スポンサーリンク

荻上チキ BBC伊藤詩織さんドキュメンタリー番組を語る

水道橋博士と宇多丸 BBC伊藤詩織さんドキュメンタリー番組を語る 荻上チキSession22
スポンサーリンク
スポンサーリンク

荻上チキさんがTBSラジオ『荻上チキ Session-22』の中で伊藤詩織さんの事件について取り上げたBBCのドキュメンタリー番組『日本の秘められた恥』が放送されたことについて話していました。

(荻上チキ)さて、土日を挟みまして、土日にはいろんなテレビ番組を見ました。

(南部広美)テレビ、見たんですね。

(荻上チキ)サッカーがあるからということでテレビをつける機会も多かったし。後は気になる番組がいくつかあったんですね。日本のものもそうですし、特に今週の日曜日はいろんなアニメにはいろんな変化があったりとかですね。アニメ好きな人にとってのイベントが結構続いた週末だったりしたので、それはそれで見てたんですけれども。そのネット上、オンライン上で今度こういった番組がやるよということで話題になっていた番組もチェックしたですね。

(南部広美)はい。

(荻上チキ)それがBBCでやってたドキュメンタリーなんですけれども、あの……ここから10分ほど性暴力に絡む話をお伝えしますので、ちょっと聞いてる方そのことを留意していただければと思うんですが。BBC TWOでね……BBCってイギリス向けにはBBC TWOっていうチャンネルをやってるわけですけれども、そのBBC TWOで日本でも#MeToo運動のひとつのきっかけとなった伊藤詩織さんのドキュメンタリーが放送されたんですよ。

(南部広美)はい。

(荻上チキ)で、一応その事件の概要を説明をしておくと、現在はフリージャーナリストとして活動していてこの番組にもお越していただいてる伊藤詩織さんがかつて元々著名ジャーナリストで元TBSテレビの社員だった男性に性的被害を受けた。性暴力の被害を受けたということで警察に訴え出ていたわけですね。ただし、警察の方がですね、それを起訴しなかった。逮捕状までは出たようなんだけれども、そこで逮捕を取り止めたっていうような経緯もあるんじゃないかという風に言われているんだが……その経緯はともかく、そのことも対して不服を申し立てて、検察審査会にこれが起訴に相当するんじゃないかということで、審議してくれという風に言った。

で、刑事司法の手続きの中ではの起訴に当たらなかったということで不起訴相当……起訴はされなくていいというような、その判断がくだったわけですね。ちなみにこれはよく誤解されますが、「司法判断」ではないですね。「検察が実際に司法の場に持っていくっていうこと止めた」っていうことなので、司法判断はおりていないわけです。それに対して、伊藤詩織さんは今度は民事裁判で、いま争っているというそういった状況なわけです。

(南部広美)はい。

スポンサーリンク

『Japan’s Secret Shame』

(荻上チキ)そういった状況であることを整理した上で、BBCが放送したその番組というのは『Japan’s Secret Shame』っていうタイトルで。『日本の隠された恥・日本の秘められた恥』っていう、そんなタイトルの放送ですね。で、この番組ではより広く日本の性暴力に対するシステムの整わなさと、それから社会の無理解というものの描き方というところに力を注いでいたという、そんな番組だったわけです。具体的には、そうやって実際に実名を出して被害を訴えたというような彼女に対して一体何が起きたのか?っていうその後の影響ということで、ネット上のバッシングであるとか、その様々な問題提起をしていく中で非常にメンタルにプレッシャーを感じていく姿であるとか。

同時にジャーナリストでもあるので、日本の性暴力被害の実情について調べようとすると、いろいろと脆弱な状況であるということが大変にわかっていく。たとえば実際に性暴力被害にあった時に、「こういった形で証拠を採取してください」っていう通称「レイプキット」というものがあるんですよね。そうしたものというのが、特定の病院でしかもらうことができず、しかも警察に行って相談に行かないとそういったキットをもらうっていうことなかなかできないであるとか。あるいは24時間対応してくれるようなヘルプセンターみたいものが本当は人口に比してもっともっと日本に必要なんだけれども、ほとんど設置されておらず。またそうした中で働いてる人たちも非常に少ない状況なので、対応が非常に難しいと言うか、されていないような、そうした実情というのが明らかにされているわけですよね。

