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宇多丸『ジョン・ウィック:パラベラム』チャド・スタエルスキ監督インタビュー

宇多丸『ジョン・ウィック:パラベラム』チャド・スタエルスキ監督インタビュー アフター6ジャンクション
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宇多丸さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で映画『ジョン・ウィック:パラベラム』を監督したチャド・スタエルスキさんのインタビューを放送。その模様を書き起こししました。

(宇内梨沙)ここからは聞いたら世界の見え方がちょっと変わるといいな、な特集コーナー、ビヨンド・ザ・カルチャーです。

(宇多丸)ということで先ほど、冒頭部分をお聞きいただきましたが、今夜は明日、10月8日から公開される大ヒットアクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ第3弾、『ジョン・ウィック:パラベラム』のチャド・スタエルスキ監督に私、宇多丸がインタビューしてきた模様をお送りします。8月29日(木)に当番組で放送したタランティーノ監督インタビューに引き続き、またまたね、ビッグネームにインタビューしてきました。

宇多丸とタランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を語る
宇多丸さんが映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』についてクエンティン・タランティーノ監督にインタビュー。TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で放送された内容を書き起こししました。

(宇内梨沙)お疲れさまでした。

(宇多丸)ということで、宇内さんは『ジョン・ウィック』シリーズはご覧になったこと、ありますか?

(宇内梨沙)今回の監督インタビューがあるということで、一作目だけ見たんですけども。

(宇多丸)ちょうど今日、午後ローでもやっていましたけどもね。まあ、引退した殺し屋がね、ワンちゃんを殺され、愛車を取られ、「チクショーッ!」っていうね。ワンちゃんにそんな、ねえ。

(宇内梨沙)もう愛犬家が見たら「チクショーッ!」ですよ。

(宇多丸)フフフ(笑)。ということで、改めてチャド・スタエルスキ監督のプロフィールをご紹介しましょう。1968年生まれ。僕よりも1個上ですね。スタントマン、映画監督。ブルース・リーと共にジークンドーを生んだダン・イノサントの武術・格闘技術であるイノサント・アカデミー出身。映画『マトリックス』(1999年)でキアヌ・リーブスが演じた主人公ネオのスタンドダブル。いわゆる代役ですね。

スタント場面、危険な場面の代役、スタントダブルを務め、続編の『マトリックス リローデッド』、そして『マトリックス レボリューションズ』ではスタントコーディネーターとして参加しました。その他にも『300』とか『ウルヴァリン: SAMURAI』などのスタントアクションのコーディネートをされております。で、監督作品のデビュー作が『ジョン・ウィック』(2015年)。そして続編の二作目『ジョン・ウィック:チャプター2』。そして今回の第三作『ジョン・ウィック:チャプター3 パラベラム』となっております。

(宇内梨沙)はい。

(宇多丸)ということで、『ジョン・ウィック:チャプター2』は私の映画評、公式書き起こしが読めると思いますので、そちらもちょっと参照していただきたいんですが。

【映画評書き起こし】宇多丸、『ジョン・ウィック:チャプター2』を語る!(2017.8.12放送)
ラッパーにしてラジオDJ、そして映画評論もこなすライムスター宇多丸が、毎週ランダムで決まった映画を自腹で鑑賞。その感想を生放送で語り下ろす「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ここではその全文書き起こしを掲載します。先週土曜...

(宇多丸)私、宇多丸、インタビューしてきました。まず『ジョン・ウィック:パラベラム』、どんな作品なのか、宇内さんから概要をお願いします。

(宇内梨沙)インタビューをお聞きいただく前に改めてチャド・スタエルスキ監督の最新作『ジョン・ウィック:パラベラム』について簡単にご紹介させていただきますよ。『ジョン・ウィック』シリーズ第三作、『ジョン・ウィック:パラベラム』は最強の殺し屋を演じるキアヌ・リーブスが主演です。共演はイアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーンら前作からのキャストに加え、オスカー女優のハル・ベリーが謎の女ソフィア役で出演します。

一流殺し屋が集うコンチネンタル・ホテルの「ホテル内で殺しを行ってはいけない」という掟をジョン・ウィックが破ってしまった前作『チャプター2』から2年。裏社会の頂点に立つ闇の組織が秩序を乱し、反逆の逃亡者となったジョンの粛清に乗り出します。ジョンに陰ながら協力してきた者たちも否応なく戦いに巻き込まれ、敵・味方入り混じった数々の新キャラクターの登場とともにジョンの過去が次第に明らかになっていきます。ついにジョン・ウィックとかつて彼が忠誠を誓った世界そのものが全面抗争を繰り広げます。

