。これ、出典はどこか、ちょっと分かってなくて。友達から聞いた言葉なので。そう。「それ、めっちゃいい言葉!」と思って。で、なんか……本当、コロナの期間ってすごい、いろんな人がいろんなことを考えたと思うんだよね。マジで。

(高橋みなみ)うん。考える時間もたくさんあったし。結果、自分と向き合わなきゃいけなかったから。

(朝井リョウ)そう。強制的にもうね。いろんな人がいろんなところでいろんなことを考えてたんだなってことが分かって。そういうのもあるかもしれない。今回のこの、こういう回になったのは。

(高橋みなみ)本当に自分たちもこうやって発信できる場があるから。

(朝井リョウ)今のところね。

(高橋みなみ)「今のところ」って……(笑)。

(朝井リョウ)いや、マジで、マジで。でも、マジでそうよ。

(高橋みなみ)でも本当、言葉への責任というかさ。

(朝井リョウ)それも感じますし。本当、「思考は人生税」っていうのはちょっと再度、思い出して。「ああ、本当にそう。このタイミングで来たな。『収めろ』っていう何かが来たな」っていうことを私は感じました。

(CM明け)

(高橋みなみ)エンディングです。

(朝井リョウ)はい。たまに『ヨブンのこと』で訪れるこういう回。

(高橋みなみ)でも、ここまでなんか……。

(朝井リョウ)ちゃんと。しゃべり場みたいな。

(高橋みなみ)「ちゃんとしゃべったのも初めて」っていうのもおかしいんだけども(笑)。

(朝井リョウ)みたいな空気になりましたけども。でも本当にね、ちょっと避けられなかった。この3日間、ずっとそのことを考えてたから。もう。それ以外のことで30分なんかしゃべる気がちょっとしなかったっていうのがありました。

<書き起こしおわり>

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