モーリー・ロバートソン 国際社会の反捕鯨運動と日本を語る

モーリー・ロバートソン 国際社会の反捕鯨運動と日本を語る 水曜日のニュース・ロバートソン

モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で国際捕鯨委員会が採択した鯨保護宣言について話していました。

(モーリー)いつもトランプさんとか朝鮮半島情勢とかってやっているんですけど、今回はBBCニュースの9月13日のツイートです。ご覧ください。鯨です! これもひとつのホットボタンですよね。人によってはとにかくみんな感情的になるトピックなんですけども。「Brazil meeting votes to protect world’s whale population」。

これはブラジルの会議で世界の鯨の頭数を確保するという決議をやりましたということで、日本語の翻訳はこうなります。「ブラジルの会議で世界鯨保護の投票が行われた」というものなんですね。で、このツイートの文章を読むと英語ではシレッとサラッと書いているんですけど、結構多くのものがあります。ブラジルのフロリアナポリスという場所で行われたIWC(国際捕鯨委員会)の総会で永続的に……つまりずっと、鯨の保護を行うフロリアナポリス宣言に賛成40、反対27。賛成多数で採決された。ブラジルが提案したこの宣言には法的な拘束力はないけども、「捕鯨はもはや人類にとって必要ではない」という見解なんですね。

で、投票前には当然、日本を含めてノルウェーとかアイスランドがこれを拒否しているわけです。「こんなもの、許せるか!」っていうことなんですけど、国際社会の意思としては捕鯨はもう必要ないという結論が出されてしまっているんですね。それで、これはこの前おっしゃっていたイルカショーにも関連してくる。

(プチ鹿島)イルカショーね。

(モーリー)たしかイルカと鯨って鯨類なんですかね。

(プチ鹿島)で、知性が……。

(モーリー)そう。知性があるはずっていう。で、なぜここまで欧米は行くのか? ひとつはデータが物語っているようにやっぱり絶滅危惧の範囲には入っている。で、日本は調査捕鯨という形で「一部の種類の鯨は回復しているから、回復した分だけは獲っていいだろう?」という結論ありきで。そのためにいわゆる調査捕鯨っていうことをやっているんだけども、欧米からすると「いやいや、それ、本当に回復したとは言えない。日本は自分たちの政治的な目的や商業的目的を優先させて科学に背いている」っていう風に平行線にいっちゃうわけですね。だからデータにおいて日本側はちょっと弱いことを言い続けてきたのは事実です。

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)ところがもうひとつ、こういう問題には感情的な側面が伴うんですけども。それは欧米の人たちが「イルカとか鯨という動物は特別に知能が高い。だから殺すのは残酷だ」という思想があるわけですよ。で、これは結構欧米では根付いているんですけども、その思想の源流にはある人物の存在があると考えられています。こちらの人です。ジョン・カニンガム・リリー。「ジョン・C・リリー」という名前で有名なんですね。アメリカの脳科学者なんですけど、同時期にLSD博士として有名だったティモシー・リアリーとか、そういう人たちと同じ時代に名を馳せた人なんですね。

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)で、イルカとのコミュニケーションを研究していて、映画『イルカの日』のモデルになったことでも知られている人なんですけども。感覚遮断タンク(アイソレーション・タンク)とか……食塩水の中に浸かることでプカプカと胎児のように浮かんで、そこで夢が見れるっていうタンクがあるんですね。これも70年代のアメリカで娯楽として大変に流行りました。そしてLSDをはじめとした薬物。あるいはたしかケタミンかな? とにかくいろんな薬物を用いて、自分が被験者になって幻覚剤にぶっ飛ぶ。そして「イルカに意識がつながった!」っていうようなことを主張したりもして。その結果、「イルカや鯨のメッセージが私に届いたので、私が人類に『もうこれ以上、捕鯨はいけませんよ』と代弁します」というようなことも言ってきているので。それは日本からすると逆にそれは科学的ではないということになるんですけども。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)リリーが広げた「鯨類は意識を持っている。人間に近い」というこの考え方というのは相当に浸透していて。エコロジーを信じている人たちは結構「イルカや鯨が人間に近い思考をできるこれだけの証拠!」みたいな感じで結論ありきでそっちに行くんですよ。それで日本側は南氷洋の調査捕鯨っていうのは捕鯨再開がありき。結論に向けてどんなことをしてでも、科学をレトリックとして使ってそこに行き着こうとする。ところがディープなエコロジーの人たちは鯨やイルカが人間のような存在であるということが結論にあって。そこにいろんな科学的データを補足として使うわけですよね。で、ちょっと豆知識を調べました。

(プチ鹿島)はい。

(モーリー)日本人がなんでこんなに鯨類を食べることに慣れているのか? 「給食に出す」とか山口県で言っていますよね? 実は戦後、占領されている時期に一気に飢えが襲ってきたわけ。だって戦時中に肉を食べちゃったから。それでその時、マッカーサー元帥が日本のGHQを統括している。「よし、鯨を食べさせよう」ということで米海軍のタンカー2隻を改造して捕鯨船2隻を作りました。それで南極の方に行って獲らせたのがどうも前の世代の……鯨肉で育った人たちは1940年代後半から60年代にかけて。あと、日本は牛肉とか柑橘類も輸入を止めていましたよね。保護貿易に。そういうことがあった時代、やたら給食で鯨を食べまくった人。そもそもの起源はマッカーサー元帥の一声だったらしいです。

(プチ鹿島)なるほど。じゃあ、GHQに憲法と鯨をいただいたわけですね。

鯨食が一般化したのはGHQのおかげ

(モーリー)憲法、鯨、大麻禁止、風営法……なんでもかんでもGHQっていう感じなんですよ。そしてその原体験を持ったおじいさんたちが、どこかでそれがナショナリズムとくっついちゃって。「鯨食は日本人の魂だ! 欧米に言われる筋合いはない!」みたいになっていて。「いや、違うよ。それGHQ由来だったりしない?」みたいな。でも、いまは亡き人たちもその鯨で育っているわけだから、その人たちにさかのぼって聞けないわけですよ。

(プチ鹿島)うんうん。

(モーリー)で、最後に簡単なソリューションなんですけども。たとえば南氷洋まで出かけていくとオーストラリアがすぐ近くにあって。あそこは反捕鯨なんで。すごく感情を逆なでする。だからたとえば日本の近海のみで……その捕鯨委員会からは脱退してもいいから、「近海でやるからこれでいいだろ?」っていう風に折り合いをつけるとか、国際社会にアピールする。あともうひとつ、いま日本がやるべきなのは、さっきのプラスチックごみの問題もあるけど、マグロを乱獲しすぎ。これはね、もう業者を水産庁がきちんと止めなきゃいけない。

(プチ鹿島)うん。

(モーリー)あと、イワシとかサンマ。中国・台湾船がサンマをもう乱獲しております。これは確認されております。これを世界にPRして。「鯨も大変だけど、サンマもね!」っていう、秋のサンマキャンペーン。これをやることで日本のイメージアップを図れるような気がしますので。そこはみなさん、いろいろと国際社会と付き合いながら、背をそむけずに対話を進めていってください。以上でした。

<書き起こしおわり>

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