(宇多丸)ということで、全作の『ジョン・ウィック:チャプター2』のエンディングで事実上、主人公が……この『ジョン・ウィック』の世界ってご覧になって『1』の頃はまだ普通っぽいんだけど、『2』『3』とどんどん異常性を増しててですね。事実上、世界は殺し屋の方が人口が多いなっていうか。ニューヨークはほとんどが殺し屋で占められてるっていうような、そういう状態。で、ジョン・ウィックが「お前はルールを破ったから、世界中の殺し屋から狙われるよ」っていう。

「うわーっ! もう世界中が敵だ!」みたいなところで『チャプター2』が終わっているわけですけども、『3』はまさにその続きということになっている。ちなみにその『ジョン・ウィック:チャプター2』は明日の午後ロー、午後のロードショーでやるそうです。俺たちの名画座。わかってらっしゃる。で、『ジョン・ウィック』シリーズ、なにがすごいって、後ほどのインタビューでも出てきますけども、チャド・スタエルスキさんとデヴィッド・リーチさんという、たとえば『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』とかも監督されている方ですけども。

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インタビューで聞きたかったこと

このお二人で設立されたエイティセブン・イレブン(87eleven)というスタントコーディネート会社というか。総合スタント演出会社みたいなのがあって。そこを中心にいまもアメリカのアクション映画の構造というか在り方をもう根こそぎ改革、革命しているようなお二方でございまして。特に『ジョン・ウィック』シリーズはキアヌ・リーブスという稀代の身体能力の持ち主……あと、やっぱりアクションの訓練とかが好きなんでしょうね。だから格闘とか、すごい卓越したガンアクションスキルですね。めちゃめちゃ訓練をしている。これもどれぐらい訓練したかっていうのは後ほど、聞いていますけども。

(宇内梨沙)へー!

(宇多丸)それによって、『マトリックス』シリーズ。当時としては斬新なアクションだったじゃないですか。ワイヤーとか使ったりね。それとVFXと。『マトリックス』で見せたああいうケレン味たっぷりな超現実的な格闘だったりガンアクションみたいなのを実際の身体能力と実際のガンシューティング能力、実際の格闘能力とミックスしてというか。実際の格闘能力をベースに……でも、その全部が実戦的な動きなんだけども、それがあまりにも連続してスムーズに繋がっていくから、超人的な動きに見えるみたいな。

そういうような感じで非常にアクションのあり方みたいなのを根こそぎ革命しているシリーズだという風に思います。とにかくアクションということに関しては最先端を突っ走っているのがこの『ジョン・ウィック』シリーズだと思う。加えて、これも『チャプター2』からさらにその色が濃くなったんですけども。非常に画作りが独特で。これもインタビューで聞いてますけど、色合いの付け方とかがちょっと現実というよりは悪夢を見てるような……。

(宇内梨沙)暗いですよね。『1』もすごい暗いと思ったんですよ。

(宇多丸)『1』はノワールだから暗い。夜が舞台なのはいいんですけども。その黒にプラスして『2』からはさらに……『1』でもディスコの場面でちょっと出てくるんだけど、ピンクと青使い。これが非常にね、キーになってくるんですね。このあたりなんかもインタビューで聞いております。ということで、チャド・スタエルスキ監督インタビュー。9月9日(月)、都内のホテルにてやってまいりました。ちょっと予定よりも長くお話ししていただきました。現場通訳はトミタカオリさん。

例によって私、時間がもったいないということで。もう聞き取りは自分でできるので……っていうことでボンボンボンボン話を聞めさせていただいて。その分、話がいっぱい聞けていると思います。で、翻訳は池城美菜子に訳していただいたものを元に、私が監修をしたという。これも非常に力を入れて翻訳監修をいたしました。そしてチャド・スタエルスキ監督の吹き替えはジョン・ウィックの吹き替えを担当している、なんと声優の森川智之さんにお願いしました! ということで、本格的かつ斬新なアクションシーンの数々がどのように生まれたのか? お知らせの後、チャド・スタエルスキ監督インタビューをお届けします。

