で、その次の週に今度はカニエがまるっとプロデュースしたナズのアルバム『Nasir』が発売されまして。発売のタイミングでこの『INSIDE OUT』でも『Cops Shot the Kid』をかけさせてもらいましたけども。
その時にもちょっと言ったんだけど、やっぱり後から聞き返しても思うけど、やっぱりやっぱり私は今回なぜこのタイミングでカニエ・ウェストとナズが1枚アルバムを作ったか?っていうそこの意義を見出せなかったっていうのを前も『INSIDE OUT』で話しましたけど。やっぱりいまでもそう思っていて。で、考えれば考えるほどさ、やっぱりナズはオバマ大統領の時代にはホワイトハウスに招かれていて。かたやカニエ・ウェストはさ、あんまりオバマのことはよく思っていなかったし、なんなら「トランプを支持したい」っていう風に言ってるぐらいだからさ。かつ、ナズってやっぱり昔から一貫して反共和党みたいなところもありましたし。
だから、そこに対してコンシャスなラッパーであったにも関わらず、何でこのタイミングでカニエとアルバム作ったんだろう?って、やっぱりいまだにちょっと「うーん……」って思っちゃうところがあるのと、あとはやっぱりケリスのDVの報道とか、やっぱりあれだけ……それこそカニエも『Yikes』のリリックで「ラッセル・シモンズに同情するぜ。俺も#MeTooされたからさ」みたいな、#MeTooのことを揶揄するというか、野次を飛ばすようなリリックがあったでしょう? それでプラスさ、ナズもケリスとのことは何も未解決のまま、こうやってアルバムを出しているから。なんかそれはちょっと、いままでのナズが素晴らしいシストだからこそ、それゆえにちょっと残念だったなとは思いました。
でも、ビートは好き。『INSIDE OUT』でも言ったけど、ビートは面白いなって思いましたから、ちょっとね、難しい。これ、ナズの『Nasir』がいちばん消化に苦労したというか、いまもちょっと消化不良のままっていう感じがしますので。ちょっとね、皆さんのいろんな意見も聞かせてほしいなという風に思いますね。1曲目の『Not For Radio』。あれとかさめっちゃさ、『Hate Me Now』に似ているよね?
だってさ、「Escobar season」って言ってオーケストラのジャーン!って始まるのとかめっちゃ『Hate Me Now』じゃん! とかって思って。別にそれがいいとか悪いとかじゃなくてさ。だから本当、なんか新しいナズのアルバムを聞いてるって感じはあんまりしなかったっていうのが正直なところです。
で、その後そのG.O.O.D.関連作、5週連続リリースのうちの4週目がナズの『Nasir』。そして5週目、最後を飾るのがテヤナ・テイラーのアルバムだったんですね。で、私はですね、アルバム単位で言うといちばん好きなのは『Daytona』。その次がこのテヤナ・テイラーちゃんのアルバムですね。このテヤナのアルバムだけ8曲入りなんだよね。でも、それで時間がめっちゃ伸びてるっていうことはもちろんなくって、トータルのランタイムは23分とか25分とか、それぐらいなんですけど。このアルバムを聞いて「あ、カニエってまだこういうちょっと胸キュンなR&Bビートとか官能的な曲が作れるんだ」っていう風に……すごい失礼な話だけど思っちゃいまして。
もちろんカニエだけが作ってるんじゃなくて、それこそタイ・ダラー・サインが一緒に作ってたりとか、ロドニー・ジャーキンスがいたり。そういうね、いろんな……カニエって特に『The Life of Pablo』から本当に何十人で1曲作るみたいな体制になってるから、まあ今回も同じくって感じなんですけれども。まあ、だからこそなんですが、すごくいまのカニエがこういうビートを作れるんだ。こういう曲をプロデュースすることができるんだっていうのは、私はポジティブな意味で驚きでありました。
で、やっぱりテヤナちゃんの歌唱力もすごいいし。テヤナ・テイラーが前に、このアルバム『K.T.S.E.』を出す前に、ホット97かな? ブレックファスト・クラブかな? ラジオかなんかのインタビューで答えてた時に、「いま新作は製作中で、カニエが90年代のR&Bっぽいカニエになってるよ」っていうのを前もって話していて。私もね、すごく楽しみにしていたところでした。で、順を追ってですね、このテヤナ・テイラーのアルバム『K.T.S.E.』からも1曲かけさせてもらいたいんですけれども。何をかけるのか、めっちゃ悩んだのね。で、これ後ろに流れてるのが『Hurry』っていう曲ですよね。
で、これもちょっとレゲエっぽい感じがあって。それにカニエ・ウェストのラップが乗っていて。これすごくいいケミストリーになっている曲でもありますし。あと、サンプリングサウンドが非常に印象的である『Rose in Harlem』って曲があるんですけどね。この曲もね、すごく耳にずっと残るすごい素晴らしい曲なんだけれども。
