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町山智浩『1987、ある闘いの真実』を語る

町山智浩『1987、ある闘いの真実』を語る たまむすび
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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で韓国の民主化運動を描いた映画『1987、ある闘いの真実』を紹介していました。

(町山智浩)なんか日本、台風がひどいみたいですけど大丈夫ですか?

(赤江珠緒)そうなんですよ。特に近畿地方のあたりで結構浸水なんかあるみたいですね。

(町山智浩)ああ、そうですか。無理して外出とかはされない方がいいですね。本当にね。

(赤江珠緒)そうですね。今年は本当に日本は台風が多いです。

(町山智浩)本当に。これでもドナルド・トランプ大統領は「地球温暖化や異常気象はない」って言っていますからね。

(赤江珠緒)ねえ! そこなんですよね。世界的にみんなで考えなきゃいけないことなんですよね。

(町山智浩)まあ、そういう石油を燃やしたりする産業と結びついているからしょうがないんですよね。彼らはね。「地球温暖化はない」って言っている学者はみんな、地球温暖化がないということになると儲かる石油関係の会社から利益を得ている財団に所属していますからね。全部。

(赤江珠緒)はっきりと利害関係があるということですね。

(町山智浩)だからそういうものですね。で、今日は韓国の映画で。韓国ですごい国民的な大ヒットをした映画で今週末、9月8日から日本公開される映画なんですが。『1987、ある闘いの真実』というタイトルの映画を紹介します。これはこの間『たまむすび』で紹介した『タクシー運転手』っていう映画がありましたけど。あれのその後を描いたものです。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)『タクシー運転手』っていう映画は1980年に韓国の光州(ガンジュ)という場所で起きた反政府運動の学生とか住民を空挺部隊が弾圧しまして大量の死者を出した虐殺事件を描いた映画だったんですよね。

町山智浩『タクシー運転手 約束は海を越えて』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を紹介していました。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、タクシーの運転手さんは何も知らないで……もう完全に報道を規制しているから、何も知るわけないんですが。で、誰も何が起こっているのかわからないその光州にドイツのちょっと一発当ててやろうと思ったルポライターを連れて行ったら、そこの中は地獄だった。大虐殺だったっていう。

(赤江珠緒)そうですね。街も完全に包囲されて情報もなにも全然漏れなかったっていう状況だったんですよね。

(町山智浩)世界中、誰も知らなかったんですよ。韓国に住んでいた人も。それはね、まだ韓国は貧しくてテレビが普及していなかったっていうこともあるんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、そこに入っていって、それをドイツのジャーナリストがフィルムで撮影して。それをなんとか証拠品として光州から外に持ち出して、外国の報道でこれを証明するという話だったんですけども。これ、全部実話でしたけども。じゃあ、その後にいったいどうなったのか?っていう話が今回の『1987』なんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)それで徹底的な弾圧を行った軍事政権の大統領は全斗煥(チョン・ドファン)大統領っていう大統領なんですね。それまでも軍事政権……クーデターで政権を取った元軍人の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領がいて。で、彼が暗殺をされて、その後にまたすぐにクーデターを起こしてその全斗煥大統領が政権を握っているという状態なんですね。それで結局軍事政権が続いちゃったんですよ。朴正煕大統領が暗殺された後も。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、この光州事件で徹底的な弾圧を行った後の1987年が今回の舞台なんですね。で、その87年っていうのは一応、全斗煥大統領の任期が終わる時なんですね。憲法で定められた。ところが彼は大統領選挙をちゃんと行わないで、そのまま自分の力の影響がある後継者に政権を形だけ渡して、自分はまあ「院政」って言いますけども。まあ、プーチン大統領が一時期やっていましたけども(笑)。自分の手下に形だけ政権を譲っておいて、自分が実際には実験を握っているという状態に全斗煥大統領がしようとしたんです。その状況から映画は始まります。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、その1987年1月にまず、ソウル大学の学生、朴 鍾哲(パク・ジョンチョル)という人がソウルの警視庁……その頃は治安本部って言っていたんですけども。そこでの取調べ中に亡くなって、オ・ヨンサンという医師がそこに行くんですね。で、蘇生をしようとするんですけど、すでに死んでいて。で、その様子を見ただけでもう完全に溺死なんですよ。水拷問をされていたんですね。水責めで。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、それは明らかに拷問なんですけど、そこにいた警察官たちは「彼は心臓麻痺だ。すぐに火葬にしたい」って言うんですね。で、オ先生には「黙っていろ」って言うんですけども。その証拠隠滅のために火葬にするとしても、検事の許可を得ないといけないんですよ。で、検事のところに「これは心臓麻痺ということで、適当に処理しておいて」って刑事が書類を持っていくんですけど、そこにいた検事が骨のある検事だったんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これは崔桓(チェ・ファン)という名前の検事なんですけども。これ、全部実話で、ほとんど実名で出てきます。キャラクターは。で、このチェ検事という人はハ・ジョンウさんという俳優さんが演じているんですけど。この人はね、大鶴義丹をワイルドにした感じの人なんですけども(笑)。

