吉田豪 萩原健一を語る

吉田豪 萩原健一を語る TBSラジオ

(吉田豪)瀬戸内寂聴さんとかの関係もあって。80年代後半ぐらいでしたね。その頃、車でお坊さんたちと一緒になった時、いつもクラシックとかを聞いているから「なにか他にないですか?」って聞いたら、「じゃあこれを流します」って入れたのがローリング・ストーンズの『Brown Sugar』で。「うおおー、たまんねえ!」って。「ブラウンシュガーとはヘロインのことだ。大麻で捕まった即席坊主が本業の坊主とヘロインの歌を絶叫している」っていう。まあ、いいエピソードなんですけども。

(小西克哉)フハハハハハハッ! うん(笑)。

(吉田豪)これも実は、古い方ではもっといいエピソードなんですよ。読むとですね、「『萩原さん、ストーンズ、好きですか? 私もね、ストーンズにはぞっこんなんです。いいです。うーん、いい! うーん! それでは3人で……はい!』『ブラウンシュガー♪』」って……合唱するんですよ(笑)。

(小西克哉)フハハハハハハッ! 坊さんが言うんだ?

(吉田豪)坊さんが。さらには「『萩原さん、ブラウンシュガーってどういう意味の言葉か知っていますか?』『いいえ、知りません』『ヘロインのことなんですってね。怖いですね。やっぱりこの人たちも麻薬をやっていて、それで日本に来れないんですってね。この人も健さんと一緒で社会的影響力が大きいから、そういう人たちを捕まえるんでしょうね。ブラウンシュガー♪』」って……また歌うっていうね(笑)。

(小西克哉)フハハハハハハッ!

(吉田豪)こっちの方が全然いい話なんですよ!

(小西克哉)しょうがねえな(笑)。それ、なんでそこ、えらいあっさりにしたんだろうね?

(吉田豪)だから、密度を濃くしたいんでしょうね。結局だからもっと他のエピソードもいっぱい入れたいっていう。この時の話だけじゃなくて。だから、いい話はいっぱいあるんですよ。倍賞美津子さんの話とか。要はこの本を出して以降の話ですね。倍賞さんと交際を始めて。で、「倍賞美津子さんがいちばんいい女だった」って言っているんですけど。で、猪木寛子ちゃんっていう猪木さんの娘さんには「この人のせいで両親は離婚したんだ」ってすごい嫌われていて。それで「お父さんに投票しない人間は裏切り者だ!」って言われてショーケンが初めて投票に行く話とか(笑)。

(小西克哉)ああー、なるほど!

(吉田豪)ショーケンが猪木さんに1票入れるっていう(笑)。いい話があるんですよ。

(小西克哉)それってあれですか? 80年代ではそういうドラッグの描写が許される許容範囲といまでは、やっぱりそこまで書くとちょっと問題じゃない?っていう、そういった変化ってありますか?

(吉田豪)それは『ショーケン』に関しては変わらないですね。さっきの「たまんねえ」的なのもそうだし。

(小西克哉)でも「たまんねえ」っていうのも省略になっているわけでしょう?

(吉田豪)『俺の人生どっかおかしい』も僕、大好きな描写があって。「これは寝起きで冷蔵庫から氷を出し、洗面所で氷を浮かべた冷たい水に頭を突っ込んだ。それでも頭がすっきりしない。『よし、ハシシでも吸うか!』。ハシシを削り、マリファナタバコを作って吸った。すごくうまかった。たまらなくよかった」っていうね。これもすごい僕、好きで(笑)。

(小西克哉)これは80年代ね。

新作では個人名が書かれるようになる

(吉田豪)80年代です。ただ、でも1ヶ所新しい方が勝っているところがあって。個人名が出るようになっているっていうポイントがあるんですね。たとえば、こっちです。『俺の人生どっかおかしい』だと「ある役者が一時、原田芳雄さんの真似ばかりしていたことがある。他人から見れば『よくもあそこまでコピーするものだ』と呆れるぐらいだった。その彼が今度は私の真似をし始めた。そして私の家に来てはかつてのお手本だった原田芳雄さんの悪口を並べ立てるのだった」っていう。誰だろう?っていう話じゃないですか。

(小西克哉)うんうん。

(吉田豪)『ショーケン』だと思っきり「松田優作」が書いてあるんですね。実名です。

(小西克哉)へー!

(吉田豪)「『ケンちゃん、原田芳雄はもうダメだな!』『どういうこと?』『いや、最低よ、あいつは』と言い出す。格好からなにから真似をしていたのに……」みたいな。ディテールがすごく細かくなっているんですよ。

(小西克哉)そうなんだ。それも面白いね。

(吉田豪)で、実は僕、この裏ネタをさらに握っていまして。ある人、関係者から聞いたんですけど。この真似をした云々で2人が大喧嘩になったことがあるんですよ。しかも、正月早々に。

(小西克哉)へえ。

(吉田豪)正月早々、いしだあゆみ宅で大喧嘩になって。で、「この喧嘩を止めるには、この人しかない!」っていうので呼ばれたのが、内田裕也さんと安岡力也さんなんですよ(笑)。

(小西克哉)フハハハハハハッ!

(吉田豪)その2人がニューイヤーロックフェスティバル明けでやってくるわけですよ(笑)。

(小西克哉)なんでその人選になるのかな?(笑)。

(吉田豪)まあ「止められる人」っていう。裕也ファミリー的なものですよね。一応。で、止めに行って。で、力也さんとかが「おう、ダメだぞ、ケンカしちゃ!」って言うと止まるらしいんですけど。で、「じゃあちょっと隣の部屋で飲むか」って飲み始めるとまたケンカになって。で、「ダメだぞ、ケンカしちゃ!」ってまた力也さんが入っていくっていう(笑)。いい話ですよ。

(小西克哉)フハハハハハハッ!

(吉田豪)完璧なメンバーが集っていたという。

(小西克哉)そうね。それはどっちの方に?

(吉田豪)これはどっちにも出ていないです。僕がある人から取材したインサイダー情報です。

(小西克哉)そこが面白いところだな。

(吉田豪)そこまでどうせなら書いてほしかったです。

(小西克哉)じゃあ、省略していることまで吉田豪はわかっちゃう。それ、すごいよね。ということで、今日はまだ他にもエピソードがあったんですけども。本日のコラムニスト、しゃべる墓荒らし、吉田豪さんでございました。

(吉田豪)どもです。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/56010

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