安住紳一郎 第27回橋田賞受賞を語る

安住紳一郎 第27回橋田賞受賞を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で第27回橋田賞を受賞したことを話していました。

(安住紳一郎)それから皆様に報告なんですけども。金曜日に私、安住紳一郎がですね、なんと第27回橋田賞を受賞いたしまして。

(中澤有美子)(拍手)

(安住紳一郎)ありがとうございます。びっくりいたしました。青天の霹靂とはこのことで。

(中澤有美子)ああ、そうなんですか?

(安住紳一郎)本来、ドラマ、映画、演劇人たちに贈られる賞をなぜか私が受賞したということで。仮装もしてないのに仮装大賞受賞というような。ごくごく普通の私服なんですけども、それを「仮装」と認めて頂いたみたいな、そういうことになってましてですね。会場もどよめきましたけれども、くださるということでありがたく頂いてまいりました。世の中の賞というものは自薦と他薦があるんですけども。

大体、放送に関わるものというのは自薦が多いんですよね。自分で賞を狙いに行くっていうパターンが多くてですね。まあ、それはそれでいいんですね。ただ私は、ちょっとね、まだキャリアも少ないので。なんとなく、いろいろ自分の放送のその仕事を自薦するっていう感じはあんまりまだしてなかったので、他薦で頂く賞がまた嬉しいということだったんですけどもね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)本当に突然、ご推薦というか推挙の電話がありまして。「是非、お受け下さい」なんて。いや、もう本当にありがたく頂いてまいりました。そして私の活動の指針である「得体の知れないものこそ一番強い」というですね、その指針通りにこれでなんと私はみうらじゅん賞と橋田賞を受賞しているということに……まったくもって意味不明なアナウンサーになりました。

(中澤有美子)フハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)これはね、ありえないんです。全く門外漢の賞の受賞を2つ、並べました。

(中澤有美子)振り幅がすごいですね。

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(安住紳一郎)「振り幅」と言いますかね、もう本当にこれは自分ながらに自慢したいと思いましたね。で、まあこの面白さに気付いてくれる方っていうのは少ないんですけどもね。まあ、同僚でも何人か気付いてくれる方がいまして。「いや、安住ね。これはね、面白いことになってるよ!」って。だって本来は演劇人たちに贈られるような賞をひとついただいて。さらにみうらじゅん賞までもらってるって、これはこんな人いないし。「後年ね、もし安住が活動をしてない頃に後輩たちが見て、『これはどういうことだ? なんだこの人は? いったいなにがあったんだろう?』っていう風に思ってくれるよ」って言ってくれて。本当にそれは嬉しいことです。

(中澤有美子)フフフ、得体が知れないです(笑)。

(安住紳一郎)得体が知れないのが世の中でいちばん怖いですよ。「あいつ、何考えてるのかわからない」って言われることこそ一番の強みですからね。はい。嬉しかったです。

(中澤有美子)そうですね、そうですね。着々と得体のしれなさを増してらして。社会に認められて。その得体の知れなさが。

得体が知れないのが一番怖い

(安住紳一郎)いやー、もう本当にびっくりでございます。ねえ。いや、もう本当にね、「何を考えているのかわからない」っていうのが一番強いっていうのを最近、身をもって経験することが多いですね。同業者の皆さんと外で会ったりしましてもね、やっぱりこの何を考えているのかわからないから怖いから、やっぱりちょっと近寄れないみたいなところがあるみたいで。なんか恐れおののいている同業者がいますもんね。

(中澤有美子)へー! ああ、街で会った時に?

(安住紳一郎)「あっ、あっ、あっ……」みたいなね(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。そ、そうですか(笑)。

(安住紳一郎)面白いフェーズに突入しました。

(中澤有美子)フハハハハハハッ!

