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町山智浩 映画『ア・プライベート・ウォー』を語る

町山智浩 映画『ア・プライベート・ウォー』を語る たまむすび
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(町山智浩)で、この映画を見ると、かなり行きずりのセックスもするような人として描かれていますね。だから普段の日常生活ではすごく問題のある人だったみたいです。酒浸りで、セックス中毒みたいなところもあって。どこまでが本当だかわからないですけど。でね、この人はイギリスのサンデー・タイムズという新聞の特派員になるんですね。メリーさんは。で、そのサンデー・タイムズっていうのは実はルパート・マードックという、アメリカではFOXを経営している、非常に右翼的な、保守的な経営者の下の保守系の新聞なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それなのに、彼女の記事だけは現地に行ってひどい目にあっている人たちの声を拾ってくるという感じで、新聞の方向性とはかなり違うことをやっていたんですけど。ただ、それがすごく人気だから編集者は彼女を雇い続けるんですけど。ただね、この人は戦場ではすごいんですけど、日常生活の能力はまったくない人だったんですよ。メリーさんって。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)特に取材に行くと、大量に領収書を取ってくることになるじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。いろいろと経費がかかりますしね。

(町山智浩)経費がかかるから。でも、この人は全然経費精算ができないんですよ。それは俺もよくわかるんですよ。で、請求書とかちゃんと書けないんですよ。俺、本当にいまだに日本って請求書を全部書かせて、ハンコを押させて「日本に郵送しろ」って言うんですね。で、それができなくていつもすごく溜まっているんですけど、この人もそうなんですよ。メリーさんもできないんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。なるほど。

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私生活の能力はゼロ

(町山智浩)そういう日常生活の能力が全くないんです。この人は戦場ジャーナリスト以外の仕事はたぶんほとんどできない人なんですよ。税金も申告がちゃんとできないんですよ。それで酒浸りでグチャグチャなの。私生活は。ただ、戦場に行くと酒もタバコもやらないんですよ。戦場に行くとしっかりするんです。

(赤江珠緒)ほー! ああ、現場では飲んだりしないんだ。へー!

(町山智浩)そう。だからこの人は普通の平和な生活ができない人なんですよ。そこもすごく面白いなと思うんですけど。で、いちばんこの人がすごいと言われたのは、1999年に東ティモールというインドネシアの地域が独立運動をするんですけど。それをインドネシア政府軍が潰そうとして軍隊を送ったんですね。

(赤江珠緒)相当ひどい虐殺もあったなんて聞きますが。

(町山智浩)虐殺をしたんです。で、それを防ぐために国連も入ったんですけども。で、ある地域で彼女がいたところが政府軍に完全に包囲される状態になったんですよ。そしたら、国連軍はその時、逃げちゃったんですよ。非常に危険だということで。それで彼女だけが残って。そこにいた女性と子供たちを誘導して脱出させるということを彼女がやったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)すごいんですよ。その時、イギリスの新聞の本部に連絡を取った時に……この人はいつもね、衛星電話っていうやつで連絡を取るんですね。で、衛星電話でパソコンで原稿を送ったりしてるんですけど。で、衛星電話で「いま、どうしてるんだ?」っつったら、「いま、ここには女しかいないのよ」って言われて新聞社の方の編集者は「どうなっているんだ? 軍人とか男とか、どうなったんだ?」って聞くと、「いま、本当の男なんていないのさ!」って言われたんですね。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)かっけー!

(町山智浩)コルビンさん、かっこいいんですよ。「だからあたしがみんなを助けてやるのよ!」って言って助けているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、すごいのはこの人、チェチェンに行った時に、今度はチェチェン紛争で、イスラム教徒のチェチェン共和国が独立しようとして。それをロシア連邦から独立をさせないためにプーチン大統領が軍を派遣して、その独立運動を潰そうとしたんですけども。そこに彼女が行った時、やっぱり彼女はチェチェン側に入るんですよ。弾圧される側、数の少ない側、弱い側に入るんですけども。ただ、チェチェンの人たちはイスラム教徒だから、女が来て「女なんかと話せるか!」ってやったらしいんですよ。

(赤江珠緒)あらーっ!

