宇多丸と磯部涼 2018年J-POP「ガラパゴス再考」の潮流を語る

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磯部涼さんがTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。宇多丸さんと2018年のJ-POPを振り返り。「ガラパゴス再考」という視点から3曲を選び、紹介していました。

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(宇多丸)で、磯部さんにひさびさにご登場いただく今回は今年の総括として2018年のJ-POPシーン、ひとつある潮流があるというあたりで解説していただきたいと思います。

(磯部涼)今年のJ-POPで見られたのは一言で言うとまあ、「ガラパゴス再考」みたいなところがあるかなと。

(宇多丸)この「ガラパゴス」というのはつまり?

(磯部涼)「ガラパゴス」というのは日本のホップスにおいてその時代時代の海外のポップス、いわゆる洋楽をどう翻訳していくのか?っていうのが課題としてあったんですが、よく言われているのは2000年代以降は洋楽離れが進んだとか、あるいは洋楽に影響を受けた邦楽自体からの影響の方が強くなったみたいな感じで「ガラパゴス化」って……まあ、ガラパゴス化っていうのはガラパゴス諸島の生態系が閉ざされた空間の中で独自の進化を遂げていったということからそういう風によく言われるんですけども。

(宇多丸)はい。

(磯部涼)まあ、それが「鎖国的だ」とか「自家中毒だ」とか言われたり。あるいは「それこそが面白いんだ」っていう言い方があったりするわけですけど。それがちょっと変わり始めた、変えていこうとしたっていう人が現れだしたっていうのが2018年だったのかな?って思います。

(宇多丸)なるほど。じゃあちょっと具体的に曲とかアーティストを聞きながら、お話をうかがっていきたいと思います。まずは?

(磯部涼)おなじみのDA PUMP『USA』。

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DA PUMP『USA』

(宇多丸)出た! そこから来たか! いや、『USA』とかね、磯部くんがJ-POPを総括する時、普通に「『USA』が流行りましたね」とかっていう話だったらどうしよう?って思いましたけども。でも、よく考えたら『USA』はたしかに磯部なら、きっと面白く斬るぞっていうね。

(磯部涼)いやいや。

(宇多丸)はい。『USA』、改めて言うと、元々は1992年のユーロビート。イタリア人歌手ジョー・イエローさんのシングル。で、今年の6月6日にDA PUMPの29枚目のシングルとして発売された。DA PUMPのメンバーはだから「ええっ、いまさらユーロやんのかよ?」っていう感じで結構嫌がっていたっていう。最初はね。

(磯部涼)これ、もう本当に国民的ヒットって言っていいと思うんですけども。最初はネットで「ダサかっこいい」とか「ハロプロっぽい」とか。そういった感じで盛り上がっている印象があったんですけど、自分の子供の保育園の運動会のBGMでかかったら、もう園児が一斉に……。

(宇多丸)ああ、マジ!? 「カーモンベイベー♪」って?

(磯部涼)幼児から年長まで一斉に踊りだして。本当に国民的大ヒットになったんだと実感しましたけども。まあ、DA PUMPっていうのは元々、97年にデビューして。今年引退した安室奈美恵さんだったりとか、やっぱり傑作アルバムを出した三浦大知くんのいたFolderなんかとともにね、90年代後半のJ-POPにおける沖縄ブームって言ってもいいような状況を先導したわけですけども。

(宇多丸)アクターズスクールの出身で。

(磯部涼)で、プロデューサーがこの番組でもおなじみなんですかね。m.c.A・Tこと富樫明生さん。

(宇多丸)そこはいま、もう境目がなくなったらしいです。

(磯部涼)90年代前半はJ-POPっていうジャンルを提唱して。まあRHYMESTERを含むハードコアなラッパーたちに敵認定されたわけですが……。

(宇多丸)フハハハハハハッ!

(磯部涼)まあ、でもやっていた音楽性はむしろニュージャック・スウィングの翻訳みたいな感じと言っていいのかなと思っていて。で、DA PUMPもその路線だったんですよね。それで紆余曲折あって、ISSAさん以外のメンバーは変わって。それで久しぶりのヒットとなった『USA』はだからそのニュージャック・スウィング、ブラックミュージック的なものから一転、そのユーロビートっていうところで。で、そのユーロビートっていうのも元々は「ユーロ」って言うだけあって、まあイタリアのディスコだったりがルーツになったりしているジャンルなんですけども、それがなんか世界的なブームが終わった後も日本ではずっと受け続けて。

