モーリー・ロバートソンさんがBSスカパー!『水曜日のニュース・ロバートソン』の中で現在、告発が相次いでいるカソリック教会の神父たちによる児童への性的虐待問題について紹介していました。
(モーリー)いつもはトランプさんやプーチンさん、金正恩さんとかそういうことをやっているんだけど、今回はNBCニュース「THINK」という番組の8月15日のツイートを紹介していきたいと思います。まず、ここから言ってみましょう。ツイートです。「NBC News THINK」ですね。英語で読み上げます。
The grand jury report about Catholic priest abuse in Pennsylvania shows the church is a criminal syndicate, says @AntheaButler https://t.co/R63UtN5SEL
— NBC News THINK (@NBCNewsTHINK) 2018年8月15日
(モーリー)はい。これを翻訳いたしましょう。あ、その前に面白い英語。「The grand jury」っていうのがちょっとアメリカっぽい表現で。日本語だと「大陪審」。「jury」は「陪審・陪審員」。まあ、裁判員みたいなものかな? 一般の市民が判決に加わるということですね。そして判事に刑をレコメンドするっていうか。それで「The grand jury」は「大陪審」。それからペンシルバニア(Pennsylvania)というのがいかに長い州名かっていうことも改めて確認できる。「Penn」と「sylvania」でくっついて……っていうことなんですよ。どんだけ長くなっていくんですか?っていう感じですけどね。これ、州の名前です。
その州の中でカトリック教会がまあ、長きに渡って性的虐待を繰り返し、しかもそれを隠蔽したっていうことがいま、大陪審の調査によって発覚して「criminal syndicate」……これは普通ね、マフィアとかそういう犯罪組織とか広域暴力団みたいなニュアンスに近いんですよ。「criminal syndicate」。つまり、「教会そのものがそういう犯罪組織のように振る舞っていた」という風にコメントした識者がいたんだっていうツイートですね。
(プチ鹿島)うん。
(モーリー)日本語で見てみましょう。「ペンシルバニア大学のアンシア・バトラー氏によると大陪審の報告はペンシルバニア州のカトリック神父の虐待に対して、教会は犯罪組織であるとした」ということなんですね。ちなみにこのアンシア・バトラーさんという識者なんですけども、ペンシルバニア大学で宗教研究を専門とする准教授です。そしてなぜ、ペンシルバニアなのか? どうしてペンシルバニアの同じ州、ご当地の大学の識者に発言をさせたことに意味があるのかを解説しますと……ペンシルバニア州っていうのはイタリア系とかアイルランド系とかで移民してきた人たちが多く住んでいる、とてもカトリックな州なんですよ。
で、なんでそもそもカトリック教会がこんなにペンシルバニアで利権を持ったか?っていう背景ですが、『ギャング・オブ・ニューヨーク』っていう映画を見たことがあるかもしれませんけども。あそこでアイルランド人が差別をされるんですよ。アメリカに移民したのに職業もまともな職業に就けず、搾取されてばっかり。暴力も受けても警察が守ってくれないから自警団を作って、それがマフィアみたいになっていくっていう物語なんですけども。
(モーリー)要はアメリカは先行者利得で先に清教徒以来のプロテスタント、アングロ系、イギリス系、スコットランド系の人たちがいて、既得権を作っていった。その社会に同じ白人のキリスト教徒とはいえ、宗派がマイノリティー扱いされていた貧しいイタリア人やアイルランド人が次々に入ってきた時、「カソリック」っていうことですごく見下されたんですよ。
(プチ鹿島)うんうん。
(モーリー)要はちょっと格下の宗教にアメリカでは思わていたのね。なので、そういう人たちはお互いにコミュニティーとして守ってもらえない状態で、信仰がみんなの心を強くしていたっていう背景があります。つまり、宗教によって移民したての経済苦や治安の悪さを乗り切ったという歴史をコミュニティーは共有している。それだけに、カトリックの名前を汚すようなことは身内から出したくないっていう配慮が、コミュニティーの中にもう代々受け継がれていた。そして今回、アメリカのそういう複数のカソリック教会の神父が、さかのぼって大陪審が調べただけでも70年に渡り、少なくとも1000人以上の子供に性的虐待を繰り返していたという証言がいっぱい出てきた。それを大陪審がまとめた文書がいま、PDFで公開されています。
そして私、これを日テレの『スッキリ』の中でも解説したところなんですけども、虐待を受けると……性的虐待を受けた子はまだ未成年で性的にいろいろと触られたりしていることを本人もまだよくわからないんですよ。違和感はあるけど、なんなのかがよくわからない。そういう時、ある教会では虐待をした神父さんが「君は僕のお気に入りだから」って金のメッキの十字架のネックレスをプレゼントするの。「これは僕のお気に入りの証拠だよ」って。ところが、それをつけている子供は他の神父に「こいつはすでに1回ならしておいたから、お前らもやっていいぞ」っていうマークなんですよ。
(プチ鹿島)はー!
