プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で韓国映画『1987、ある闘いの真実』について話していました。
【?NEW】「1987、ある闘いの真実」本予告 https://t.co/1IyKk6iDJr
「ファイ 悪魔に育てられた少年」のチャン・ジュナン監督が、韓国民主化闘争の実話を描いた社会派ドラマ。9/8公開。#1987ある闘いの真実 #映画com新着動画 pic.twitter.com/8uBu3VMCPP
— 映画.com (@eigacom) 2018年7月30日
(プチ鹿島)先ほどね、プレイバック80’sで1987年の曲をお送りしたじゃないですか。僕、いま手元にある映画のパンフレットがあるんですけど。「日本の1987年とは」っていうページがあるんですね。昭和62年。さっきのコーナーでこれを忘れて夢中でしゃべっっていたんですけども、改めて紹介すると……日本の1987年はスポーツでいうと野球。巨人の江川卓引退。広島の衣笠祥雄が国民栄誉賞受賞。相撲だと小錦が外国人力士として初の大関に昇進。流行語大賞、新語部門は「マルサ」。流行語部門は「懲りない○○」「朝シャン」「カウチポテト」「花金」「バブル」「地上げ屋」「DINKS」。
(塩澤未佳子)DINKS、あったなー!
(プチ鹿島)ありましたねー。DINKSって……。
(塩澤未佳子)なんか夫婦で……?
(プチ鹿島)そうそう。生活形態ですよね。あとは「フリーター」。ヒットソングは中森明菜『難破船』、光GENJI『STAR LIGHT』。ほら、だから今日は2曲、入っていたということですよ。少年隊『君だけに』。で、ベストセラーは『サラダ記念日』、『塀の中の懲りない面々』。だから、さっきの流行語はここから来ているんですね。ヒットドラマは『男女七人秋物語』『ママはアイドル!』『独眼竜政宗』。洋画ベスト5は『トップガン』『プラトーン』『アンタッチャブル』『ビバリーヒルズ・コップ2』『オーバー・ザ・トップ』。
(塩澤未佳子)へー!
(プチ鹿島)ボディコン、ワンレンブーム。マウスウォッシュがヒット。
(塩澤未佳子)じゃあ本当にバブルですね。
(プチ鹿島)バブル、入ったよ。ちょうどバブル時代に入った頃だ。「国をあげて浮かれていた時代」って書いてありますね。政治は中曽根首相が次期総裁として竹下登を指名し、竹下が74代首相に就任って書いてあります。ねえ。国鉄民営化。JR7社が発足という。西武百貨店渋谷横にLOFT一号店がオープン。
(塩澤未佳子)へー!
(プチ鹿島)これが日本の1987年とは?っていう。じゃあこれ、なんのパンフレットかっていうと、『1987、ある闘いの真実』という韓国映画のパンフレットなんですよ。
(塩澤未佳子)へー! いま上映してるんですか?
(プチ鹿島)はい。上映自体はもう1ヶ月ぐらいたっていて、僕は行きたくてしょうがなかったんですけど、なかなか予定が合わなくて。で、妻が最初に見に行ってね、これは本当に面白かったって言っていたので。それで調べたらいま、東京では午前10時ぐらい……午前中1回、午後1回ぐらいなんですよ。で、ちょうどこの間の日曜日。僕は『サンデーステーション』がお休みだったんですね。放送時間が短めだったんで。だから「じゃあ今日、なにしようか?」みたいな。で、娘が「プリキュアの映画に行きたい」って言うんですよ。で、チケットを2枚取って。新宿で。それで妻と娘で行ったんです。
(塩澤未佳子)へー!