(宇多丸)うんうん。

(磯部涼)それdまあ、パラパラだったりとか走り屋のBGMになったりとか、まさにガラパゴスな進化を遂げていっていて。英語版のWikipediaなんかを見ると「Jユーロ(J-Euro)」っていう風に、日本独自のジャンルとしても……。

(宇多丸)MAXが最初に出た時の売り文句が「Jユーロ」で。その時にクラクラして。「なんだよ、Jユーロって?」って。でも、そのねじれ感。

(磯部涼)それが世界的に受けたりして。いまやtofubeatsがリバイバルさせたりして、そういうサウンドのアプローチをしたりもしているんですけども。そこに直球のユーロビートを突っ込んできたっていう感じで。で、一方でそのガラパゴスな音の上で踊られるのが、まあ「いいねダンス」って言われてるんですけど。さっきの幼稚園児も歌っていた手を振るダンス。でも、それは元々は「シュートダンス」って言って、アメリカのブロックボーイ・JBっていうラッパーが2017年の夏に発表して、ミュージックビデオの中でやって、それが世界中に流行っていったっていう。

(宇多丸)うんうん。

(磯部涼)まあ、結構だからリアルタイムで世界的に流行っているダンスっていう。あるいはその曲の最後ではダブっていうポーズを……こうやって「シャキーン!」みたいなポーズを取ったりとかするんですけど、それも2015年ぐらいから流行ったダブっていうダンスで。

(磯部涼)要するに、ガラパゴスなサウンドの上で、割とリアルタイムのポップカルチャーのダンスが踊られるっていう。いわゆる海外のポップカルチャーを日本において消費していく過程ってのが重層的に現れている。ちょっと言い方は難しいですけども。

(宇多丸)でも、そのシュートダンスをいいねダンスっていう風に言い換えて、まあ踊りやすいものとして再提示するみたいな。まあ翻訳と言うか。

(磯部涼)ポップスとダンスってね、昔から関連性があって。最近でもそのAKBの『恋するフォーチュンクッキー』とか三代目J Soul Brothersの『R.Y.U.S.E.I.』だったりとかもありますけど。『恋するフォーチュンクッキー』の方はディスコのダンスだりとか、『R.Y.U.S.E.I.』の方はランニングマンだったりとか。過去のリバイバルをするっていうところだったんですけど、そこにシュートダンスっていう割といままさに世界的に流行っているダンスをやっていくっていうのが、最初DA PUMP自身はさっきも宇多さんが言っていたように「えっ、ユーロビート? いまさら俺たちが?」って思ったわけだけど、そこに最新のダンスをかぶせていくっていう、そのズレが結構面白いし、新しいことやろうっていう意欲みたいなものが感じられたんで。

(宇多丸)ガラパゴスの土壌を使って、リアルタイムのことをちゃんと溶かし込むことっていうのにトライしているわけね。

(磯部涼)さらに、その歌詞・歌で歌われるのがアメリカに対する素朴な憧れから始まって、その関係が変化しつつあることだったりとか、改めてパートナーシップを確認することだったりとか。今年、沖縄の基地問題もすごい揺れましたけど、そんな2018年にまさにこの曲が流行ったっていうのは……。

(宇多丸)ちょっと皮肉な響きも込みだけど。

(磯部涼)アイロニカルにも響くし。あるいは、ちょっと感動的に受け取る人もいるかもしれないし。複雑な思いを受け取る人もいるかもしれないし。でも、ある種象徴するヒット曲だと思うんですよね。

(宇多丸)そうやって聞くともう『USA』決定版だね。本当にね。すごいや。では、バンバン行きましょう。続きまして?

(磯部涼)はい。米津玄師の『Flamingo』。

米津玄師『Flamingo』

(宇多丸)はい。米津さんね。前からすごく活躍していて、人気はあったけど……。

(磯部涼)今日、ちょうど紅白出場も発表されましたね。

(宇多丸)完全にブレイク的な流れになってると。改めて米津玄師さん。『Flamingo』は2018年10月31日リリースのシングル。島唄、都々逸を思わせる日本民謡的な歌唱法が特徴。特に終わりの方にそれが出てきたりする。米津玄師さんは1991年生まれのミュージシャン、シンガーソングライター。ニコ動で注目され始めたっていう方ですよね。本当に新世代っていう感じですね。で、磯部くん的には?

