星野源『アイデア』を解説する

星野源 新曲『アイデア』配信決定を語る 星野源のオールナイトニッポン

日本一有名なドラマ枠だと思うので、僕の名刺のような曲にしたかったというか。まあ、イントロが鳴った瞬間に「これ、星野源でしょう?」ってわかるみたいな、そういう音楽にしたかったんですよね。なので、イントロの感じにしても、楽曲全体の関しても、歌詞に関しても、僕が『YELLOW DANCER』以来作ってきた音楽というものをすごく感じるように。何も知らなくても「星野源だな」っていうものをわかってもらえるような楽曲にしたいなという風にして作りました。で、それを聞いて、他の曲を聞いた人が自然にまた入れるような。『アイデア』というもので星野源をはじめて聞いた人が、他の楽曲を聞いた時に自然に入れるような曲っていうものを作りたいとまず、思いました。

なので、イントロの作り方とかそういうのも含めて、自分の匂いみたいものをしっかり出すように作りました。歌詞も、僕がいままで作った曲のタイトルだったり、歌詞の一部っていうものを散りばめて。もっと言えば、SAKEROCKの時からの自分っていうものもしっかり織り込みたかったので、SAKEROCKの僕が作った曲のタイトルの「生活」っていう言葉だったり。あとはまあ、僕のソロのオリジナル曲のタイトルだったり。「湯気」とかね、いろんな歌詞のそういう部分。あとは「夢を」とかね。『夢の外へ』とか、そういうのもいろいろとありますが。

「続く」っていうのもね、『Continues』っていう曲であったり。

「すべて越えて」の「越えて」とかはね、『恋』の「夫婦を越えてゆけ」の歌詞だったりとかっていう。そういう風にして『半分、青い。』というドラマの主人公の鈴愛ちゃんというキャラクターというものだったり、『半分、青い。』のテーマみたいなものとリンクさせつつも、自分の歴史みたいなものをギュッと入れたような曲にしたいなと思いました。あと、やっぱり朝だから、朝ドラって起きていちばん最初に見るような、最初に聞くような音楽だなと思うので。やっぱり「おはよう」から始めたいなと。「おはよう、世の中」という歌詞から始まるんですけども。

で、「おはよう」というのも『Crazy Crazy』という曲で「おはよう」という言葉から始まっているので。それも僕のいままでの曲のエッセンスというのも入っているし。朝ドラの一発目の音楽という。で、みなさんにご挨拶。「どうも、星野源です」みたいな。そういう感じ。そういうのを歌詞に織り込みました。

楽曲に関しては朝ドラというものが……これは全部しゃべれなそうな気がしてきたぞ(笑)。朝ドラってオープニング尺って厳密に決まってるんです。月曜日が90何秒。火曜日以降は70何秒みたいなやつが全部決まってるんですけど。それっていわゆる普通のテレビドラマのエンドとかって、決まってないんですよ。たとえば『逃げ恥』とかでも、あれはもういわゆるみんながダンスを踊るようなやつだったけど。曲に合わせてエンディングを作ってくれてるので、特に幅がないわけです。『Family Song』もエンディングタイトルみたいなのはなかったけど、芝居中にもう流れてくるみたいな。だから制限はなかったんですけど。その中でかっちりと、そこで終わらせないといけないという規定があったので。でもそこにAメロ、Bメロ、サビって入れると、大体同じテンポになるんですよ。

朝ドラ主題歌の厳密な尺

なので、だから他のいろんな方が書かれている朝ドラの曲というのは大体同じぐらいのテンポになるんですね。それはもう、普通にポップスというものを作ろうとしてA、B、そしてサビっていうものを作ると、大体同じになってしまうということだったんで。それがやりたくなかったので、イントロもアウトロもしっかり入れてAメロもBメロもサビもやろうっていうことで考えるとあのテンポ。この早いテンポになるわけです。で、「早いな」と思いながらも……でも、そこですごく自分にとって助かったのは『半分、青い。』という作品そのものが朝ドラというものをいろんな意味で壊したり再構築するような、そういうすごくアバンギャルドな脚本だなって最初から見て……「主人公、生まれてこないんだ!」みたいな。そういうところから入っているんで、それはすごく勇気になって。それもやらせてもらおうということで、あのぐらいの早さになりました。

さらにもう1個、いちばん最初のテーマとしてはアニソンみたいな曲にしたいという、そういうもう朝からアニソンぐらいのキャッチーさのものがポンと来るという。で、アニメってなんかサビで走るじゃない? なんて言うの? アニメのオープニングとかエンディングでノリのいい方の曲って、だいたいサビで登場人物が走るんだけど、なんかその感じをやりたいっていう。そしたら見事に、スローでしたけど、鈴愛ちゃんが走っていて(笑)。「やっぱ走ってる!」って思って。それは伝わったのかな、みたいな。それも面白かったですけど。

