で、そこにはこうクリス・ロックが来てたりとか、ナズもいて、デザイナーもいて、2チェインズもいて。もちろんカーダシアン一家もワーッと来てっていう、そういうパーティーになってましたけれども。で、実は私もこのワイオミングに行けるかもって話がありまして。たまたまニューヨークにいたからなんですけれども、ちょっとある筋の方から「チャーター機が出るから、それに乗ってこの日ワイオミングに行けますか?」みたいな連絡をいただきまして。で、もう「行く行く!」っていう感じですし。まあね、ニューヨークは6月でもうあったかい。東京と同じくらいの気温だけど、ワイオミングはめちゃめちゃ冬の気候だから、どうやってダウンとか冬服を調達しようかな? とか、そこまで考えたんですけど、結局ね、定員オーバーで行けませんでしたっていうオチなんですが。
でもそれぐらい、私もちょっと浮ついた気分になっちゃったんだけど、ワイオミングでリスニングパーティーが開かれ。で、かつそのリスニングパーティーがうるさすぎて、周りからね、苦情がめっちゃ出て。もうここでは今後一切アーティストのリリースパーティーとかをやりませんっていうことになってしまったんだけども、カニエ・ウェストの待たれた最新アルバム『ye』が発表された。これも同じく7曲入りで、時間にして23分とか25分とかね、そんぐらいなんですけど。で、もう私さ、その金曜日の夕方ぐらいだったかな? ニューヨークのホテルで聞いたんだけど、1曲から「ずっとお前のこと殺したいと思ってたし、なんなら自殺も考えてた」みたいなリリックからスタートするアルバムで。
しかもジャケットには「I hate being Bi-Polar, its awesome.」って書いてあって。「Bi-Polar」って「双極性障害」のことなんですけど。「双極性障害でいるのは辛い。最高だぜ!」っていう風に書かれていて、「ちょっと、分かんない!」と思っちゃったんですよね。最初に。1曲目から「お前のこと殺したい」って始まっちゃって。しかもそれが結構何回も何回もリフレインされるフレーズなんです。で、「ああ、カニちゃん、誰かのこと殺したいと思ってたんだのー! ああ、辛かったんだねー!」みたいな。その後に2曲目の『Yikes』っていう曲で。これがまた、「双極性障害ではあるけど、これは障害ではない。これはスーパーパワーなんだ。ウワーッ!」って終わる曲なんですよ。だからもう、ちょっとね、その置いてけぼりにされた感が個人的にはすごくあった……。あったので、ちょっとこの『Yikes』を改めてみなさんにも聞いていただきたいと思います。では、聞いてください。カニエ・ウェストで『Yikes』です。
Kanye West『Yikes』
いま送りしましたのはカニエ・ウェスト最新アルバム『ye』から『Yikes』。はい。それで私も『Wouldn’t Leave』とかをアルバム発売のタイミングで『INSIDE OUT』でも遠方からかけさせていただいたりしましたけども。
そう。7曲聞いたけど、余計にカニエのことがわからなくなってしまったという。
(DJ YANATAKE)俺もさっき言ってたけど、まずジャケットが出たじゃん? で、それを和訳してみて、なんか本当にここでも言ったけどパッと入れないっていうか。聞いた瞬間に手放しで「うわっ、やべえ。かっこいい!」みたいに言っていいのかどうなのかって。消化するのにすごい時間がかかって。
(渡辺志保)いや、本当にそうです。
(DJ YANATAKE)いまでも本当に全部わかっているかどうかわからないけど。なんか結構……ねえ。本当だったら「カニエの新作が出た! やった! うわっ、かっこいい!」って言いたいんだけど……その前の過程やプロセスもあったし。なんかね、トランプがどうのとかって発言もあったから。なんかそういう、まさに志保みたいな感じだったよね。最初はね。
(渡辺志保)ちなみにいま、トランプの発言とかMAGA(Make America Great Again)ハットをかぶってフリースタイルする動画が出ていたりとか。T.I.と『Ye vs. the People』っていう曲を出したりとか。それでいちばんバックラッシュ、批判をされたのはゴシップサイトTMGの取材に答えて「奴隷制は選択だった」っていうようなこと言ってたと思うんですけども。まあ、その取材を受けた後に7曲全部を作り変えたそうなんですね。だからまあ7曲全てを作り変えたっていうの私は知っても、2つちょっと「えっ!」って思ったんですけど。ひとつは「じゃあ、オリジナルは一体どんな曲だったんだろう?」って。