(プチ鹿島)で、僕もじゃあどうせだったら……最初は行かないつもりで。家で仕事している予定だったんですけども。「じゃあせっかくだったら俺も近くの映画館で」って。さすがにプリキュアを見るのはなかなか……だから他の映画ないかな?って思ったらちょうど10時からこの『1987、ある闘いの真実』っていうのがあって。「あっ、このチャンス!」って思って僕は見に行って。そしたらね、この映画、もっと早く見ればよかったって思った。
(塩澤未佳子)そうなんですか。
(プチ鹿島)だっていま言ったように、僕らにとっての1987年ってついこの間ですよね。
(塩澤未佳子)もう全部思い出せますもんね。いま聞いていても。
(プチ鹿島)同じ時ですよ、1987年。まあ、パンフにも書いてあります。空前の好景気、バブルの幕開けに日本中が浮かれていた1987年、飛行機ならたった3時間で行ける隣の国の韓国では歴史を覆し、国民全員の人生を劇的に変えた大事件が発生していた。こういうことなんですよ。僕、覚えがあるのがね、あれは88年とかかな? うちのおじいちゃんがニュースを見てしみじみしていたんですね。「はー、韓国もいよいよ大統領選挙か。韓国もここまで来たか……」みたいにしみじみしていたんですよ。
(塩澤未佳子)そうですか。
(プチ鹿島)まあ僕からすると、大統領選挙がはじめて実施されたっていうので「へー」ですけども。いま、そのじいちゃんのしみじみした感じがこの映画を見た後に全部つながってね。つまり僕らに取っては、僕は当時高校生だったんですけども。隣の国、韓国ではそれぐらい熾烈な民主化運動、闘争があったんですよね。本当に。僕も知らなかった。ここまですごいことだったとは。で、映画のオープニング。1人のソウル大学の学生の青年が警察の尋問中に死亡するという、そこからスタートするんです。ただ、この頃の韓国は軍事政権の圧政にあえぐ国民が自由と平等を約束する民主化を求めて大統領への反発を募らせていた。だから反政権デモとかがしょっちゅうあった。で、デモのリーダーとの関連を疑われたソウル大学の学生が警察に拷問を受けるんですよ。
(塩澤未佳子)ああーっ……。
(プチ鹿島)で、水責めをされる。だから亡くなった時、体にもう水が入っているわけですよ。ところが警察としては当時、そういう政治体制だから、絶対にマズいことは外に漏らしてはいけないというので、「すぐに火葬しろ」って言うんです。この学生の遺体を。親にもまだ面会させてないんですよ。で、その火葬を承認する書類に検事がハンコを押す必要があるんですけど、公安部のチェ検事っていう人がいるんですけど。この人がまあ、飲んだくれのいい加減な人に見えるんですけど、その「ハンコを押せ」っていう書類をよく見て、「いや、これはおかしいだろ? こんな親にも会わせないで、亡くなってからたかだか数時間で火葬……? お前ら、拷問しただろ?」って見破っちゃうんですね。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)ただ、政治体制がそうですから。当然、上から圧力がかかってくる。「お前、そんな……さっさとハンコを押せよ」って。そういう圧力があって、じゃあこれを公にしたい。真相を明らかにするにはどうすればいいのか? マスコミとかにリークするのか、しないのか? そういう闘いが始まるわけですよね。一方で圧力をかけてくる治安本部のパク所長っていうのがいるんですけど、これがまあ怖い顔をしているんです。この人、実は脱北者で。当時、北朝鮮から逃げてきて。富裕層で生まれていたんですけど、北で家族を殺された。だから共産主義の撲滅に手段を選ばないっていうので、この人にはこの人の自分の生い立ちと合わせた正義があるわけですね。
(塩澤未佳子)うんうん。
(プチ鹿島)でも一方で、だからといって何の罪もない学生を拷問で殺してしまって、それを組織ぐるみで隠蔽って絶対にあり得ないじゃないですか。さあ、じゃあこれをどうするのか? そういうお話なんですよね。で、最終的にこの青年の死がきっかけとなってどんどん民主化運動がさらに大きくなって。それはさすがに止められないということで、じゃあいままでは自分たちに有利な選挙をやっていたんだけど、大統領選挙っていう直接民主制。それを取り入れてやりますっていう、そういう風に変わる時代状況だったんですよね。僕もそこらへんはなんとなくは分かっていたんですが。で、1988年にソウルオリンピックっていうのがありましたから。
(塩澤未佳子)はい。
(プチ鹿島)これ、だから不思議なことにね、韓国のこの体制側としても1987年……オリンピックの前年ですよ。オリンピックまでに世間が騒がしいとかそういう風に外国に見られたら恥ずかしいっていうので一生懸命抑え込んでいた。一方で、大韓航空機テロっていうのがあって。あれもテロを起こしたのはどうやら北朝鮮のスパイじゃないか?っていう。そういうのもあったから。まあ、どっちにしろピリピリしていたんですよね。でも、「いや、オリンピック間近だからってなんでそんな民主化運動を鎮圧するんだ?」みたいな。もう、そういうエネルギーあふれる……。
(塩澤未佳子)そうだったんですね。
(プチ鹿島)だからこれは権力というのは一生懸命、自分たちにマズいことは隠そうとするわけですよね。で、それを「いや、このままじゃいけない」と思う権力側の人も中にはいるわけです。当然マスコミは、本当にぶたれ、蹴られしながらも食らいついていく。それも見ていて熱くなるんですよね。で、たまたま……韓国の歴史っていうものも映画を通じてだんだんわかってくるんです。いままでは教科書上でしか知らなかったものが。この映画は1987年の民主化運動なんですが、今年日本で公開された作品で『タクシー運転手 約束は海を越えて』っていう映画もあるんですよ。これも面白かった。
(塩澤未佳子)ふーん!
