渡辺志保 Beyonce『Homecoming』徹底解説

渡辺志保 Beyonce『Homecoming』徹底解説 MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんがbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でNetflixで配信中のビヨンセのコーチェラのショーのドキュメンタリー『Homecoming』および、そのライブアルバムについて解説していました。

HOMECOMING: THE LIVE ALBUM [Explicit]

(渡辺志保)ここからはビヨンセの『Homecoming』についてお届けします。というわけで皆さん、すでにチェック済みの方もいらっしゃいますでしょうか。Netflix側が60億円強を支払ったとも報じられているすごい規模のドキュメンタリームービーがですね、4月17日に公開となりました。もちろんですね、Netflix限定で見ることができます。そしてこちらもですね、あとから触れますがなんと同じ日にですね、その『Homecoming』と題されたライヴアルバムもリリースされまして。本当にビヨンセファンとしてはもう忙しい数週間。消化するのに忙しいという感じで過ごしておりましたけれども。

このビヨンセの『Homecoming』、内容としましては以前もこの番組で報じました通り、2018年に行われたコーチェラフェスティバルのビヨンセのステージをまとめたものなんですよね。本当にすごいよね。フェスにおけるさアーティストのステージって、それだけを特別に皆さん、どのアーティストも作ってくるわけですけれども。まあいわゆる大きなフェスの傘の中の一部って感じではあるんですけれども。去年のビヨンセのコーチェラに関してはもう確実にその傘を飛び越えて、ビヨンセがコーチェラを飛び越えて世界中を支配したような感じのパワー溢れるストーリーだったという感じです。

で、去年のビヨンセがコーチェラでどんなステージを披露したかということに関しては、もうすでにいろんな記事とかも出てますし。私も去年、結構いろいろラジオで喋ったりとかもしてますので。ぜひぜひそうしたところも参照していただきながら、今回これから放送聞いていただきたいなという風に思いますけれども。

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私もやっぱり去年のコーチェラ、ストリーミングで見て。その後、よくないけどYouTubeとかにね、やっぱり上がってるんですよね。オフィシャルではない映像が。で、やっぱりさ、何度も見たくなっちゃうから見ちゃうわけ。でもやっぱり頭がいいなと思いますけど、そういう不正視聴っていうんですかね? そういうこともやっぱり今回のこのNetflixの番組ができることで、そこも一掃できる。で、音楽もやっぱり聞きたくなるから、ちょっと違法な感じでアップロードされてる音源とかも聞いちゃうんだけど。それすらもやっぱりね、根こそぎ一掃するのがもうビヨンセ様のやり口というかね、そういったところもクリーンに、みんなが楽しめる状態を作ってくれたというような感じです。

私もなので、何度もYouTubeで繰り返し繰り返し見ていたので、今更新しい気付きとかはもうないだろうという風に思いながら、この『Homecoming』を見たんですけれども。本当にそんなことはなくって、新しい気付きだらけ、新しい発見だらけの作品に仕上がっておりました。で、いちばん意外だなと思ったんですけれども、この『Homecoming』と題されたビヨンセのコーチェラのショーなんですけれども、「Homecoming」って「帰郷・帰ること」ですよね。そういう意味があるんですけれども。

ビヨンセが盛り込んだテーマ

たとえば同窓会とかね、同じ学校を卒業した同窓生が再び集まるようなことも「Homecoming」……母校に集まることを「Homecoming」っていう風にも言うんですよね。なので卒業生が母校に集まるホームカミングデーとか、そういった日が設けられていることも多いです。なので、テーマのひとつとしてはその「大学・カレッジ」っていうのがテーマになっております。その中でも「HBCU」と呼ばれる大学の組織というか、大学の種類がアメリカにもあるんですけれども。歴史的な黒人大学のことを「HBCU(Historically black colleges and universities)」っていう風に呼びます。

これはかつて、人種差別というか人種隔離がまかり通っていた時代ですね、アメリカにはなかなか大学に行きたくてもやっぱりそこはね、白人だけの世界ということで門戸を叩くことすら許されなかった生徒さんがたくさんいるんですけれども。そういう生徒のために作られた学校がHBCUであると。で、すごく意外だったんですけど、ビヨンセってもう何もかも手にして、何もかも成功した女性という風に見えるんですけれども、彼女が成し遂げたかったことのひとつとして「大学に行きたかった」っていう風にね、ドキュメンタリーの中で語られてたんですよね。

で、彼女は本当にさ、8歳、9歳の頃からお父さんがマネージャーになって、グループを組んで、芸能活動をスタートしまして。15、16の時にはもうデビューしてましたから、なかなか大学に行く機会というのがなかった。で、「かつて所属していたグループ、デスティニーズ・チャイルドの活動が私にとっての大学だったんです」っていう風にも言っていて。だからこそ、アフリカン・アメリカン、アメリカ黒人の方たちのルーツに根ざしたHBCUへの憧れがすごくあったという風にドキュメンタリーで語られておりまして、「ああ、なるほど!」と。

