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町山智浩『ミッドサマー』を語る

町山智浩『ミッドサマー』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカで大ヒットしたアリ・アスター監督のホラー映画『ミッドサマー』を紹介していました。

(町山智浩)今日はですね、『ミッドサマー』というアメリカでこの夏に大ヒットしたホラー映画のお話をします。これ、「ミッドサマー」というのは夏至のことですね。昼間がいちばん長い日ですね。それで「ミッドサマー」っていうお祭りがイギリスとか北欧とかドイツとか、いわゆるゲルマン系の人たちが住んでる国ではあるんですよ。

(外山惠理)夏至のお祭りがあるんですか。へー!

(町山智浩)そうなんですよ。5月にやるところもあれば、夏至にやるところもあるんですけども。あのへん、冬が長いですから。だから夏にね、お祭りをいっぱいやるんです。アメリカでもね、スウェーデン系の人はいっぱい住んでるミネソタとかではやっぱり夏至祭ってあるんですけど。で、その夏至祭っていうのはもうほとんど日が落ちないんですよ。白夜なんで。1日中、ずっと明るいんですけど。そこでずっと飲んで食って踊って……っていうのをやるのがそのお祭りなんですね。そこを舞台にしたホラー映画なんですよ。

(山里亮太)ホラーにしにくそうな。ずっと明るいんだもん。

(町山智浩)ホラーにしにくい。1回も暗くならないんです。この映画は。ずっと明るいんです。ずっとお日様が出ていて。そちらに写真があると思うんですけども。お花がいっぱい咲いてて、青空で。

(外山惠理)お花畑に十字架が見えます。

(町山智浩)それはね、十字架じゃなくて「メイ・ポール(Maypole)」という柱なんですけども。夏至祭とか5月祭ではそれをまず、お祭りの最初にそれを立てるんですよ。そのボールを。で、その周りで踊ったりするんですね。

(外山惠理)ああ、本当だ。よく見るとその周りに女の子たちかな? いっぱい踊ってる。白い服を着た……。

(町山智浩)そうなんですよ。で、その子たち、よく見ると髪の毛にお花をいっぱいつけてませんか?

(外山惠理)はいはい。ちょっと遠いけど、お花つけてそうな格好してますよ。白いふわふわした感じで。

(町山智浩)はいはい。白い服を着て、野の花の冠を作って。それをみんな髪に飾ってっていうのがその5月祭とか夏至祭の決まりなんですよね。だから寒いところだとあんまり花が咲かないから。冬がすごく長くて。で、僕はスウェーデンってね、1回行った時が11月かなんかだったんですけども、お日様が出るのは10時ぐらいで。でね、午後の2時ぐらいにはもう暗くなっちゃうんですよ。

(外山惠理)ええっ? ほぼ明るい時間がない……。

(町山智浩)殆どない。そういうところだから、夏になるともうずっとお日様が出ている間は寝ないで騒ぐっていうことらしいんですよ。だから夏至祭とかね、ストックホルムとか都市部に行っちゃうとそんなの働いているやつなんか誰もいないって言いますね。

(外山惠理)へー!

(町山智浩)みんなお花が咲いてるような山の方に行って遊んでるから。ずっと。

(山里亮太)そうなんだ。そんなお祭りをテーマにホラー?

(町山智浩)そう。だから聞いているとすごく楽しそうでしょう? どうしてそれがホラーになるんだ?っていう映画なんですけども。

(外山惠理)踊っているだけのような感じですけどね(笑)。陽気な感じの。

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夏祭りで踊る意味

(町山智浩)で、こうやって踊っているのにはまた意味があるんですけども。日本の盆踊りも同じなんですけども。なんで夏祭りとかそういうのでみんな、踊るんだと思います?

(山里亮太)なんかその、ご先祖さんに捧げるみたいなことで?

(外山惠理)盆踊りは亡くなった方への……。

(町山智浩)セックスだよ、セックス!

(山里亮太)えええーっ!

(町山智浩)セックスだろ!

(山里亮太)なんて真面目な答えをしちゃったんだ、俺は……。

(町山智浩)夏祭りの踊りはセックスだろ!

(山里亮太)どういうことですか?

(町山智浩)そういうもんだよ!

(山里亮太)フフフ、祭りっていうものは(笑)。

(町山智浩)そういうものですよ。

(山里亮太)たしかにね。お祭りベイビー、いっぱいいるっていうもんね。

(町山智浩)豊穣のための儀式ですから。そこで相手を見つけて。秋に結婚をして……っていうのが自然のサイクルなんですよ。昔は盆踊りっていうものはそういうもので、相手を見つけるためのものなんですよね。

(外山惠理)そうなんですか!