『タクシー運転手 約束は海を越えて』
(プチ鹿島)これは何を描いているか?っていうと、1980年。だから87年の7年前の光州事件という、これまた民主化運動があったんですよ。だけど、これはベールに包まれていた。だって権力側としては黙って、他に見られないように。日本とか隣の国にもわからないように鎮圧をしてしまえばいいだろうっていう。だけどこれをたまたま、「どうやらいま韓国では何かが起きてるぞ」っていうことを勘づいたドイツ人ジャーナリストが……だから、韓国とか関係ないんですよ。たまたま日本にいた、「なんかネタ、ねえかな?」っていうので、「どうやらいま、韓国が大変なことになっているらしい。光州という場所で……」っていうので。それでカメラひとつで乗り込んで。タクシー運転手さんに「お金を渡すから、光州まで行ってくれ!」っていう。だからオープニングの(自己責任論の)話とリンクをしてくるんですね。
(塩澤未佳子)ああ、そうですね。
(プチ鹿島)つまり、ずーっといままでは光州という場所で民主化運動がどれだけ鎮圧されているか、全然知らなかったの。外国どころか韓国の人でさえも。それがこのジャーナリストが乗り込んだことによって……いや、いろいろと目的があったのかもしれない。「真実を知りたい」っていう高い志もあったかもしれないし、それをカメラに収めて日本の支局とかに帰れば大スクープだし、名前はあがるし。そもそもそのフィルムが高く売れるっていう。そういう野心もあったからこそ、乗り込んだのかもしれない。いずれにせよ、この人がいたから事件の全貌がわかったわけ。だからジャーナリストってそういうことじゃないですか。
(塩澤未佳子)そうですね。
(プチ鹿島)もう自己責任もなにも、そんなことは百も承知なんですよ。この人は。っていう話。それもだからパーッと、今回の『1987』を見ながら、「そういえば光州事件で、あの『タクシー運転手』で乗り込んでいったドイツ人ジャーナリスト。あれも結局、ジャーナリストのそういう話だよな」って思って。「ああ、そういうことか」って劇中で思い出したし。で、もう1回こっちの話に戻ると、そういう歴史があっての1987年の民主化運動の話なんですよね。だからこれで行くと、『サニー 永遠の仲間たち』っていう映画もあったじゃないですか。あれもよく思い出してみると、女の子同士が街を歩いているとものすごい民主化を求めるデモに遭遇したりする。だからこの話なんですよ。
(塩澤未佳子)そうだったんだ!
(プチ鹿島)だからお隣の韓国では、僕らがプレイバック80’sとかやっていて、光GENJIだ、『難破船』だって言っていた頃、こんなことを隣でやっていたんだって改めて見ながら思うと、「すごい話だな……」っていう。で、もっと言うと、光州事件でもそうですけど、今回の1987年のソウル大学生の拷問死を隠蔽するために火葬をしようとする。でも、「ちょっと待った!」っていうその争い、せめぎ合い。つまり、もう権力は絶対に何かを隠すんですよ。隠すの。隠すから、それを報じなくちゃいけない人もいるわけですよ。それがすごい、この2つの映画……まあ、『タクシー運転手』はこの映画を見て思い出したんですけども、改めて実感をするんですよ。隠すんですよ。
(塩澤未佳子)そうか、そうかー!
権力側は、隠す
(プチ鹿島)で、権力は権力の側で当然、北朝鮮の共産主義的なものに染まっちゃいけない、そこから守るんだ!っていうそういう正義もあるんですけど。でも、基本は隠すんですよね。だからそれをいかに、真実を追求して暴くか?っていう、そういうお話でもあるんですよね。で、もっと言うと組織の中の一員となった時、それを見逃すのか、見逃さないのか。「それはダメだよね」って言えるのか、言えないのかっていう個人のお話でもあるんです。だから全部これね、いまのどの世界でも……日本でも「あれ、これどっかで見たぞ? どっかで聞いた話だぞ?」っていう。だから結局、この作品で警察が拷問がいよいよマスコミにバレてしまった際、組織ぐるみだとは言えないから、やっぱり刑事1人ぐらいが「全面的に私がやりました」っていう風に……「お前がちょっと泥をかぶってくれよ。わかるよね?」みたいな感じになるっていう。もう、どこでもそういうのってある。普遍的じゃないですか。
(塩澤未佳子)ええ、ええ。なんか日本だけじゃなくて、サウジアラビアとかにもつながってきますよね。
(プチ鹿島)そういうことをやるんですよ。だから、そこに忍び込んだり、ひっぺがしたりする、そういう人がいなくちゃいけないし。いてほしいなと。いたからこそ、こういう歴史がどんどん変わってくるんだろうなって改めて思いました。だからこれ、時事ネタでもあります。1987年、最近の話だなと思いつつ、いまのものにも当然つながっているなっていう。これ、面白かった。山梨でもやってほしいですね。
(塩澤未佳子)見たいです。
(プチ鹿島)『1987、ある闘いの真実』。そんな話をオープニングトークと絡めて、ちょっと。
(塩澤未佳子)なんかつながった感じですね。
(プチ鹿島)ついでに言うとプレイバック80’s。1987年です。たかだか31年前。という話。映画を……日曜の午前中から見てよかったです。本当に得した気分でした。
<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/49761