吉田豪と中野たむ アイドルのプロレスラー転向を語る

吉田豪と中野たむ カタモミ女子とSODを語る SHOWROOM

中野たむさんが『猫舌SHOWROOM』火曜日に出演。吉田豪さんとアイドルのプロレスラー転向について話していました。

(中野たむ)まあ、インフォメイトが活動休止になってその時に出ていた舞台の関係者さんに声をかけられてプロレスを始めたのが最初ですね。

(吉田豪)最初はある種の企画というか?

(中野たむ)プロレスを題材にした舞台をやったんですよ。リングでやる舞台。アクトレスガールズさんっていう団体なんですけど。それでプロレスラー役として出て、また同じように「あなた、すごい向いていると思うからプロレスやったらいいんじゃない?」って言われて。「いやー……」とか思ったんですけど、実際にそれまでインフォメイトで応援してくれたファンの人たちをそのまま……せっかくいままで応援してくれていたのに、それを無駄にするのが嫌で。もしかして、このプロレスだったら応援してくれた恩を返していけるかもしれないなって思ったのがきっかけですね。

(吉田豪)いままでいろいろと上手くいかなかったけど。求められるっていうことがそうないわけじゃないですか。「あなたはこっちの方が向いている」とか言われるのが。それはまあ、やってみようって思いますよね。

(中野たむ)実際に見てみたら、怖いという印象はほとんどなくて。すごいかっこよくてきれいで美しかったんですよね。で、なんかただ体のぶつかり合い、ケンカっていうイメージだったんですけど、その10分の試合の中にすごいいろんな感動が詰まっていて。笑いだったり悲しい、悔しい、怒り、感動……その10分の一試合を見るだけで映画1本分見たぐらいすごい心を動かされて。これだったらもっといろんな人に感動を与えていけるのかなって。

(吉田豪)特殊なジャンルじゃないですか。なかなか理解できる人、できない人っていると思うんですよ。でも、これだと思ったわけですよね?

(中野たむ)思いましたね(笑)。

(吉田豪)感情表現が重要なジャンルではあるけど、そこが面白いと思ったわけですよね。まず感情を伝えるっていう。

(中野たむ)そう。なんか……技と技のぶつかり合いじゃなくて、気持ちと気持ちのぶつかり合いなんだなっていうことをその時にはじめて知って。これはエンタメの最高峰だなとすごい思った。

(吉田豪)だから意外と、他のなにかをやっている人が対応しやすいんですよね。アイドルからの転身は向いているって僕、ずっと言っていて。これは体を動かすとかもあるし、感情を伝えるっていう意味では近いし。よく言うんですよ。アイドルとの共通点はいろいろとあるっていう。「世の中が基本、ナメている」っていうのも近いっていう(笑)。

(中野たむ)ああーっ!(笑)。

(吉田豪)「所詮アイドルっしょ?」みたいな世界。

(中野たむ)言われがち(笑)。

(吉田豪)そういう偏見とどう戦うかじゃないですか。「所詮ショーでしょ?」っていうのに対して、「だからすげえんだよ!」っていうのをどう見せるか?っていう戦いじゃないですか。

(中野たむ)そうなんですよね。あと、アイドルの女の子をファンの人が応援する。選手をファンの人が応援する。で、選手・アイドルが応える。それで一緒に階段を上って夢を見に行けるっていう構図とかもすごく似ているなって思ったし。これは豪さんもよく言ってくださるんですけど……。

(吉田豪)言いふらしてるの、ありますよね(笑)。

(中野たむ)『人間コク宝』にも載ってた(笑)。

(吉田豪)BLTで数少ない2回出ている人の1人なんですよね。だから、インフォメイトで出た後にソロでプロレスラーとしても出ているっていう。で、プロレスラーとしてインタビューしに行った時に聞いた話がすごい好きで。伊藤麻希に言ったりとか、いろんなところで言っているんですけど。で、なんでしたっけ?