(町山智浩)「ふざけんな! なめてんのか!」ってチェチェンのリーダーが言ったらしいんですよ。そしたら「私はジャーナリスト。ジャーナリストに男も女もねえだろ!」って言って話を取っているんですよ、この人。

(赤江珠緒)はー! そこは筋がビシッと通ってますね。

(町山智浩)そう。ただ、この人のいちばんの問題は、この編集者もよく言っているんですけど「そこから先には行くな! そこが最前線なんだから、そこを越えて行くな!」って言うんですけど。メールとかもするんですけど、返事はないんですって。メリーさんから。返事はなくて、翌日とかに電話がかかってくるんですって。「いま最前線!」って電話が。

(山里亮太)軽い感じで(笑)。

(町山智浩)そう。「来ちゃったー!」って言うんですって。さんまさんに対する紳助さんのようにね(笑)。で、「なにやってるんだよ!」みたいな。勝手に行っちゃうらしいんですよ。「行くな」って言ったところに。で、どうして「行くな」って言っているかっていうと、行くのはいいんですよ。でも、帰ってこれないからなんですよ。脱出できないんですよ。要するに、戦闘の真ん中に入っちゃうから。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、チェチェンに行った時は脱出できなくて、どうしよう?っていうことになってしょうがないから隣国のグルジアに脱出する。その時、その間に3000メートル級の山があって。しかも冬で雪山なんですね。で、しょうがない。そこを越えるしかないから、零下数十度の極寒の中、この人はその雪山を越えているんですよ。で、さすがに大変でもう本当に死ぬ寸前まで行ったんですけど、彼女の別れた旦那がアメリカ大使館にかけあって。アメリカ政府が動きまして、そこにヘリコプターを突っ込ませて山の上で救出をしています。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)イギリスの新聞のために取材している記者をアメリカ国民だということで守りに行ったんですよ。アメリカは。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからこの時にね、「アメリカのパスポートを持っててよかったわ!」って。パスポートっていうのはその国の人を守るというあれがあるのでね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)まあ、そういう風に言っているんですけども。この人、すごいんですよ。それでその後、2001年には今度スリランカの内戦があって。スリランカってシンハラ系っていう人たちが多数派で、タミル系っていう非常に肌の浅黒い人たちですけども。それが少数派だったんですけども。そのタミル系の人たちが独立運動みたいな形で反乱を起こしたんですね。2001年に。で、そこでシンハラ系の軍隊に包囲をされまして。そこに彼女はやっぱり入って行っちゃったんですよ。

(赤江珠緒)うん!

(町山智浩)で、入っていって、タミル・タイガー(タミルの虎)と言われている反乱軍にインタビューをしてきたんです。その時もやっぱり編集者が「そこから先には行くな!」って言っているのに、行っているんですけども(笑)。

(赤江珠緒)すさまじい生き方をされましたね。

(町山智浩)すごいんですよ。ただ、行くとやっぱり問題は戻ってこれないということなんですよ。で、そのタミル勢力圏から脱出してきた時に、タミル軍だと思われて砲撃されているんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)ただ、これは彼女が言うには「私はジャーナリストだ。アメリカ人だ!」って言っているのにロケット砲を撃たれたから、わざとやったんじゃないか?っていう風に言って怒ってはいるんですけど。それで、目玉をやられちゃっているんですよ。この人。で、ものすごい血が出て、いつものレースの白いブラが真っ赤に染まったんで、編集者が「お前、戦場で赤いブラつけてんのかよ?」って勘違いして言って、「それ、あたしの血だよ!」って言ったりするんですけども。

(赤江珠緒)ええっ……。

(山里亮太)すごい。戦場ジョーク。

(町山智浩)そう。すさまじい内容なんですよ。で、やっぱりそれがすごいショックになって。片目を失っちゃったんで。で、賞とかも取るんですけども。あ、この人ね、だからイギリスでジャーナリスト賞を取るんですね。それで取ると、元カレとか元旦那とか、昔彼女の下を通り過ぎていった男たちがいっぱいいたりして、みんなで祝福したりするところもおかしいんですけどね(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ!(笑)。不思議な人ですね。

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