(安住紳一郎)なんなんでしょうね? ええ。都内の名門ホテルの大広間で開かれたんですけれども。いわゆるその、昔ながらの重鎮たちが集まる授賞式、報奨式って言うんですか? 金屏風がありましてね、そしてびっくりするほど重い掛け時計をトロフィー代わりにいただくんですけども。で、会場にはそうそうたる日本を代表する俳優、女優の皆さん方がいらっしゃって。で、胸に花をつけた審査委員長とか実行委員とか評議会とか財団の皆さんがずらりと並びましてですね。それで掛け時計をいただいて。そしてきらびやかなパーティードレスなどに彩られた女性陣たちなんかが賞状を受け取ってもらったりなんかして。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)そして三田佳子さんとか、長山藍子さんとかが会場にいてね。さほど私に対して表情を作る必要はないんですけども。さすが女優の皆さん方のそのなんか登壇している受賞者の皆さん方をまぶしい感じで見ているみたいなお芝居をしてくださるわけですよ。最前列に構えている大女優の皆さん方が。なんかそうすると私も2時間ドラマでこの掛け時計で殴られて殺されるんじゃないか? みたいな、そういう……。

(中澤有美子)フハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)なかなかそういうの、ないですもんね。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)だからなんか、そういうサスペンスのオープニングに思えちゃったりなんかして。ちょっと笑えちゃったりなんかしたんですけども。

(中澤有美子)フフフ、「このままで終わるわけがない」みたいな気持ちになって。

(安住紳一郎)「なんだ、これは?」みたいな感じになりましてですね。で、まあ演劇人とかね、山田洋次監督とか、そういうお歴々ばっかりだったんで。当然、私はちょっと門外漢というかアウェイの感じでございまして。当然スピーチが少しね、ダダ滑りに滑りを重ねたということなんですけれども。

(中澤有美子)ああーっ、そうなんですか? そんなこと、ないでしょう? また。

(安住紳一郎)いえいえ。かなりでしたね。

(中澤有美子)そうですか? きっと練りに練ったものを……。

(安住紳一郎)いやいやいや、また緊張しましたもんですからね。いやー、なかなかね、面白いですね。そして、石井ふく子さんっていうね、演出家の方がいらっしゃいますけども。その表彰式自体も石井ふく子さんが演出をされてるということで、随所随所にその日本の古き良き授賞式みたいなものを垣間見ることができるんですけども。すごくマメな方で。94歳ですか? 橋田壽賀子さんも93ですもんね。普通、93歳、94歳って言ったら家で2時間テレビを見るだけでも大変なのに、そのテレビドラマをいまも作ってるっていうんですからね。素晴らしい。本当に。

(中澤有美子)すごいですね!

(安住紳一郎)で、石井さんてもう大御所。大演出家ということは皆さんも知ってると思うんですけども、ものすごくフットワークが軽いんですよ。で、私が今回こういう運びになったっていったら、いの一番に電話があったのが石井ふく子さんからで。私なんてね、50年下の人間ですから。私などにそんなに気を使わなくてもいいのに、すぐ電話がありましてですね。しかも誰から聞いたのか分かりませんけども、ある日突然石井ふく子御大から直電がかかってくるっていうね。

(中澤有美子)そうでしたか!

(安住紳一郎)「安住さん、このたびはおめでとうございます。皆さんも喜んでると思いますからぜひ授賞式に楽しい顔していらっしゃってください」なんて。嬉しいもんですね。やっぱりね。うん。と、思いました。そんな大先輩からね、気をかけて頂いて。少し私、興奮しちゃったんですね。3月の下旬なんですけどもね。

(中澤有美子)ああ、そんな前だったんですね。

(安住紳一郎)ええ、それぐらいに電話があって。それで教えてもらって。少し、ちょっと夜8時くらいだったんですけども、すごく動揺をしちゃったんですね。「あわわ、あわわ……」ってしちゃって。「これはよくない!」って思って。交感神経と副交感神経のバランスがおかしくなっちゃってますからね。アドレナリンなのかノルアドレナリンなのかわかりませんけども、もう出ちゃってるから。これはちょっと、いつもよく行くマッサージ屋さんに行って少し体をほぐしてもらって。

