星野源『アイデア』ミュージックビデオを解説する

星野源 『アイデア』ミュージックビデオを解説する 星野源のオールナイトニッポン

星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で『アイデア』のミュージックビデオについてトーク。コンセプトやアートワーク、三浦大知さんによるダンス振り付けの意味などを解説していました。

(星野源)ミュージックビデオの話をしようね。『アイデア』のミュージックビデオ、先ほど800万回再生されたということで、ありがとうございます! すごいね。なんかね、すごく僕もいろんな人から個人的に連絡をもらいますね。「面白い!」って。『アイデア』のミュージックビデオ、感想がたくさん届いております。ありがとう! 先々週、読めなかったのも読みたいと思います。

宮城県の方。「『アイデア』、MVが公開された当日の朝に学校へ向かう電車の中で見ました。今回の衣装は黒が基調でかっこいいなと思っていたのですが、女性のダンサーが出てきたところで源さんも含めてみなさんが礼服であることに気がつき、電車の中なのに涙がこぼれてしまいました。いままでの源さんの音楽が詰まっているようなMVの中で礼服を衣装として利用したのはどうしてなのでしょうか? 『アイデア』は私の中の何かを確実に変えた今日です。これから先もたくさんの素晴らしい作品を楽しみにしています」。ありがとう!

次のメール。「8月20日の日付が変わるのをカウントダウンしながら待って、『アイデア』を拝聴しました。はじめて聞いた2番の歌詞が心に刺さって、言葉よりも先に涙が出てしまいました。新鮮な体験でした。『アイデア』はいま私にとってとんでもない質量を持った、何度でも楽しめるびっくり箱になっています。毎食後、毎通勤中に何度も拝聴して楽しんでいます。ミュージックビデオのセグウェイの受け取りの人やギターを渡す人、その他普段の映像ではあまり見ることができない方々をいっぱい見ることができる内容にも感動しました。『みんなに大切な役割があるんだよ』と言ってもらえた気がしました」という。ありがとうございます。

埼玉県の方。「『アイデア』、配信スタートおめでとうございます。配信予約していたのをダウンロードして聞きました。早朝から仕事をしているので2、3回聞いたら寝ようと思っていたのにテンションがブチ上がってしまって全然寝られない。そのまま無理やり1時過ぎに就寝したのに、3時間後には目が覚め、Twitterでミュージックビデオが4時解禁だと知り、寝起きで即再生。71台のカメラの隙間を走り抜けるというとても躍動感のある映像でした。

『YELLOW DANCER』の赤、『恋』の黄色、『Family Song』のピンク、そして『ドラえもん』の水色……源くんにとって大きく変わったであろう怒涛の3年間を走り抜けているような、そんな印象を受けました。そしてその期間をいい意味で源くんの笑顔とともにぶっ壊すドラの音。映像で見る『アイデア』もヤバいとしか言いようがありません。三浦大知振り付けのダンスもとてもかっこいいです。みなさんの衣装が喪服に見えるのですが、それにはなにか意味があるのですか?」ということで。ありがとうございます。

最後。茨城県36歳の方。「『アイデア』のミュージックビデオ、昨日から何度見たかわからないぐらい見させていただいております」。これは21日に送ってくれたメールですね。「……SAKEROCKを思い出させるようなところ、いままでのジャケットの色、STUTSくんとのツーショット、大知くん振り付けのダンスなどなど、楽曲を聞いただけではわからなかったことがMVを見てなるほどとなりました。過去、現在、未来となっていて源くん自身の歌になっているんだ。でも、誰にでも当てはまるような感じもする。なんだか上手く伝えられないんですが、すごく感動しました。かっこいいよ、星野源! となりました。何度も見たくなるMVです」ということで、ありがとうございます!