全部を成し遂げたと思われるビヨンセでも、これが後悔っていうとまた違う意味合いを持つかもしれないですけれども、あの憧憬の念を抱くことがあるんだなという風に気づいたところでもあります。ちなみに、このHBCUっていうのは度々映画の題材にもなることがありまして。たとえば、私も大好きなんだけどスパイク・リーの『スクール・デイズ』とか。あとはこのビヨンセの『Homecoming』のたぶん題材になったと言ってもいいかもしれないですね。ニック・キャノンが主演した『ドラムライン』とか。そういった映画の題材になることも非常に多いというところでございます。

で、この『Homecoming』の中でもうひとつ、一貫して主張されているのは彼女の人種的なルーツなんですね。で、「アメリカに生きる黒人」っていう。しかも「黒人女性」ということがずっとね、繰り返されて主張されているんですけれども。ビヨンセって自分のキャリアにおいてね、特に初期とか中期はあんまり自分はフェミニズムとかね、あとはテキサス州ヒューストン出身という地方出身・田舎娘なんですよっていうことは主張することはなんどもあったんですけども。でも、あんまり声高らかに「私は黒人である!」とか、「お父さんとお母さんがこういうルーツで……」ということはあまり語らなかった印象が私はあるんですね。

で、自分のルーツを語るとしたら「クレオール」という立場で自分の出自を語ることが多かったのでは? というのがビヨンセの私の印象ですので。なので、これも当時、私も他のラジオで話しましたけど、彼女が『Formation』という曲を出した時に、アメリカのコメディー番組『サタデー・ナイト・ライブ』という番組ありますけれども。そこでも「ビヨンセが初めて黒人になった!」みたいな、そういう風に揶揄されてしまうぐらい、あんまりビヨンセは自分がアフリカン・アメリカンであることっていうのをそこまで濃くは主張してこなかったんですよ。

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なんですが、ここではそれが非常に大きな柱になってる。で、トニ・モリスンとかニーナ・シモンであるとかっていう、そういう黒人女性のアクティビストと呼ばれるような方々の言葉も使いながら、この『Homecoming』というドキュメンタリー映画を紐解いていくというか、綴っていくというような内容になってます。いやー、本当に見所ばかりねっていう感じですよね。で、最初に「もう新しい気づきはないんじゃないかな」っていう風にね、私もね述べたところではあるんですけども。まあそういったビヨンセの主張とともに、あとは細かい気づきがね、たくさんあって。そこはどこに忍ばされていたかと言うと、やっぱり要でありますけども楽曲なんですよね。

で、ストリーミング放送で生で中継してるところを見た時から、「ああ、この曲にこの曲をブレンドしてる!」とか、「ここはあの曲のあの部分をサンプリングしてる!」みたいな小ネタがすごいたくさんあったんですけれども。かなりね、オタク的な楽しみ方かもしれないですが、最後のエンドロールにちょっとだけでもサンプリングした楽曲は全部クレジットトがバーッと流れておりまして。「ああ、ここでわからなかったあのネタはこの曲なのか!」とか。「ここでなんと、シャイ・グリジーの曲を使ってたんだ!」とか、「ここでヤング・ジョックの曲を弾いてたんだ」とか、そういう本当に細かいところまで可視化できたというのが個人的には非常に嬉しいところでもありました。

なので、すごく本当に満足度の高いドキュメンタリー映画ではあるんだけど、なんだろう。欲を言うとしたら、もうちょっとそのバンドアレンジがどうしてこういう風になったかとかね、そういったサウンドの裏側を追求するというか、フォーカスを当てるところがもうちょっとあってもよかったかなって思いました。で、なんと言っても、このステージ。100名を超えるマーチングバンドが全ての演奏するということで、そこも話題になっておりますので。

皆様、ぜひぜひもう本当に迫力しかないっていう感じなので、見て聞いて楽しんでいただきたいと思います。ここで1曲、お届けしたいんですけれども。今回、この『Homecoming』の中で私がいちばん燃えたバンドアレンジ。それが『Drunk in Love』という彼女の代表曲なんですけれども。途中で『Swag Surfin’』っていうアメリカのアトランタの本当にフロアアンセムとして……なんだろうアトランタ中、ひいては全米、そしてひいては世界中で愛されている曲がありまして。

『Drunk in Love』の中盤からいきなり『Swag Surfin’』が始まるところに私はいちばん燃えてしまいましたので、どんなアレンジになっているか聞いてみてください。ビヨンセで『Drunk in Love Homecoming Live』。

Beyonce『Drunk in Love Homecoming Live』


はい。いま聞いていただいたのはビヨンセで『Drunk in Love Homecoming Live』でした。『Swag Surfin’』が差し込まれていたところ、わかりますでしょうか? その後で自分の曲の『Irreplaceable』とかにもつないでいて、本当ね、すっげー!っていう感じがするんですけれども。この時間はこのまま引き続きビヨンセの『Homecoming』について特集してまいりたいと思います。

