モーリー・ロバートソンさんがAbemaTV『けやきヒルズ』の中で杉田水脈衆議院議員の「LGBTの人々には生産性がない」という寄稿記事についてトーク。海外メディアの反応や杉田水脈議員の解任デモ、そしてこの寄稿や発言の背景などについて話していました。
(徳永有美)杉田議員の発言をこちらにまとめました。まず、いま日本ではデモに至っていますけど、海外のメディアの反応っていうのはどうなんでしょうか?
(モーリー)はい。先にCNNが速報して、日本に関する記事としてはいつもよりも文字数が多かったです。
Japanese politician under fire for calling LGBT community 'unproductive' @CNNI https://t.co/K7kZ9NqmPg
杉田水脈さんについて、CNNが長い記事だしてますねー。— みやーんZZ (@miyearnzz) 2018年7月25日
(徳永有美)ああ、そうですか。
(モーリー)で、それをイギリスのインディペンデントが拾って。
英インディペンデント紙>> Japanese politician under fire for claiming LGBT couples are 'unproductive' https://t.co/SMVcsOL5AH
— モーリー・ロバートソン (@gjmorley) 2018年7月28日
(徳永有美)はい。
(モーリー)そしてアル・ジャジーラなどが……。
This Japanese lawmaker doesn't think LGBT people deserve social welfare because they're not “producing” children. pic.twitter.com/8wtkfcJ245
— AJ+ (@ajplus) 2018年7月24日
(徳永有美)アル・ジャジーラ!?
(モーリー)はい。アル・ジャジーラは結構西洋のニュースに食い込んで、早めにやります。ただですね、記事がまだ日本で起きている騒動がそのまま翻訳をされている状態なんですね。そして大きなBBC、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストあたりがまだ沈黙をしているということは、いま振りかぶっていっぱいリサーチをして、勢いをつけて来週あたりにドーンと大変なメディアの騒動になってくると思います。なので、日本のイメージが本当に垂直に落下していくというリスクをすでに負っていると思っていますね。
(徳永有美)杉田議員としてはそこまでの反応、ハレーションが起きることもある意味、想像していたんじゃないかなとも思いますが、そんな中、なんでこのような発言をしたんですか?
(モーリー)そうですね。内なる人気取りをされてそれが滑ったという見方もできるんですけど、そんな小さな背景ではなくて、この一連の発言にEUやアメリカの新しい極右政治、オルト・ライトの手法に通じるものを見ました。ですから、これをひとつの点として見るのではなく、実は戦略の中のひとつの行動としてみる、そういう必要性があると思います。
(徳永有美)そうなんですね。私はやはり「生産性」という言葉遣いですとかそういうことを含めてかなり「うーん……」という風に思ったところがあるんですけども。実はもっと引いた見方があると?
(モーリー)そうですね。たとえば最初にブレグジットでこういう考え方が政治の駒になっていったんですけども。要は社会の弱者や少数者というのはお金や税収がなくなった中で「社会保障の安全網(セーフティーネット)にお金がかかりすぎる。それをカットしろ!」っていう風に極右のポピュリズムは言うんですけども。それを真っ先に享受するのは立場の弱い人なんですよ。実際に立場の弱い人たちのために中央で職を失っている人たちは頑張って納税して。それが生活保護であるとかシングルマザーの子育てとか同性婚になんで使われなきゃいけないんだ? 自分はまともに結婚をして家族を養っているのに……みたいな憤りを吸い上げていくのがポピュリズムの手法なんですね。
(徳永有美)はい。
(モーリー)ですから、いわゆる自分の「負け組なのに普通だ」っていう……「普通なのに負け組。それは社会が間違っている!」っていうそういう思いを吸い上げるのが右翼ポピュリズムのやり方で、そのマニュアルがここに見え隠れしているんですよ。
