モーリー・ロバートソン 近藤麻理恵(こんまり)アメリカ大ブレイクを語る

モーリー・ロバートソン 近藤麻理恵(こんまり)アメリカ大ブレイクを語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で現在アメリカなどで大ブレイク中の近藤麻理恵(こんまり)さんについてトーク。そのブレイクの背景について解説していました。

(モーリー)今日はいいネタを仕入れてきました。1930年に創刊した主に映画やテレビなどのエンターテインメント情報を扱う老舗の雑誌『Hollywood Reporter’(ハリウッド・リポーター)』の公式Twitterから拾ってきまいた。こちらです。ハリウッド・リポーターのTwitter「@THR」。Theも入れて「THR」ですよね。ここからしても1930年代っぽいって言えば面白いんだけど。

(モーリー)この近藤麻理恵さん。この人がいま、大変にアメリカでブームどころか波を起こしている状態。日本語訳をご紹介しましょう。「近藤麻理恵さんがアカデミー賞出演でテレビパーソナリティーのソーシャルメディアトップランキングに再びなりました」という。あのね、解説とかそういうのをする前にちょっと見て驚いたのが、記事で普通にアメリカのセレブとかの写真の間に近藤麻理恵さんが混じっているっていう。

(プチ鹿島)はー!

(モーリー)でね、近藤さんの風貌というか雰囲気がなんて言うかやっぱりちょっとブロガーっぽいじゃないですか。私からすると芸能人とか、たとえばワタナベエンターテインメント所属とか吉本と契約された方とは違う雰囲気なんですよ。フリーランスっぽいっていうか。

(プチ鹿島)擦れていない。いい意味で。

(モーリー)そうなんですよ。だからフレッシュなままでアメリカに渡米された方なんですけど。こういう人が世界に影響を持ち始めると次はどういう人が来るんだ?っていうと、日本で普通にブログをやっているカリスマの人がポッとハリウッド・リポーターに出るっていう日も遠くないんじゃないかっていうか。

(プチ鹿島)だから、なんか日本のドラフト会議に関係なくメジャーリーガーになっちゃったっていう、本当にそんな感じですよね。

(モーリー)それでそのこんまりさん、近藤麻理恵さんがどういう人なのか?っていうのをまずおさらいしてみましょう。片付けコンサルタントです。2010年。だから9年前ですね。『人生がときめく片づけの魔法』が100万部のベストセラー。40ヶ国で翻訳出版される。ここがポイント。ここからどんどんと広がっちゃったわけ。で、2014年から活動拠点をアメリカへ。アメリカでここまで受けるんだったら一発行ってみよう!っていうことで行くわけ。だけどいままで、日本の俳優とかでハリウッドに修行に行って帰って来ない人、いっぱいいますよね?

(プチ鹿島)ピンク・レディーもそうでした。すぐ帰ってきちゃう人とかね。

(モーリー)そうなの。だからずっと最近まで「ハリウッドに進出」なんて言うと「ああ、日本で売れなくなったんだな」っていうことでしかなかったんだけど、ここだけは逆なんですよね。近藤麻理恵さんの場合は攻めて、本当にチャンスだって行った結果、2019年。今年の1月からあのNetflixで『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~(Tidying Up with Marie Kondo)』が配信スタート。これがもうバカウケ! 信じられないぐらい。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)それで私もさっき一部、このNetflixの配信を見ました。そうするとね、こんまりさんが出てきて最初だけ英語で「Nice to meet you.」ってやるんだけど、その先はすごく有能な通訳の方がパッと影のように寄り添って。で、彼女は普通に日本語で話すんですよ。で、日本語のトーンっていうのがなんて言うのかな? 日本でセールスをしている人のトーンなのね。で、明るく寄り添って、いわゆる共感(Empathy)を持って、「こういう時は自分の持っているものに感謝をして、ときめくかときめかないか、自分で調べましょう」って。あ、それは俺もできるわっていう。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)いわゆる日本の一般的な人の心にアピールするレトリックを使うわけですよ。ところがこれが字幕がついた時のマジック。こんまりマジック。Netflixマジック。バイリンガルの視点で見ていると、英語の字幕がついてこんまりさんが普通に日本人向けのパフォーマンスと同じような日本語でしゃべっている。要は極めて明るい人で、まあ悪く言うと日本だと日常的に営業の人ってみんな明るいから、「こんだけ明るくしたら近藤さん、休み時間はタバコ休憩とかしてるんだろうな」とかっていう風に私なんかは勘ぐっちゃうわけよ。テレビ局にタバコの部屋ってあるでしょう?