(中野たむ)アイドルではもがいてももがいても上に行けなかったけど、プロレスでは確実に上に行くことができる。がんばれば、自分が努力すればするだけ絶対に上に行くことができるんです。だから、カタモミ女子とかインフォメイトとかアイドル活動で……。

(吉田豪)がんばってもがんばっても沈んでいくような(笑)。

(中野たむ)どんどんがんじがらめになっていくようなことはなくて、ちゃんと応援してくれる人に恩を返していける。

業界としてバックアップしようとする空気

(吉田豪)なんか業界としてバックアップしようみたいな空気があるじゃないですか。たぶんやろうとする人が少ない、パイが少ないからっていうのもあるだろうけど、ジャンルとして下から出てくる人をただ潰していたらダメだっていうのがあるじゃないですか。ある程度、伸ばしていかなきゃいけない。先輩が胸を貸してくれる世界。

(中野たむ)そうなんです。上の人が絶対に引き上げてくれる。もうなんか、業界全部が一緒に作っているみたいな感じ。だから、がんばれるなって思う。

(吉田豪)たぶん全女の人たちもみんな思っていたと思うんですよ。90年代ぐらい、僕がいちばん行っていた頃の全女っていうのは本当に恐ろしい世界で。スター候補みたいなすごいかわいい子とか運動能力が高い子が入ると、まあ先輩が次々と潰して追い出していたんですけど、その結果女子プロレスが沈んでいったじゃないですか。「あっ、下を育てなきゃいけないんだ」ってたぶんみんな気づいたと思うんですよ(笑)。

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(中野たむ)気づいた(笑)。

(吉田豪)「これをやってちゃダメだ!」って。

(中野たむ)「ヤバい、自分の首を絞めている!」って(笑)。

(吉田豪)そうそう(笑)。すごかったんですよ。本当にかわいい子が入ると地方興行とか取材のついでに見るじゃないですか。わかりやすいんですよね。タッグマッチとかですごい推されている、いきなり取材を受けているような新人が入ると真っ先にその子に先輩が向かっていって、まず顔面にパンチとか前蹴りとか。「ヒーッ!」っていう。まず制裁を食らわすみたいな。「すげえ!」って。だから、当時よく言っていたんですよ。新日本プロレスとかがストロングスタイルとか言っていたけども、絶対に全女の方が怖いって。全女の方が、要はプロレスじゃないプロレスが多いっていうか。プロレスの枠を超えることが多々ある。「怖い!」っていう。

(中野たむ)怖い(笑)。

(吉田豪)人間関係がそのまま出るのも女子プロだったし。怖い怖い。当時、よくネタにしていたんですけど、豊田真奈美とか井上貴子の両サイドが軍団抗争していたんですけど、あの軍団抗争はガチですからね。要は本当に両者が仲が悪くて、仲が悪いから組ませられないから、仲良し同士……井上貴子と井上京子が仲が良かったからそこを組ませて、豊田真奈美が孤立していたから適当に仲間をつけて。本当に敵対している者同士をリングで争わせるっていうのを……。

(中野たむ)いちばんヤバいやつじゃないですか。

(吉田豪)ヤバいんですよ。でも、当時の全女ってそんなのしかやっていないんですよ。仲いいもの同士を焚き付けて仲悪くさせたりとか。仲悪い者同士を……だから、いかにリングがおかしくなるか?っていうことしか考えていなかったのが当時の全女で。

(中野たむ)でもそれが醍醐味っていうか、面白い……。

(吉田豪)日本独自のプロレスが行われているっていう(笑)。

(中野たむ)嘘と現実の狭間みたいなのが楽しめるっていう。

(吉田豪)そうなんですよ。プロレスの面白さってそこじゃないですか。結局、世の中ってそれのどっちかに分けたがるけど、プロレスはどっちでもあるから面白いんですよ!っていう。

(中野たむ)そう!(笑)。

(吉田豪)混ざるんですよ。アイドルもそうなんですよ。アイドルも基本は演じている部分が多いけど、リアルな感情とかがベースじゃないですか。基本。完全にやらされきりはしないんですよ。感情の部分は本物だし。

(中野たむ)たしかにそうですね。

(吉田豪)だから、通じる部分はすごいあるなと思って見ていますね。

(中野たむ)たしかに。一緒ですね。ちょっと痛いか痛くないかぐらいで。

(吉田豪)フハハハハハッ! ねえ。練習のレベルが違うとかね(笑)。

(中野たむ)ああーっ! でも、どうなんですか? プロレスの方が過酷なのかな?

(吉田豪)基礎の練習のレベルが違うんじゃないですか? どうなんですか? 比較的プロレスラーになるまでの期間って大変じゃなかったですか?