(徳永有美)ある意味、その左右の左の人たちが……。
右翼ポピュリズムの手法が見え隠れする
(モーリー)この(杉田水脈議員解任要求の)デモを見ているとスタイルは反安倍デモのスタイルをそのまま踏襲していますので「ああ、いつものおサヨク様か」みたいに右の人たちは見てしまう。ここに危険な落とし穴があると思います。セクシャリティーっていうのは政治スペクトラムの右左にかかわらず、どんなにゲイを叩いている保守政治家であっても実は隠れてゲイだったりするんですよ。アメリカだと。ですから、セクシャリティーというのは無差別。そこに政治は入っていないと見た方がいいと思います。
(徳永有美)うん。
(モーリー)ですから、こういう分断の政治の手法に社会が、政治の分断がそれで深まって。保守系は安倍さんを応援し、間接的に杉田さんを黙認する。そして左側の人たちはそれがひどいということでますます感情的にLGBTを犠牲者として政治利用してしまうと、犠牲になるのは少数者なんですよ。だからこれは別に障碍者であれ移民であれシングルマザーや事実婚をしている人であれ、どんな属性であってもマイノリティーに対して使われる政治手法。そしてもっとエグいことを言うなら、日本のこういう極右系の人たちは最近までは「在日朝鮮人、在日韓国人に気をつけろ!」って言ってきたわけですよね。
(徳永有美)はい。
(モーリー)ところが、訴訟がいっぱい起きて。たとえば『ニュース女子』という番組はそれでMXテレビから外され、MXの社長もBPOの審議を受けてお詫びをしちゃったんですよ。っていうことは、マスコミの中で外国人差別っていうのは駒としてだんだん使いづらくなっている。そして声をあまり上げていないLGBTおよび事実婚の女性。こういう人たちが次なる標的として、ポピュリズムの手法がやりやすいところに移ったという見方もできるんですね。
(徳永有美)自民党のこの杉田議員はそこまで考えて、もしかしたら狙ってやっている部分もあるかもしれない?
(モーリー)杉田さんがご自身でこれを全部設計されたとは思えません。ところが、アメリカの極右メディア『ブライトバート』……これはスティーブ・バノンがやっていたんですけども。そこにはひとつの徹底した哲学があるんです。世界の秩序がリベラルに傾きすぎた結果、アメリカが弱くなった。ですからリベラルな人権、人道に配慮しすぎという。彼が見ている世界秩序をもっと民主主義のそういう力を弱めて弱肉強食にすることで――ある種の美学ですね――本来の強いアメリカが帰ってくるという。これを日本の極右系政治家はたぶん拝借をして、それをいまテストしているんだと思います。
(徳永有美)テストの段階?
(モーリー)テストマーケティングです。
(徳永有美)日本にそういうことが通用するかっていうことですか?
(モーリー)いままで日本ではどちらかと言うとLGBTコミュニティーというのは僕は「二丁目文化」って呼んでいるんですけども。少し棲み分けて、「お互いに棲み分けているんだからそんな議論をして人権とかっていうのは欧米のやり方で、うちらは関係ないよ」っていう声も相当に日本のコミュニティーからは聞きました。ところがそういうポピュリズム……いわゆるヘイトな政治の手法が持ち込まれてくると、LGBTだけじゃない全ての日本のマイノリティー、たとえば産まない選択をした女性も「生産性がないじゃないか。産みなさいよ!」って言われた時に、それで議論をしなきゃいけなくなるんですね。
(徳永有美)うん。
(モーリー)ですからこれを安倍総理が放置して……たとえば二階さんは放置していますよね。黙認というか。
(徳永有美)そうですね。「いろんな価値観がある」という風におっしゃっています。
(モーリー)で、それを安倍総理が放置するとなにが起きるのか?っていうと、どんどんどんどん安倍政権へのボディブローとして女性の有権者も離れていくと思うし。そして2020年のオリンピック開幕式の時に一斉にみんながレインボーのシャツを見せたら、どうなりますか? だからそういうリスクも抱えることになるので、いまのうちに与党はきっちりとこれ、けじめをつけた方がいいと思います。
(徳永有美)わかりました。この件に関して、『けやきヒルズ』の番組として杉田議員に取材を申し込んだんですけど、杉田議員の事務所からは「殺害予告メールが届き、警察に被害届を提出してるのでコメントできない。現在は関連する投稿を全て削除している」というコメントが届いております。
<書き起こしおわり>