(CM明け)

(宇多丸)それでは『ジョン・ウィック』シリーズ監督、チャド・スタエルスキさんのインタビュー。今夜は3パートに分けてお送りします。1パート、1パートが結婚長い上に、チャドさんはめちゃめちゃいっぱいしゃべってくださる方で。非常に中身が濃いので、心して聞いていただきたいと思います。私も気合いを入れて1行1行、気を使って翻訳監修しましたので。

ということで、これから聞いていただくまずパート1ではですね、先ほど言いましたデヴィッド・リーチさんと設立されたスタント会社エイティセブン・イレブン。その設立した理由はどういうわけかというあたり。そして『ジョン・ウィック』をはじめそのエイティセブン・イレブンの作品はアクション映画の歴史を毎回進化させていると思うが、そのあたりはどういうような志、考えでやられているのかというあたり、まずうかがっております。約7分30秒のパート1です。お聞きください。どうぞ!

<インタビュー音源スタート>

(宇多丸)『ジョン・ウィック:チャプター3 パラベラム』、めちゃくちゃ面白かったです。で、作品の話に行く前にチャドさんがデヴィッド・リーチさんと設立されたそのエイティセブン・イレブンというスタントアクションコーディネート会社というか。その会社についてうかがいたいんですが。なぜ、この会社を作ろうと思ったんですか?

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87eleven設立のきっかけ

(チャド・スタエルスキ)僕たちがエイティセブン・イレブンを設立したのは何年も前のことです。それまで僕とデヴィッドは多くの映画の作り方に従ってスタントコーディネーターや格闘シーンの振り付けなどをやっていました。大半のハリウッドのアクション映画がどうやって作られるかというと、まず監督とプロデューサーに雇われたスタントコーディネーターがマーシャルアーツの映画であれば格闘の知識があるスタントマンを探してきて、その人が振り付けをしたりする。

さらにそこから必要に応じて他のスタントマンや役者に似ているスタントダブルを探します。剣を使った戦いがある映画であれば、専門の人を呼んできたりします。このようにアメリカでは全てのスタントマンは個別に契約をし、バラバラに働いているので「チームでやる」というやり方ではなかったんです。しかし、『マトリックス』でユエン・ウーピンと仕事をした時、香港ではチームで働いているということを知ったんです。

ユエン・ウーピンもコリー・ユンもドニー・イェンもそれぞれ自分のチームを持っていたんです。そこで我々も同じやり方をしようと思いました。支払いなどの問題でアメリカでは馴染まないやり方でしたが、ハリウッドで最高の格闘振り付けチームを作るため、全米から腕の立つスタントマンたちをスカウトしてきたんです。彼らには「もし私たちと組めば、スタントマンとして上達するだけでなく、スタントコーディネーターやアクション監督になったり、予算組みをする方法が学べるよ」と伝えました。

カメラマンが撮影監督に。そこから映画監督やプロデューサーになっていくように、常に立場が向上していく可能性があるというのはいいことですからね。僕とデイヴはスタントマンやアクションコーディネーター、監督、プロデューサー、脚本家、それぞれが個々の力を発揮すれば、チームとしても成長できると考えたんです。会社の成長に自分たちが関われるにという方針が才能のあるスタントパフォーマーたちに魅力的に映ったんでしょう。優れたクリエーターというのは「常に進化していきたい」という人たちですから。こうやってエイティセブン・イレブンを設立しました。

(宇多丸)まさにみなさんの仕事が特に『ジョン・ウィック』ではスタントアクションに対する豊富な技術とアイデアと、たぶんトータルでディレクションされてることもあって。やっぱりアクション映画の歴史を大きく前進させたっていう功績があると思うんですけども。特に『ジョン・ウィック』シリーズは本当にそうだと思うんですが。

(チャド・スタエルスキ)たしかにそういう面はあるでしょうね。画家だったら絵を描く。シンガーは歌を歌う。ミュージシャンなら作曲をする。詩人は詩を各という風に、ひとつのことをしていればいいわけですが、映画監督はそうはいきません。頭の中にあることを形にするためには、少なくとも数十名の人間を動かす必要がありますから。

偉大な振付師ボブ・フォッシーはかつて「振り付けの仕事の半分は素晴らしいアイデアを出すことで、残りの半分はそれを実現するために自分以上にイカれている人たちを探すことだ」と言いました。それは映画監督にも当てはまることだと気づいたのは大きかったです。だから『ジョン・ウィック』第一作を撮った時から、アクションの作り方をこれまでのハリウッドのやり方から少しずつ変えていこうとしました。そのためにまずは我々が望むレベルに達するまで、カメラマンやスタントマン、役者を鍛えようと決めたんです。

それに僕はアート映画が好きだし、クラシック音楽もルネッサンス期の芸術も好きです。でも、僕がクラシック音楽や古典芸術の映画を作っても、誰も見たがらないでしょう? だから僕はアート的なアクション映画を作ったんです。J-POPを含めた様々な音楽の要素やアート、色彩が入っているクラシック音楽のように美しいアクション映画をね。そうやって、好きなアートが入った映画を作るのは楽しいですよ。

(宇多丸)本当に、特に『ジョン・ウィック』のアクションは『マトリックス』シリーズでみなさんが達成されたのアクションというのを現代にふさわしいタクティカルなアクション、ものすごく実践的なアクション。でも、それがあまりにもスムーズに無駄なく連鎖していくので、ちょっと現実離れして見える。ファンタジックに見えるという。つまり、その『マトリックス』でやったことをタクティカルにアップデートするというか、そういうことをやられていると思っていて、とても感心というか感動したんですけど。いかがでしょうか?

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『マトリックス』からの影響

(チャド・スタエルスキ)そう見えて当然だと思います。僕たちは日本の漫画やアニメ、アジア映画の大ファンだし、僕たちの映画が『マトリックス』から多大な影響を受けているのも明らかですから。キアヌ・リーブスと僕は10年以上もウォシャウスキー姉妹のもとで過ごしてきましたね。全ての土台には2人との仕事があると思います。いかに美しく撮るか、いかに細部まで注意を払うかなど、多くのことを2人から学びましたし。それは僕らが『ジョン・ウィック』でやろうとしたことでもあります。

同時に僕はバレエ、ダンス、演劇などライブパフォーマンスが大好きで、ダンスの振付師からも多くを学びました。客席の真ん中に座った時、瞳がどう動くのかをアクションの振り付けに取り入れようともしましたよ。または僕は編集を自分でやるのも好きなんですが、その際に観客がそのシーンの流れから目を離さないようにしたいんです。それはダンスのライブと同じですよね。音楽、絵画、歌といった他のアートフォームの魅力は「優れた演者がクールなことをしている」という点にあります。

映画だって同じはず。観客のみなさんはキアヌ・リーブスやハル・ベリー、マーク・ダカスコス、ローレンス・フィッシュバーン……『マトリックス』だったらキャリー・アン・モスなど、彼らがクールなことをしているのを見たいのでしょう? なのに、編集をしすぎたり、CGを使いすぎたりすると、その良さが損なわれてしまう。「人間はライブパフォーマンスを見るのが好き」という哲学を僕らは映画に込めているんです。

(宇多丸)できるだけカットを割らずにひとつのアクションを流れで見せようとしているなっていうのはすごく『ジョン・ウィック』を見ていて感じるところですね。

(チャド・スタエルスキ)まさにそう感じてほしいんです。素晴らしい絵画も動かしてしまったら台無しですよね。観客にはしっかりと画面を見てほしいんです。

<インタビュー音源おわり>

(宇多丸)はい。ということでチャド・スタエルスキ監督のインタビュー、パート1をお聞きいただきました。まずね、やっぱりその『マトリックス』でユエン・ウーピンとか香港のアクションチームと一緒に仕事をした経験っていうのが大きかったということがこれでわかりますよね。

(宇内梨沙)それを見て、アメリカでスタント会社を作ろうって。

(宇多丸)アメリカはやっぱりね、本当に個別の、フリーで契約をして……っていう。

(宇内梨沙)フリー契約だったんですね。

(宇多丸)それこそ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のブラッド・ピットの役柄じゃないですけども。逆に言うとそういうことでスタントマンって単発の仕事で。あの映画でもそうですけど、とかく使い捨てられがちな立場だったっていうところも、さらにキャリアアップできるような会社にしたかったっていう話もすごい面白いですし。非常にチャドさんのおっしゃっていることって、この後のインタビュー全体でも一貫してらっしゃって。

まず、そのチームでやる尊さということと、あとはやっぱりすごくアート的なアクション映画を作りたかったという。非常にシネフィルでもあるというか。ものすごくいろんなアートとか昔の映画とかにも造詣が深くって。そういうものを込めた、アクション映画でそれをパッケージングするというような意識。あとはやっぱり「自分でやる」という。自分で……人間はライブパフォーマンスを見ることが好きなんだっていう。だからこそ、やっぱり『ジョン・ウィック』シリーズはキアヌ・リーブスが本当に驚異的なアクションをワンショットでずーっと……要するに、トリックなしでやってみせるというところのニーズが合っているんだなっていう。

この後のインタビューでお答えになっているところもすごく哲学が一貫していますね。あと、やっぱりウォシャウスキー……当時は兄弟。いまは姉妹。ウォシャウスキー姉妹の影響の強さみたいなところもはっきりと明言されていてっていうあたりも興味深かったですね。ということで、続いてパート2を聞いていただきましょう。でも、非常に濃密でしょう? この後、さらにどんどんと話が濃くなっていくんでね。みなさん、ついてきてくださいね。

さっきのさ、「ユエン・ウーピンもコリー・ユンもドニー・イェンも……」とか、このあたりもしびれましたね。それぞれがチームを持っていたっていう。こういう固有名詞のあたりも注意していただきたい。ということで、これから聞いていただくパート2では『マトリックス』とか、あとは毎回……『チャプター2』と今回の『3』でもそうなんですけども。バスター・キートンの映画の一場面が最初の方で出てくるんですよ。「そういうオマージュをどうしてしているんですか?」みたいなことをまず聞いています。

あと、先ほど言ったように「ピンクとブルーを多用した独特の照明、あの画面構成。これはどういうことですか?」とかですね。あと様々なアイデアが凝らされたアクションが出てくる。今回の『3』の冒頭とか、すごいですけども。「アクションがあってストーリーを作るのか、ストーリーがあってそれに合わせてアクションを作るのか?」という。そんなあたりも質問しています。ここからさらに約8分30秒のパート2、音声をお聞きください。

<インタビュー音源スタート>

(宇多丸)ちなみに、ちょっと細かい話ですけども今回の『パラベラム』だと明らかに『マトリックス』オマージュなディテールがあるなと思って。お互い銃を向け合った敵同士が同時に弾切れに気づくとかですね。あと「Guns, lots of guns」っていうセリフがあったりとか。あとはもちろんローレンス・フィッシュバーンが出ていますし。改めて『マトリックス』への直接的なオマージュを今回、多めにしているのはなぜなんですか?

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オマージュを捧げた作品たち

(チャド・スタエルスキ)20周年記念ですしね(笑)。真面目な話をすると『ジョン・ウィック』三作は全て最初にストーリーを書くのではなく、まずは僕とキアヌが映画で好きな色合い、美しい画面、アクションなどいろんなアイデアを出し合ってから脚本を書いているんです。その意味では『ジョン・ウィック』シリーズは毎回、何かしらの映画にオマージュを捧げています。僕らが愛する黒澤明、タルコフスキー、ウォシャウスキー姉妹、スピルバーグなどの映画にね。特に僕とキアヌが影響を受けているのは、やはりウォシャウスキー姉妹です。だからそこを指摘してくれて嬉しいです。2人がいなかったら、僕はここにいませんからね。

(宇多丸)あと、オマージュって言うと、映画オマージュで言うと、前作『チャプター2』の冒頭もそうですし、今回もやってらっしゃいますけども。バスター・キートンの作品の一部が壁に映し出される。やっぱりバスター・キートン……言ってみれば危険なスタントアクションをやってる先輩としてのリスペクトなんでしょうか?って思ったんですけども。

(チャド・スタエルスキ)父親がサイレント映画の大ファンで、ハロルド・ロイド、バスター・キートン、チャーリー・チャップリン、アボットとコステロ、ローレル&ハーディなの映画を毎週日曜日、父親と見て育ちました。スタントコーディネーターになった時、往年のハロルド・ロイドやバスター・キートンから得たアイデアを監督に提案したりもしましたが、理解がある人はあまりいませんでした。それはともかく、僕自身の想像力の源には彼らがいますから、大きな感謝を抱いているんです。

(宇多丸)その新しい観客にもそういう古いサイレントのクラシックみたいなものの良さを伝えたいな、みたいなものがさりげなくあるのかな?って思ったんですけども。

(チャド・スタエルスキ)その通りです。プレゼントもラッピング次第でだいぶ印象が変わりますよね。それと同じようにもし僕がクラシック音楽の映画を作ったとしたら、観客層がだいぶ変わってしまうはずです。だからテクノやロックンロールなど違うカラーの音楽を全部混ぜてラッピングをしているんです。チャンバラ映画やマカロニウエスタンなどを改めて紹介するときも同じです。

たとえば古い侍映画には騎士道のような武士道の精神があるでしょう? それをアクション映画の形でラッピングすれば、さりげなく奥行きを出せる。そうすることでクラシック音楽や古典芸術、古いサイレント映画、あるいは大好きなベルナルド・ベルトルッチやアンドレイ・タルコフスキー、オーソン・ウェルズといった偉大なフィルムメーカーたちを改めて若い世代に紹介することができるんです。今回の『パラベラム』でモロッコが舞台になっているのもキアヌと僕が映画『カサブランカ』の大ファンだから。

(宇多丸)なるほど。モロッコが舞台なのもね。わかりました。で、『ジョン・ウィック』の大きな特徴として、特に前作『チャプター2』から強く打ち出している部分だと思うんですけど。ブルーとピンク……レッドに近いピンクというか。ブルーとピンクを強調した色使いっていうのが非常に特徴的だと思うんですけども。今回も冒頭の逃走シーンでも、普通の街角のはずなのにブルーとピンクがあちこちに配されていて。まるで悪夢の中を漂っているような気がする。まずなぜ、こういう色使いをしようと思ったのか? 一応現実ベースのアクションなんだけど、明らかに悪夢的に見えるような感じ。どこに行ってもピンクとブルーがあるという、なぜこういう演出をしようと思ったのか。

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独特なカラー演出

(チャド・スタエルスキ)撮影監督のダン・ローストセンとそこは時間をかけた部分です。色彩設定を考える際、色と感情の関係について彼とたくさん話し合いました。怒りは赤、冷静さは青といった具合にね。あの想像世界のハイパーリアルな感じを僕らは「ネオン・ノワール」と呼んでいます。ネオ東京、ネオ香港みたいな感じですよ。ダンは照明の使い方が独特なことで有名で、特に黒を多用するんです。

とにかく黒、黒、黒、黒。真っ黒で塗り尽くす。派手なピンクやブルーを繰り返し使った後、また黒に戻ったりもする。それは時に不快すれすれだったりするんですが、視覚的には超現実的な感覚を与えることができるんです。またピンクとブルー、黒、黒、黒……と続いたシーンの次は、ブルーとグリーンを使って観客の気持ちを落ち着かせたりもできる。昔ながらの劇場の仕掛けみたいなもので、舞台に赤い幕が引かれると観客の視線はその中に引き込まれてて、まるで夢の中や別の現実に入り込んだような感覚になります。

幕の中が真っ暗なら、夜らしさをより感じますよね。同じようにナイトシーンの黒も、赤やピンクを置くことでより、超現実的に感じさせることができる。全てはっきりとした目的があるんです。

(宇多丸)すごい納得の答え。ちなみにでもあれは、その場で……撮影時に照明でああいう色合いにしてるのか、後からコンピューターとかでカラリングをしているのか。どっちなんでしょうか?

(チャド・スタエルスキ)ダン・ローストセンはハリウッドで最も優れたカメラマンの1人だと思います。ほとんどの照明は実際に撮影していますよ。後からより鮮やかでシャープに見えるよう、デジタル処理を施してはいますが、元々のダンの腕は本当にすごいんです。照明をしっかり使って撮影しているカメラマンの中でも10本の指に入ると思います。カメラの後ろから見ていると関心するばかりですよ。

(宇多丸)あと、とにかく先ほど言った冒頭の逃走シーンからもう、ちょっとこれまで他の映画では見たことがないようなアクションシーンの連続で。まずあの多様なアクションシーン……アクションシーンのアイデアから思いついてストーリーができるのか、ストーリーに合わせてアクションシーンを作るのか。どっちなんでしょう?

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アクションとストーリーの関係

(チャド・スタエルスキ)両方です。毎日やり方が変わります。それがここ30年の僕の人生なんです。1年中、世界を旅してお互いを高め合っているスタントマンたちからすごいアイデアをもらっては、それらを10冊ものノートブックに書き込んで、毎日ためているんです。今回も取材が全部終わったら、ダンと一緒に京都と大阪に行ってアイデアを得るためにお城などを見る予定です。映画を撮っていない時は、世界中の武芸にゆかりのある場所や他の国のスタントマンを訪ねたりして、アイデアを考えているんです。

(宇多丸)今回は序盤の馬とか、中盤のモロッコでの犬たちとか、動物を絡めたアクションが多いと思うんですけど。もう本当にどうやってやって……あの馬たちは実際の馬なのか、それともCGとかを使っているのか……?

(チャド・スタエルスキ)全部本物です。

(宇多丸)えええーっ! なかなかでも、馬は……たとえばその蹴るところとかはかなり危険だと思うんですけども?

(チャド・スタエルスキ)何年も前、スタントマンだったころに馬に蹴られるというかなり嫌な経験をしました。それを映画の中に入れてみようと思ったんです。本物の馬と人間を使って撮影をしていて、馬は実際に蹴ってはいますが、両者の距離はコンピューターを使ってちょっとだけ縮めているんです。

(宇多丸)しかし、とにかくあの馬のシークエンスはその後のチェイスも含めて本当に最高です!

<インタビュー音源おわり>

(宇多丸)はい。ということでチャド・スタエルスキさんのインタビューパート2をお聞きいただきました。宇内さん、どうですか?

(宇内梨沙)いや、本当にアクションが好きなんだなっていうのは伝わってきますね。

(宇多丸)アクションが好きで、映画が好きで。いかにそれを向上させていくかっていうことに関しては本当に飽くなき向上心でやられている。勉強もされているし、やっていない時は世界中を旅して、いろんなスタントマンとアイデアの交換をして……とかね。

(宇内梨沙)しかも、たぶん若いスタントマンとかからいろんなアドバイスとか話をもらって。本当に探究心があるんだなっていう。

(宇多丸)ちょっとこれね、時間の関係でカットした部分で言いますと、この『ジョン・ウィック:パラベラム』をご覧になった方、序盤の方でですね、図書館。ニューヨーク市公立図書館を舞台にしたアクションのシーンがある。本を使った……「分厚い本を使う」っていうすごい面白いアクションシーンがあって。「あれはどこからこういうアイデアを得たんですか?」ということに関して、「6年前、ニューヨーク市公立図書館にスタントチームのメンバーと行った時、みんなで最初はふざけて。実際に『本を使ったらこういうことができるよね』ってふざけて戦ってみた。それを映画に入れてしまった」みたいな。

(宇内梨沙)ああ、本当に好きなんだな!(笑)。

(宇多丸)「そうやって毎日アイデアを探していないと、すぐに退屈してしまいますからね」みたいなね。

(宇内梨沙)じゃあ、もし日本のお城を見に行ったら、たぶんお城を見て「あれっ?」なんて……。

(宇多丸)城のいろいろな構造とかから、インスピレーションを絶対に得ているはずなんじゃないですかね。さあ、次が最後のパート。これがまた結構長いんですけども。最後に聞いていただくパート3ではですね、私の大好きなガンアクション部分。『ジョン・ウィック』といえば革新的なガンアクションですが、どのぐらい練習しているのかというあたりとか。バリエーション豊かなガンアクションシーン、どのように発想しているのかとか。

あと、キアヌ・リーブスはアクション俳優としてどんなところが優れているのかというような話。あとはアクション映画全体の潮流として、キアヌ・リーブスのように自分でアクションをこなすという潮流。これに関してどう思うのかというあたりもうかがっております。あ、そうだ。さっき言い忘れたけども、ピンクとブルーを多用した画面のダン・ローストセンさん、撮影監督との作り上げ方。あの話も面白かったですね。

(宇内梨沙)ねえ。色が感情を表しているっていう。

(宇多丸)あとはやっぱり超現実的な感覚を表すためにやっている。「劇場で赤い幕が引かれて、その中が黒ってなると、そこに目が引かれるだろう?」っていう。これがわかった上で見るとさらにまた『ジョン・ウィック』、面白いんじゃないですかね。といったあたりでパート3、これは13分ございます。またまたみっちりと話していただいております。お聞きください。どうぞ!

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