(磯部涼)この米津さんはさっき言ったようなガラパゴス問題みたいなものにすごく自覚的な人で。「自分は日本で生まれ育って、日本人としてJ-POPが作りたいと思ってる」みたいなことを言っている一方で、「でも海外の外で巻き起こっているポップスシーンとかはすごく面白いし、それをちゃんと取り入れていかないともったいない」みたいな。でも、ずっと一貫しているのは、「自分はその引っ張り合い……グローバルなものとガラパゴスなものとの引っ張り合いで表現をしているんだ」っていうようなことを言っていて。

まあ、その日本におけるガラパゴスっていうもののひとつとして、やっぱりロックバンド、ロックが強いっていうことが言えると思うんですけども。まあ、ここで言う「ロック」っていうのは精神的なロック魂とかっていうよりも、やっぱりロックバンドのバンドアンサンブルがいつまでもアレンジに影響を及ぼしているというか。

(宇多丸)大型フェスに行って盛り上がっている曲のビート感を聞くと、やっぱりいまだに「ドン、タンッ、ドドッ、タンッ! ドン、タンッ!」だもんね。日本はね。

(磯部涼)そうなんですよね。で、米津さんの場合はそこで、最初がさっき言ったようにニコ動で、初音ミクだったりとかそういう打ち込みで自分で作るみたいなところからやっていた人ではあるので。バンドアンサンブルの中にそういう打ち込みを取り入れていくっていうことがすごい上手かった人だと思うんですよね。

(宇多丸)なるほど。

(磯部涼)それでまあ、この間のアルバムなんかでもそういうのが出ていたんですけど、この『Flamingo』っていうのはそのダンスミュージック的な側面がすごい出たものかなという風に思いますね。まあ、ただJ-POPにありがちなダンスミュージック、すごいアッパーなものではなくて、結構ローで隙間を生かしたファンクみたいな感じで。僕なんかはジ・インターネットっていうバンドなんかの感じにも似てるなと思ったんですけど。

(宇多丸)これ、そのジ・インターネットの話が出たからさ。さっき、この曲のミュージックビデオを初めてちゃんと見たんだけど。なんかちょっと不気味なっていうか。ホラー的なニュアンスさえあるような感じが、やっぱり(ジ・インターネットと同じ)オッド・フューチャーのタイラー・ザ・クリエイターとかの感じにもちょっと通じるなって思って見ていました。

(磯部涼)それでそういう、ある種ガラパゴスを再考するみたいな動きは、たとえばその米津さん以外にも星野源さんなんかにも見られる動きだと思うんですよね。彼も結構積極的に海外の音楽を紹介しながら、まあ自分の作る音楽にもそういうものを咀嚼して取り入れてくってことを意識的にやっていて。

(宇多丸)特にいまはすごくすごく意欲的に実験要素みたいなのをね、リアルタイム感を。

(磯部涼)「自分こそが紹介者になっていこう」みたいな感じもあると思うんですよね。で、ついこの間もその星野源さんとマーク・ロンソンが一緒にやったりとか、米津さんとザ・ウィークエンドが一緒にやったりとか。

ある種、この2人ってもう2018年のJ-POPのツートップって言ってもいいような存在だと思うんですけど。そういう人たちがまた、そういう風にいわゆる洋楽だったりを紹介したりとか。それを面白く翻訳してみせたりするっていう動きがあるということは、ちょっと状況が変わりつつあるっていうことを象徴してるんじゃないかな?って。

(宇多丸)面白いのは、だから直輸入するわけでもなく……っていうところなんだよね。なんかその狭間なところ。さっきも「引っ張り合い」って言っていたけど。そこになんかJ-POP独特の進化の可能性とか面白みがあるなんていう風に思います。で、その2人はたしかに象徴しているなって思います。

(磯部涼)それでですね、さっきも宇多さんが紹介で言ってくれたんですけど、『Flamingo』の3番で民謡調の歌い方みたいな。

(宇多丸)ここ、すごいよね。宇内さんもびっくりしていました。

(宇内梨沙)うんうん。

(磯部涼)これも結構あえてやっているっていうところで。だからグローバルなポップスを作ろうとしながら、そこで日本の伝統みたいなところに再接続するというか。そこが掘り下げられるっていうところもすごいこの曲の面白いところだなと思うんで。そこをちょっと聞いてみましょう。

(宇多丸)これね、3番でこの流れが出てくるっていうことですね。

(磯部涼)だから、さっきも発言を引用しましたけども、「グローバルなものとガラパゴスなもの、ローカルなものの引っ張り合いが自分の音楽の魅力だ」って言ってるところがまさにここで音楽的な表現として現れてるんじゃないかなって思いますね。

(宇多丸)なんか、何年か前に星野源くんと個人的に話した時に、「特にサビの譜割りに関して、ガラパゴス的なところでいえば我慢してでもこの譜割りをしなきゃいけないんだけど……」みたいな。

