(渡辺志保)ああ、なるほどね。そうそう。私も、ビヨンセって本当に打ち出していることが明確だし、彼女ってやっぱり辰巳さんも書いていらっしゃる通り、優等生だから。やっぱりそのブレなさとか彼女が目指してるビジョンみたいなものがすごいよくもうバシバシッと伝わってくるわけですよね。コーチェラで披露したステージであるとか、過去のアルバム作品を聞いても。
でも本当、リアーナって仰る通り、ちょっと根無し草感っていうか。で、まあちょっとヤンキー、ギャル的な……まあいい意味で、褒めているけどね(笑)。そのヤンキーっぽさが濃すぎて。ちょっと彼女は……まあでもその代わり、「次はどんなことをしてくれるのかな?」っていうワクワク感が誰よりも強いアーティストっていう感じがするんですけど。そうか。書くのもリアーナの方がちょっと苦労されたんですね。
(辰巳JUNK)でもこれ、ちょっと書きたかったっていうか、こっちの勝手な思いで直接的には書いてないんですけど。ビヨンセの場合はやっぱりその完璧なキャラみたいなのが結構有名じゃないですか。女王というか、すごい立派な人みたいな。で、やっぱり「優等生っぽいよね」みたいな声ってアメリカでもあるんですけど。でも、彼女がやってきたことがすごい今、振り返ると革命的だった上にたぶん、それはすごいリスクがあったっていうことを書きたかったから。たぶん優等生のだけじゃ無理だろう、みたいな。
本でも書いたんですけども、ビヨンセってすごい叩かれてるんですね。半分からは好かれて、もう半分からはすごい憎まれているみたいな。それをやれるぐらいなんで、やっぱりスーパースターの器というか。たぶん普通じゃあ無理っていうか。そういうことを書きたかったんですけども。でも、リアーナはたぶんそのビヨンセと逆だから良かったみたいな。当時はめっちゃいろいろと叩かれたり笑われていたりしてたけど、最終的に先を行っていたみたいな。トレンドセッター的な感じだから、それを長い文の中で書ければよかったかなっていう。
(渡辺志保)うんうん。でも本当にそうですよね。私もこうリアーナのFENTY……コスメ、化粧品の商品をよく使っているんですけど。なんかリアーナはファンに寄り添ってくれてる感じがするの。世界中のコンシューマーたちに。ビヨンセはいい意味でその寄り添ってくれてる感がない。どちらも「いい意味で」っていうことなんですけども。ビヨンセはやっぱり孤高の女王だから。なんかね、ビヨンセのプロデュースした服を着たとしても、「私もビヨンセになれる」みたいな感じはあんまり個人的にはなくて。
でもリアーナのFENTYのコスメを使うと「ああ、なんかちょっとリアーナに近づけるかもしれないな」みたいな。だってリアーナの方が自分のすっぴんを晒してね、VOGUEの企画で自分のメイクチュートリアルとかも披露してくれてるぐらいだから。その「寄り添ってくれてる感」が個人的にはすごいリアーナの方が強いなっていうのを前々から感じてたし。
それでそのビヨンセの完璧感に関しても、彼女もずっと子供の頃からお父さんに厳しくスターになる教育をされてきたわけですから。やっぱりそこのベースっていうものがあるのとないのとでは全然違うのかなとも思いましたね。
(辰巳JUNK)そうですね。ビヨンセの方がやっぱり子供の時からずっとやってたと思うんで。あとは目指したいところというか、表現したいところもあると思うんですけど。でもこれ、絶対に書きたいなと思って無理矢理本に入れたんですけど。最近、分かったのがリアーナって最初、ジェイ・Zとかにスカウトされたじゃないですか。バルバトスの島から。それでまあまあ、最初はそんなに売り出されていなかったみたいなことを最近、LA・リードが暴露していて。
で、ティアラ・マリーっていう子の方がビヨンセっぽかったから、そっちの方をスターにしようとしていたんだけども、ショウケース的な新人お披露目会みたいなのを業界内でやったら、ジェイ・Zと一緒にいたビヨンセが「あのリアーナっていう子、あの子は獣よ!」みたいなことを言って、それで風が変わったみたいな。「マジか!」みたいな(笑)。
「あのリアーナっていう子、あの子は獣よ!」(ビヨンセ)
L.A. Reid Recalls Meeting 17-Year-Old Rihanna for the First Time: Exclusive Memoir Excerpt https://t.co/ZpYyDKaEwC @billboardさんから
「after the showcase, Beyoncé came up to me.