(町山智浩)まあ、いまでもね。ああ、こういう文化も説明しないと伝わらないのか!

(山里亮太)いや、なんか……ご先祖さまのためだと思っていました。

(町山智浩)もう世界中で春から夏にかけてのお祭りっていうのはまあ、結婚相手を見つけるためのものですよ。古代から。で、そういうところなんですけど。この話はね、アメリカ人の話なんですよ。で、主人公は女子大生でダニーちゃんっていう女の子で。これはフローレンス・ピューっていう前に紹介した『ファイティング・ファミリー』っていうプロレス家族の話の末の女の子なんですけども。

町山智浩『ファイティング・ファミリー』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカのプロレス団体の元女子王者ペイジを描いた映画『ファイティング・ファミリー』を紹介していました。

で、その子の一家がある不幸で全員死んでしまうんですよ。映画のいちばん最初で。で、彼女は天涯孤独の身になっちゃって。クリスチャンっていう彼氏がいるんですけど、彼氏が慰めなきゃいけない。守ってあげなきゃいけないのに、だんだん面倒くさくなっちゃうんですよ。その彼が。まあ、大学生だからね。そこまで真剣じゃないんですよ。彼は。で、男友達同士でスウェーデンに行って。友達がスウェーデンの留学生なんで、「スウェーデンの山奥の村で行われる夏至祭にみんなで行こう!」っていう計画をこそこそ立ててるんですよ。

(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)そのダニーちゃんを放っておいてね。で、それを察したダニーちゃんが「あんたたち、ひどい! 私、こんな1人ぼっちなのに……」って泣いたんで、しょうがないからスウェーデンに連れていくんですよ。で、山奥の村に行くと、夏至祭をやっていてて。そこで「メイクイーン(May Queen・5月の女王)」というお祭りのいちばんの女王を選ぶという踊りの大会みたいなのがあるんですよね。メイクイーンっていうじゃがいもはそこから来ているんですよ。

(外山惠理)ああ、そうなんですね!

(山里亮太)いや、いまじゃがいものことなのかな?って思ったら……。

(町山智浩)もともとメイクイーンっていうのがあるんですよ。で、そこでお祭りに参加するんですけども……ただ、そうやって楽しいお祭りのように見えるんですけど、スウェーデンっていう国はヨーロッパでは最も文明が遅れた国だったんですよ。これ、スウェーデンのイメージっていうとすごい先進国で、福祉国家っていうイメージがありますよね。

(外山惠理)そんな感じ、しますね。

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バイキングの国、スウェーデン

(町山智浩)でも、いちばんヨーロッパの中でキリスト教になるのが遅れたところなんですよ。12世紀半ばぐらいまで、鎌倉時代ぐらいまで、バイキングの国だったんですね。で、土着の北欧神話に代表されるような非常にその乱暴な……ワイルドな文化がありまして。それを「ペイガン(Pagan)」といって。「ペイガン」っていうのはキリスト教以前の宗教、土着の宗教のことです。で、それが残っているのが夏至祭なんですよ。

(外山惠理)へー!

(町山智浩)で、そのバイキングの文化とはどういう文化かっていうと、たとえばそこで行って夏至祭でダニーちゃんたちは何か飲み物をもらうんですよ。でもなんかおかしいんですよ。その飲み物は。あの、「ベルセルク(Berserk)」っていう言葉はご存知ですか?

(山里亮太)ええと、「狂戦士」みたいなことですか。「バーサーカー」っていうか。

(町山智浩)そうそう。そういう漫画があるでしょう? あれはバイキングたちが戦う時に魔法とか催眠術とか、あと薬物で痛みや恐怖を感じない状態にして敵に突っ込ませるっていうとんでもない話が昔、あったらしいんですよ。まあ、イスラムでもそういうこと、やっていましたけども。で、そういうものを飲まされちゃうんですよ。

(外山惠理)大変!

(町山智浩)で、そのお祭りをやっているわけでしょう? さっき言ったみたいに、恋人を見つける。結婚相手を見つけるっていうお祭りなんですけども、その村はものすごく山の奥で、閉鎖されたところで。他の村からものすごく遠いんですね。だから近親相姦を防ぐために村の外から来た人たちを受け入れて、子種をもらうということをやっているんですよ。だから、彼らその大学生たちは「行きてえな!」って言ってたんですよ。

(山里亮太)ああー、なるほど!