そういったことにその焦点を当てていく中で、当然ながら当該の事件そのものに対しては加害者とされる側は訴えの内容を否定しているということも併記しながら、それに対するネット上の反応で、この名乗り出たその伊藤詩織さんというものが、まあたとえば「売春婦で」とか「嘘つきだ」とかっていうような形で燃え上がっていく。そうした炎上というかバッシングの中には国会議員も加わっているというようなことが番組で取り上げられていって。その国会議員の方のインタビューというのも紹介されたりしているわけですよ。……自民党の杉田水脈という議員なんですけどね。

(南部広美)はい。

(荻上チキ)まあ、そのインタビューの中では実際に加害者とされるその男性の側を擁護するような立場として、「日本の#MeToo運動を紹介するような文脈でインタビューに答えた」という風に本人は言ってるんですけれども、ただその「落ち度」というような言葉を使ってその被害者として訴えてる人に対する攻撃というものをある種肯定するような発言を国会議員の方がしたということで、ひとつのセンセーショナルな受け止め方をされるというものになっているわけですね。というような、そんなドキュメンタリーが放送されて。で、日本でもいろんな反応があったんですけども。南部さんもちょっとご覧になった?

(南部広美)私、BBCのWebサイトで細切れですけど。番組全編ということではなくてシーンシーンというか。記事と、それにちょっと映像がついたものを拝見しました。

(荻上チキ)たしか90秒ぐらいの動画が3本ぐらいかな? 4本ぐらいかな? BBCのWebサイトにUpされてますよね。

(南部広美)それを拝見しました。

(荻上チキ)そこで特に注目をされるシーンなんかはアップロードされていたりしますし。日本語でも記事が上がっていたりするので、記事をオンライン上では読むことができるわけです。地上波では放送はBBC TWOなので、イギリス国内でしかほぼ見られなかった。ただ、内容自体は記事で見ることができるわけですね。で、まあ日本の中でもネット上でアプリを使えばBBC TWOが見れるっていうこと知ってるユーザーとかが、その放送時間に合わせて待機していたような人もいたりしましたけれども。

(南部広美)そうでしたか。

(荻上チキ)で、これが放送されたらされたで、またその番組の中で取り上げられてるような出来事というのがより濃縮された仕方で起こってるわけですね。

(南部広美)反響みたいに?

スポンサーリンク

放送後のさまざまな反響

(荻上チキ)反響……そう。様々な「こういった日本のその性暴力対策というものが脆弱である」というような問題提起が起きたことに対して、「さあ、どういった政策につなげようか?」とか「そんな大変な実情の中で声をあげるのは大変だろう」とか。「他にも声をあげられない人たちはたくさんいるだろう」とか、いろんな想像はできるわけですけれども。あくまで今回の被害を訴え出ている人に対する攻撃のみを行う人というのもネット上ではたくさん出てくるわけですね。それこそ、さっきの杉田議員というのは「今回は司法の判断が出てるんだから、この司法の判断おかしいという人はその根拠を示せ」というようなことを言っていて。いや、検察が起訴しなかったのは司法の判断じゃないないということを国会議員が押さえてないということも、とてもシェイムだなって思うんですよ。それ自体はね。

だけど、そういうような反応に象徴されるような形で、やっぱり特定の個人の振る舞いの是非っていうものに矮小化されていって。で、結局この番組が訴えていたような、たとえば「婦人警官、とても少ないよね。女性警官、とても少ないよね」とか。それから「レイプ被害にあった、性暴力の被害にあった人たちが訴える場所は少ないよね」とか。で、「いざ訴えでたら叩かれるような状況なんだよ」っていう風なドキュメンタリーをイギリスに紹介をしたら、「なんだ、そんな番組は! 今回のケースについては彼女が悪いんだ!」みたいな形でバッシングが起きて……「それそれ! いま、やってるそれが『シークレットシェイム』っていう形で報じられたんだよ!」っていうことを、さらに上塗りしてるような状況というのが出てきてるわけですよ。

