モーリー・ロバートソンと鈴木一人 2018年中間選挙・州知事選を語る

モーリー・ロバートソンと鈴木一人 2018年中間選挙・州知事選を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんと鈴木一人さんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で2018年アメリカ中間選挙についてトーク。州知事選の重要さについて話していました。

州知事戦線異状あり! (創元推理文庫)

(プチ鹿島)モーリーさん、気になったニュースは?

(モーリー)そうね。まあ「ねじれ」で『報ステ』に負けるわけにはいかないということで、今日は頑張りましょう。やっぱり北海道の北見の「そだねー」(流行語大賞ノミネート)もいいですけど……(笑)。いいんですけど、やっぱりちょっと気になるのは、せっかくですからここで少し深く入り込んで、知事選。知事選がやっぱり出方によって2020年の大統領再選に向けた大統領制の戦いにとても深刻な影響を及ぼすっていうのが出て。そこをぜひ今日はお話しいただきたいなと。

(プチ鹿島)ああ、いいですね。

(鈴木一人)州知事選というか、アメリカには選挙管理委員会っていうのがないんでけども、州が選挙管理委員会になっていて。その選挙管理委員長っていうのは州務委員長(Secretary of State)っていう、国務長官と同じ名前なんですが各州にいる、まあ言ってしまえば各州の首相みたいな人がいるんですけど。この人が、言うならば選挙管理委員会を差配して、「選挙区割り」っていうのを決めることができます。これは各州のそれぞれの選挙管理委員会がやるんですけど、基本的には連邦のレベルでその現職の議員、勝っている議員が自分たちの都合のいいようにこの線を引いていく。選挙区割りをやるっていうことををやっていて、これを「ゲリマンダリング(Gerrymandering)」って言うんですけど。これがもうめちゃくちゃで、本当にゲリマンダーっていう怪獣のような格好に(選挙区割りが)なるっていう。

選挙区割りとゲリマンダリング

(モーリー)昔、(エルブリッジ・)ゲリーという議員がマサチューセッツでとんでもなく、自分の党が勝つように選挙区割りを変更して、それがサラマンダーの形になったので、彼の名前を取ってゲリマンダーという風に呼ばれるようになったという。

(鈴木一人)で、今年が面白かったのは、ペンシルバニア州はそのゲリマンダリングを止めさせたんですよね。州の裁判所が「あまりにもひどい。均等区割り……人口に合わせて区割りを作りなさい」と言ったら、全部で民主党が6つの共和党から奪って。共和党が3つ、民主党から奪っていうような大きな変化が起きたので。なかなかこの選挙区割りっていうのは選挙にものすごく影響をするという。

(モーリー)そうですね。そしてその中で特に僕が個人的に注目しているのは、ジョージア州の知事選。まだあれ、数え直しになる可能性もあるぐらい接戦なんですけども。民主党の黒人女性初の候補。あるいは、共和党の白人男性の候補の戦いなんだけど、問題はいまの州務長官……共和党の白人男性の選挙候補自身がいまの州務長官なんですよ。

(プチ鹿島)えっ、自分がそういうことを……?

(モーリー)数え直しを管理する人が。

(鈴木一人)候補なんですよ。だから、選手がアンパイアをやっているみたいな感じ。

(プチ鹿島)ですよね?

(モーリー)ヤバくない?

(プチ鹿島)いいんですか?

(鈴木一人)フフフ、まあ一応、アメリカのルール上はそれは「あり」なので。だから本当は「辞任しろ」とか何とかっていうのはあちこちから圧力はかかっていたんですけど、もう全然無視して。「俺は州務長官で候補だ!」って出てきたんですよ。

(モーリー)それが要は共和党対民主党の感情的な、お互いに違う事実。同じファクトが違うんですよ。自分がどっちを応援しているかによって事実さえ違う。いまの環境の中ではそれが成り立っちゃう。つまり、ロープをはるかに超えたことをやっているわけですよね。だからそれが成り立っちゃう選挙って何?っていう。

(鈴木一人)もう倫理とか、何が正義か? とかっていうことすら、もうめちゃくちゃになっていて。本当に「アメリカ人の良心ってどこに行っちゃったんだろう?」っていうのを感じさせるのがそのジョージア州のケースですね。

(モーリー)で、これも鈴木さんにぜひうかがいたかったんですけども。私、今日5時間の新幹線移動で無駄な調べ物をしたら、そのゲリマンダー。要は州の中で均等に人口比や支持政党の人たちの住んでいる区分で均等にすれば、フェアな戦いじゃないですか。ところが10年に1回の国勢調査にあたるのかな? Censusと呼ばれる。その時、選挙区割りを人口に合わせて決め直すんです。それが名目なんだけど、その時にその州で共和党が優位だと、「じゃあ人口をこっちに移したから、こう書きますね」とか言って、めちゃくちゃにやるわけですよ。

(鈴木一人)そうです。

(モーリー)それを今回、ミシガンといくつかの州の中間選挙に合わせたチェックボックスの投票で「それをやめさせよう。第三者委員会にやらせよう」っていう投票を選んでいますよね? ところが、以前にそれを決定した州に対して、アメリカの最高裁が無効にしたっていう事例があると聞いたんですけど?