(町山智浩)で、それだけだったらまだいいんですけど、そのバイキングの時代のワイルドな文化が残ってるところなんで。そこは。だからバイキングっていうのはとんでもない人たちだから。海賊だからね。たとえばね、「ブラッドイーグル(Blood Eagle)」っていうバイキングの拷問方法があるんですよ。これ、辞書で引くと「血まみれの鷲」っていう意味。どんなものだろう?って思うと、人を縛り付けて背中を割いて、そこから肋骨をほじくり出して……っていうとんでもない拷問なんですけども。そういうようなことを伝統的にやってるところなので、だんだんとそのスウェーデン人がずっと隠している、でも昔。ついこの間まで持っていたワイルドな部分がだんだんと出てくるっていう話がこの『ミッドサマー』という映画なんですね。

(外山惠理)怖っ……。

(山里亮太)うわー、またこれは怖いな……。

(町山智浩)これね、非常に奇妙な映画なんですよ。実は、アフリカとかアマゾンとかのジャングルに行って、特にアマゾンで人を食べる人たちに探検隊が出会って食べられるっていうホラーは山ほどあるんです。山ほど作られてるんですけど。まあ、非常に差別的なホラーですよ。でもこの場合、その人を食べる人たちがスウェーデン人なんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)金髪に青い目の白人たちなんですよ。でも人は食べないんですけども、もっとめちゃくちゃなことをするんです。たとえばね、「アッテスチューパ(Ättestupa)」っていうものが出てくるんですね。アッテスチューパっていうのは「姥捨て崖」というものなんですよ。昔、村である程度のお年寄りが体が動かなくなると、その崖から捨てていたんですね。という、すごい話がどんどん出てくるんですよ。でも基本的にお祭りだからみんなニコニコしてるっていう。みんな踊って楽しそうにしてるっていう。

(山里亮太)それの裏でそういうことがあるっていちばん怖いじゃないですか……。

(町山智浩)そうなんですよ。空はもういつも青くて。お日様が輝いていて。白夜だから。で、やっていることはグチャグチャっていうすごい変な映画なんですよ。で、これがね、非常に奇妙な映画ですね。で、アメリカでとにかく大ヒットしたんですけど。これ監督はですね、アリ・アスターという人で。この人は去年もアメリカでナンバーワンのホラーのヒットを放っている人なんですね。去年、この人が大ヒットさせた映画は『ヘレディタリー/継承』っていう映画なんですね。これもたしか紹介したと思うんですけども。

町山智浩『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『イット・カムズ・アット・ナイト』『ヘレディタリー/継承』を紹介していました。

(山里亮太)はい。ご紹介いただきました。

(町山智浩)これ、見ました?

(山里亮太)いや、僕はもう話を聞いて怖くて行けなかったです。

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嫌な気持ちになる映画『ヘレディタリー/継承』

(町山智浩)これは「怖い」っていうかね、嫌な映画なんですよ。映画史上、最悪に嫌な気持ちになる映画で。でもそれがアメリカでも日本でもヒットしていますから、人はお金を払って嫌になりに行くんだなっていうのがよくわかりました(笑)。

(外山惠理)フフフ、嫌になりに……これ、もうあれかな? 『ヘレディタリー』は貸し出しとかしているのかな?

(町山智浩)ああ、もう借りられますよ。

(外山惠理)ちょっと見てみよう。

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(町山智浩)で、これがどうして嫌になるかっていうと、もう公開して1年だから言っちゃいますけども。これ、アリ・アスターっていう監督自身の弟さんが亡くなったことを元にした話なんですよ。『ヘレディタリー』っていうのは主人公の高校生の妹さんが亡くなるシーンがものすごいんですよ。で、どうしてこんな映画を撮ったの?ってアリ・アスターさんに会って聞いたんですけど。彼はまだ32、3ぐらいの監督なんですね。で、「これは僕自身があまりにも強烈なショックを受けて、トラウマになったから。それをそのまま自分の中に秘めておいたらおかしくなっちゃうから。だから映画にしたんだ。これは一種の僕の治療なんだ」って言っているんですよ。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)で、この今回の『ミッドサマー』もいちばん最初でその主人公の女の子の家族が死んじゃうっていうのは彼、アリ・アスターさん自身に本当にあったことなんですよ。で、この話はいったいどうして思いついたのか?って聞いたら、彼自身のその時の恋人が、彼が家族を失ったのに助けてくれなかったんですって。面倒くさくなっちゃって、捨てられちゃったらしいんですよ。メソメソ泣いてたから。