ねえ。もともとは『Love Everyone』っていうタイトルを考えていたぐらいだから、もっとすごい愛とポジティビティーに満ちた曲があったのかな? という風にも思うし。で、あともうひとつは、それで全部作り変えて6月2日に間に合わせようとすると、もうめちゃめちゃタイトな……もう1ヶ月ぐらいで全部作り変えたってことになるから、そのスピード感、生々しさが嬉しくもあり、逆にそれでちょっと戸惑っちゃう感じもめっちゃ個人的にはありました。
(DJ YANATAKE)俺が見たニュースだと『Love Everyone』ってタイトルだったけど、めちゃくちゃ攻撃的な内容だったっていう説もありますね。まあ、誰も聞いてないからわかんないけど。
(渡辺志保)で、『ye』っていうタイトルにしたのも聖書でいちばん出てくる言葉が「ye」だとか。まあ、そういう風におっしゃっていたからカニエさんの中ではすごくね、理論付けてつけたタイトルなんだと思うんだけれども。で、この後にさ、『Kids See Ghosts』っていう、キッド・カディと一緒にコラボで作ったアルバムをも1週間後にドロップして。っていうようなことがありましたから……前にこれはジェイ・Zがインタビューで語ってたことなんだけど。『4:44』を作る時にね、まあ「ビヨンセにとってもジェイ・Zにとってもその私生活、お互いの結婚生活で辛いことがあったけど、アルバムを作ることがセラピーになったんだ」っていう風にインタビューでジェイ・Zが答えていたんですよ。
だからたとえばカニエもこの7曲、ないしはキッド・カディとの14曲、ないしはこの5作連続で作った全部で36曲あるんですけど。その36曲を作る過程が自分のセラピーになったのであればすごくいいなと思うし。でも、それってアーティスト、カニエ・ウェストがリリースするアルバムとしては、なんかリスナーはどういう風に受け止めていいんだろう?っていう風にもすごく考えてしまったし。で、ぶっちゃけその音楽アルバム、ミュージックアルバムを1枚以上のことを私は今回のアルバムはすごく色々考えちゃったんですよ。彼のその精神的な状態であるとか、そのリリースした前後のいろんな騒ぎであるとか。あと、キム・カーダシアンは一体どういう気持ちでいるんだろうとかね。生まれたばかりの子供を抱えて大変だっただろうに……とかね。なんかそういうことも考えちゃって。
そうするとやっぱりカニエってすげえ!って思う一方で、なんかすごいちょっとね、『INSIDE OUT』だから言いますけど、これが普通にもっとちゃんとしたところで書く記事とかだったら書かないけど、やっぱり私個人の感情も先行してしまって、なかなかちょっと冷静にパッと聞いて言葉にして表すっていうことが非常に難しいアルバムだなと感じましたし。でも、こういう経験を……アルバム1枚を聞いてこんないろんなことを考えるのってやっぱりカニエ意外にはいないから。なんか、それはそれでやっぱりカニエ・ウェストってすごいアーティストなんだなとか思ってしまいました。
でもその『ye』の翌週にリリースしたKids See Ghosts名義の作品は、私はこれはすごく……キッド・カディがめちゃめちゃ光っているなと思ったし。で、キッド・カディがまるで……彼もさ、マン・オン・ザ・ムーン(月に立っている男)だから。マン・オン・ザ・ムーン的な立場でカニエのことをうまく照らしてるなっていう風に思ったんですよ。キッド・カディがいるからこそカニエ・ウェストのバースとかアーティスト性が引き立つなっていう風にすごく思ったので、アルバム単位で言うと私は『ye』よりもこの『Kids See Ghosts』の方がアルバムとしてはすごくまとまってるし、意義深いなという風に思えました。
なのでここで早速ですね、その『Kids See Ghosts』からも1曲聞いてほしいんですけども。『Reborn』という曲を聞いてください。で、このアルバムは結構、特にキッド・カディのバースを聞くとカディも昔はめっちゃストラグルがあって精神的にも悩んでいたけど、いまはすごく前向きにReborn(生まれ変わって)前に進んでますよっていうことをラップしている曲が多い。なんだけど、同じ曲でもカニエはすごく後ろ向きなことをラップしてて、その対比がなかなか興味深いなとも思ったところでもあります。というわけで『Kids See Ghosts』から1曲聞いてください。『Reborn』。
Kids See Ghosts『Reborn』
いま届けしましたのはカニエ・ウェストとキッド・カディのコラボプロジェクト、Kids See Ghostsの『Reborn』でした。本当にね、アルバム1枚聞いて終わった時の感情が私は『ye』と『Kids See Ghosts』は全然違ったんですよね。『Kids See Ghosts』の方がちょっと前向きになれるような気持ちになったし、ここまでの作品を2人で作り上げることができてすごいなーって、純粋にそういうところを感じました。