私が今日ここでかけたいのは『3Way』という曲がありまして。それをですね、オンエアーしたいと思います。これを聞いた時に私は「ちょっとブランディっぽいな」って思ったんですね。テヤナののボーカルもブランディっぽいし。そのメロディーのフロウが『Full Moon』以降のブランディっぽいなって思ったんですよ。で、クレジットを見たら今回、関わる曲全てで良い仕事してるタイ・ダラー・サインに加えて、ロドニー・ジャーキンスが参加してて。たぶんね、いま30から40ぐらい……35から45ぐらいかな? の、R&Bリスナーの人って絶対絶対にロドニー・ジャーキンスが大好きだと思うんですけど。
そのロドニー・ジャーキンス節みたいなのすごい久し振りに、私個人的に感じることができて。めっちゃお気に入りの曲です。歌詞の内容としては、テヤナ・テイラーは有名な旦那さんがいますけれども。「旦那さんとあともう1人、女の子を呼んで3人で楽しいことしよう」っていうね。まあ、詳細はちょっと控えさせていただきますけど、他の女の子を加えて3人で楽しいことしよう。2人より3人の方が楽しいと思うよ」っていう、そういうちょっとね、あのセンシュアルな曲になってますのでぜひぜひ聞いてみてください。テヤナ・テイラーで『3 Way』。
Teyana Taylor『3 Way』
いま届けしましたのでテヤナ・テイラーの最新アルバム、8曲入り、全てプロデュースド・バイ・カニエ・ウェストの『K.T.S.E.』から『3 Way』をお届けしました。はい。というわけで、まあカニエ・ウェストがこうして5週連続で1枚ずつアルバムを出すというのをやっていて。それをレーベル単位でやってるということで、なかなか他に例を見ないのではと思いましたし、5作品か全部出たいま、結構その5作品全部、36曲をランク付けしてるサイトとか、アルバムをランク付けしてるサイトとかもあって。なのでみなさんも、それで5作をまるっと縦断的、横断的に楽しむのも乙かなという風に思いましたし。後は1作品ごとに世界観がすごいので。たった7曲なんだけど、たった30分にも満たない長さなんだけど、本当に1枚聞くとすっごい私は結構ね、疲れて。カロリーを消費した!っていう感じがしますので、みなさんも是非どっぷりと1作1作使って、また改めて聞いてみてはどうでしょうかという風にも思います。
そんなこんなで、G.O.O.D.ミュージックの5作を追っているのと同時に、またボムが……すごいボムが落ちてきまして。なんといま、夫婦でツアー『OOn the Run II Tour』を巡業中でいらっしゃいますカーター夫妻。ジェイ・Zとビヨンセによりますザ・カーターズというユニット名を作ってですね、この2人が夫婦デュエットアルバムをドロップしたと。こちらもですね、全9曲入り。で、TIDAL限定の1曲がありまして、それを含めると10曲になるんだけども。まあ、基本的には全9曲入りのアルバムを作る。
で、私は今年、自分の誕生日にですね、なんとヤナタケさんからすごいプレミアムなその『On the Run II Tour』のフォトブックですね、プレゼントで頂戴しまして。よだれを垂らしながら毎晩見ています。
(DJ YANATAKE)あれはね、がんばりました。ロンドンのオークションで1回負けて、2回目でね、勝って。でも誕生日にミラクルで届いてよかったです。
(渡辺志保)すごいですね。海外からわざわざ。で、そういうこともあって。で、ここ『INSIDE OUT』でも『APESHIT』をかけましたけど、その節々にチクリと「あ、これは誰々に向けたラインかな?」「あ、これは絶対にカニエに向けたラインだろうな」っていうのもあったし。なんだけど、私はやっぱビヨンセも大好きだし、ジェイ・Zも大好きだからもうめっちゃ楽しんで。全10曲、TIDAL限定の『SALUD!』も含めて聞いたけど、私の中での結論はこれは余興。ツアー中の夫婦による余興であるっていう風に結論付けてますので、まあ多分ね、この後またビヨンセもね、ソロアルバムを出すんじゃないかと思うし。それに向けての余興だと思ってます。
なので、それで楽しんで聞くのがいいと思う。で、あと私がですね、ここ最近のジェイ・Zでいちばん感動したのはNetflixで見れます『デヴィッド・レターマン: 今日のゲストは大スター』。それのゲストとしてジェイ・Zがそのデヴィッド・レターマンとまるまる1時間ぐらいインタビューをしてるんですけど。そこもね、結構すごい建設的なビジネスマンでありラッパーなんだなっていうのを再確認したので、みなさんにもぜひ見ていただきたいと思うし。
このザ・カーターズのアルバム『Everything Is Love』に入ってる『LOVEHAPPY』っていう曲の中でもネタにされていますけども。まあ、ビヨンセが自分のことを「Beysus, watch the thrones」って言っているんだけど。『Watch the Thrones』っていうアルバムをジェイ・Zとカニエが過去に作っていて。そこから2人のアーティストとしての方向っていうのは本当に180度変わったわけですよね。だから、それってやっぱ凄いドラマチックだけじゃもちろん済まない問題なんだけども、興味深いなと思っていて。なので、ここ10年ぐらいのカニエとジェイ・Zを比較する企画みたいなのもどっかで誰かとやりたいなという風に思ってますので。まあ最初にTIDALだけでしかリリースされませんでしたが、いまは全キャリアで聞けますのでぜひぜひ『Everything Is Love』、まだ聞いてないという方は聞いてみてください。