(渡辺志保)まあ、そんなこんなでいろんな名作が生まれている昨今ですけども……それでドレイクの話よ。でもちょっと私、いくら私でもXXXテンタシオンとかジミー・ウォポの銃殺されてしまった事件なんかもありますし。また昨日もトロントのラッパーが命を落としたなんていうこともありますし。やっぱりなんか、こんなことを言うのもすごいあれだけど、疲れるしさ、お腹いっぱいになるじゃないですか。ゴシップを追いかけて聞くっていうのも。
でも、アメリカにちょうどこの間、2週間行っていたけども。みんな普通のニュースとしてそれを消化してというか。みんなにとっては、特にアメリカのアトランタの若い男の子とかにとっては、そのニュースを普通のニュースと同じような感覚でみんな触れて知って、友達との話のネタにして……みたいな感じで。すごいな!っていう風に思ったんだけど。でも、なんかこうなるとカニエの話とかにも戻っちゃうけど、ラッパーが作る、アーティストが作る音楽アルバムってなんなんだろう? みたいなことを私もこの1、2ヶ月すごい考えてしまって。
という観点からいうと、たとえばエイサップ・ロッキーの『Testing』とかいま後ろでかかっているジェイ・ロックの『Redemption』とか。あとはこの間の金曜日に発売になりました03 Greedoの新しいアルバムとか。あとはフレディ・ギブスの『Freddie』とか。なんかそういうアルバムの方が尊いような感じもすごいしたんですよ。やっぱり「ラップ1本でやってます」みたいな感じの……あと、フリーウェイの新しいアルバムも私はすごい良かったので、自分とラップ、ヒップホップの関わり方についていろいろと考えさせられる2ヶ月間だった。
(DJ YANATAKE)フリーウェイのアルバム、リル・ウェインとかやっているもんね。
(渡辺志保)そう。でもリル・ウェインの『Blood Pressure』っていう曲はすっげーかっこいいんだけど。でも私はリル・ウェインが1行ね、ケシャのことをネタにしていて。それがすごいワックだと思ったから。実は今日、最後にフリーウェイの曲をかけようと思ったの。『Blood Pressure』っていう曲を。でも、ケシャ……彼女はセクハラを訴えたっていう。あれを揶揄していて、それが「うわっ、これさえなければ最高なのにな……」って思った。
(DJ YANATAKE)まあね。でも今年、リル・ウェインも出そうだよね。
(渡辺志保)あ、そうそう。いよいよね、訴訟もクリアになったので出そうだと思う。それと、6月29日の昼にドレイクの『Scorpion』が出て。そこでちゃんとドレイクも『Emotionless』という曲と『March 14』っていう曲があって。その2曲で結構がっつり自分の隠し子についてラップしているんですよ。で、「俺は自分の息子を世界から隠していたんじゃない。彼から世界を隠していたんだ(I wasn’t hidin’ my kid from the world I was hidin’ the world from my kid」って。わかります? とかっていう風に言っていて、「ああ、すごい。ものは言いようだな」って思ったんだけど。
でもなんかそれはそれで潔いと思ったし。ドレイクもやっぱり、このわずかな数週間の間でレコーディングし直した曲もあるという風に聞きましたし。プラス、ジェイ・Zも「XXXテンタシオンは殺されたのに(トレイボン・マーティン射殺事件のジョージ・)ジマーマンが生きているのはどういうことだ?」っていうようなことを『Talk Up』という曲でラップしていたりとか。本当にだからすごいよね。もう録ってすぐ出すアルバムっていう。
(DJ YANATAKE)そんな感じ、最近フリースタイル感がすごい強くなっているよね。
(渡辺志保)強い。でもそれをさ、「生々しくていいぜ!」って思う一面、「ああ、もうちょっと練って作ってくれよ」みたいなのも思うんですよ。それは私がすごいアルバムが好きなタイプのリスナーだからなんですけど。それは本当に人それぞれあっていいと思うんですね。で、ドレイクもこの『Scorpion』は故スタティック・メジャーを呼んできたり。ソングライティングにラファエル・サディークも呼んできたり。
サンプリングでボーイズIIメンやアリーヤやマクスウェルまで使っちゃって。本当に逆に90年代のR&Bとかが好きなドレイクの気持ちもすごい伝わってきたし、ニューオリンズバウンスとかを引っ張ってくるドレイクの気持ちもわかるし。かつ、DJポールまで呼んでくるドレイクの気持ちもわかるし……っていう、すごい情報が。最初にも言ったけど、情報が多すぎてまだまだ消化しきれないんですけど、とにかくでもね、いろんな人に聞いてほしいし、最後に聞いていただきたいのはこのドレイクの『Scorpion』というアルバムの中から『8 Out of 10』という曲です。
これが一応、『The Story of Adidon』に対するファイナルアンサーみたいな感じ。かつ、ドレイクの勝利宣言みたいな感じになっていますので、最後にこの曲を聞いてお別れしたいと思います。60分間好き勝手にしゃべらせていただきました。お相手は渡辺志保でした。最後はドレイクの『8 Out of 10』でお別れです。See You!
<書き起こしおわり>