(プチ鹿島)うん。ありますね。休憩室。

(モーリー)あそこにこんまりさん、いるだろうなっていう。そういう目で……。

(プチ鹿島)まあ、それぐらいハキハキと表の顔でがんばったら、必要ですもんね。

(モーリー)「そんなにがんばらなくても、もう買うか買わないかは決めてるから……」みたいな、そんな感じじゃないですか。日本だと。ところが、それをアメリカ人にやって英語の字幕がつくと、ものすごい新鮮で。「スピリチュアルなことを言っている!」って俺も思った。で、感動してちょっと泣きそうになった。夫が亡くなって、3年が経っているんだけども家の入口、玄関にあたるところに夫のブーツがまだ置いてあるんですよ。「帰ったよ」っていう状態で。だから死んでからなにも未亡人は動かしていないわけ。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)で、その時にいろいろと話を聞いて、そのおばさんがワンワン泣くわけよ。で、それに寄り添って「よくがんばったね」みたいに……いわゆる日本式の寄り添いですよ。で、悪く言うと当たり障りのないことを言っているわけ。「こう言っておけば後で問題にならない」っていうぐらいの優しい口調で言うわけよ。それがね、字幕がつくと、私も泣いた。それぐらいの……。

(プチ鹿島)そういうアプローチの仕方っていうのは日本人でははじめて? 「日本人らしさ」みたいなのは……?

(モーリー)つまりね、日本語でそのままアピールするテレビシリーズなんていままではなかったんですよ。それであまりにも日本語が多かった、それから字幕を追い続ける習慣がないアメリカ人のファンがついたもので、それを最後はアメリカの有名なフェミニストの女性の作家の方がそれを皮肉るツイートをして。「こんな風に英語がしゃべれない人がスターになってしまうアメリカなんてもう後がないな」みたいなことを言ったら、「なんという差別だ!」っていうことで、その人がお詫びをせざるを得ない状況に追い込まれたんですよ。だからそれぐらい、アメリカの視聴者が変わってきている。

(プチ鹿島)うんうん。

こんまり大ブレイクの背景

(モーリー)さて、なにが起きているのか? このこんまりマジックの背景を私なりに考えてみました。実はいま、アメリカ人の平均的な世帯の貯蓄、34%の人がゼロ。

(プチ鹿島)ゼロ!?

(モーリー)0円。借金して物を買って、借金して家賃を払って、また働けばいいっていう宵越しの銭は持たない江戸っ子!

(プチ鹿島)江戸っ子ですね!

(モーリー)そして、69%の大人がいま、銀行に入っているお金が11万円以下。

(プチ鹿島)ええっ!?

(モーリー)信じられないでしょう?

(プチ鹿島)じゃあ、ほぼみんな持っていないんだ。

(モーリー)なのにみんなブラックフライデーとかサイバーマンデーでみんなワーッ!って行くわけですよ。だから買い物をして、使わないものをどんどん買っては無造作に広い家の中に置いておくんだけど、全然家計も自分の物もオーガナイズしていないのね。だから言ってみればこのこんまりさんの感動的な側面っていうのは「セルフ・ヘルプ」なんですね。過去にもファストフードが流行った後でヨガとかエアロビクスがものすごく流行ったりとか。自己啓発が流行ったというサイクルがアメリカにはあります。私はトランプさんの弱肉強食、お互いにいたわりあわない、相手の弱みを叩くっていうこの世相の中で……こんまりさんは寄り添うんですよ。

(プチ鹿島)はー!

(モーリー)みんなで優しくしよう。物にも優しくしよう。これがいまの疲れたアメリカ人が心の中で求めているヒットのフォーミュラなんじゃないかと。アメリカ人はこんまりさんに癒やしを見出し、新たな禅のブームにも近いものが来ているんじゃないかと思います。だからいわゆるこっちに振り切ったものがこっち(反対側)に振り切っている。だから根底ではなにかに熱狂してそこに飛びつくというアメリカ人の習性は根治していないんです。ところがこんまりさんはアメリカ人同士では与え合うことができなかった癒やし、そしてセルフ・ヘルプ。ささやかな分相応の幸せっていう新たな日常を提案したんじゃないかと思いました。

<書き起こしおわり>

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