渡辺志保 Joyner Lucas『I’m Not Racist』を語る

渡辺志保 Joyner Lucas『I’m Not Racist』を語る INSIDE OUT

渡辺志保がblock.fm『INSIDE OUT』の中でJoyner Lucas『I’m Not Racist』を紹介していました。

(渡辺志保)ここで今日のオープニングチューンをご紹介したいんですけども。ここ1週間ぐらい、結構インターネットを中心にバズッている曲なんじゃないかと思いますが。ジョイナー・ルーカスというラッパーの『I’m Not Racist』という新曲、みなさんも聞きましたでしょうか? 11月28日にミュージックビデオが公開されたこの新曲なんですけど、すでに再生回数が900万回に達しようとしていまして。いますごく注目されているんですね。

なぜか? といいますと、『I’m Not Racist』っていうタイトルですから。「Racist(レイシスト)」って「人種差別主義者」っていうことなんですけども。「俺は人種差別主義者じゃないけどさ」っていう前置きを置きながら、とうとうとラップしていく歌詞なんですよ。で、ちょっとユニークなのはこの曲、前半と後半に分かれていて。前半はアメリカの一般的な白人男性、かつちょっと保守的で言ったら共和党支持者。そして、大統領選の時には絶対にドナルド・トランプに票を投じたであろうというような一般の白人男性の視点からのバース。

前半と後半、異なる視点からのバース

そして後半に関しては、ミュージックビデオを見るとわかるんだけど、ドレッドヘアーでちょっとデカめのサイズの服を着ていて、これまた一般的なアフリカン・アメリカン。アメリカの黒人男性の視点からスピットされているバース。なので前半・後半に分かれているんですね。で、ミュージックビデオの中でも前半をスピットする白人男性っていうのは、この間もスヌープ・ドッグの新作の時に言いましたけど、「Make America Great Again」っていうドナルド・トランプが大統領選の時に掲示していたスローガン。そのスローガンが書かれたキャップをかぶったちょっと太った感じの白人男性がバーッとスピットしていくんですよ。

それで、「I’m Not Racist」って。「俺は人種差別主義者じゃなけど、でもさ、お前ら黒人ってさ……」っていう感じでどんどんどんどんステレオタイプみたいなところから、「お前、それは言いすぎじゃね?」みたいなところまでをとうとうとラップしていくんですけども。たとえば、「なにかにつけてBlack Lives Matter(黒人の命だって大切だ)って、それを言えばいいと思ってんじゃねえか?」とか「Nワードをお前らは連発するくせに、俺が言うとめちゃくちゃに非難するじゃねえか」とか。「なんでその時代にいたかのようにお前らはいつも奴隷制の話を持ち出すんだ?」とか。

「でも、俺はレイシストじゃないよ。なぜなら俺の妹の彼氏は黒人だし……」なんていうエクスキューズなんかも挟みながら、「お前らはどうせドラッグをさばいて路上でパーティーしているだけ。そんな人生だろ?」とか。で、「なにかあったらトランプのせいにしている」「アウォードでこの間エミネムがラップしているのを見たけど、いったいエミネムは何と戦ってるの?」「お前らは2パックをまるで神のように崇めているけど、ただ2パックの曲に乗っかっているだけだろ? お前らは空っぽんだろ? 何も考えてねえんだろ?」みたいなことをずっとラップしていくんですよ。で、それが1バース目なんだけど、2バース目になったら今度は若い黒人男性の立場になって、それに反論する。

「俺たちが使うNワードとお前らが使うNワードの違いはこうだ!」とか、「白人であるエミネムがあんな風にトランプを批判するようなフリースタイルをしたってことは、彼はとても勇敢なのだ」とか。「2パックがなぜ俺らにとって神なのか」とかをラップしていたり。まあ、その前半の主張にひとつひとつ反論していくような感じで曲が進んでいくんですよ。で、この曲がすごくいいなと、人々の胸をガシッと掴んでいる理由のひとつは、相互理解ですね。お互いを理解し合うことっていうところを根底のメッセージとして置いていて。

で、ミュージックビデオの最後もそういう終わり方になっているので、ぜひぜひ見てほしいんだけども。いちばん最後は素敵なメッセージでこの曲、締められていいるんです。ちょっと読みますと、「人種が我々を分断する前。宗教が我々を分離する前。政治が我々を隔てる前。そして富が我々を分類する前は、我々はみんな等しく人間だったのに……」というメッセージで最後に終わるんですね。で、「#IMNOTRACIST」っていう形でビデオが終わるので。一言一句なにを言っているのかはわからなくても、そのビデオを見ればかならず、エモーショナルな部分も含めて伝わることがあると思いますので。ぜひぜひみなさん、このジョイナー・ルーカスの『I’m Not Racist』という曲、ビデオも含めてぜひ聞いていただきたいなと思っております。

なので、今日時間の都合上かけられるのはファーストバースの、いわゆる白人男性の主張のバースだけかなと思うんですけども。ぜひぜひ今日のオープニングチューンとして聞いていただきたいと思います。ジョイナー・ルーカスで『I’m Not Racist』。

Joyner Lucas『I’m Not Racist』

(渡辺志保)はい。いま聞いていただきたいておりますのはジョイナー・ルーカスの『I’m Not Racist』。ここだけを聞くと静かなトラックというかサウンドの上で、ちょっと怒りにまみれながらラップしているという印象ですが。ぜひぜひこの曲、ビデオを見てメッセージを聞いてほしいなと思っております。

<書き起こしおわり>

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