いまね、先ほどお伝えした通りNetflix限定で彼女のドキュメンタリー映画『Homecoming』が見れますよということで。かつ、同時にそのライブアルバムも発売されたというところです。で、ビヨンセと言いますとひとつ前のアルバムで『Lemonade』が彼女の旦那さんが運営しているストリーミングサービスTIDALでしか聞けない。もしくは見れないという状況だったんですね。でも元々『Lemonade』ってiTunesでもSpotifyでも自由に聞けたんですけれども、気づいたら全て旦那さんのプラットフォームに集約されていて聞けないみたいなね。

しかも、そのTIDALっていうサービスは世界中で運用されているんだけれども、アジア圏がすごく弱くて。日本では使えないサービスなんですよね。だからずっと日本では『Lemonade』がストリーミングで聞けないという状態だったんですけれども。なんと先日、4月23日だったかな? 再び『Lemonade』がすべてのプラットフォームに再リリースというか再登場しましてて。そこでもやっぱりすごいですよね。『Lemonade』に入ってた曲がSpotifyのチャートにグイグイと食い込んでいったりとか、そういう動きありましたし。

で、同じ4月ということで言いますと、4月上旬にはNetflixの映画の公開に先駆けてビヨンセが元々アイビー・パークというスポーツウェア、そういった洋服のブランドを持っていて。Topshopというところと契約してたんですけれども、その契約を解除してですね、なんとアディダスとパートナーシップを組むという告知もされました。

なので4月はずっとそのアイビー・パークの告知でしょ。この『Homecoming』のリリースでしょ。それで『Lemonade』がねまた各プラットフォームに復活しましたみたいなニュースとか、いろいろあって本当にあらゆる手段を用いてメイクマネーしてるなという風にしみじみと考えさせられてしまいました。さすがですっていう感じです。報じられたところによりますと、新しいマネージャーが付いたそうで。その方が非常にやり手でこういうディールをいくつも決めてきたという。

あと噂によりますと、Netflixはさらにビヨンセとね他の映像作品の契約もしているそうでして、その噂が本当であれば非常に楽しみなところです。アルバム『Homecoming』についてこれからちょっと触れていきたいと思うんですけれども、このアルバムはコーチェラのステージをそのままライブアルバムとして発表したものなんですが。ファンとして嬉しいなと思うのは、合間の小さいスキットとかもね、全部そのまま入ってるんですよね。余すところなくノーカット状態で入っておりまして。

後ろのバンドの方とのやりとりとか、ビヨンセのちょっとしたトークとかね、そういったところも入っております。またまたちょっと私が好きなアレンジの曲を聞いてほしいなと思うんですが。続いてお届けするのは彼女の『Sorry』という曲ですね。アルバム『Lemonade』に収録されておりますけれども。これ、元々自分の彼氏というか旦那さんに浮気された女の子が家を出ていって、女友達とクラブで飲んで騒いで遊びまくるっていうね、本当にガールズアンセムな曲なんですけれども。

このライブバージョンでは途中で男子生徒を並べてですね、「ちょっと私を笑わせてみなさいよ」っていう、そういう寸劇が入ってるんですね。で、なんか男の子たちがワーッとやるんだけど、「いまの、聞いた? 全然面白くなくない?」みたいな感じでビヨンセが客席に呼びかける。で、「レイディーズ! 私たちは十分賢くて強いんだから、もうブルシット(たわごと)はたくさんだよね? もう男のつまんないあれこれには付き合ってらんないよね!」みたいなことを何万人もの観客に向かってビヨンセがバシッと言うところに私はすごいしびれてしまいました。

すごくこのアレンジ、長くなってるんですけど。その女の子たちのパワーをね、すごく感じる仕上がりになっておりまして。実際私もこの曲、数年前に彼女のライブをアメリカまで見に行ったことがあるんですけれども。その時の会場の女の子たちもすごいパワーだったので、ぜひぜひちょっとだけでも感じてほしいなと思いますので。ここでお届けしましょう。ビヨンセで『Sorry Homecoming Live』。

Beyonce『Sorry Homecoming Live』


はい。いまお届けしましたのは皆さん、楽しんでいただけましたでしょうか? 臨場感たっぷりのビヨンセの『Sorry Homecoming Live』でした。このアルバムですね、いま本当にすべてのプラットフォームでダウンロードするもよし、ストリーミングで聞くもよしという感じで楽しむことができます。そしていま、また話題になっているのは最後にボーナストラックで収録されている『Before I Let Go』。メイズでおなじみの『Before I Let Go』をビヨンセがカバーしてて、これがまた、この選曲をしたっていうのがまた彼女が自分のルーツをどういう風にリプリゼントしてるかっていうところ、よく表れているんじゃないかなという風にも思います。

この『Before I Let Go』もかけたかったけど、なかなかちょっと時間の都合で。私が喋りすぎてしまった都合で今日は割愛させていただきますので。皆様、ぜひぜひググってみてください。いま、この『Before I Let Go』チャレンジ(#BeforeILetGoChallenge)っていうのもビヨンセがInstagram上でやっておりますので、踊りたい方は皆さんでエレクトリックスライドと呼ばれる踊りなどしてみるのはいかがでしょうか?

<書き起こしおわり>

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