それで落ち着いていろいろ準備した方がいいなと思ってですね。で、すぐそれを、石井さんから電話もらって5分後ぐらいに「いまからマッサージ入れますか?」なんてそのマッサージ屋さんに電話しようと思ったらですね、もう震えてるから、携帯電話のリダイヤルをね。指のタッチがずれちゃったんだね。こうね。それで、気づかないうちに石井ふく子さんにリダイヤルしちゃったんだね。

(中澤有美子)あらいやだ! アハハハハハハハッ!

リダイヤルで石井ふく子さんに間違い電話

(安住紳一郎)「はあーっ!」って思って。そういうの、怖いよね? いや、本当にね、携帯電話っていうのは便利なようで不便ですよね。ちょっとね、ありますよね。特にスマートフォン、ちょっとね。指のタッチが違うところに行っちゃった利してね。アラームが止まりきらない時とか、ありますよね? 「何度も押してるよ!」みたいなね。そしたら、全然気づかないですもんね。いつも行っているマッサージ屋さんがあるんですけど、そこのマッサージ屋さんだと思って「すいません」なんて言った瞬間に「はい、どうしたんですか?」って。その瞬間、私は気づきましたね。「間違ってる! なにをしているんだ!」って思って。でも、さすがに大先輩にね、「すいません、間違って電話しました」っていう風には言えない自分がいる中で。その辺の臨機応変さ、私も自分で驚きましたけども。急に芝居を始めましてですね。

(中澤有美子)ほう。

(安住紳一郎)「石井さん、やっぱり考えたんですけど私で、いいんでしょうか?」なんて! ウブな芝居をこきましてですね。

(中澤有美子)アハハハハハハハハッ!

(安住紳一郎)さすが。さすが安住だとその時は思いました。するとやっぱり94歳ですか。ねえ。石井ふく子さんも私の芝居に騙されましてね。「安住さん、本当に謙虚な方! 私ね、本当に嬉しい!」なんて言われましてね。私、マッサージ屋さんと間違って電話しただけなんですけどもね。「さすがに私、当日元気な顔していけないんですね。私なんかが取るような賞じゃありませんし。なんかちょっと、いいのかな? なんていう気持ちがありまして。辞退した方がいいのかな? なんて電話を切ってから考えたんです」なんて。「安住さん、それはね、間違いですよ」なんて言われて。

「そうですか。先生にそこまで言っていただいたならば、当日私、授賞式に向かいます。ありがとうございます。本当に先生、ありがとうございました……」って。最後はちょっとね、演歌歌手みたいな感じで。声にならないような感じの芝居をつけて。ウブな芝居をしました。ねえ。そしたら金曜日も石井さんがやっぱり私のそのウブな芝居にまだ気づいてなかったみたいで。「安住さん、今日は堂々と挨拶をなさってください」なんて。

(中澤有美子)ええ、ええ。

(安住紳一郎)本当にこの放送を石井さんが聞いていないことを祈りますけども。すいません(笑)。ねえ、いろんなことがありましたけども。本当に携帯電話のリダイヤルは危ないですね。ドキッとしますからね。

(中澤有美子)重要な場面でね。

(安住紳一郎)重要な場面でね。変なタイミングですもんね。そんな時になんか、うん。「すいません。かけ間違えました」とは言えないでしょう? そんな大事な時に……と思いましたね。

(中澤有美子)ええー、本当? どこまで本当?(笑)。

(安住紳一郎)本当に……でも、ありますでしょう? そういう、予期せぬ人にかけ間違うっていうこと、ありますよね。

(中澤有美子)とってもありますね。本当に平謝り(笑)。

(安住紳一郎)平謝りっていうか、ありますよねー。備えあれば芝居心!

(中澤有美子)フハハハハハハハッ! そうですね。本当にそうですね!(笑)。

<書き起こしおわり>

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