さあ、そうですね。なにから話しましょうかね(笑)。今回も、ここ数作ずーっと『SUN』以降お世話になっている関さんという方に監督をしていただいて。ジャケットとかではずーっと『YELLOW DANCER』以降……ライブグッズとかも全部お世話になっている吉田ユニちゃんがアートディレクションをやってくれました。そんなメンバーだったんですけど、そもそもいままではスタジオの中で割と作っていくようなミュージックビデオが多かったので、なにかちょっと広い空間に行きたいなということで。あれはスタジオかと思いきや、全然スタジオじゃないんですよ。めっちゃめちゃデカい空間、メッセ的なところなんです。

で、そこを3日間ぐらい借り切って。あのビデオは2日半、準備にかかって。それで数時間で撮影が終わりました。フフフ(笑)。だから本当にスタッフの方は、しかも寝ていないという。2日間、寝ないで本番をしてくださって、本当にお疲れ様でした。で、そういう意味も含めて、ちゃんと全員の名前を出したいなっていうことで、いちばん最後にエンドロールをつけました。はじめてかな? エンドロールをつけたのは。なので、今回はね、なんだろう。ミュージックビデオができるまでも結構紆余曲折ありまして。『アイデア』のアイデアをいろいろとうんうん言いながら……。

で、僕が楽曲に込めた思いみたいなのがかなり多いので、それを含めて関さんが提案してくれるものに、「もっとこういうのがいいですね、こういうのがいいですね」みたいな話は結構やりました。で、僕はミュージックビデオが本当に大好きなので、なにか「いま海外で流行ってるこれを真似しよう」みたいなのはやりたくないっていうのがあって。だからいつも、アイデアを絞り出すのに結構悩むんですよね。その中で、関さんが出してくれたアイデアがあって、それがいろんな場所に移動しながら場面がどんどん変わっていくっていうようなアイデアだったんです。

で、それがいわゆるワンテイクの1カメの映像っていうんですかね? 長回し映像の企画だったんですけど。で、もちろんアイデアはとても面白かったんですけど、いわゆるミュージックビデオって1カメワンテイクのがいま、あまりにも多いんですよ。「海外も含めてちょっと多すぎるので、ちょっとこれやりたくないんです」って言って。で、「そうだよね」なんて話になって、そこから「うーん……」みたいな時間がすごく流れ。まあ、それまでも相当「うーん……」っていう時間を過ごしているんですけど。

で、結構もう締め切りが迫ってるみたいな中で、「じゃあ、もう今日も帰って、また明日とか急遽集まって話しますか……」みたいな感じになりかけた時に「ああっ!」って1個思いついて。「1カメって超いっぱいあるけど、ワンテイクの多カメってなくない?」って思って。カメラが全部据え置きで、カメラがずーっと動いて僕を追いかけてくるんじゃなくて、カメラは全部定点で置きっぱなしで、僕が自分で動きながらカット割りをしていくっていう、そういうビデオは見たことがないなと思って。「こういうのにしたらどうですかね?」「ああ、それはいいね!」ってなってガーッといろいろと動き始めましたね。

多数のカメラでワンテイク

で、その中でもものすごく今回、いろんな活躍というか、本当にこの人がいなかったら多分いろいろできてないっていう方がいて。それがユニちゃんで。今回、本当に広い空間をいろんな場所、僕が歩きながらカメラを見て歌いながら自分でカット割りしていくんですけども。あのカメラの位置というか、僕が場面になる、ステージがどんどん変わっていくんですけど。その位置関係を全部まず作ったのがユニちゃんで。「こういう風にしましょう」って。で、その中で一枚絵をまず描いてくれたんですよね。で、細かいアイデアとかはちょっとずつあったんだけど、それを全部1個にまとめてくれたのは実はユニちゃんのそのデザインがまずあって。

で、その会議の中でいちばん最初のカットが赤の背景から始まって。その前にもっと、マリンバの俯瞰の画っていうのがあるんですけど、それは『Emerald Music』っていうミュージックビデオと一緒なんですけども。

そうやってそこから始まって、背景が赤。それは『YELLOW DANCER』であり、その後に『恋』の黄色バックに行き、その後で『Family Song』のピンクバックに行き、その後は青で『ドラえもん』に行くというその流れもいろいろ作ってくれて。で、なんでそうなったか?っていうと、今回僕がやりたかったミュージックビデオのアイデアのひとつの中で、「いままでの僕のアイデアの供養」っていう(笑)。供養、そして新たな再生っていう裏テーマというか、大きなテーマがあって。なので、みんな喪服なんです。

僕はちょっとロングなジャケットですけど、それも割と喪服としても使えるようなというか。でも最初は普通のかっこいいスーツなのかなと思うと、男性のみんなが出てくると明らかに喪服なので……という、そういう順番にもこだわりました。なので、各いろんな、いままで僕が『YELLOW DANCER』以降に作ってきた象徴の色っていうものを経て、そこから2番に行って。2番はこれからの僕のやりたいこと、やりたい音楽・サウンドなんですけども。そこでまた新しい世界に……でも、「陰の自分」という世界、インナーにどんどん入っていくんですけど。その後のサビで後ろに、斜めのストライプで赤・白のバックに今度はなるんですけど。

