モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で徐々に広がりつつある反ワクチン運動についてトーク。ニューヨークで麻疹がアウトブレイクして非常事態宣言が出された話などをしていました。
(モーリー)今日はいつもと違うメディアをご紹介したいんですけども。「JTA」というたぶん誰も知らない、俺も知らなかったメディアがあります。「Jewish Telegraphic Agency」。ユダヤ人の通信社。ニューヨークに本社を置くユダヤ系メディアの公式Twitterの4月7日のツイートをご紹介します。こちらです。ある写真があってそこにメッセージがあるんですけども。
Anti-vaccine activists are using a Holocaust-era yellow Star of David to promote their cause https://t.co/aXogSqdtKj pic.twitter.com/LHm8b4i63Z
— JTA | Jewish news (@JTAnews) 2019年4月7日
(モーリー)「Anti-vaccine(反ワクチン)」を最後を「X」にして「Anti-vax」っていう風に新しい用語が出てきています。反ワクチンの活動家たちがホロコーストの時代に用いられた……つまり、ドイツなどのユダヤ人がユダヤ人であることを示すために、黄色いダビデの星。宗教的なシンボルなんですけども、こういうようなものを服に縫い付けることを義務化されたんですね。ある種の差別政策です。で、その後に彼らは虐殺されたんですけども。
These were the yellow Star of David that Nazis made Jews wear during the Holocaust, to identify then publicly. #YomHashoah #NeverAgain pic.twitter.com/AK5qpWSomO
— Arsen Ostrovsky (@Ostrov_A) 2017年4月23日
そのような黄色いダビデの星(yellow Star of David)にそっくりなワッペンを反ワクチンの活動家が使っているということを非難する記事が出たんです。じゃあ、これを日本語にしましょう。「反ワクチンの活動家たちはホロコーストを連想させる黄色のダビデの星を使って彼らの主張を宣伝している」という。
(プチ鹿島)うん。
(モーリー)これ、どういうことか?っていうと、いま反ワクチン運動というのが非常に広がっていて。実際に日本にもそれが及んでいるんですよ。三重県ではしか(麻疹)がアウトブレイク寸前になっているんですけども。それは実はある宗教団体がワクチン反対だったので、若い子たちを中心に広がってしまった。で、その宗教団体の名前は言わないというのがギリギリの忖度。訴えられたくないからだよ! あとはネットで調べてみ? みたいなね。
(プチ鹿島)フフフ(笑)。
(モーリー)だから日本の中にも反ワクチンって結構広がっているわけ。で、反ワクチンっていうのは日本の場合は意識の高いママさん。ホメオパシー好き。で、ホメオパシーは反ワクチンを宣伝しているんで、そこから情報を得て「ワクチンって恐ろしいことなんでしょう?」みたいな。で、アメリカにも相当に反ワクチンの運動がいま、どんどんと過激化してきているんですね。そして、ただのいわゆるお母さんたちが「子供は不安よね」って言っているレベルを超えてきていて、「ワクチンを禁止しろ!」とか、禁止をすることはできないので、義務化されているワクチンを州の制度をどんどん変えていって、全部選択式に変えていくんですよ。そうすると、州によって恐ろしくワクチンの接種率が低い州っていうのが出てきているのね。
で、そういうところに活動家たちが行って。この前、アメリカのテキサス州で行われていた反ワクチン運動のデモで、このワッペンを貼り付けたんです。よく見ると、ヘブライ文字にそっくりの英語のフォントで「No Vax(ワクチン反対)」。つまり、なんでこんなことをやるのか?っていうと、これは「子供たちがワクチンを打つといろんな病気になって死んでいく。子供の大量虐殺、つまりホロコーストだ!」っていう。ワクチンホロコーストというでっち上げのイメージを活動家が使うわけ。そうすると、この写真が報道をされるともうまたたく間にソーシャルメディアに広がりますよね? ですからウケ狙いなんですけども、本当のホロコーストで死んだ人たちに対する冒涜でもあるわけですよ。我田引水なので。なので、それで大炎上をしたというわけですね。