(外山惠理)でもそれは泣くでしょう……。

(町山智浩)最初は優しくしてくれたんだけど、形だけで。相手がだんだんと面倒くさくなってきたらしいんですよ。で、その時の気持ちをそのまま映画にしたのが今回の『ミッドサマー』だって言っているんで。そのヒロインがアリ・アスター監督の投影で、彼女の恋人のクリスチャンっていう男がアリ・アスターがその時に付き合ってた恋人らしいんですよ。だからね、後半大変なことになっていくんですね。この2人の関係が。だから一種の恋愛映画なんですよ。この『ミッドサマー』は。奇妙なことに。非常に奇妙な映画ですね。恋愛映画であって、ホラー映画でもあって、また文化人類学的な映画でもあるんですよ。ただね、スウェーデン政府は「こんなことやってねえよ!」って怒っていますけどね。

(外山惠理)まあ、そうか。

(町山智浩)「こんな何百年も前のこと、やっているわけねえだろ!」って怒っていますけども。ただね、この映画のもうひとつのポイントはね、何となくおかしいんですよ。前の『ヘレディタリー』もそうだったんですけど、笑っちゃうところがあるんですよ。何ヶ所か。で、特にクライマックスがとんでもない展開になりますけども。お客さん、みんな笑ってました。

(山里亮太)ええっ?

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怖いけど、笑える

(町山智浩)ゲラゲラと。あの、苦笑としか言いようがない笑いが漏れていましたけども。たぶんそのシーンは日本ではものすごく微妙に修正がいろいろと入っていっていると思うんですけども。僕はアメリカで見たんでいろんな「もの」が見えました(笑)。で、このアリ・アスター監督がすごいのは、毎回笑わせるんですよ。嫌なシーンで。で、この人ね、まず世界的に注目されたのは自主映画というか学生映画の短編を作ったからなんですけども。どういう映画かっていうと中学生ぐらいの男の子がオナニーをしてるんですね。それをお父さんが見つけるんですよ。で、「俺も若い頃はそういうことをした。誰にでもあることだから別に気にするな」って。ただ、自分の息子がオナニーをしていたネタをお父さんが見ると、それは自分の写真なんですよ。

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)自分の息子が自分の写真でオナニーをしているのを見て、親が困るっていうとんでもない……どう見たらいいのか、訳のわからない映画を作っていたんですよ。この人は。すごいんですよ。だから本当にアリ・アスター監督に会った時、「あなたのユーモア感覚にはついていけないよ!」って言いましたけども。でも彼としては、怖がらせたり笑わせたりしなtがら、自分自身に起こったそのトラウマをエンターテインメント化して癒やすという風に言っているんですね。まあ、この人は本当にヘンテコな人ですよ。

(外山惠理)でもこうやって表現をしなかったら変になっちゃうからっていうのがね、彼にとってよかったですね。

(山里亮太)映画という方法で表現ができるから。

(町山智浩)そうそう。これで人を怖がらせたり、笑わせたりすることでもって自分の傷を客体にして。自分の中から外に出すことで治すという風に本人は言っていましたけども。はい。まあ、本当にとんでもない映画なんで。で、これは2月に日本で公開になるんですが、その前に11月2日(土)に東京で先行の公開があります。東京国際ファンタスティック映画祭というのが昔からずっとあったんですが。最近はやっていなかったんですが、それをそろそろ復活させるんでその前夜祭が行われます。東京国際ファンタスティック復活祭というのが11月2日(土)に東京国際映画祭の一環で開かれます。これ、もうチケットは売ってますんで。まあ日本で最初にこのヘンテコな映画『ミッドサマー』が見れますんで。みなさん、こぞってご来場ください。はい。というところです。

(外山惠理)はい。ちょっと見てみたくなってきちゃったな。

(山里亮太)がんばって見てみようかな? 怖いの苦手だけど……。

(町山智浩)怖いけど、笑えますよ。笑わせますから。

(外山惠理)来年の2月公開、『ミッドサマー』ということで。町山さん、ありがとうございました。

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『ミッドサマー』予告編

(町山智浩)はい。スウェーデンに行きたくなりますよ!

(外山惠理)行きたくなるの? アハハハハハハッ!(笑)。

<書き起こしおわり>

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