渡辺志保『The Birth of a Nation』とNas『War feat. Raye』を語る

渡辺志保『The Birth of a Nation』とNas『War feat. Raye』を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中で話題の映画『The Birth of a Nation』についてトーク。そのサントラの中からNas『War feat. Raye』を紹介していました。

(渡辺志保)ここでもう1曲、私の推しチューンを紹介したいと思うんですけども。みなさん、『The Birth of a Nation』という映画のタイトルを聞いたことがありますでしょうか? アメリカでは10月7日に公開を控えておりますインディペンデント系の映画なんですけども。こちらが今年のサンダンス映画祭で二冠を獲得ということで、かなりアメリカの方では盛り上がっているんですけども。そのサントラがね、すごくグッチ・メイン(Gucci Mane)とかリル・ウェイン(Lil Wayne)とかが参加していて豪華ですよっていう話なんですけども。

そもそもね、この『The Birth of a Nation』という映画なんですけども、もともとは……私ね、大学でアメリカ文学研究を専攻していたんですよ。で、そこで教材としてかなりトラウマ的な思いでがあるんですけど、もともと1915年にグリフィスという映画監督が撮った映画(邦題『國民の創生』)でして。アメリカ初の長編映画として、約3時間ぐらい。165分の上映時間ということで。それで、ハリウッド史的にも名を残す名作と言われているんですけども。

で、これがですね、「問題作」という風にいまのいままで言われておりまして。なぜか? と申しますと、舞台は南北戦争の後。で、リンカーン暗殺で黒人が解放されました、みたいな本当に混沌としたアメリカの時代が舞台なんですけども。あのね、「Black Face」っていって白人の人たちが顔を黒塗りにして黒人の役を演じていたりというところもあったり……それだけですっごい人種差別的なんですね。で、プラス、描かれているのがKKK(クー・クラックス・クラン)と呼ばれる白人至上主義の団体の人たちで、その人たち、クー・クラックス・クランのメンバーが「いかにアメリカに住む黒人は野蛮で悪いやつらか?」っていう風に……それを延々と、無声映画なんだけど、音声なしで描いているんですね。

なので、結構エグい、白人の女の子が崖っぷちから落ちて亡くなってしまうシーンであるとか、結構無残なリンチのシーンなんかがあって。で、人道的にもこの映画は間違っているという意味でもダブルの意味ですごく有名な映画なんですね。日本語のタイトルは『國民の創生』というタイトルなので、Wikipediaなどで調べてもらえればいいんだけど。

町山智浩『國民の創生』解説

で、今年公開されているこの『The Birth of a Nation』なんだけども、これは時代背景も変えまして、舞台は1831年。で、なにを主軸に描いているか? といいますと、ナット・ターナーの反乱。ナット・ターナーっていうのはもともと黒人奴隷だったんだけど、「俺たちはこのままではイカン!」という風にいろんな人に声をかけて、「俺たち、反乱を起こそうぜ!」ということで、当時「ご主人様」と呼ばれていたような白人たちに立ち向かった、そんな黒人奴隷の名前がナット・ターナーと言うんですけども。1831年に起きたナット・ターナーの反乱を題材にしている映画ということで。

で、こっちはこっちでかなりね、逆に白人に対する結構えげつない、グロい描写があったりするみたいで。そういった意味でも、サンダンスではかなり評判になったみたいですね。ちなみに今年、アカデミー賞なんかが本当にオールホワイトみたいな。視界のクリス・ロックも揶揄してましたけど、「白人にしかスポットライトが当たってねえじゃん!」みたいな感じでかなりこちらも問題になったんですけど。そんな中で来年ね、もしかしたらこの『The Birth of a Nation』がアカデミー賞でもかなり有力な作品としてノミネートされるんじゃないか?っていうことで、いまからちょっとね、ざわついている人がいたりいなかったり。私もちょっと公開を楽しみにしている口でございます。

町山智浩『The Birth of a Nation』解説

で、そんな『The Birth of a Nation』のサウンドトラックの中からナズ feat. ライ(Nas feat. Raye)の『War』という曲をお届けしたいと思うんですけども。こちらもですね、ナズがそのナット・ターナーのことをラップしていたりとか、あとは「40エーカーと1頭のラバ(40 acres and a mule)」という言葉がありますけども。スパイク・リー(Spike Lee)なんかも自分のプロダクション名に冠していますが。そういったアフリカン・アメリカンの方の歴史を読み解くのにふさわしいキーワードなんかも盛り込まれていますので。まあまあ、ちょっと興味ある方はRap Geniusなんかでリリックの意味とか単語とかね、どんな単語を使われているのかな?っていうのを見ていただければと思います。

Nas『War feat. Raye』歌詞(Rap Genius)

では、聞いてください。ナズで『War feat. Raye』。

Nas『War feat. Raye』

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました