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渡辺志保と池城美菜子『カニエ・ウェスト論』を語る

渡辺志保と池城美菜子『カニエ・ウェスト論』を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101
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池城美菜子さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM101』にゲスト出演。渡辺志保さんと自身が翻訳を手掛けた『カニエ・ウェスト論』について話していました。

(渡辺志保)この時間はゲストに書籍『カニエ・ウェスト論』の翻訳を手がけた池城美菜子さんをお招きしています。今回、DU BOOKSさんから『カニエ・ウェスト論』を発刊されたということで。これはその訳書本と言いますか。著者の方、カーク・ウォーカー・グレイヴスさんという方がいらして、池城美菜子さんが訳と解説を執筆という形でございますけれども。そもそもどういう経緯で今回、この本を発刊する運びになったんでしょうか?

(池城美菜子)ディスクユニオンの編集の小澤さんという方が私がカニエ・ウェストのことについて書いている原稿を読んで、依頼していただきました。

(渡辺志保)なるほど。最初……当たり前ですけど、原書を一通りお読みになってから翻訳に取りかかるわけじゃないですか。この元々の原書を読んだ率直な池城さんのご感想というのは、まあ本の中にも書いてあるんですけど。一体どういうものだったんでしょうか?

(池城美菜子)(即答で)「無理」。

(渡辺志保)フフフ、即答みたいな(笑)。

(池城美菜子)「これは、無理」って思いました。本当に難しい……。

(渡辺志保)難しそう。で、これは『カニエ・ウェスト論』というタイトルですけども、ただの彼のバイオグラフィーとか、シカゴで育って……みたいな本ではないんですよね。

(池城美菜子)これは完全に芸術論の論文ですよね。だからの読者としてはすごい面白い本なんですけど、やっぱり翻訳とかお仕事はなんで……渡辺さんもそうだと思うんですけども。どれくらいでどれくらいの時間がかかるのかっていうこととか、考えるじゃないですか。だから翻訳なんかも私は対訳はいっぱいやるけれども、翻訳はプロというほどの人間ではないので。1ページでいくつ、英語がわからないとかそういう目安があるんですね。で、これは本当にひとつの文に1個ぐらい、「どういう風に取ったらいいんだろう?」っていう言葉があるので「時間がかかるな」って思って(笑)。

(渡辺志保)だってその、おっしゃる通り美術論とかで。古代の詩とか……オジマンディアスの詩とか。

(池城美菜子)まさかパーシー・シェリーを自分が全部訳することになるとは思いませんでした(笑)。

(渡辺志保)これはサラッと池城さん、日本語に直してらっしゃるけれども。「この曲はまるで音のごちそうである」とかそういった表現とかもサラッと書いてらっしゃるけど、「これ原文はどういう風に書いてあったのか?」ってちょっといぶかしく思ってしまうほどの。 なのでこの本、『カニエ・ウェスト論』なんですが特にカニエが2009年にリリースした『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』というアルバムに特に焦点を絞って、カニエ・ウェストとはどんな人か?っていうことを書いてるという本ですけれども。

私はそのカニエ・ウェスト自身もすごく自惚れ屋さんで、ちょっと人を困らせるのが好きというか。それこそ「ツイステッド」してるようなそういうイメージ。なんだけども、愛すべきカニエちゃん。そしてナルシストっていうイメージがありますけど。この著者のカークさんも相当カニエさんに似た感性を持っていらっしゃる方なんじゃないかなっていうのが一読して思ったことなんですね。

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著者はカニエに似た感性を持っている

(池城美菜子)そうですね。だから同族嫌悪と同族に対する愛情っていうのが非常にあって。やっぱりものすごくこだわらないとこんなに語れないので。そういう意味ではおっしゃる通りだと思います。

(渡辺志保)でもこれをまるまる一冊訳すというのは、何か参考文献、レファレンスにされたものっていうのはたくさんあるんですか?

(池城美菜子)これはないです。

(渡辺志保)なるほど。じゃあもうひたすらその訳文と向き合って……それこそ非常にカロリーを消費するような。

(池城美菜子)そうですね。だんだんと文体とかにも慣れて、スピードが上がるだろうと思ってお受けすることにしたんですけれども、いつまでたっても慣れないという(笑)。いつまでたってもスピードが上がらなくて。それで1ヶ所、どうにも意味がわからないところがゴールデンウィークに来てしまって。休み中に来てしまって、意味がわからないまま翻訳するのって本当はアウトですから。その時はちょっと具合が悪くなりました。

(渡辺志保)そうですか。

(池城美菜子)編集の方に「これはもうちょっと、降りていいですか? ごめんなさい!」っていう……(笑)。でも1回置いて、先に進めて後で「ああーっ!」ってわかったところがあって。

(渡辺志保)それは単純にこの単語がわからないとか、そういうことではなくて?