とか、諸々のことが放送を見た後の反響も含めて、いろいろとズシーンとのしかかるものがあったわけですよ。

(南部広美)うん。静かな怒りを感じましたけども。私もそれを見て。

(荻上チキ)この土日にはね。この番組に伊藤詩織さんがお越しいただいた時に、その性暴力の話をしてくださって。で、いまでもそれはラジオクラウドで聞くことができるんですけども。その話を聞いた時も驚いたじゃないですか。

(南部広美)驚きました。

(荻上チキ)聞き取りのプロセスで女性警察官の方に一生懸命お話をしたんだけど、その女性警察官の方が交通課だということで、結局男性の警察官に話さなければいけないくなって。で、その警察官に話したら、今度は「その様子を再現してもらおう」ということで等身大の人形とともにどんなポーズだったのかということをさせられるというような、その不起訴に至るまでの一連の経緯のどこを切り取っても、いろいろ問題がある。で、伊藤さんも強調していたんですけれども、「こういった思いをするのは自分で終わりにしてほしい。それは性暴力で被害だけではなくて、様々なシステムの不備であるがゆえにいろんなところで本当に苦痛を味わうような場面が多すぎる。そうしたところ改善できるはずでしょう?」と。その時、彼女が声を上げたタイミングというのは、実際に性暴力に対する罰則であるとか、あるいは捜査要件というものを見直そうというような、そうした時期だったわけですよ。

(法律の)改正のタイミングがあったわけですよね。で、その改正のタイミングで、当時は共謀罪が議論をされていて。共謀罪を先にやろう、やろうっていう風な動きがあったから、もともと予定されていた法律よりも共謀罪の方を先にやろうっていうような動きがあったので、「いや、もともとやろうとしていたこの性暴力のたとえば厳罰化とかっていうものはちゃんとやってほしい」ということも言ったところ、「なんだ、共謀罪憎しの左翼か!」みたいな形でそこだけ切り取られて、ネットでまた叩かれたりとかっていう形があって。「いや、そもそもこの共謀罪を性暴力の懲罰化の手前に入れようとしたという与党判断というものに対して、いろいろ物申すことがなぜ左翼とか与党批判、政府批判ということになるのか?」っていうのは、まあ繋がらないことだと思うんですが。

まあ、それはそれとして、そういった時に声を上げて、いろいろと叩かれていたわけですね。で、そのバッシングの様とかを今回の番組で放送したということも含めて、ネットも含めて、ひとつの嫌なリアリティーショーを見ているような、そんな感覚でしたね。ただ、実際にご本人から聞いた話が映像として再現されたり、具体的なデータ。たとえば婦人警官の数がこれぐらいで……とか。実際に声あげられてる人はこうで……とか。イギリスでは性暴力被害を訴えている数は日本よりも多いんだけれども、それはかならずしも性犯罪が多いということではなくて、いろいろな訴え出やすさとか、様々なものがかかわっているだろうというようなことがうかがい知れるデータが紹介されていたりとかね。

そうした意味合いで、実際に聞く以外のいろんな情報も含めて、新鮮なというか、改めて驚くような……。「知らなかった」というか、思い知らされるということですね。知っていることでも体感の仕方が違うなという風に思いました。

(南部広美)「脆弱さはここまでなのか……」っていう、言葉になりませんでしたけども。私は、見て。

(荻上チキ)そうですね。なので、そういった意味では政治の課題としては、そういった対策をより一層進めていく。対策をしっかりと……啓発もそうですし、センターを作っていくとかもそうですし。あるいは、たとえばレイプキットであるとか、アフターピルであるとか、さまざまなものをより適切に届くような状況を作っていくなどなど、いろいろな課題というのがあると思うんですね。少なくとも被害を名乗り出た人を攻撃することが政治や社会運動の目的ではないはずなんだという風な、そうした課題意識っていうものをもう受け取るような、そうしたドキュメンタリーを見ました。そんなこんなで、この番組でもまた、性暴力やさまざまハラスメントについて考えるような特集もできればなという風に思っておりますけども。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/51048

タイトルとURLをコピーしました