星野源『アイデア』を解説する

星野源 新曲『アイデア』配信決定を語る 星野源のオールナイトニッポン

で、なんかね、ひとつ思ったのはやっぱりただ音楽を急に変えるって……なんだろうな? 奇抜なことをただしたいだけっていう風になるのがすごく嫌で。そういうアレンジにしようっていう風に踏み切ることができなかったんですよね。その作業に入る前に。「どうしたらいいんだろう?」って思った時に、改めて1番の歌詞を見た時になんかね、ものすごくパブリックな僕だなって思ったんですよ。いわゆる音楽番組で「こんばんは、星野源でーす!」って言っている感じ。なにか、切ない歌詞とかはあるけど、基本的には何かを乗り越えていこう、何か前向きなことをみなさまにお届けしているっていう自分の感じがするなと思ったので。

で、それは僕の「陽」の部分っていうか。僕がずっとやりたかったことであって、すごく楽しくて充実感のある、とても素晴らしい場所だと思うんですけど。陽の場所っていうのは。そこで出会う人たちの面白さみたいなものもすごく感じるし。で、その中で、そういうところでずっと笑顔でいると、なんていうかその笑顔はね、ここは大事にしたいんですけど。それは嘘じゃなくて、本当の笑顔なんだけど、同時になんというか「陰」の自分っていうのがどんどんどんどん膨らんでいった2017年だったんですよ。それはあまり表には出してなかったけど、家の中でもうずーっと、ものすごく暗黒なものがグワーッて膨れ上がっていくものがあって。「そうか。『1番は陽で2番は陰の自分なんだ』っていうことにしたら、音を変える必然性が生まれる」と思って。

1番は陽で2番は陰の自分

で、僕は2017年、すごく好きで聞いていた音楽っていうのはビートミュージックだったりしたっていうのが……ケイトラナダとか、フランシス・アンド・ザ・ライツとか、そういうそういうエレクトリックな音で、内省的なんだけどすごくポップで。でも、すごく孤独感があって。

でも、そういう孤独感のある音楽っていうものが世界中でみんなが聞いているみたいな。なんかそういう音楽っていうものに対して、個人的なものがみんなで楽しんでいる。チャンス・ザ・ラッパーとかもそうですけども。

なんか、トラップとかだったりもそうですけど。

そういうものを、そういうサウンドっていうものにすごく自分が励まされていたんですよ。その孤独感だったり、そういうものに呼応したというか。それですごく癒やされていたりとかしたので。そういう風にして、いまやりたい自分のサウンドっていうものを、ジャンルとしてこういうジャンルがやりたいっていうことではないんだけど。そういうサウンドを使って自分の音楽をやるっていうことがやりたいのだってなった時、自分の陰の部分を2番以降で表現するという風にしたら、これはできるぞ!って。

あと、もうひとつ考えたのが、2番以降、3番というか大サビみたいなところですね。「闇の中から♪」っていうところですね。そこがそのまま普通にバンド演奏に戻ると、それこそそういう風に陽と陰ってなっても、なんか普通だなっていう感じがしちゃうので。「あっ、弾き語りやろう!」と思って。それは僕の原点であって、1人で家で作ってた時のあの感じっていうものをここでやったら、なんというか本当に僕のいろんなものが混じって。いろんな自分の音楽性っていうものを踏まえている、含んでいるんだけど、壊して。それを再構築して全部未来に持っていくみたいな曲にできるんじゃないか?っていうことで、弾き語りというものを挟んで。それでその後、もっとテンションの高い1番のバンドが「オラーッ!」っていう感じで来るという。

それで、改めて新鮮な気持ちで1番の演奏をまたやるっていう、それで未来に一緒に向かって行こうっていう、そういう音楽っていうものを作りたいと思って一生懸命作りました。で、そういうものができたと思っております。最後の最後にドラでバーン! みたいな(笑)。なんか爆発オチみたいな、そういうのをずっとやってみたかったんですよ。ドラでドカーン! みたいな。そういうのを今回、できるんじゃないかと思って。そしたら今回、できました。なのですごく、本当に充実感があって。前も放送で「何ヶ月もかかった曲ができたんだよ」って言った時があったと思うんだけど、それがこの『アイデア』が完成した時なんだけども。

だから本当に僕の中ではとても思い入れが深くて。いろんな気持ちのこもった、本当に参加してくれたミュージシャン、最高ですよね。演奏も本当に素晴らしい音で。これをね、盛り上げてくれたスタッフのみんなも本当に一生懸命やってくださって、本当にうれしかったです。で、もう1個、言うの忘れていた(笑)。もっと大本のコンセプトというのがもう1個あって。それは僕が『恋』と『Continues』という曲でやったことをもう1個、進めたいなというのがあって。それは「エキゾチカ」というジャンルがあるんですけど。それは僕が高校生の時に細野さんのソロアルバム3枚、トリピカル三部作を聞いて「なんてすごい音楽なんだ!」って。細野晴臣さんの音楽を聞いて。

で、そこからマーティン・デニーというね、この間『Continues』のライブでも1曲目にやった『Firecracker』という曲とかはマーティン・デニーという人の曲ですけども。マーティン・デニー、レス・バクスター、アーサー・ライマン。そういう人たちのエキゾチカというジャンルがあるんですけども。

星野源 マーティン・デニー&細野晴臣『Firecracker』聞き比べ特集
星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で大好きなマーティン・デニーの『Firecracker』を特集。マーティン・デニー版、ハリー細野&ティン・パン・アレー版、YMO版を流し、聞き比べていました。 (星野源)ここからは...

そういうジャンルをポップスにできないか? そういう風にして作ったのが僕の『恋』という曲だったんです。そして『Continues』という曲だったんですけど。それをもっと推し進めて、エキゾをいわゆる日本のど真ん中で、それこそ高校生の時から僕がやりたかったことをやるんだ!っていう。そういうアイデアも根底にはあります。そういうのもあって、いわゆるエキゾチカ。そして僕がずっとやりたかったドラをバーン!って鳴らすというのをやりましたというのでたぶん全部、ほぼ話せているのではないでしょうか。いやー、話したね。すいませんね。話ばっかりでね。じゃあ、ミュージックビデオの話は再来週だね。それまでみなさん、1万回ぐらい見ておいてください。本当にいろんな見どころがありますから。聞いてくれて、ありがとう!

(中略)

(星野源)そうだね。ミュージックビデオの話を本当はするつもりだったけど、できなかったね。1個だけするとしたら、いつも僕、真ん中にトレイラーを入れているじゃないですか。初回版DVDの。今回、なんでないのか?っていうと、「DVDがないから」っていう単純な理由なんですけど。あと、宣伝することがないというのと、あとはやっぱり2番は聞いてほしいなっていうのがあって。違う形で音源と差別化を図れないかな?っていうことでミュージックビデオの中で弾き語りを生歌でやっているんですよ。

なので、弾き語りに移る時の時間をわざとしっかり、距離を作ってそこまで歩いていって弾くという時間を作れば、いわゆる音源で本当の流れで聞くのとはまた違う感じになるので。そういうところでちゃんと買ってくれた人との差別化をしっかり図れるのではないかということで。そういう風にしました。なので、音源を聞いてくれる人はじっくり音源を聞いていただいて。いわゆるライブ感を楽しみたい人はミュージックビデオを見てもらえればと思います。

星野源『アイデア』ミュージックビデオを解説する
星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で『アイデア』のミュージックビデオについてトーク。コンセプトやアートワーク、三浦大知さんによるダンス振り付けの意味などを解説していました。

<書き起こしおわり>

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