モーリー・ロバートソンさんとプチ鹿島さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』に出演。世界的なポピュリズムの広がりと選挙、そして政治への無関心について話していました。
(プチ鹿島)モーリーさん、世界はやっぱり動いていまして。この間、ウクライナで大統領選があって、コメディアンが大統領になったと。
(モーリー)そうですね。しかも、なんら具体的な政策を言わないまま。
(プチ鹿島)政治経験なしですよ。
(モーリー)その「なし」であることに現在の政治に怒っている有権者が7割以上投票をしてしまったということなんですね。
(プチ鹿島)すごいですよ。だから日本の新聞でもね、「喜劇俳優が大統領に」って。すごい時代だなって思っていたんですけども。で、その一方で安倍さんも吉本新喜劇に出ていましたからね。もう日本も負けてないな!って思うんですけども(笑)。
(モーリー)ねえ。それは大阪で来るべき行事のPR。「交通渋滞等がありますので、ご理解ください」という、非常に低姿勢なものでした。
(プチ鹿島)どうですか? そういう政治経験のない人に……。
(モーリー)「任せてみよう」って。
(プチ鹿島)言ってみれば「素人である」ということが最大の価値みたいな。
(モーリー)そうですね。素人で、しかもなんらかの華を持っていたり、すでに別のジャンルで著名人であったりすると、こういうポピュリスト票を集めやすい。たとえば、横山ノックさんがかつて。
(プチ鹿島)ねえ。大阪では横山ノックさんが、東京では青島幸男さんが知事になりました。ただ、あのお二方はそうは言っても国会議員だったんですよ。今回の場合、国会議員でもなんでもない。
(モーリー)いちばん上ですからね。
(プチ鹿島)まあ、もっとさかのぼるなら、2週間前に言いましたけども。30年前に社会党のマドンナブーム。当時のオヤジジャーナルが名付けましたけども。「台所感覚」というのを売りにして、それで「山が動いた」っていう。それにちょっと近いのかなって。
(モーリー)そうですね。要するに、現行の政治が与野党があって、くんずほぐれつ。なにも前に進まない。何年経っても前に動かないっていう時、不満が溜まって、泡沫候補とか誰でもいいから素人に任せよう!っていう機運がどの国でも上がると思うんですけども。
(プチ鹿島)たとえば、この間は国政じゃなくても、統一地方選挙。都議選とか区議選とかあったじゃないですか。あれも、なんかそういう匂いはしました?
(モーリー)相当に、かつてだったら泡沫候補にあたる人で、実際に当選した人もいましたし。総じて善戦しているんですよね。だから、票が少なからずそういう、過去だと「いや、この人はちょっと色物だよな」とか「ちょっと危ないことを考えてるんじゃない?」っていう噂が立っている人に、現在の政治に対する不満でとりあえず投票をする。そういう意思表示が有権者からなされたという感じでしたね。
(プチ鹿島)もちろんいまね、いろいろと情報も出ていますから。色物に見えたとしても、全員が同じ供託金を払っているんだったら、これだけチャレンジをしている人に託そうよみたいな。そういう選択肢も一方で増えてきているじゃないですか。でも、それがよく考えてみると、「意識の高い俺」みたいなのが……。
(モーリー)有権者の自己満足にとてもつながっていると思います。ただね、その有権者で意識の高い俺。たぶんいろんな政治をかなり知っている人がいまの政治に対する不満で、「じゃあこいつにでも入れてやろう」っていう風に遊びプラス自分のなんとなくの意思表示でやるわけですよね。で、その高邁な理想はわかるんだけど、問題はいま、世界的にそういうポピュリズムで現行の政治、エスタブリッシュメントが弱くなると誰が得をするのか? これは決まって極右なんです。
(プチ鹿島)そうか。なるほどね。だからいまのモーリーさんのお話を聞いていて思ったんですけども。いわゆるポピュリスト、ポピュリズムって言うと「いやいや、俺はそんなやつには迎合されないよ」って普通は思うじゃないですか。
(モーリー)思う。
(プチ鹿島)だけど、いまのモーリーさんの切り口だと、「いや、こんな政治には飽き飽きだから、じゃあ俺(私)が遊び心でちょっとここに……」って。これ、実は取り込まれているってことですか?