(赤江珠緒)うんうんうん(笑)。

(山里亮太)手元に写真がありますけど、まさにそうですね。

(町山智浩)ねえ。ワイルドな大鶴義丹なんですけども。で、この人は『チェイサー』っていう映画でデリヘル嬢を次々に殺す連続殺人鬼をやっていたんですが、今回はいい人なんですよ。で、このチェ検事が「これ、どう考えても拷問で殺してるだろ? だからこれはちゃんと検死解剖するし、解剖前に火葬なんかさせないぞ」って言ってその証拠隠滅を拒否するんですよ。ところが、周りからどんどんどんどん圧力がかかってきて潰されそうになるわけですね。結局火葬をされそうになっちゃうわけですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、どうするか?っていうことで。この秘密を知っているのはこのお医者さんのオ先生とチェ検事なんですけども。これが拷問をされていたということをなんとかマスコミに流そうとするんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

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真実を知る医師と検事がリークする

(町山智浩)ところが、そのころのマスコミ、新聞社っていうのは完全な軍事政権の統制下にあって、政治的な報道をする際には政府から通達されたガイドラインを外れては報道できないっていうひどい状態だったんですよ。

(赤江珠緒)えっ? その1987年の韓国で?

(町山智浩)87年。自由な報道が全くできない状態だったんですよ。なぜならば、特殊な状況がありまして。もともと北朝鮮と韓国はこの時、戦時体制にあるわけですよ。一時休戦っていうことになっているんですけども、朝鮮戦争は続いているんですよ。だから戦時体制なんですよ。で、しかも大韓航空機爆破テロっていうのをやられたりしていますんで。で、1988年に全斗煥大統領はソウルオリンピックをするのを目指しているわけですよ。で、ソウルオリンピックでは北朝鮮のテロがあるかもしれないということで徹底的なテロリストの摘発と反政権勢力の弾圧を行っている最中なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん! 「オリンピックのために」みたいな名目で?

(町山智浩)そうです。これ、日本でも当時、「テロは絶対にある」って言われていたんですね。だから自由な報道なんかなくて、全部政府に管理されている状態なんですよ。で、それだけじゃなくて、さっきの選挙の問題もそうなんですけど。まあ、選挙が韓国ではないわけですよ。基本的には民正党っていう与党の中で総裁になった人が大統領になるっていう形なんですよ。なんかどっかで聞いたような気もしますけども。

(赤江珠緒)あれ? うん。ちょっとデジャヴ感がありますが。

(町山智浩)だから国民が選挙に参加できないんですね。それだけじゃなくて、戦時体制ですから野党を完全に「北朝鮮のスパイなんだ、左翼なんだ」っていうレッテル貼りをしていって、「政府に反対する人間はみんな左翼」っていう形でのレッテル貼りと弾圧が行われていたんですよ。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)で、実際に当時いたんですけど。1人いたらそれ以外も全部北朝鮮のスパイっていう扱いだったんですよ。当時。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、光州事件に関しても光州事件の蜂起を主導したということで金大中(キム・デジュン)さんを死刑判決しているんですよ。金大中さんってその後に大統領になるわけですけど。全然北朝鮮でもなければ社会主義者ですら、彼自身はなかったわけですけども。でも、その時には完全に「北朝鮮のスパイとして光州蜂起を指示した」っていう理由で死刑判決を出しているんです。で、野党は全部犯罪者でテロリストだっていうレッテル貼りをして、徹底的に野党つぶしをやっているっていう状態なんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、その中でこのソウル大学の学生が、学生運動をやっていただけなのに北朝鮮のスパイだという濡れ衣を着せられて拷問で水責めで殺されたっていうのは一種の突破口だったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)つまり、政治的報道はできないけれども、これは事件報道だから。

(赤江珠緒)人が1人亡くなってね。

(町山智浩)そう。変死をしているっていう状態だから、これだったら報道ができるわけですよ。だからリークするんですけど、リークする時にも「これが拷問で死んだ」という風には言えないんですよ。その知っている検事も医者も。だから映画を見ているとどういう風にやっているのかわかるんですけど、非常に曖昧になんとかして伝えようとするんですね。それは映画を見てご覧になってください。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、それを中央日報っていう新聞が「ああ、これは1人死んだ。殺された!」っていう風に気がついて、スクープするんですよ。

(赤江珠緒)ほうほう。

(町山智浩)で、ブワーッ!っとスクープになって。ところがすぐに中央日報に圧力がガーンとかかるんですね。そしたらそれでその事件自体が潰されちゃうじゃないですか。それで、メディアがそこで連携をするんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)そこで今度は東亜日報という新聞がガンと行くんですよ。で、検死報告では「心臓麻痺」っていうことにされるんですよね。その「取り調べの最中に刑事が机をバン!って叩いたらびっくりして死にました」っていうのが警察の発表なんですよ。

(赤江珠緒)そんな……溺死がそんなことに。

(町山智浩)でも実際には体中が拷問の痕だらけで、気管に水が入っちゃっているんですよね。で、溺死をしているんですけど、それをなんとかして検事と……その検事も潰されそうになっているわけですから。そのお医者さんが流して。今度は東亜日報がそれを報じるんですよ。で、もう止められなくなるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。じゃあ、リレーみたいにみんなでつないでいって?

(町山智浩)そうそう。そうしないとダメなんですよ。マスコミ一社だけがスクープをしても。みんなで連携しないと。で、どうなったかっていうと、「これは2人の刑事が勝手に暴走して殺してしまった事件なんだ」っていうことで、その刑事2人に罪を押し付けようとします。今度、警察側が。

(赤江珠緒)切り捨てようとしたわけですね。トカゲの尻尾切りみたいに。

(町山智浩)まったくその通りで。その人たちはもっとも拷問に積極的でなかった刑事2人が選ばれるわけですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!

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