(池城美菜子)4行ぐらいが難しすぎて。要するに、ヒップホップってそういうものですけども、いろんな事象を入れてるじゃないですか。それが奴隷制であったり、消費主義であったりっていうことにどんどんつなげているということをフラットに言っていただければわかったのに、それをすごく気取って書いてあるから、なんのこっちゃ?ってなっちゃって(笑)。

(渡辺志保)やっぱり原書の言い回しとか使われている単語なんかも普段、池城さんが普通にジェネラルに目にするものとはまたちょっと次元が違う……?

(池城美菜子)そうですね。

(渡辺志保)そうだったんですね。

(池城美菜子)違うものもありますね。で、逆に私たちが好きなフィーチャリングアーティストのことを落としちゃったりとかしていて。「(『Gorgeous』で)レイクウォンの話をしてあげてよ」とかって思いながら……(笑)。

(渡辺志保)私、本当におんなじことを思った!(笑)。『Runaway』の時に「RZAに触れてあげてよ!」とかね。

(池城美菜子)「駆けつけたその気持ちは……?」みたいな(笑)。

(渡辺志保)そうそう(笑)。同じように思って。そのサウンド、ビートに対する一音一音への言及とか考察っていうのは本当に深いところまでされてるのがわかるんですけど。たとえば「『Runaway』の最初のピアノのスタッカートが……」とか、あとは「ドラムのサンプリングはピート・ロック&C.L・スムースから取っている」とか。でも、それってRZAのアイデアだったんじゃないかな?って私もちょっと思ったりとかね。ここはちょっと……そうそう。

ニッキー・ミナージュとかリック・ロスについては結構触れてるんだけども。おっしゃる通り、。ちょっとプロダクションに関してはもうちょっと、かゆいところに手が届く場所があってもよかったのかな? とか思ったり。で、訳書ですから忠実に原書の著者の方の文章を訳していかなければならない。それが大前提だと思うんですけれども。同じく、「ちょっとこの解釈、私は違うと思うな」っていう箇所なんかは多々ありましたか?

(池城美菜子)いや、解釈自体は基本的には非常に賢い……自分よりもすごく勉強されて頭のいい方が書かれてるから、「こういう見方があるんだな」という謙虚な気持ちではいたんですけども。やっぱり基本的にはロックを聞いてる……ちょっと語弊はありますけども、メインカルチャーの白人の方が書いているものだなって思う時はありました。ちょっとあんまり人種で分けちゃいけないんですけども、すっごく他のヒップホップも愛しているような人たちはここまでは……たとえば、スウィズ・ビーツをちょっとバカにしたりとかってできないじゃないですか。私たちは。

(渡辺志保)うんうん、本当に。

(池城美菜子)だからそういう意味ではカニエだけガーッと行くんですけども、他のカルチャーに対しては一歩引いているのは感じていて。でも、だから見えてるものもあるかなっていう風に思いました。

(渡辺志保)おっしゃる通りだと思います。で、私もこれ、最初に読み始めて数ページ読んだところで「これはちょっと準備体操が……私のカニエマインド、そしてカニエマッスル、カニエ筋を鍛えてから読まないと、これはちょっと読めないわ」と思って。それで私がとった行動は最後、池城さんによる解説文が文末に……これは1万字程度ですか?

(池城美菜子)1万2000字ぐらい書きましたね。

(渡辺志保)それをまず最初に読みまして。ちょっとその自分のカニエ筋を慣らしてから本文の方に戻るという読み方をしたんですけれども。まあ、この解説の冒頭でも池城さんはそれが普通というか。ここに飛んできてくれたのは普通です。You are not aloneみたいな感じで書いてくださっていたので。「ああ、みんなそうなんだ。訳された池城さんですら、そうなんだ」って思いながら読み進めていきました。ちょっとここで、ずっと話してるのもアレなので。1回、カニエの曲を聞いていただきたいなと思います。で、この曲は私がかけたいなと思って選ばせてもらった曲でもあるんですけども。この『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の中から1曲、お聞きいただきたいと思います。池城さんから曲紹介をお願いしてもいいですか?

(池城美菜子)では、カニエ・ウェストの『All Of The Lights』です。

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Kanye West『All Of The Lights』

(渡辺志保)この時間はゲストに書籍『カニエ・ウェスト論』の翻訳を手がけた池城美菜子さんをお招きしてお届けしております。いまお届けしたのはカニエ・ウェスト『All Of The Lights』でした。私がなぜこの曲を選曲したかと申しますと、この『カニエ・ウェスト論』の中で『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の曲を1曲1曲、至極丁寧にカークさんが説明、解説を書いてくださってるという中で、いちばん自分の中でも腑に落ちたというか。

(池城美菜子)そうですね。ここがいちばん秀逸ですよね。

(渡辺志保)そうそう。この『All Of The Lights』、個人的にもすごく好きな曲ですし。この解説文がいちばん開眼させられたというような感じがしまして、選ばせていただきました。やっぱりこれを1冊読むと、いままで私、カニエの何を知っていたんだろう?って……。

(池城美菜子)私もそれは思いました。

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