(鈴木一人)アメリカの……ゲリマンダリングっていうのは州の権限になっているので。それを勝手に第三者に移管するはよろしくないっていうのがその時の判断なんですけど。ただ、面白いのはさっき言ったペンシルバニア州は今度は州の最高裁が「やめなさい」っていう風に言ったので、これは連邦最高裁はここに口出していないんですよね。

(モーリー)州の最高裁であれば、州の中のことだから大丈夫だということなんですね。それからもうひとつ。今回、知事がいろいろ、共和党になるのか、民主党になるのかっていうのがすごくやっぱりアメリカのニュースでは繰り返し出てくるんですよ。テーマとして。これは、直接的にはそういうゲリマンダリングも含めて、2020年の大統領選で選挙人制度の区割りを決めるから影響を及ぼすということでいいんですか?

とても大きい州知事の権限

(鈴木一人)まあまあ、でもそれ以上にやっぱり州知事の権限ってものすごく大きくて。アメリカっていうのはもともと連邦制で州から成り立っている国なので。その州の権限をコントロールする知事っていうのは、ものすごく重要な存在で。たとえば、丁度落ちたスコット・ウォーカーっていうのはまさにティーパーティーの権化みたいな人で。とにかく州の公務員の大胆なカットをして。労働組合を潰して。で、学校も……教育の予算っていうのは基本的に州が持っていますので。その教育予算をバッサバッサと切って。

(モーリー)あと、公共の道路の修復予算も切ったので、アメリカの道路に穴が空いてるとそれを「ポットホール」って言うんですけど、その州では「スコットホール」って呼んでいるんですよ。

(プチ鹿島)アハハハハハッ! なるほどね。

(モーリー)というぐらい、激しく緊縮財政で金持ち優先。貧しい人への再分配はカットみたいな超強硬派の共和党の州知事ができると、それこそ10年単位で制度がいじられてしまうっていうことですよね?

(鈴木一人)そうですね。まあ州知事の任期っていうのは基本的には4年なんですけども。その間はとにかくもう動かせないので。「リコール」っていうのはできますけど。ただ基本的にはその州知事というのは大統領と同じように州の中では……・

(モーリー)プチ大統領なんですよ。ミニ大統領なんですよね。だからそういうので州知事選というのも同時に中間選挙でやるんですけども、非常に注目を浴びる存在であるということです。

(鈴木一人)そうですね。それで今回、民主党は全部で4つ勝っていて、そういう意味では州知事選はかなり有利になっていますよね。あれ、4つだったかな? 3つ?

(モーリー)そうですね。いま、数え直しもあるから、これであと2個勝ったりすると結構大統領選に向けてちょっと勾配がつくんですよ。傾斜が。さっきの選挙区割りっていう問題もあるんだけど、それ以上に知事が「青い(民主党寄り)」だと、その大統領選を2020年に戦った時に、とても反トランプが有利になるという、そういう形勢も横から入ってくるということですね。

(プチ鹿島)僕、初歩的なことを聞いていいですか? その上院・下院のねじれって、そもそも違いとか存在意義というの、わかりやすく。この後、本格的なお話を聞く前にうかがえればと思うんですが。

(鈴木一人)下院というのは435人いて、人口区割りごとにやっている日本の小選挙区と同じような位置づけなんですけど、上院というのは州から2名なので全部で50州ありますから100人ということですね。で、その人口比で選ばれる人たちと州の代表として選ばれる人たち。1票の格差という意味では下院の方は1票の格差は小さくて、上院の方は大きいんですけども。一応、州の代表が物事を決めている。両者とも法律を決定する権限があるのは日本の衆参と一緒で。両方を通らないと法律って通らないし、予算も通らないので。上院と下院がねじれると、「上院はOK。でも下院はダメ」みたいな。両方から発議はできるので、法律も予算も通らないという状態が生まれてしまいます。

(プチ鹿島)なるほど。

<書き起こしおわり>

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