(宇多丸)さあ、ということでそんな気合いを背負いまして、いよいよトップ3を発表したいと思います。『バーフバリ 王の凱旋』を除く……『バーフバリ』は「チャンプ」ということで別枠でございます。キング枠です。
(宇多丸)今年、週間映画時評ムービーウォッチメンで扱いました映画全50本のうち、栄えある第1位はいったいなんなのか? 私のですよ。私が選んだ、12月28日現在の……ただね、上位5位は割と今年は俺はこれだなっていう感じだったんで。5位『デトロイト』、4位『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』でしたよね。残り3つ、どんな感じになっているのか?
(山本匠晃)これは注目。
(宇多丸)行ってみよう! 第3位、『ボヘミアン・ラプソディ』!
第2位、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』!
第1位、『へレディタリー/継承』!
(山本匠晃)怖い、怖い(笑)。
(宇多丸)いろいろとね、場面をジェスチャーで再現するという、ラジオでは全く伝わらないことをやっていましたけども。はい。ということで、あのね、今年は僕の上位予想をやるっていうの、いまガチャのプール金もあまりないので(リスナーの)予想をやらなかったじゃないですか。今年たぶんね、当たらないだろうなって思って。で、また俺が怒られるじゃん? 自分のランキングを発表して(笑)。
(山本匠晃)お察しします(笑)。
(宇多丸)なんだけど、僕の中では結構ね、割と早い段階で上位5位は決まったんですよね。まず3位『ボヘミアン・ラプソディ』。
第3位『ボヘミアン・ラプソディ』
(宇多丸)まあ、結構割と最近やりましたけども。みんな大好き『ボヘミアン・ラプソディ』っていう感じではあると思うんですよね。あんまり評価しない人がいるっていうのも存じ上げてはおりますが。あと、史実の改変とかに関して怒っている人がいるのも存じ上げてはおりますが。まあ、僕は評で言いました通り、ガン上がりしましたし。あとやっぱりね、僭越ながら音楽アーティストとして活動を続けてきて。で、フェスとかに出て、その勝負に出てきた自分たちっていうのを重ねてやっぱり普通の人よりもエモくなっているところもあったと思う。
(山本匠晃)はー、そうですか!
(宇多丸)オープニングシーンの出ていくショットで「ここをこう見せてくれるのか!」っていう。俺は本当にあの感じっていうか。だから、それも少なからずあるかなっていう風に思いました。劇場でやっている限りは繰り返し行きたいぐらい好きですね。全部好き!(笑)。まあ、バタバタの中でよくできたみたいなのは私の評を聞いてくださいね。そして第2位、『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』。
第2位『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
(宇多丸)もうね、テイラー・シェリダンは全部好き! で、『ウインド・リバー』も当然あったんですよ。だからね、みなさん。『ウインド・リバー』は10位以内に入ってませんけど、吸収合併というか。この2位『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の向こうには『ウィンド・リバー』というのが燦然と輝いているっていう。
(宇多丸)まあ、手前でもいいんですけども。重ね受賞というか。重ねですね。『累-かさね-』っていう映画もありましたね(笑)。重ねですね。重ね受賞(笑)。まあ、1作目の『ボーダーライン』もすごい好きで。ドゥニ・ヴィルヌーヴ版もよかったですし。なんて言うのかな? 作品として若干ジャンル映画寄りになった作品でもあるんだけど、なんかこの上位3つに共通しているのは、そのたとえば『ボヘミアン・ラプソディ』だったら音楽映画。『ヘレディタリー』だったらホラー映画っていう、その伝統を背負いながら。
『ボーダーライン』だったらこういうガンアクション活劇みたいなのの伝統を背負いながら、なんかすごく新しいタッチっていうか。たとえば『ボーダーライン』の頭のところのたたみかけるように世界中に負の連鎖がボンボンと来るあたりとか。あと、この(ベニチオ・デル・トロの)指一本で銃を連射するっていう、あれも素晴らしかった。そして1位『へレディタリー/継承』。
1位『へレディタリー/継承』
(宇多丸)『ヘレディタリー』はこれも評をやったばっかりなので詳しくは僕の映画評を聞いていただきたいんですけども。すごい怖かったし、禍々しくて。映画評をやる時のもう1回見たくないぐらいのことを言っていたじゃないですか。でもね、いまは気分的にはどっちかって言うと見ている間じゅう、俺はすごい幸せでしょうがないっていうか。つまり、この映画ってこの映画の世界の中ではこの監督のアリ・アスターさんの本当にやりたかったことっていうのをやっていて。この映画の中ではこの世界はすっごい完璧なのよ。完璧に上手く回っているとも言えるわけよ。全てが。悪方向に。
(山本匠晃)はい。
(宇多丸)なんかね、完璧に上手くいっているなにかを見る快感っていうか。あと、こんなに優れた作品にいま出会えた喜びっていうか。僕ね、『ヘレディタリー』はいま、多幸感にあふれています。そんぐらいの感じ。あ、ああ? 「早く終われ」ってさ。「終われ」ってよ! はい、終わりー!
(山本匠晃)あ、怒った、怒った(笑)。
(宇多丸)ライムスター宇多丸のシネマランキング2018でしたー(笑)。
<補足 リスナー投票暫定1位『カメラを止めるな!』について>
(宇多丸)これ、ちょっとこの作品を……今年、はじめて作った部門なんですけども。「特別賞」というのを作りました。なんで特別賞を作ったのか?っていうのは、タイトルを言えばみなさん、わかってくれると思います。特別賞は……『カメラを止めるな!』。
特別賞『カメラを止めるな!』
(宇多丸)なんかね、『カメラを止めるな!』は僕の中でもすごく大きい作品なんですよ。めちゃめちゃ楽しかったし、あとはやっぱり監督の上田さんが番組に来ていただいたり、ファンブックに参加したり、いろいろと絡みもあって。若干「中の人」感が……偉そうなことを言えば、なんかちょっと当事者意識すら芽生えている始末であって。
(山本匠晃)はいはい。
(宇多丸)なので、この10位とかいう中で置くのがすごく心理的に難しくなっていて。1位っちゃ1位だし……みたいな。でも、客観的に映画としてって考えるとそうでもないんだけど、でも、でもすげー特別なんだ! みたいな。だからこの特別賞の「特別」は本当に俺にとって超特別賞みたいな。だから、もちろんチャンプ枠じゃないですけど、それに近いぐらいのかなり特別な……(笑)。そういう賞だという風にご理解いただけるとうれしいかなと思っております。
(山本匠晃)そんな思いの詰まった。
(宇多丸)だから、リスナーのランキングで1位になったっていうのは僕的には「ああ、よかったな」と思う次第です。
<書き起こしおわり>
https://www.tbsradio.jp/327739