で、この反ワクチン運動なんですけども、たとえばいろんな論文が出ているんですが、現在ヨーロッパでさっきブレグジットの話題でも言ったようにポピュリズム運動の拡大と反ワクチンというのが手に手を取っているんじゃないかと。どっちも陰謀論が含まれるので、そこでなんとなくアライアンスを組んでネットに広がりやすい。
で、この反ワクチン運動の原点なんですが、1998年。もう20年以上前にイギリスの医師であったアンドリュー・ウェイクフィールドという人が三種混合ワクチン。このワクチンが子供の自閉症を引き起こす。「ワクチンを打った子供が自閉症になったという例がある」という論文を出しちゃったんですよ。
で、これがまたたく間に世界に広がって、反ワクチン運動がイギリスなどではとても強く定着した。ところがその後、この論文はデタラメであることが発覚しました。どんな研究者が同じ条件で実験をしても、まったく同じ結果は出ない。で、ウェイクフィールド本人は譲らない。それで医師の資格を剥奪されています。
ポピュリズムと結びつく反ワクチン運動
なんだけども、ここがどうポピュリズムと結びつくかっていうと、ポピュリズムというのはたとえば我々は今日、地上波のワイドショーを批判していたわけだ。ところがこれがネットで過激化していくと、「テレビは全部ウソだ」って。たとえば安倍さんのことが嫌いな人は「テレビは全部御用メディア。テレビのニュースはウソ。そもそも事実がねじ曲げられて伝えられている。そんな問題は最初からなかったんだ!」って。
(プチ鹿島)そっちまで走っちゃうんですね。
(モーリー)というような論理展開が反ワクチンの間であった結果、「医学は自分たちの重大な落ち度を隠蔽している」という話になったんですね。そしてその結果、いまでは先進国の意識高い系の人たちの間に広まってしまい、オーストラリアで調べたところ、セレブのママたち。ホメオパシー好きでスピリチュアル好きのコミュニティー、つまりお金持ちの人ばっかり住んでいるような土地の値段がグンと上がっているエリアに、その混合ワクチンを受けていない子供がいっぱいいるんですよ。そしていまのいま、なんとニューヨークではしかがアウトブレイクしました。そして非常事態宣言が出されています。
ニューヨーク、麻疹で非常事態宣言。
Measles Outbreak: New York Declares Health Emergency, Requiring Vaccinations in Parts of Brooklyn https://t.co/OyY9QiWo8N
— suzuki hiroco (@hiroco2003) 2019年4月10日
そしてつい最近、はしかがアウトブレイクが始まった頃に地元の裁判所が「せめてワクチンを接種していない子供はしばらく20日間、公の場に出ないように」という裁判所命令を出したの。それに対して地元の人たちが訴えを起こした。「これは憲法違反だ! 個人が選ぶ自由を損なっている! 強制されるのは人権侵害だ!」って訴えたら、勝っちゃった。だからいま、アウトブレイクしているエリアでワクチンを接種していない赤ちゃんを近くのスーパーに連れていきたければどうぞって。赤ちゃん、はしかがあるところに連れて行ったらほぼかならず感染します。なのに、権利を主張する人たちが裁判所に勝ってしまったため、裁判所命令は無効化。だから非常事態宣言を出すことによって止めるしかないんですよ。
(プチ鹿島)ああーっ!
(モーリー)で、ちょっと長くなってきちゃったので今日はここで端折りますけども。このアウトブレイクが起きているのが超正統派ユダヤ人のコミュニティーの中で起きていて、その人たちははしかをイスラエルから持ち帰った。で、そのイスラエルには誰が持ち込んだのか?っていうと、ウクライナから持ち帰った。ウクライナには超正統派ユダヤ教の宗派の始祖がいるんです。その有名な偉人の墓のあるところかな? そこを巡礼するわけ。そこを巡礼した集団がそこに行って、そういう人たちはワクチンを使わない傾向にある。そしてウクライナはいま、戦争があって貧困で反ワクチンが強い。で、大変にはしかが流行をしてる。そこを巡礼したユダヤ人の一団がはしかに感染してイスラエルに持ち帰って、それが今度はニューヨークに来ちゃった。そしていま、それが拡散中ということなんですね。
(プチ鹿島)はー!
(モーリー)はい。ということでした。今日は、ここまで。
(プチ鹿島)ありがとうございます。
<書き起こしおわり>