で、もう1個テーマとしては、僕がすごい好きで2017年……まあ、その前からもちょこちょこ聞いていて、2017年は特に聞いていたビートミュージック。フューチャーベースだったり、そういう、通常はエレクトリックな機材を使って作るような楽曲。特に「チキチキチキチキ……」ってすごくハイハットがもう早く鳴っているビート。そういう音楽のジャンルをですね、生演奏でできないかな?っていうのもいちばん最初の発想のひとつでした。

でも、そういう風にして……だから名残りで「チキチキチキチキ……」っていうのは残っているんですけど、それはタンバリンですごく早くカースケさんがやってくれていて。そういうビートの中でJ-POPというもの、そして自分が思うアニソン的なもの。そしていままでの自分の音楽というの集合体みたいなものを全部ギュッとするとあのオープニング、テレビサイズの部分になるという。で、それができました。その中で『ドラえもん』というものをリリースして。『ドラえもん』でもね、ものすごく遊んだんですよ。「ああ、遊んだ。遊ばせていただいた!」みたいな感じで。

で、『ドラえもん』が終わってから『アイデア』のフルの作業に戻ろうと思った時に、なんかね、すごくあの……「違うな」って思ったんですよ。全然ワクワクしないなと思って。なんでか?っていうと、僕は2017年が結構実はふさぎ込んでいまして。まあ、すごく落ち込んでいたんですよね。落ち込んでいる時に「落ち込んでる」って言いたくないじゃないですか。「言いたくないじゃないですか」っていうか、なんかやっぱり楽しくはありたいので。そういうのはあまり言っていなかったんですけども。まあ、いろんな自分の環境が変わったり、いろんなことがあったりして、すごく辛い1年だったんですよね。

そんな中で、「そんなんじゃアカン!」って。2017年は体調もすんげー悪かったんだけど。そういう風にして、「無理しない」みたいなテーマを掲げていたと思うんだけど。「それはいかん。『無理しない』じゃない。攻める! もう休むんだったら『俺は休むんだ!』って思って休む、仕事する時は『俺は仕事するぞ!』って集中してやる!」みたいな。もう能動的になるっていう風に決めてから『ドラえもん』を作ったんですよね。その作業はすごく楽しかったんで、それを経て、2017年の末に作った『アイデア』っていうものを振り返ってみて、さあここからフルを作るぞってなった時に、なんかものすごーく過去のものを見ている感じがしてしまったんですよね。

で、実際にやっぱり僕のいままでを詰め込んでいるから、まあ当たり前に「過去」なんですよね(笑)。で、これをこのままフルでそのまんま作ることは僕はできない。面白くないって思ってしまって。で、いまやりたいことをやろう!って思ったんだけど……いわゆるテレビで流れているものをガラッと変えちゃうみたいなことはしたくなかったんですよね。それってすごく簡単なことだし、逃げだと思うので。そうじゃなくて、いまある部分はそのままにして、どうにか自分がいま、もっと未来に作りたい音楽になれないか? というのでですね、死ぬほど考えまして。

その中で、いま自分がやりたいと思っている音。それを2番からやるというのはどうだろうか? 1番の歌詞――1番の音楽も含め――が、「これまでの自分」だったら、2番からは「これからの自分」っていうコンセプトの曲にしよう。それで、いま僕が自分がやりたい音楽というものをビートをしっかり変えて、演奏も生楽器ではなく、アナログ・シンセサイザーにして。ビートもSTUTSくん。昨日も『おげんさんといっしょ』に出てくれていたけど、STUTSくんが「ビートメイカー」ではなく「MPCプレイヤー」として。ドラマーとして参加してもらったので。今回も。

彼と一緒にですね、2番を全く違うアレンジにしようということで、していきました。で、その中でビートはSTUTSくんに「こういう風に、こういうことでお願いします」って言って作ってもらって。それをまたもらって。それで「もっとこうして、こうして……」って。そういうのをやり取りして、その作業がすっごく楽しかったんですよね。で、アナログ・シンセも本田さんという人と、僕も一緒に弾いたり。「こういう風に弾きましょう」って一緒に作っていって。そういう風にして2番ができていきました。でも、その中で生楽器というものもやっぱり足したいということで、ギターの亮ちゃん、そして1番と2番でほぼ全く同じストリングスが流れているという、そういう仕様にしました。

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