ヒトラーが台頭した歴史を再検証する
(モーリー)だからいま、もう1回ナチスのヒトラーっていう人が出てきた時の歴史を再検証して。ヒトラーに投票をした何割の人が「おもしろい」とか「遊び感覚」で。現行の政治のナンセンスに対するNOとして入れたのか? それを知りたいですね。
(プチ鹿島)だからいまの時点からすると、ヒトラーに「ウワーッ!」ってみんなたぶらかされて行ってしまったっていうようなイメージがあるけども、そうじゃなくて?
(モーリー)案外ね、意識の高い人が……。
(プチ鹿島)ヒトラーに上から目線で「ちょっとこいつにやらせてみようか」っていうのが、あんなことになってしまったと。
(モーリー)そう。だから民主主義を遊ぶっていうのは、全てが平和な時期とか、経済的に安定している時期に民主主義を遊ぶ。青島幸男さん、土井たか子さん。ありだと思う。だけどいまはね、状況が揺れ動き、日本の中でも隠れた形で格差がどんどんと増している。そして、ある意味未来に対してゆるやかな絶望を感じている人が相当増えてきている時に、ポピュリストを遊び選挙っていうことで……それを「選挙フェス」と名付けると、聞こえはいいじゃないですか。「選挙を遊ぼう!」みたいな。
(プチ鹿島)たとえばワンイシューで。「○○から○○を守る会」とかね。
(モーリー)そう。そのワンイシューの耳あたりのよさが、その耳あたりを前に出してくるその政党には実は別のアジェンダがあって。それは人前で言うとヤバいことをそのワンイシューに隠していないか? とか。
(プチ鹿島)だけどそのワンイシューで「じゃあ、面白いからやってみろ」ってやったら、それがあって。
(モーリー)だから結局極右を喜ばせることになりかねない。そしてもうひとつ。ポピュリスト、泡沫候補にばかりみんな遊びで投票をするようになると、選挙の意味がないということで、実は全体としてはげんなりして投票率が下がる。そして投票率が下がった時に極端なイデオロギーを持ち、かつ組織票を期待できる人たちが地方の選挙から……だんだんと水が下がってくると見えなかったいろんなものが。
政治への無関心と投票率の低下がまねくもの
(プチ鹿島)モーリーさん、それ、ヤバいです。いま、地方はただでさえ政治家になり手が少ないっていう問題があって。そこを狙い撃ちにされたらどうなるんですか?
(モーリー)そして、それを狙い撃ちにするのが極右の国際的に、トランスナショナルに連携する動きだったりするんですね。だからドイツのAfDというとても過激な排外右翼がいるんですけども。この人たちが最初に議席を獲得していったのは東ドイツ。ドイツ東部の経済があまりうまくいっていない、移民を歓迎しない、そしてたぶん投票率の低いところだったんですよ。
(プチ鹿島)うわーっ! ちょっとオープニングから考えちゃいますね。
(モーリー)オープニングから深刻なのか面白いのかわからない話をしていますけども。今夜も刺激的に行きたいです。
(プチ鹿島)地方のみなさんも都会のみなさんも見てくださいね。『水曜日のニュース・ロバートソン』、スタートです。
(中略)
(モーリー)はい。今日はもういろんな視点が出てきたんですけども。
(プチ鹿島)「中国から見る」とか。でも、オープニングの話もすごいですよね。いま、地方で政治家のなり手がいない。これは大問題だと思ったら……。
(モーリー)しかも、少子化・高齢化なわけでしょう? その中で、政治に対する意欲も、そもそも生きるパワーも、経済的にもどんどん地盤沈下がしていって。そしてシャッター街が広がっていく中、そういうところに極端な政治っていうのは目をつけて巣食っていくんですよね。だからそれをもうちょっと考えるべき時に来ているような気がしますね。
<書き起こしおわり>