(中野たむ)私、結構最速で2ヶ月だったんですよ。でも……アイドルの方がキツかったイメージが結構ありました。

(吉田豪)嘘? ダンスが? 生活?(笑)。

(中野たむ)フハハハハハッ! あの、練習。体を動かしながら歌うじゃないですか。心拍数的なものはアイドルの方があるかもって。

(吉田豪)ああ、そうか。口パクならいいけどね。

過酷なJJの練習

(中野たむ)そう。JJ(小野)の練習とかマジでキツくて。30分のセットリストでトークなしを3回全力でやらされたりするんですよ。ぶっ続けで。それと比べたら、プロレスはチョロいって……(笑)。

(吉田豪)ダハハハハハッ! ええーっ?

(中野たむ)ちょっと、その時は思っていた(笑)。

(吉田豪)フフフ(笑)。「JJと比べたら」なんだ(笑)。JJの方がプロレスよりもキツいんだ(笑)。

(中野たむ)それにさらにモラハラ、パワハラ、セクハラが来るんで(笑)。

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(吉田豪)そうか。それに比べたらいまのプロレスは平和っていう(笑)。

(中野たむ)平和(笑)。自分とさえ向き合っていればいいから。平和だってその時は思っていた(笑)。

(吉田豪)JJに感謝ですね(笑)。

(中野たむ)感謝です!

(吉田豪)JJのおかげで全然プロレスやっていける(笑)。

(中野たむ)あの時があったから(笑)。まあでも、やっていけばやっていくほど辛いかな。プロレスは。

(吉田豪)でしょうね。まあいろいろとケガが当たり前で。それを抱えてどうやっていくかみたいな世界ですからね。

(中野たむ)そうなんですよね。ケガをしながら試合もしなきゃいけないから。常に全力が出せるとも限らないし。どうやってそこをカバーしながらやっていくか?っていうのもあるし。まあ、精神的なものもあるし。負けが続くとどんどん落ち込んじゃって、負のスパイラルで抜け出せなくなって引きこもりたくなって「もう辞めたい」ってなる時もあるし。

(吉田豪)へー。闇落ちするんだ。闇落ちはアイドル特有のものじゃないんですね?

(中野たむ)ああ、違います。プロレスラーも全然しますね。

(吉田豪)やっぱり結局、どこに行っても体を動かしているとそれなりに健康にはなるじゃないですか。精神的にも。というようなもんでもないですか?

(中野たむ)うーん……ない!(笑)。私はないと思う。

(吉田豪)ないんだ(笑)。

(中野たむ)たしかに気分が落ち込んだ時にジムに行ったりすると「今日もいいトレーニングできた。明日も頑張れる!」って思ったりもするけど、でもやっぱり独特の緊張感にずっと包まれているんですよ。試合が週に1、2回は絶対にあるし。すごい重い相手が続いたりすると、ずっとずっと朝から晩までピリピリしている感じが続くから。なんか友達が減りましたね。

(吉田豪)友達づきあいがしづらいぐらいの精神状態になっちゃう?

(中野たむ)うん。人に会えない。人に会うと、ケンカしちゃいそう。ピリピリしてるから。

(吉田豪)まあレスラーモードで。だってもうね、カタモミ女子時代からそうじゃないですか?

(中野たむ)そうだった! もともとだった!(笑)。

(吉田豪)さっきから聞いてると(笑)。「あの頃はあんなに優しかったのに」とかあればいいけど(笑)。

(中野たむ)なかった!(笑)。じゃあもともとレスラー気質だったんですね、きっと。

(吉田豪)向いていたんじゃないですかね。

(中野たむ)向いていたんだね。

(吉田豪)だって運営にペットボトル投げるって、プロレス的には正解じゃないですか。

(中野たむ)たしかに、たしかに(笑)。その頃と比べるとちょっと丸くなっているかも。投げてみます、今度(笑)。よし、小川さんに投げてみます(笑)。

(吉田豪)ロッシー小川に(笑)。でも本当に不思議ですよ。それこそ元LinQの伊藤麻希さんもそうですけど、普通に僕が仕事でつながっていたプロレスが全く興味なかった人たちが……僕はもともとプロレス雑誌にいた人間で。僕が当時つながっていたような人たちとつながっていくっていうのが不思議ですよ。ロッシー小川さんなんて僕、25年ぐらい前からの付き合いですからね。

(中野たむ)ああ、そうか。それはすごい。いちばん初めはなんだったんですか?

(吉田豪)僕、もともとは『女子プロレスグランプリ』っていう対抗戦ブームの時にソニー・マガジンズがブームに便乗して出した女子プロ専門誌があったんですよ。そこで書いていたんですよ。そこで北斗晶インタビューとかブル中野インタビューとかをやっていて……っていう。当時、まだ23、4ぐらいで。

<書き起こしおわり>

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