これで僕がサビで歌って、そこから……あれを赤・白に決めてくれたのはユニちゃんなんですよ。ただ「「色のあるストライプにしたい」っていう話はしていて。それで、そこで僕が歌い終わったらダンサーのみんなが出てくるんですけど、そこで割とはっきり喪服であることがわかる。そこで照明がパッと変わるんですよね。そこで使っている照明っていうものは、高速道路とかにある色素を消す照明なんですよ。モノトーンにするんです。で、いままで赤・白のめでたいストライプだったのが、彼らが出てきて照明さんが照明カバーを取ってその照明がつくところもちゃんと映しているんですけど。その照明がつくと、全部の色素がバッとなくなるんで。黒・白の鯨幕になるんですよ。お葬式の。

そこではっきり「お葬式なんだ」っていことがわかるという演出にしました。で、その照明のことはちょっと1エピソードあるんで、それまたちょっと後日、しっかりお話をししたいんですけども。そういう風にして作っていきました。

星野源『アイデア』ビデオの色素が消える照明と嵐・松本潤を語る
星野源さんがニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で『アイデア』ミュージックビデオで使用した色素が消える照明は嵐・松本潤さんの紹介してくれたものだという話をしていました。

その後、弾き語りを経て。ミュージックビデオってだいたい曲を流しながら当て振りなわけですけども。あの部分は生でやりたいと思ったのは、いわゆる楽曲との差別化を図りたいっていう――先々週も言いましたけども――ミュージックビデオ、YouTubeで見れるのはいいけど、買ってくれる人がいちばん得をしてほしいということで、売った楽曲とは差別化をちゃんと図りたいっていうことで。ちゃんと曲が止まっちゃう瞬間っていうのを作りたかったんですよね。

で、通してすぐ聞けないよっていう風にもするし、でもそのライブ感というもので他では見れない部分もあって面白いという。だから何度も見たくなるっていう、そこを両立したいなっていうところのアイデアが自分で弾き語りをして、弾き語りをする場所までのストロークをちゃんと作るという、そういう企画でございました。そこから白い場所に……なんでまっさらな、これからの未来という意味も含めて白い背景の所に行くという。そういうミュージックビデオでございました。

で、そこをいままで通ってきた部分をガーッと走り抜けていって、ドラでドッカーン! みたいな(笑)。まあ、走り抜けていくっていうのは戻るっていう意味にも受け取れるとは思新しい自分にはなるんだけど、全部……だから喪服も着ているし、お葬式ではあるんだけれども新たな再生っていうところで全部まとめてドッカーン! みたいな(笑)。なんかそういうミュージックビデオになりました。細かい話をすると、もっといろいろとあるんですよ。

でもね、本当に今回、美術のみなさん……ユニちゃん、そして美術をやってくれたみなさんとかね、ステージを作ってくれたみなさんとか照明さんとか。もうとにかく、やっぱりみなさん、素晴らしくって。本当にあれは全部、端っこに置いてあるものとか、いわゆる現場っぽいもの。壁の後ろにちょっと見切れてる何かとか、あれ全部全部ちゃんと計算されてデザインされてるんですよ。色とかも含めて。なので、勝手に「あ、これちょっと邪魔だからどけよう」ってどけると、めちゃくちゃ怒られるっていう(笑)。「ちょっと!」みたいな。

で、僕がセグウェイに乗るんですけど。乗って2番のところに行くんですけど。セグウェイを受け取ってくれるADの子の後ろにあるガムテの色とかもちゃんと計算されているんで。そういうのも隅々まで見るととても面白いと思いますし、いろいろとね、考察しがいがあるんだけども、僕が言っちゃうとつまんないんで。いろいろとみなさん見て、発見してみてください。そんな感じで『アイデア』のミュージックビデオ……ああ、大知くんのダンスの話もいろいろあるんだよ。またこれも面白いんだ。しかし、曲を流さないと行けないタイミング。あ、曲も流せない? フハハハハハッ! CMに行かないといけないタイミング。じゃあ、ひとまずCMに行きましょう。その後にまたいろんな話をさせていただきたいと思います。

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