(磯部涼)結構星野さんの楽曲で感じることで。やっぱり星野さんの基本にあることはフォークだったりとか弾き語りなのかなって思っていて。いまやっていることはいろんなビートを作りながら、その上でオーセンティックなフォーキーな歌を歌うみたいな印象がありますね。

(宇多丸)だからその星野くんなりの引っ張り合いの磁場がある感じ。

(磯部涼)米津さんの場合はこの曲ではもう、あえて引っ張られているみたいなところが面白いなと思って。その磁場の中でね。

(宇多丸)はい。米津玄師さんの『Flamingo』。面白い曲ですね。ビデオもぜひみなさん、見てください。続いては?

(磯部涼)折坂悠太さんの『逢引』です。

折坂悠太『逢引』

(宇多丸)はい。折坂さん、実はこの番組で11月9日にライブパフォーマンスしていただいて、もう圧倒されました。10月3日に最新アルバム『平成』というのをリリースされて、もうこれがすごかったということですね。はい。彼もやっぱり歌い方が。

(磯部涼)そうなんですよね。まあ民謡調というのか。まあ折坂さんは平成元年生まれで、若いんですけども。今年の平成の最後にそう名も『平成』っていうタイトルのありバムを出してまで。それまでも良かったんですけど、もう完全に化けたというか、スケールがめちゃくちゃ大きくなって。ちょっとこのアルバムの中で本当に日本の歴史を掘り下げるような感じがあるっていうか。まあ、このいまかけてる曲はアルバムの2曲目の曲なんですけども。ジャグバンド調っていかジャズ調っていうか、そういう中でそこに乗ってくる歌はコブシがきいている感じなんですよね。

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(宇多丸)たしかに。スタジオライブの時もすごくいろんなボーカルテクニックを駆使するのがすごく印象的だったんですけど。そうか。でも民謡調っていうのがベースにあるのか。

(磯部涼)彼自身も結構自覚的みたいで。この曲って途中で語りのパートが入ってきたりとかするんですけど。そこでの歌い方っていうのは浪曲だったりとか河内音頭だったりとかの影響を受けているみたいなことを言ったりもしていて。その様々なジャンルを取り入れていく。いろんなジャンルを掘り下げては接続していくっていうのはもう、最初の方にも言いましたけども。90年代に結構見られた動きだったりとかして。それが日本のポップスの醍醐味だったりとかしたんですけど、それがいつの間にかなくなったという話でしたけど。いま、改めてそこをやる時に、その日本の伝統的な音楽、日本の伝統的な大衆的な音楽っていうのが掘り下げていくジャンルとしてひとつ、入ってくるっていうのがある種、いまっぽいなっていう風に。

(宇多丸)なんかワールドミュージック的なのの一種じゃないけども、ちょっとエクストリームなものにも聞こえるっていうか。

(磯部涼)いろんなものが混ざっていますからね。いわゆる民謡をやっているわけでも実はなくて。

(宇多丸)そうそう。「和の要素を入れます」っていう時、たとえば和楽器を入れますとか、そういうある意味わかりやすいところじゃなくて、もっとフレッシュなものを見つける感覚っていうのかな? 最近のちょっと音頭曲のさ。

(磯部涼)それこそ、この番組なんかでも出ている大石始さんだったりがそのへんをすごく掘り下げていますけども。やっぱり昔の日本の伝統音楽をいま、若者が新鮮に聞いてるみたいな動きもあるんで。

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(宇多丸)一回りしてむしろすごい新しいものに。エクストリームなものにも見えるっていうか。

(宇内梨沙)たしかに。普段なかなか聞かないですもんね。

(磯部涼)でも、盆踊りではみんな聞いたりするじゃないですか。そういう同時代性もあるっていう。

(宇多丸)しかも、日本の盆踊りのあり方のラディカルさっていうのも面白いものが。

(磯部涼)それもある種のガラパゴス。だからガラパゴスが悪いっていうわけじゃなくて、そこにグローバルなものが接続するとさらに面白いみたいな話ですね。

(宇多丸)というようなことにさらに意識的な人が増えてきたっていう感じかな? ということで、非常に駆け足ではございましたが。『USA』から米津玄師さん、星野くんの話もして、そして折坂悠太さんをご紹介いただきました。これ、本来なら特集級の内容ではございましたが。気づいたら磯部くん、あんまり呼べていないということで。

(磯部涼)ぜひぜひこれから、よろしくお願いします。

(宇多丸)今後ともよろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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