"That Rihanna girl," she said, "she's a beast."」— みやーんZZ (@miyearnzz) May 9, 2020
(渡辺志保)でも私もそれを辰巳さんのこの本を読んで思い出したんですけども。ちょうどティアラ・マリーとリアーナが本当に同じ時期にデビューして。というか、デビューさせられて。それでティアラ・マリーの方がちょっと本格派ディーバみたいな売り出し方。それでちょっとそのアメリカのヒップホップのストリートからのディーバみたいな感じの売り出し方だったんですよね。
かたやリアーナはなんかちょっとPVも安っぽくって。『Pon de Replay』でね、デビューしたわけですけども。ちょっとPVも「これ、どこで撮ったの?」みたいなちょっと安っぽい仕上がりになっちゃっていて。
明らかにティアラ・マリーの方がアルバムのジャケットの写真とかも気合が入っていたのを思い出しまして。でも本当にあっという間に逆転しちゃったし。ティアラ・マリー、彼女もアルバム1枚で終わってしまったような、ワンヒット・ワンダーになってしまったから。いや、わからないな……っていうね。でも、それはビヨンセの鶴の一声があったからっていうのがまたね、業界っていうか……。
(辰巳JUNK)そう。運命的なね。「ビヨンセだったんだ!」みたいな。
(渡辺志保)そういう感じ、しますよね。で、リアーナのこと、他の章でもちょっと登場するところがあるじゃないですか。それで私が本当に「鮮やかだ」という風に思ったのはですね、ブリトニー・スピアーズの章でいくつもの……ひとつのワードを介して、3つの曲が連なるように辰巳JUNKさんが紹介していらっしゃる様子。それが本当に鮮やかだっていう風に思いまして。まあブリトニーのね、「働きなさい、ビッチ」という。『Work B**ch』という曲を軸にして。それでどんどん女の子の労働歌っていうか。そういったところに着目している点がもう本当に私には絶対絶対ない視点だと思ってですね。本当に目玉が飛び出そうな感じで読みました。
女の子の労働歌
(辰巳JUNK)ありがとうございます。これはですね、ブリトニー・スピアーズが2013年ぐらいかな? それぐらいに『Work B**ch』っていうまたすごい曲を出しまして。「働きなさい!」みたいな感じの労働讃歌的な感じなんですけど。その時は「働けば、どんどん働けば高級車とかに乗れてお金持ちになれるよ」っていう内容でなんですけど。
その後、2016年ぐらいにヒットしたのがリアーナがドレイクと出した『Work』という曲で。あとはフィフス・ハーモニーっていうガールグループの『Work from Home』っていう曲なんですね。
(渡辺志保)あのフィフス・ハーモニーの曲ってミュージックビデオもすごいことになっていて。ぜひ併せて見てほしいなって思いますね(笑)。
(辰巳JUNK)そうなんですよ。その「Work」を連呼している点ではブリトニーと一緒だけど、こっちの方がなんか不景気っぽくなっているみたいな感じで。その経済がアメリカもだいぶマズくなっていて、格差が広がっているよっていうようなことを書いているんですけども。
(渡辺志保)そう。だから女の子が歌う「Work」にもいろんな種類がそりゃああるわなというね。そういうことも気づかされた曲でもありました。で、リアーナとドレイクはね、いろいろと噂が……まあドレイクの片思いみたいなところも取りざたされがちな2人でもありますので。その『Work』についてもこのアメセレで触れられているのは個人的にもちょっと嬉しかったところでもありますね。というわけで、ちょっとここでどんな風にリアーナが『Work』を歌っているのか、皆さんにも聞いていただきたいと思いますので。またまた辰巳JUNKさんから曲紹介をお願いします。
(辰巳JUNK)はい。これは『Work』を連呼するので「働きずめでタルいな」みたいな気分で聞いていただけると面白いです。リアーナで『Work feat. Drake』。
Rihanna『Work feat. Drake』
(渡辺志保)はい。お届けした曲はリアーナで『Work feat. Drake』でした。この曲にまつわる逸話もぜひぜひこの『アメリカン・セレブリティーズ』で読んでいただければと思います。
というわけでここまで辰巳JUNKさんをお迎えしてお話をしてきましたが、引き続き次週も辰巳JUNKさんに登場していただきますので皆様、来週も楽しみに待っていてください。
<書き起こしおわり>