モーリー・ロバートソン ドナルド・トランプ大統領のイギリス訪問を語る

モーリー・ロバートソン ドナルド・トランプ大統領のイギリス訪問を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中でドナルド・トランプ大統領のイギリス訪問について話していました。

(モーリー)さっそくこの番組ならではの忖度なしで言わせてもらうと、やっぱりトランプさんのイギリス訪問。これがいろいろな波紋、物議をかもしていてすごい。ツイートも然ることながら、韓国の新聞はこれを「非礼外交」と呼んでいましたね。どう非礼なのか? とにかくイギリスとアメリカっていうのはメイ首相が「特別な関係」って言っているように英語で「Special Relationship」っていう言い方があって。これは第二次大戦などでともにファシズムと戦ったとか。とにかく根深い同盟。

そして歴史的にはアメリカはもともとイギリスの植民地でもあったこともあり。その中で、やっぱり民主主義を大切にするということで、いろんな文化を共有して同盟であるという深い話なわけじゃない? ところが、トランプさんは全てを損得計算で考え、全て取引に還元して考えるのでいろんな公的な発言の中で「もしイギリスがブレグジットしたら……」って。まあ、トランプさんはそもそもブレグジットを大応援しているわけですよ。EU解体論にシンパシーを感じているから。

そして、中にはそのイギリス独立党の党首だったナイジェル・ファラージなんかを持ち上げてみせたりしているんだけども。そこを踏み越えてイギリスのブレグジットは推奨する。ところが、ブレグジット後のいわゆるEUから離れた、独立したイギリスに対してはすべての貿易をフェアに再交渉したいと。で、その「フェア」が問題なんですけども。アメリカの国益誘導が露骨だったんですね。ひとつは「イギリスのあらゆるものを最初からテーブルに乗せて議論すべきだ」ということで、その中に含まれていたものがNHS(National Health Service・国民保健サービス)。

これは国民皆保険で、日本の国民健康保険にも似たようなシステムなんですけども、非常にイギリス人が大切に思っているものです。これを「アメリカの企業も参加できるように民営化しろ」って言っているわけね。で、それが相手の制度を変えてでも、俺の国の企業が儲かるようにしろ!っていう。

(プチ鹿島)手を突っ込んできたわけですね。

(モーリー)そして今度はさらに、アメリカの塩素で処理をした鶏肉、チキンがあるんですが。これはEUでは輸入できないことになっています。つまりEUの衛生基準を満たしていない。ところが、「イギリスはEUではなくなるので、アメリカのこの塩素加工したチキンを買いなさい。もっと輸入しなさい」と。それはイギリスの消費者への強制ではなく、店に並べることを求めていて、「並べてくれればあとは消費者が自分で選ぶから。それで選択の自由はあるだろう?」みたいな論理なんですよ。

ところが、これが露骨に塩素処理したチキンに対してイギリス国民はアレルギーを持っているわけ。「それをなんで食べなきゃいけないの?」って。

(プチ鹿島)まあまあ、だから、そういう時はあれですか? グイグイ来るのが嫌だったら、炉端焼きとかゴルフとか、そういう接待をすればいいんじゃないですか? イギリスは違うんですか? 「ふざけるな、トランプ!」ってビシッと言っちゃうんですか?

(モーリー)フフフ、ところがじゃあ、それがメイ首相も共同声明の時にトランプさんがNHSについて踏み込んでしまったために、それを非常にやんわりと打ち消すつもりで、「とにかくこれから積極的に全てを協議するということです」みたいに。別に「NHSをやってもいい」という風に譲ってはいないんですよ。ところが、メイ首相はもうすぐ辞任することが決まっていますので、もうその次の首相に「やっぱりボリス・ジョンソンがいいだろう」とか言っちゃっているのね。相手の選挙結果が出ていないのに。「やっぱり俺はこいつが好きなんだよ」って。

つまりね、相手の国家主権を軽んじている。イギリスをまるで属国のように扱っているという振る舞いが目立っていて。あまつさえ、これはひとつトランプさんもあまり計算していなかったことかもしれないけども、タブロイド紙の取材時にアメリカ人で黒人ハーフのメーガン妃。彼女は王室に嫁いで王室の一員になりましたよね。そのメーガン妃がかつて、大統領選の最中にトランプさんを非難していた。「トランプさんが大統領になることがあれば、私はカナダに移住する」みたいな発言をしていたんですよ。それを突きつけられて「嫌な人だな」って言っちゃったんですよ。

(プチ鹿島)ああー。

(モーリー)で、売り言葉に買い言葉でそれを振ったタブロイド紙もタブロイド紙ですけども。トランプさん、ある意味脇が甘いというか、王室をちょっと侮辱する発言をしてしまったんですよね。

イギリス王室を侮辱する発言も

(プチ鹿島)だから、迎えるイギリスの市民の人たちもデモで迎えたみたいな記事もあって。この間の日本とは全然好対照じゃないですか。

(モーリー)そうですね。

(プチ鹿島)やはり、イギリスから見るとトランプさんみたいな人はもう野蛮だな、みたいな? ちょっと眉をひそめるというか、馬鹿にするとまでは言わないけども。そういうのはあるんですか?

(モーリー)その大枠の外交上のEU懐疑論とか、それは置いておいて。やっぱりその多様性に対してトランプさんは非常に後ろ向きである。で、たとえばロンドンの市長であるカーンさん。カーン市長はバングラデシュ系のムスリムなんですよ。そしてトランプさんのことをそういう人権や多様性の立場から非難する。そうすると、さっそくそのロンドン市長のことをトランプさんは非難しているわけですよね。そういう手の突っ込み方もならず者というか、図太い番長のような……。

(プチ鹿島)なんかそれは言葉というか表現でいうと、イギリス人って皮肉でかわす、チクッとやるみたいなイメージ、あるじゃないですか。ところが、そこまで直接的なトランプみたいなのは通じないとか、ずっと平行線で合わないのかな?って……。

(モーリー)そうですね。だからブレグジットを推進しているイギリスの人たちの中には、イギリスの古くからいる保守派。イギリスの文化や伝統がEUとの統合で損なわれることを恐れる人たちがいるわけですよ。で、その人たちはみんな王室が大好きなわけ。その王室の、仮に最近加わったメーガン妃だとしても、その王室を損なう発言をトランプさんが平気でする。そこではしごを外されちゃっているわけですよね。アメリカに対する不信感が生まれてしまう。だからそういう意味ではトランプさんのならず者外交って言っていいのかな? 非常にアメリカ・ファーストっていうのは今回、はたしてイギリス国民の納得を得られるのか?

(プチ鹿島)特にその伝統とか保守的なもの。一方であるじゃないですか。イギリスって。そういうところに土足で入ってこられて。

(モーリー)で、やっぱり最後にそれで僕が連想してしまうのは、じゃあその歓待をした安倍総理。その日本のこともトランプさんは属国のように思っているんじゃないのか? 結局金づるとしか見ていなくて、その日本がいろいろと期待している、アメリカがたとえば尖閣諸島の問題、北方領土の問題、いろんなことで昔のようにタッグを組んで守ってくれるとか、一緒に組めるんだとか、安全保障を……たとえば改憲をしてもアメリカの基地は引き続きい続けてくれるとか、そういうのあるじゃん? そのへんのはしご、全部外されそうな危うさがあって。ここにおいてはもっと日本の保守のみなさんに気づいてほしいですね。

<書き起こしおわり>

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