(モーリー)そしてみんなで次々、かわるがわるそういう少年を虐待していたというのが出てきて。それがまるで犯罪組織のようであったということで。そしてもうひとつ、じゃあどうしていまのいま、やっと大陪審になったのか?っていうことですよね。ずっと何十年も前からこれは告発されていました。ですが、その都度もみ消されていた。そして、たとえば場合によっては州の検察までそれが上がった時、その検察の人が次の選挙で組織票を当てにするために一種のお互いのもたれ合いとしてもみ消してあげたっていう事例まであるんですよ。ですから、司法も汚れていた。そして教会は犯罪組織と認めたというツイートで、記事の中にはこんな表現も使われていました。
「おぞましい事実を認める時が来た。カソリック教会とは児童小児性愛サークルなのだ(It is time to face the horrible truth: The Catholic church is a pedophile ring.)」っていう。この「pedophile ring」はね、児童ポルノでそれを共有していた人たちが捕まった時に報道で使われる言葉なんです。「pedophile ring」。つまり、教会そのものがもうほぼ児童小児性愛サークルではないか?っていうような告発が強い口調で糾弾されているわけですね。
それでね、これに対して遅らばせながら、これから一拍置いた形で渋々というようなタイミングでヴァチカン市国のローマ法王フランシスさんが謝罪文を公開したんです。ところが私、その謝罪文を二度読みしました。でも、そこに書いてあることは「これは嘆かわしいことで、みんなで信仰心を篤くして乗り越えよう」という呼びかけばかりがあって。誰が当事者だったのか、はっきりと言及していないんですよ。
ローマ法王フランシスの謝罪文
Pope Francis: Letter to the People of God (full text) – Vatican News https://t.co/MzbB0ZIRD7
ローマ法王フランシスのカソリック教会の児童への性的虐待に対する謝罪文。— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年8月24日
(プチ鹿島)はー。
(モーリー)たとえば、「安らかに眠ってください。間違いは二度とおかしませんから」っていうのに主語がないっていうのがあったりするじゃないですか。あれをちょっと思い出したんだけども、要は「いま、キリスト教そのものの試練が来ているので、みんなで信仰心をあらたに祈りをして、断食(fasting)をしましょう」って呼びかけているんですよ。
(プチ鹿島)断食を!?
(モーリー)お前ら、なんで信者が被害者なのに断食しなきゃいけないの?っていう。すっげー本末転倒が起きていて。これが2000年続いた教会の最後の成れの果てで。コンプライアンスを2000年間求められなかったのがいまになって求められてしまった結果、Twitterの時代に火消しにならない火消しをしようとしているという。ちょっとお粗末な展開になりそうだということで。ここまでローマ教会、カトリック教会の権威がいろんな身内の身から出た錆で失墜していくっていうのは正直言って僕も驚愕しております。
(プチ鹿島)それこそ「#MeToo」じゃないですけど、いまの時代だからこそ、その旧態依然としたものが……。
(モーリー)そうなんですよ。そして法王になったフランシスさん自体が教会の改革の号令をかけて「#MeToo」にも共鳴し、透明度を上げろ!って言っていた矢先に足元からガラガラガラッ!って出てきちゃったんでいま、口ごもっているっていう状態なんですね。
(プチ鹿島)これってなんか、ねえ。ちょっと前に映画(『スポットライト 世紀のスクープ』)にもなりましたよね? マスコミの記者たちがこれを調べて……でも、これを暴くっていうことはそれぐらい大変なことなんですね?
(モーリー)そうですね。やっぱり社会の中に、たとえばマスコミの新聞社であっても上の幹部の人がやっぱりカソリックの信仰が篤い人だと「こんな記事を出したらカソリックそのものにミソがつくから。これは一部の心がけが悪い神父がやったということだったらおさまる」っていう風にいろんな忖度や手心を加えてしまったので。こんなに大規模だったにもかかわらず、みんな見て見ぬふりをしていたということなんですよ。それがいま、暴かれた。
(プチ鹿島)はー!
(モーリー)だから本当に将来、これは日本にも及ぶ。日本の、たとえば芸能事務所の中で行われている性的な虐待および性サービスがあったとして、それが70年さかのぼって、歌謡曲の輝かしい歴史の中から全部証言が出てきたらどうなりますか?
(プチ鹿島)うん。それをちゃんと報道できるのか?っていうことですね。
(モーリー)っていうことが突きつけられているので、かならずしも対岸の火事ではないということで締めくくっておきます。
(プチ鹿島)なるほど!
<書き起こしおわり>